【感想・ネタバレ】能力はどのように遺伝するのか 「生まれつき」と「努力」のあいだのレビュー

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Posted by ブクログ

話題になった一冊のようですが、タイトル、サブタイトルから想像するような本ではありません。非常に読み応えのある、極めて真面目で、そして、何より勇気を与えてくれる本でした。
遺伝的多様性が誇示と社会を規定する重要なファクターであることを認めた上で、それがものようなものかを行動遺伝学、心理学の知見から解き明かすもので、優生的な発想でも、決定論でも、過度にヒューマニズムな本でもないです。特に、第5章が広く読まれてほしい。特に223ページ以降が最も盛り上がる箇所です。
私は感動を覚えました、この本に。

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2023年12月03日

Posted by ブクログ

遺伝の話には抵抗がある。優生学とナチスの話は避けては通れない。でも、すでに明らかになったことがたくさんあるので、それを知ってから、倫理的に考えていくことが大切なようだ。
遺伝と共有環境、非共有環境という、双生児研究の基本的な話が主となる。心理学の教科書にグラフが載っているやつだ。あれをどう見るのか、解説してくれる。
DNAのアノテーションとか、より詳細な話はその次に出てくる。ポリジーンの話。

読んでみて残っているのが、セットポイントの話だ。遺伝が決めるのはセットポイント。そこから環境や教育や努力でポイントを頂点とした正規分布になる。セットポイントを遺伝によって正規分布になる。
統計学の授業で重回帰やら分散分析やら、説明を受けたのが思い出され、腑に落ちた。
安藤先生は最近たくさん本を出しているので、どれがおすすめになるかは他を読んでいない私には分からない。どれか一つ読んでみるのがいいだろう。それはこの本でもいいと思う。

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2024年05月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 遺伝対環境。どちらが重要なファクターか?

 結論は両方。しかし、遺伝的に決まる部分が大きい、とする。ヒトの遺伝の研究は一卵性双生児と二卵性双生児の差異を見ることで進歩してきた。

 しかし、ある遺伝子がこのファクターに直結…という単純な話ではなく、遺伝子aとbとcが重なるとこれが出やすい、ということだそう。

 知能と遺伝の間には相関があるが、さらに強い相関があるのは、知能と学歴、だそう。この部分は、パティシエは甘党の傾向がある、というようなもので「?」な感じ。

 親ガチャはある。しかし、本人の適性に合った、能力開発をしていけばそれも克服できる、とする。(直前に「人口ゼロの資本論」で親の所得と学歴はリンクする、と読んだばかりなのでこの部分、うのみにはできないが)

 豊富な図表と引用で、遺伝学というのがこのような学問なのだ、と知れたことも収穫。

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2023年11月26日

Posted by ブクログ

セントラルドグマはともかく、遺伝上では、地球上の生命は皆、統計情報化された確率の変移にすぎないのかな。
逆かな、確率の変移が、統計情報化されて個体総体として成立していると考えればいいのかな。

まあ、知能という次元では、言語処理として生成AIと然程の違いは無い。この単層限定なら、暗黙知が成立している感じがする。でも単層では、暗黙知ではないか。

生命としては、確率の変移で、言語処理、知能としては統計情報化と考えた方がいいのかな。こっちは意味か。

個々の微細な意味の集合、集積が、単線ではなく複層、複雑化した結果、奥深い様々な物語を誕生させるのか。

ゆえに、それがより趣のある一意では捉えられない意味解釈世界を構築してくれている、のかな。ここらは、AIでどのくらい再現されているのかは、今後のことかな。

セントラルドグマという神話が、統計情報化を想起させているのかな。

読み返すと、能力の方には然程の関心がないのな、私。
能力も、物語、神話の一種ぐらいに思っているな。

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2023年09月30日

Posted by ブクログ

遺伝学×統計学。統計学って凄い。セントラルドグマの制約→遺伝子の相互作用による「発現(表現型)」(確率の問題)→パーソナリティも遺伝要素大。「能力」とは「ある特定の状況や課題において、個人に同じ機能を持った行動を反復して起こさせる神経的・身体的ネットワーク」。「環境」も遺伝の影響を受ける。著者も述べているが、本書を優生学的に勘違いされることを危惧します。著者の思いは真逆なので。

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2023年08月14日

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橘玲の「言ってはいけない」で同様に遺伝の影響についてある種危機的に煽っていたと思うが、本著ではより研究のデータに基づいて、専門的な分析がなされている(ように素人からは見える)が、ブルーバックスとはいえ門外漢には手に取るように、とは行かない内容。

研究方法やその領野について、なかなか専門として進めようとする初学者でも骨太に思われるが、雑読の徒からすると、遺伝という視座がそもそも生物学の深遠な学術領域の一つなのだと再確認。

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2023年08月13日

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「環境か遺伝か」という単純な話ではなく、遺伝と環境の交互作用によって説明される。
遺伝の効果が環境によって変わってくる。逆に環境の影響が遺伝の条件によって変わってくる。
知能の遺伝率は発達とともに増加するのは驚きだった。

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2023年08月02日

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この本を読む前は遺伝の影響もあるが、成長してからの環境や行動が社会的な立場を左右すると考えていた。

その考え方は合っている部分と間違っている部分があった。
遺伝は非常に複雑である。また、能力が発揮されること自体も想像以上に単純ではない。
大前提としてあらゆる能力に関することに遺伝が影響を及ぼしている。そして、遺伝情報は外生変数であり、環境などの外的要因の影響を受けない。遺伝情報はセントラルドグマである。
本書では能力と才能という言葉を使い分けているが、才能は遺伝と学習、社会的な文脈が合致したときに発揮される。
さらに、能力も個人間・個人内・環境のレベルの確率状態が影響する。

後半には行動遺伝学の発見についての説明、知能に関する遺伝の影響を図るポリジェニック・スコアについて書かれている。

遺伝のことについてわかっていることとわかっていないことを峻別し、そのうえで倫理的な判断を下すようにしていきたい。

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2024年03月24日

Posted by ブクログ

行動遺伝学の研究成果。

パーソナリティから環境まで、人間は、「遺伝」から逃れることができない。
全てではないが、明らかな相関関係があるのが事実。
であれば、それを前提に、綺麗事も抜きでいろんなことを考えべきだ。

その通りだな。

本としては、能力とか知能とかいう言葉の定義がすんげえ長い感じで、あとは統計的な事実があって、先生の、ポエムが最後に入る。

人によって受け止め方が色々ある本だと思う。

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2023年10月31日

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途中、論文のような図や説明があり難しかった。作者の独特な表現もあり、内容が入りにくかったが、独自の意図があり興味深い。
遺伝と環境要因が複雑に絡み合い相互作用していく中で、自分らしく生きることを前向きに考えたくなる。たとえ自分に前向きな遺伝子が少なく、前向きな環境に置かれていなくても。

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2023年10月18日

Posted by ブクログ

作家の橘玲さんがよく著者の本を引用しているため、読んでみた。学者ならではのデータを駆使してはいるが、素人からしたらちんぷんかんぷんであまりよく理解ができなかった。ただ、文章の端々に著者の論理的思考の明晰さは感じ取れた。分からなかったという理由だけで評価を低くするのは忍びないが、その点を踏まえてこの評価とした。

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2023年10月15日

Posted by ブクログ

能力が先天的なものか後天的なものかを分析した一冊。

先天的なものが多いといわれているが、必ずしもそれだけではないというところはわかったが、肝心のその割合などはわからなかった(一律でないのは当然だけど)。

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2023年09月03日

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とても興味深い内容だったが、文系人間には結構難しかった。

遺伝の研究は双子による臨床研究が知られているが、一卵性と二卵性による遺伝の確率の違いがきちんと数値で表れていることに驚いた。

能力…というのはただ頭がいい、というだけでなく、集中力や継続力なども含めてのものであるというのは、ちゃんと考えたことがなかったが、ごもっともなことだと理解できた。

残念ながら、netgalleyでは多くのグラフや統計は伏せられていたので、理解が深まらない部分も多かった。
netgalley7.30

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2023年08月22日

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人間ならばDNA配列の99.9%は同一
つまり、世に才能を知らしめる人と凡人の差はDNA配列0.1%の範疇ということ
しかしながら、0.1%に相当する塩基対は300万ヶ所
遺伝的多様性はこの組み合わせで生じるのだが、実にゼロが2万個以上並ぶパターンらしい
あまりにも組み合わせが多いので、例えば身長を構成する要素だけでも、社会集団全体の分布と一組の家族内での分布がほぼ重なる
つまりはどんな両親の元でも突然変異は起こるのではないか?と受け取れたが、理解が追いついてない…

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2023年07月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

もう少し一般人でもわかるように書いてあるのかと思いましたが、専門用語が多く、この手の本を読み慣れていないので難解に感じました。

こんな私でもわかったことは、大谷翔平や藤井聡太と私達の遺伝子は99.9%まで同じなのに残りの0.1%のDNAの塩基配列の違いが大きな差になるということ。ヒトの遺伝子は30億個の塩基対からなっておりその0.1%である300万ヵ所に個人差があるということ。そう思うと遺伝だけを考えても大きな差ですね。

唯一、一卵性双生児に限っては遺伝的には同じ条件で生まれ、心も類似するという。しかし、非共有環境の影響によりパーソナリティの違いが出るらしい。非共有環境とは、同じ家庭で生活する人同士で異なるだけでなく、同じ人の中でも時と場合では異なる特殊な要因であり、予測することも統制することもできない偶然要因とのこと…。難しいですね。

私には一卵性双生児の孫がおり、1歳前から性格の違いを感じていた為、本書に興味を持ち献本に申込みをさせていただきました。まさか、当選するとは思っていなかったので、驚きました。本書を読む事により、知りたかった事が少しわかった気がします。ありがとうございました。

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2023年07月13日

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