野口悠紀雄のレビュー一覧
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日本では終戦を期に全てが刷新され、戦後に再構築された経済体制によって高度経済成長が成し遂げられたと考えられてきた。野口氏はこれを否定し、日本の経済体制は1940年頃に総力戦に向けて構築されたものが、かなりの程度戦後も継続して生き残っていると主張する。総力戦に最適化された体制で有るが故に、大量生産時代には効果的にこの体制は機能した。高度成長を成し遂げ、石油ショックからもいち早く立ち直り、世界経済を席巻するほどの発展につながった。
しかしながら、グローバル化、IT化が進み、異なる経済環境となった今、「1940年体制」は一刻も早く解体、刷新されねばならない障害である。さもなければ、高齢化が進み没落しつつある日本の衰退を止めることはできない。本書からは野口氏の強い危機意識と焦燥感、あるいは絶望感すら滲み出しているように感じられる。
経済体制、革新官僚の作った官僚機構が生き残ってきた経緯に対する野口氏の分析については、異なる意見もあるようで、本書は典拠や異論についても随時言及しながら書かれている。(『戦後経済史』は出展や異論への言及が省かれていて、本書と同様の主張が一般の人にもより読みやすく表現されている)。
細かな議論についての是非は素人には判断が難しいが、
大蔵省の中の人であった野口氏ゆえに説得力が感じられた。
カレル・ヴァン・ウォルフレンが出展として所々出てくる。明治期に作られた官僚体制が、戦後も生き残り政治から超然として動くあり様は日本に特有の「政治的中枢の欠如」である。日本は私的領域と公的領域の境界がない「高度に政治化された社会」である。といったウォルフレンの指摘は日本の抱える問題の根幹を鋭く浮彫にしていると1990年頃には思えたが、その後日本の政治体制はゆるやかに変化が起こり、2017年の今となっては野口氏の指摘する「1940年体制」のほうがより深刻で重要な問題のように思われる。
これから日本はこの「1940年体制」を打ち壊して先に進めるのであろうか?
遅々として進まない雇用規制の緩和や年金制度の改革。企業に賃金を上げるようプレッシャーをかける安倍政権。こうした動きを見ると、絶望的な気持ちにならざるを得ない。 -
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ネタバレ2016年2冊目は、野口悠紀雄先生の『「超」情報革命が日本経済再生の切り札になる』。
野口さんの本を読んだのは、初めてだったのですが、めちゃくちゃ参考になることだらけでした。
この本はざっくり2部構成になっていて、前半は新しいテクノロジーの話で、後半は日本経済・世界経済の構造の話。
赤ペン引きまくったのですが、あえて絞ると、この本のポイントは、下記5つかなと思います。
①AIの進化によって、発明や創造の分野にも、コンピューターが入ってくる。
②重要なのはビットコインそのものではなく、ブロックチェーン技術であり、それを用いてスマートコントラクトを自動的に遂行していくことである
③日本経済は急激に「中国化」しつつある。なぜなら、日本と中国の産業構造が基本的に同一だから。よって、このまま産業構造が中国と同じなら、賃金はいずれ中国並みに低下する。
④アメリカで製造業が復活し、国をリードする主要産業にはなることは考えられない。アメリカ経済の成長の中心は、金融業や専門的サービス業などの高度サービス産業である。
⑤TPPは自由貿易協定ではなく、経済ブロック化協定である。不参加国の中国は排除され、そうなると中国に生産拠点を多く抱える日本の製造業に、マイナスの影響を及ぼす。
野口さんは、常に物事を「構造」という視点で見ているので、起きている現象の本質を捉えることができるのだと感じました。書いてある内容も参考になりますが、ビジネスパーソンにとっては、この「視点」こそが最も参考になる点かもしれないです。
テクノロジーの変化と、日本経済の構造変化、両方を、バランス良くインプットできるオススメの一冊です。 -
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会社でブロックチェーンについて調査しておいてほしいという依頼を受けて、手に取った本。
社会的な影響についての切り口を主に期待していたが、ブロックチェーンの仕組みについても記載があり、暗号化や電子署名と、思っていた以上に情報が多く、勉強になりました。
ブロックチェーンのテクノロジーそのものについては、Webで検索をするといろいろと出てくるのですが、一冊にまとまったものとして有益でした。
仮想通貨革命という題名ですが、主になっているのは、なぜビットコインなのか?という点とその基盤テクノロジーのブロックチェーンの解説、世界中の金融機関がどう見ているか、社会的影響についてです。
ビットコインについては、「通貨史上の大きな革命であり、全く新しい形の社会を形成する可能性を示した」とまで言っていて、ブロックチェーンという分散的に取引記録を保持することができるテクノロジーを使用し、偽造貨幣や二重取引を排除した正しい取引の記録ができ、改ざんも事実上できない。そして、このブロックチェーンの維持は、ボランティア活動ではなく、報酬を受け取れる仕組みがある点がビットコインの特徴となっていると。
当初、仮想通貨を作ったとして、その運営は主体者や経過時間とともに脆弱になるだろうし、資金としての裏付けとなるものもない(仮想だけに)だろうと思っていたので、主体となる運営者がいないこと、ブロックチェーンの維持によって報酬が得られる仕組み、裏付けとなるアルゴリズムがわかったときは、なるほどなと。
社会的な影響としては、安全性と送金コストの安さが注目されており、現状では現金の送金コストが2~3%となるケースや、固定額で高額になるケースへの適用で、これがほぼタダになる点、デジタルコンテンツの販売での直接収入、等。
eコマースについては、2012年で個人家計消費300兆円のうち、3%程度しかない理由の一つは、カード決済にかかる店舗側コストが原因と分析しているが、この領域も仮想通貨によって、広がるとみている。ビットコインに限定すると、決済までにブロックチェーンの制約から決済まで約10分待つことが課題。
国際送金では、貿易決済通貨としての利用をあげ、信用状決済の手数料、銀行送金の送金手数料、為替スプレッドなどがほぼゼロになるが、現実通貨との変動比率などに課題はある。ここの市場は、全世界貿易量が約1500兆円あり、銀行手数料が4%と考えると60兆円、この一割がビットコインに移行されると銀行の収入は6兆円失われることになる等のインパクトがあると。
ブロックチェーンについては、取引の履歴をまとめてブロックを生成する仕組みとそれらがP2Pで行われるうえで、課題となるビザンチン将軍問題についての解説がある。
当初、ブロックを生成する仕組みがよくわからず、ビザンチン将軍問題?という感じであったが、要は、P2Pに参加している全ノードで同じ処理している(ブロックを作っている)はずの状況で、誰を信じていいのかの確証が得られるようにするため(不正を防ぐための仕組みとして)、ある特定のノードだけがブロックを作れないようにするために、キーとなるナンスを特定するための膨大な計算(ナンス自体はランダムに生成するところから宝くじに似てる)を全部のノードに課すことがこの仕組みの特徴ということがわかった。ナンスがわかったら他のノードに同報して、検算をしてもらい、正しければブロックを確定。
ブロック間はハッシュ値でつないでいくため、改ざんするとブロックがチェーンにならない。ブロック生成の際の計算時にナンスはただ一つとは限らないため複数のナンス値が出た場合ブロックが同時に生成され枝分かれするが、その枝は次やその次のブロックが生成され、長い枝が採用され、短い枝は捨てられる等、理解が進んだ。
ただ、仕組みを理解してみると、本書の中でのビザンチン将軍問題の解決策としてこの仕組み社会問題まで広げて展開するのは大胆な気もする。
ビットコインに続くものとしては、リップルが紹介されているが、これは、ビットコインのP2P特有の不特定多数参加、プルーフオブワークが要らないという点で、既存金融機関になじみそう。コインの代わりにIOU(借用書)を使いながらも、手数料の仕組みとしてリップルズという物も用意されているようだ。
とにかく、本書は、ブロックチェーンが流行りだした今、何度も読み返して、理解が進むとさらに理解が深まる情報が提供されている。2016年も何度か読み返すことになると思う。 -
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日本の問題点と改善策を考える上で参考になる本
ふむふむ箇所は以下(本書270ページ)
・国内の人口構造の変化によって生じる新しい需要に対応することが重要。若年層人口が減少したため住宅や自動車の従来型の需要が減少したが、高齢者の人口は絶対値で見ても増加しているので、医療は介護では供給が需要に追い付いていない。医療や介護は基本的に公的保険のなかで対応しようとしているためだ。
高齢者は賃金所得などのフローの所得を持たない場合が多い。他方で資産は保有している。ところが資産が不動産の形態をとっている場合、これを流動化して消費することが難しい。そのため本来は増加すべき高齢者の消費が顕在化しない。
そのためには、資産を担保として消費資金を融資する仕組みを作ればいい。現在でもリバースモーゲージという形で仕組みはあるが広範囲な利用はされていない。
これを利用しやすい形にする金融イノベーションが進めば高齢者の消費需要が顕在化するだろう。
なるほどと思ったが、こんなビジネスチャンスがあるのになぜ広がらないのだろうか、この本に書かれていない問題点があるのではないだろうかと考えてしまった。 -
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ビットコインはブロックチェーンと呼ばれる取引の記録で維持される、管理主体のない通貨だ。ビットコインは価値保存手段ではなく送金手段として捉えるべきであり、政治活動の資金集めに使われたり、或いは銀行の国際送金業務を肩代わりするとなればビットコインの価値は大きなものになる。ケニアの仮想通貨エムペサで今までできなかった経済活動も産まれ、農村の収入は上昇した。通貨の規制緩和は重要な成長戦略である。
税務署が脱税を摘発するのが困難になるので税制にも大きな影響を与え得るし、今の恣意的な金融政策をとることができる中央銀行という仕組みも超える。国債貨幣化が困難になる。DACによって経営者すら代替できる可能性がある。
と、仮想通貨が社会を大きく変革し得る可能性を持ってるんですね。最後に参考になる情報源も紹介されており、勉強になりました。 -
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近代世界経済の歴史はこの本で網羅できてしまうバリューな一冊です
『何があって』『どこ(国・地域)が』『どうなって』『現在こうなった』が簡潔にまとめられているのでわかりやすい
変わった世界について
各章・各項で細かく解説されていてすべてが深く確信をついた考察ですべての章で数冊分の良書を読みきった充実度があります
変わらない日本について
なぜ米国が発端となったリーマンショックで最大の下落率だったのが日本となったのか
その構造的な問題と先送りしたまま変われない日本について言及されています
知識として世界の経済がどのような情勢であるのかはニュースや経済番組でも伝えられているがそこに至っている経緯はあまり知ることがありません
(例)
なぜ貧しかったアイルランドは金融のハブセンターとして大復活できたのか
中国の躍進や日本の衰退など未来への予測が必ずしも起こるのかどうかはわかりませんが現在の世界経済について深く知りたいのならば読んで損のない内容です -
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ものづくりに関わっているものにとって、気になっていた本です。
新興国の工場に行くと、日本式の運営方法が取り入れられている。すなわち、カイゼンや5S【整理、整頓、清潔、清掃、躾】だ。どんなに小さな工場に行っても、5Sは大きく表示されていて、日本式工場運営がグローバルスタンダードになっているのが垣間見える。
だが、これから日本の工場がどんどん海外に出て行ってしまうと、日本式工場運営の伝承が失われてしまうのではないかと思う。もしかすると、日本式工場運営を覚えた、東南アジアが次の担い手になるかもしれない。
著者はアップル、イコール水平分業の頂点として、評価しているが、日本はアップルを生む土壌はないのではないか。
しかし、日本の製造業は水平分業には向いていない。何故なら、日本の工場は現場が強すぎるからだ。
日本の製造業を今後どのような方向に進めばよいか、考えさせられるいい機会となった。 -
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ネタバレ*70年代
ヒト・モノは変わらないがカネ・情報は変わった
71年、ニクソンショック→ブレトン・ウッズ体制崩壊
∵敗戦国の成長
74年、オイルショック
しかし、原油と金の同時上昇により、原因はドル価値下落にある
西ドイツと日本が早期に対応できたのは通貨高
70年代の西ドイツと日本の躍進
1.戦後復興に伴い重工業を一から組成できた
2.人口成長率
3.社会制度(労使関係・大型直接金融)
また、コンピュータが一般化したことで、
全体主義に矛盾が生じる
*80年代
サッチャーとレーガンの新自由主義=民営化・規制緩和
背景的な思想:
市場を代替する資源配分メカニズムは存在しない
(中央集権型社会主義は経済計算が不可能)
※不完全な例:公共財、外部経済、情報非対称性、バブルなど
(老人が居座ったこともあり)ソ連生産性低下
(抵抗されないと思われ)東諸国独立
89年、ベルリンの壁崩壊。91年、ソ連崩壊。
市場経済は分権的なので、文化保全もわりとうまくいく
*90年代(IT金融)
80年代の変化が90年代に影響。
とりわけ、ITと金融革命の影響が著しい。
・IT革命
通信自由化・一般化
・金融革命
1)住宅ローン
パススルー→モーゲッジ(償還順位順)→94年、利上げにより破綻
しかし、ボラティリティの抑制という点で革命的
とはいえ、市場リスクに対して対抗不能
この時、モーゲッジのうち最上位はスーパーシニア、
複数の証券をまとめたシンセティックCDO
2)オプション
80年代、ブラック・ショールズモデルの完成
ITベンチャー(ストック・オプション)や、商社にとってプラス
3)CDS
損失の補填。資金の提供とリスクの負担の分離が可能に
これにより自己資本の積立が不要に
価格変動は不可避であることもあり、非常にこれは重要
イギリス:マーチャント・バンク
アメリカ:投資銀行
両者とも証券業務(取次を行うだけの日系金融とは異なる)
87年のサッチャー金融ビックバンにより、
ロスチャイルド以外のマーチャント・バンクは消える
(∵人の取次(斡旋)は得意だったが、新しいファイナンス理論の活用が苦手だった
しかし、日本の金融は、大企業の資金需要の停滞により、変化
(直接金融の台頭、高度経済成長期の終了)
運用難が生じ、不動産バブルとアメリカのバブルを引き起こす
→後者、イールドカーブのフラット化
にも関わらず、住宅投資は進まず、直接金融化(証券業務?)も進まず、
鎖国化し続けている
*90年代(アメリカイギリス)
アメリカ:脱工業化→高度なサービス(金融IT)の台頭
注:対人サービスは生産性が低いが、これは技術を活用した高いサービス
IT賃金は新興国水準に収束したが、金融は高いまま
イギリスも含め、脱工業化する
21世紀型グローバリゼーション
・資本(直接投資の受け入れ)
・労働力(移民の受け入れ)
直接投資+IT+教育=アイルランド
世界的金融緩和もプラスに働いたが、
金融業の収益の差は、リスクの差でもあることに注意
日本は、脱工業化+21世紀型グローバリゼーションに失敗した
*00年代
日本は、外需と円安で復活した(本質的構造改革ではない)
住宅バブル発生@アメリカ(バブルだと意識されていた)
サブプライムローン(返済条件ゆるい→急激に厳しくなる)の台頭
キャッシュアウト・リファイナンス
住宅を売って新しい住宅を買っていた(住宅価格は上がっていた)
金利引き上げでも止まらず
JPモルガン・チェースはCDOのリスク回避を行ったが、
残りの金融機関は無視した(リスク管理を軽視した)
結果、08年バブル崩壊+リーマン・ショック
06年夏頃からモーゲッジ価格下落、債務不履行、
これを証券化したMBSの価値下落→証券会社・投資銀行破綻
日本は、円キャリー取引(円をドル化して証券化)終了で円高
外需落ち込みにより不況
一般に、製造業中心国は平均値より低く、金融危機の影響も強く受けた
金融部門が成長できた理由は、
1.中国工業化→世界の工場
2.金融部門の大きな雇用吸収力
3.IT×ファイナンス理論発展で金融サービスの進展
4.資本関係の国際化
しかし、これは世界的なマクロ経済の歪みで支えられていた
(中国・日本の黒字)
国内総生産+輸入=国内支出+輸出より、
支出減っても、輸入減るなら(生産には)問題ない
いま、アメリカではITとバイオテクノロジーが注目されている
水平分業が進む→望ましい国際分業へ
(巨大市場が存在するとはいえ、一人あたりGDP低く、同じものを持って行っても成功しないことに注意)
*これからの日本
日本停滞の原因
1.冷戦終結と中国工業化
2.金融とITの革新(に対応できていないこと)
3.21世紀型グローバリゼーション(に対応できていないこと)
(これは、年功序列的組織構造下で、
過去の成功者が決定権を握っている→現状維持至上主義)
これに対処すべく、
1.古いものの生き残りに支援を与えないこと
(変化へのインセンティブを消滅させる)
2.21世紀型グローバリゼーションの実現
(変革を引き起こすには、刺激、特に外からのものが必要)
(日本のいい所を見直す ではダメ)
3.専門分野での教育→付加価値の高い物の生産
(例えば、社会人の勉強を支援しないし、MBA保有者への賃金も低い)
勤勉さと外国に学ぶ率直さを、もう一度呼び戻すべき