あらすじ
知能格差社会の真実から遺伝的な適性の見つけ方まで
知性、能力、性格、そして運まで――。行動遺伝学が明らかにしたのは、人間社会のあらゆる面を「遺伝の影」が覆っており、それから誰も逃れられないということだった。私たちは、残酷すぎる世界の真実といかに向き合うべきか。理不尽を乗り越え、成功を手にするための方法は存在するのか。ベストセラー作家と、行動遺伝学の第一人者が徹底的に論じる決定版。
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行動遺伝学者の安藤寿康(あんどう・じゅこう)氏と橘玲(たちばな・あきら)氏の対談。あとがきによると、行動遺伝学をめぐる天使(安藤氏)と悪魔(橘氏)の戦いの記録的対談。対談ならではの両者の本音発言が楽しく読ませる。標題の「運は遺伝する」の謎解きは本書を読んでもらうこととして、全編を通じて行動遺伝学では人間の知的活動を含めたあらゆる行動面に遺伝が色濃くかかわっているという事実を証明していく。この事実をどのように受け取って明日につなげるかが本書のテーマである。現代人必読の一冊と言える。
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人は努力すれば成長できる。能力を身につけ、何にでもなれる。
落伍者は、努力しないからだ。自業自得だ。
・・・と、ついこないだまで、私自身そう思い込んでいた
だからといってどこかの議員、党みたいに生活保護を否定するものではないが
親のしつけ、教育がなってないから、子供が変な方向に行くのだ、
環境さえ作れば、子供は無限の可能性がある。なんてことも思っていた。
でも最近その考えを変えつつある。
いろいろ読んでいる本の影響もあるが、実体験として感じているのが、部下だ。
この3年間どう教えても同じ失敗を繰り返す。
これを、親の教育のせいと思ったりもしたが、どうやらそうではなく、
発達障害由来だということを理解したのはこの半年。
生まれ持ったもの、遺伝、ということだ。
この新書でもASDは取り上げられている。そうなのだ。遺伝。
DNAによって、頑張りたくても頑張れない人がいるのだ。大勢。
ここで自分を振り返ってみると、、、
どうやらコツコツ継続する遺伝子は持っているらしい。
記憶力はない。ゆえに、学生時代は、テストでそれなりの成績は取れたが、
飛びぬけて優秀にはなれなかった。
社会人になって資格試験を目指しても、なかなか合格がもらえなかった。
自信がない、不安な日々が続いた。内に向かっていた。
それが変わったのは、30歳前に父を亡くし、そこから人生が動き、転職をし、
霞が関ビルの階段をのぼり、40代半ばにフルマラソンを始めてから。
46回フルマラソンを走る中、能動的になり、積極性が生まれた。
DNAにスイッチが入ったのだと思う。
もし入っていなければ、今頃うつうつとした60代を過ごしていたかもしれない。
この新書に書いてあることはある意味残酷。
いくらいい環境を作っても、遺伝子の影響から逃れられない部分が相当ある、
と言っているのだ。それを示すエビデンス多数。
最近よく読む一卵性双生児の実験。
幼児の目の前にお菓子を置いておいて、何分間か我慢出来ればもう一つあげる、
という実験。我慢できるこの方が将来が明るい。
これは遺伝の部分と、環境の部分と両方ある。貧しい暮らしをしていれば、
将来の2個より今の1個が大事、となると。
咲ける場所に動きなさい。
つまり、好きなこと、得意なことをしなさい、ということだろう。
ただ、それで食えるかはわからない。
発達障害の本にもあったが、環境が違えば、何の問題もない特性、むしろ、
優位に働く特製であったりもするのだ。
しかし、現代のコミュニケーション過多ともいえる社会の中では、
致命的な特性になってしまうことがある。生きづらさ、働きづらさとして。
そのときに咲ける場所に動ければいいが、現代社会、なかなかそうはいかない。
補う手段を見つけるしかない。近視だったらメガネをかけるように。
DNAは変わらない以上、ツールを使って補うしかない。探すのが難しい、、、
あ、上で書いたように、眠っていたDNAにスイッチを入れる、という手もあるか。。
まあでもそれは偶然だし、期待するのは難しいかな。
常に部下が念頭にある。
第1章 運すら遺伝している―DNA革命とゲノムワイド関連解析
第2章 知能はいかに遺伝するのか
第3章 遺伝と環境のあいだ
第4章 パーソナリティの正体
第5章 遺伝的な適性の見つけ方
第6章 遺伝と日本人―どこから来て、どこへ行くのか
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橘玲氏と行動遺伝学の第一人者である安藤氏の対談形式の本で、運すらも遺伝していると言えるのだというのが大きな主張。元々は安藤さんが2000年には遺伝の重要性を指摘する新書を出していたんだけど、2010年代になって橘氏の著者が売れて話題になった。
運は遺伝するというのは、例えば遭難したとして運も悪いけど遭難しやすい環境に身を置く選択をしたのは遺伝だよねという。
ただ性格とかはポリジェニックなので特定の遺伝子がどうこうというわけではない。平均への回帰が効くので両親が能力高くとも子はそうでもないことや鳶が鷹を産むもあり得る。少子化で子ども1人を当りにしないとという強迫観念があるが、子が多かった時代は当たり外れがあることが当たり前だった。
先進国で知能の遺伝率が上がっているのは環境要因が平均化されているから。乳幼児期の母子関係などは成長してから尾を引かない。幼少期の英才教育もあまり意味がないし、親ガチャの影響もそれほど大きくない。
行動遺伝学で共有環境とは家族を類似させる要因の効果の総体、類似させないのを非共有環境と呼ぶ。家庭間で異なる環境が共有環境、家庭内で異なる環境が非共有環境とも。
GRITすらも遺伝の影響を受け、頑張れない人もいる。置かれた場所で咲くのではなく、咲ける場所に動くことが重要。東アジアは米作で大量の人口を養えたので自己家畜化が進んで、それが日本人という説。
橘氏は冷徹な感じがしつつも行間に人の良さが出ていて、安藤氏はさらに楽観性があるので、それを言っちゃあおしまいよにはならず、その現実を踏まえてどうするのがいいのかヒントを読者に提供しようとする姿勢が見えて世の中捨てたもんじゃないと思った。
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とてもわかりやすく、最新の、遺伝行動学がよめます。
すごいことが進んでいる、明らかになっている、んだなというのが正直な感想。
子育てには必須の知識ですね。
早めに遺伝子検査していて正解。
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人生の行動の3割は遺伝
ふうんと思って読んでみたが、なかなか未来の示唆に富んだ名著だった。生物学の内容だから、生物学がわからない人にはむつかしいかもしれない。
双子研究による統計で導き出される遺伝率で、行動の何割かは遺伝だと説明できる。知能すら遺伝する。境界知能もさう。
経済環境が自由であれば、自身の遺伝的形質も発現しやすい。反対に、貧しくて制限された抑圧的な環境だと、いかに才覚のある遺伝といへども発揮できない。
そして、非共有環境すらも、みづからの遺伝的素質によって選び取る。すなはち、「延長された表現型」である。
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久しぶりの満点レビュー。
橘さんの本は、いつもインフォーマティブで良いのだが、時に身も蓋もないことがある。この本では、もう少し常識人よりの安藤先生との対談の形をとっているので、いつもながらの的確な情報提供をしつつも、多少常識よりの結論に落ち着くことが多いのがよい。
最先端の研究者との対談でも、ぜんぜん位負けしないところは、さすが橘さんと思わせるが、それに対して実に誠実に議論を進めていく安藤先生も、尊敬に値する。
帯の煽り文句は、煽りすぎ。売れるかもしれないが、品位を落としていると思う。
タイトルの「運は遺伝する」というフレーズは、この本の中心的な話題である「知性が遺伝する」というのとはズレているので、本の中身を的確に表しているわけではないが、運と遺伝の関係についての発言もちょっとは(3ページくらい)あったので、嘘とは言えない。
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正に夢の対談。
そしてお二人の造詣の深さに感銘を受ける。
敢えて断定的に話そうとする橘さん。
「それでも解釈の余地があるよ」と余白を提示してくださる安藤先生。
お二人のキャラクターのバランスが見事な一冊だった。
Posted by ブクログ
社会が豊かになるほど、貧しい家庭よりも豊かな家庭ほど遺伝率が上がる、知能の遺伝率は年齢と共に上がるが、それは20歳位までで、その後の遺伝率の上昇はフラットになる、しかし遺伝子が人生を変えるように、環境も遺伝子の発現の仕方を変える、パーソナリティと知能の関係、知能と政治イデオロギー、知能と障害や精神病との関係など興味深い話満載だった。衝撃的な内容もあったが、結局、自分のできること、得意なことを見つけて、それを追求していくことが一番、というごく普通の結論に至ったことが面白い。圧倒的な才能も圧倒的な努力も答えになっておらず、2割の努力で8割のライバルに勝てることを目標にするのが良いというのは少し救いになった。マクロでみると、社会は遺伝的に危険とされる人達、遺伝的に恵まれない人達とどう付き合うか、どう救済するか、それらを管理することでディストピアにならないのか、答えが見つからない問題も多い。ガタカという映画を観た時は現実性のない話だと思ったが、新しい優性思想をかがげるかもしれない現実がSFにどんどん近づいてきて怖い。
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黒色人種は遺伝の影響で持って生まれたバネが違うから、短距離走で勝てないのは当然、などと普段耳にしていましたが、なるほど確かに身体能力について遺伝の影響が話題に上がることはあっても、知能については遺伝の影響だと話題に上がることはあまりありません。
「努力すれば東大に行ける」などと言いますが、「努力できるかどうか」も含めて遺伝で決まっていると言われると、最初から決まっているのかもしれない。
生物学を専攻していても、少し内容は難解でしたが、結局ほとんどが遺伝で決まってしまうという内容で、なぜかそれを声を大にして言うことはタブー視されている。でも、だからこそ、遺伝の影響は無視しちゃいけない、念頭に置いておかなければいけない、と思いました。
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行動遺伝学の専門家の対談形式で話が進んでおり、かみ砕いて説明しているにしても頻出する専門用語と科学的なロジックを理解しながら読み進めるのに、かなりの労力を要する本であった。
知能やパーソナリティのかなりの部分は遺伝によって決するということや、遺伝子解析から個人の将来をある程度予測できるだろうという衝撃的な見解を、エビデンスを示して説明している。キリスト教が地動説を感情的に否定したように、行動遺伝学を感情論だけで否定や批判することの社会損失についても、合理的な説明がなされている。
結局は、人間の自由意志も遺伝の支配から脱却できないといわれると寂しくも感じるが、人間である以上その事実も含めて考えを止めないことが必要ではないのかと思えた。
Posted by ブクログ
内容は学びが多く面白い反面、「遺伝だからな」と努力をあきらめるようなことが起こってしまうような気がして複雑。
また、年齢の上昇によって遺伝割合が上がるため、英才教育しても思春期位には遺伝的要素影響が出てくるので、親の努力が報われないのでちゃんと理解しておくべき。「あんなに努力したのに裏切られた」と感じる親がいると思うので、違いますよって言いたい。
環境が遺伝子の発現のしかたを変えることがあるのも期待したい部分。
Posted by ブクログ
橘玲さん著の本は殆ど読んだ事がある位、橘玲さんの本が好きなのですが、今回は安藤寿康さんという慶應義塾大学の名誉教授の方と「遺伝」についてタブー無しで切り込んでいる本です。正直な感想は、「難しかった」です。又、従来の橘玲さんの本と比べるとテンポが良くないかな~。全ては私が「遺伝」に関する知見があまりないからなんですが・・・・
「遺伝」の事に話を戻すと、個人的な感想としては、「親からの遺伝は凄く影響しているし、子供にも影響するだろうな~」って事です。難しい本ですが頑張って読んでみて下さい♪
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遺伝子解析の行末(ヒトとしてのタブーに入り込む)
遺伝子学の世界は、遺伝子検査によってヒトの知能、病気や性格など人生でのイベントが見えてくる、という時代になった。「環境にもよる」という説に対しても遺伝子学は人間のタブーの世界「言ってはいけない」域に入りつつある。それはゲノムの編集により病気や性格などを変更することも可能になり、身体的、精神的にも人的操作で変更できる世の中になる、可能性もある、ということだ。 また、遺伝子学の研究にはさらに何歳ごろに死ぬのかなど生まれながらにある遺伝子で病原の発生時期なども解析できる、という未知なる世界へ踏み込んでいると言う。本書は専門用語も多く理解し難い部分も多いが、今後この「遺伝子学」は知らざるを得ない世界になって来たと思う。
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頑張り次第で人生は変えられる、という残酷で無責任な幻想をぶち壊してくれると感じました。
うまく行っていない人、子育てが自分の思うように行かないなと思っている人に一回読んでもらいたい一冊かなと。
もしかしたら救われるかもしれないです。
ただ、難しい言葉や事例が出てきてすんなり頭に入らない箇所があり、読むのが億劫になるところもありました。
一回読んどくと良いと思います。
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知性/能力/性格といった個人の特性。
それらは遺伝の影響を大きく受けており、また歳を重ねるたびにその割合は上昇する。
この事実を直視せず、育児や教育あるいは政治や社会の方針を展開しても、意味は無い。
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運についての話だと思ったら、遺伝の話だった。確かに、遺伝的な話で解決できるところはありと思いますが、実態がわかっていないのも事実。今後の研究に期待する。
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知性と豊富な表現力を備えた方々の対談というのは、本当に面白い。
橘さんが自説や過去の著作で披露してきた知見を縦横無尽に展開するのに対し、安藤さんが防戦的に対応している様子が目に浮かんだのですが、あとがきを読むと、それが安藤さんのスタイルだと理解しました。
安藤さんが説く行動遺伝学の理屈や概念は、私には理解が難しい点もあるのですが、読者の立場から橘さんが確認、言い換えをしてくれるので、助かりました。今後、安藤さんの著作にも挑戦したいと思います。
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流石の橘玲さん。エビデンスベースで良質な物語を紡ぐチカラは圧倒的。安藤寿康さんも凄いんだけど、領域の広さと深さ、言葉の選び方が神がかっていて比較にならない。
人工的なゲノム編集と自然淘汰で環境適応遺伝子が残ってきた事実とは、構造上は同じでも時間軸が圧倒的違う。100万年単位のことが、数年、若しくは数日で可能になる。この事実に二人は気付いていて言及してないのか、気付いていないのか。気付いてないわけないから、言及しても落とし所がないって思ったんだろうな。
ユヴァル・ノア・ハラルが人類は神を目指すって言ったのけど、遺伝子はいつまでもブラインドウォッチメーカーでいた方が幸せだと思いました。
Posted by ブクログ
「言ってはいけない」の橘氏と、行動遺伝学の泰斗である安藤氏による対談形式で、最新の行動遺伝学の研究からから導き出さるれている事実と、その事実を前提に教育のあり方等様々なテーマが議論されるている。
遺伝の影響を受けていない表現型や知能、様々な能力、パーソナリティはないという不都合な事実を正しく認識し、その事実を前提に世の中で起こっている事象を理解しないと間違いを起こしてしまうし、皆が生きやすい社会は実現できない。遺伝的な適正を見つけることが幸せにつながることを教えてくれる1冊。
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いつもの橘節だけではなく対談なので、他の意見も聞けてなお参考になった。印象に残った文章として、安藤さんが言う「確かに行動遺伝学の研究で知能なら60%位非認知能力でも30から40%の遺伝率があることがわかっていますが、ここで測っているのは、あくまでも一般的な知能であり一般的な非認知能力に過ぎません。わかっていない残りの能力に、その人にとっては非常に大事なことがある」と言うが、くだりが参考になった。
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タイトルの「運は遺伝する」という表現は、あらゆる行動や傾向に遺伝子が影響を及ぼす、という意味で捉えると分かりやすい。
遺伝を過小評価すると、環境ばかりに目が向き、教育現場や本人・教師・保護者が過度に疲弊する。
早期教育は親の影響を受けやすいが、成長につれて遺伝的特徴が強まり、能力の方向性が固まる。意図的な環境操作で結果を変えようとする行為は、不確実性が高く、実質的にはギャンブルに近い。
知能と性格(BIG5:開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症傾向)には一定の関連があり、とくに知能と開放性には0.3〜0.4程度の相関がある。
行動遺伝学が示す成功戦略は、努力万能論でも才能決定論でもなく、遺伝×環境の最適化という視点。自分の遺伝的傾向に合う場所と行動の選択がベスト(できる?)。
偽悪芸人・橘玲× 行動遺伝学者・安藤寿廉の対談。前回よりも解像度高く読めた(気がする)。再読。
Posted by ブクログ
こちらも、読書家の先輩からのご推薦。「高学歴発達障害」と合わせて読むと、非常に理解が深まった。
1.運すら遺伝している。
環境を選ぶのも正確に起因する。例えば、リスクを取りがちな人は、交通事故に合う可能性が高くなるなど。だから、このように直接的に遺伝子に刻まれていないことも遺伝子が環境を選ぶということが起こり得る。
ビッグファイブ;性格を記述するスタンダードな方法
外向性(社会性)、神経症傾向(慎重性・繊細性)、協調性、堅実性(勤勉性)、経験への開放性(開放性。文化性)、
遺伝子と性格の関連性の例
脳内のセロトニン輸送体の多型で、脳内のセロトニン濃度が変わる。セロトニン濃度が高いと陽気(アフリカなどで多い)に、低いと神経質になる(東アジアやヨーロッパに多い)。
ドーパミンの遺伝子も、新奇性を好むような性格になり。冒険的になるか、保守的か。
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行動というサイコロの試行。
統計の本ってことで、いいかな。
設計図(ブループリント)とは、誕生時に各人に与えられた地図のようなもの。最初の基本であり、唯一であり、自身により書き直すことも、環境からの影響によったりして修正も少々なら可能か?という代物。
そこから如何に自分自身の運を、最適な間引きや篩にかけるか、サイコロを振る、振り続けられるか、なのか。それすらも遺伝ということになるんだろうが。
性格は株式のチャートの移行変位のようにも感じるな。かなり気まぐれ感がありつつも、統合的。
人生ってバクチなのね。いい鉄火場を探すのも大事。
安藤さんは意外と、古典教養好きか。