小泉武夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
またしてもちくまQブックスを読む。
先ほどレビューしたジュニスタと、競合するレーベル。
発酵学の大家、小泉武夫(どうしても音楽学者の文夫さんと混乱してしまう)先生に、食品ロス問題に取り組むジャーナリストの井出留美さんがインタビューする形式の本。
日本の食料自給率の現状、農業政策の問題点など、最初からつらい現実が突き付けられる。
そこへ小泉さんが、各地の農業リーダーの取り組みを紹介していく。
例えば熊本の中嶋農法。
輸入肥料に頼るのではなく、堆肥づくりを重視する。
びっくりするのは、いい土で育った野菜の自然治癒力。
少しくらい青虫に食べられても、まったく問題ないという。
にわかには信じがたいが…。
今、ウクライナの戦争で肥料が高騰していることを考えると、こういう方向に進むべきではなかったか、と思えてくる。
それから、ドゴールの農業政策については、本書で初めて知った。
まず各県を独立させる。
そして県内での各食材の消費量を調査して、県内農家に必要な量を作らせるよう指示したという。
食料の安全保障を考えたようだが、ここだけ聞くと社会主義国の政策のように見える。
その結果、先進国でありながら、食料自給率が100パーセントを超える農業国になった。
食糧問題だけでなく、出生率とか、日本と比べると、いろいろな面で対照的な国だなあ、と改めて思う。
政治の問題だけでなく、消費者の姿勢にも問題があるという。
本物の食料を作るには、それなりのコストがかかる。
消費者は生産者を支えるつもりで、質の良い食べ物を作っている農家、食品メーカーを支えないといけないというのだ。
理屈の上では、たしかにその通りだと思う。
だが、ちょっと違うことも考えてしまったりする。
大量生産の食品を「ダメな食品」とも言いたくない。
生産者の労力に見合うフェアな価格である必要はわかる。
が、買えない人が出てきたとすればどうだろうか?
では、安い食品から高い食品までいろいろ選択肢がある、「食の多様性」がある状態であればよいのか?
よい食べ物を、全ての人に、というのは、やはり難しいのだろうか…。
いずれにせよ、身近な問題でもある食料のことを、改めて考えさせられるよい本だと思う。 -
Posted by ブクログ
<目次>
第1部 春の味覚
第1章 海が魚を背負ってくる
第2章 大地に萌える味
第3章 春の料理は心をくすぐる
第2部 夏の味覚
第4章 銀鱗飛び交う北の海
第5章 太陽と土と水の申し子たち
第6章 夏の料理は心を躍らす
第3部 秋の味覚
第7章 豊饒の海に銀鱗が躍る
第8章 豊饒なる大地からの贈りもの
第9章 空きの料理は心に残る
第4部 冬の味覚
第10章 凍れる海に魚介が肥える
第11章 越冬野菜と保存食の知恵
第12章 冬の料理は心を温める
第5部 通年の味覚
第13章 おらが道民の味自慢
<内容>
発酵食品のプロで、世界各地の料理を食べ歩き、ゲテモノ食いでも著名な著者の、北海道の食材と料理を紹介した本。「なんで北海道か?」と思うと、北海道の農政部アドバイサーとなり、その後大学定年退職して北海道の漁業卸の研究を担われ、東京と北海道の二股生活をしているからだ。
食のプロらしく、食べ物(料理)の描写はすごい。美味そうな書きっぷりである(ちょっとオーバーな気がするが)。具体的な店も数々登場するので、大丈夫かな?と思ったりもする。いずれ機会があれば、こうした店を覗いてみたいと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ言わずと知れた”発酵の神様”、小泉武夫氏の蘊蓄をこれでもかというぐらい堪能できる。
構成が単調で次第に飽きてくる…というきらいはあるが、例えば鰹節やナタデココも発酵食品だったのか、と無知な私は勉強になったし、日本の出汁では油脂が出ない、等といった、発酵食の話題から派生して展開される見解も非常に興味深く読ませていただいた。
昆虫食の話も、個人的にはドストライクだった。
ヴォリュームは思ったより少なかったが、文庫版で新たに加えられた高野秀行氏との対談も、楽しみにしていたコンテンツ。
あの辺境探検家と発酵食の大家が、共通の話題で盛り上がり意気投合している様に感動すら覚えた。
同時に、小泉氏と同じ土俵で対等に渡り合う、高野氏の各国の発酵食事情にまつわる知識量にも感服した。
また徳山鮓に行きたくなった…。 -
Posted by ブクログ
「醤油・味噌・酢はすごい」ことを書いているのではあるが、つくづく小泉武夫はすごいと思う。専門の学者とは言え、日本の三代発酵調味料たるこの3つについては、その歴史・製法・成分・効能・調理法まで凡そこのコンパクトな新書にギュウギュウに詰め込んで出し惜しみすることがない。
下手にネットサーフィンするよりも、この一書を読めば様々な調べ物は用を足すのではないか?とは言え流石に、発酵調味料が「腸に良い」という視点は、この学者には殆どなかった。医者でないので、 最新の病理学は得意ではないのだろう。あと現代風レシピもない。でも、「発酵調味料のおかげで、日本食はこんなにも美味い」ということは大いに主張している。日本全国、世界の発酵調味料は味わい尽くした御方ではある。
私の関心は腸活に関すること、古代の知識に関することなので、そこに限定して参考になった部分を以下にメモする。
〈醤油〉
・塩の土器製塩法(縄文後期〜)は茨城県霞ヶ浦に初現、以後松島、津軽、やがて弥生時代に児島、そして瀬戸内海全体へ、古墳時代に愛知や天草へ。
・醤油は6世紀初頭中国の豆醤(トウジャン)の上澄液の記録が有り。我が国へは仏教伝来(538)共に伝わったと言われているが、弥生時代に肉魚野菜を塩に漬け込んだ「比之保(ひしお)」があり、その保存液を捨てるはずがない(←私もそう思う)。「醤」に「ひしお」を当てたのは、似ているので、一緒にしてしまったのだろう。大豆も縄文時代からあることが、確かめられている。
・醤油1リットルに納豆5包、昆布、ニンニクを混ぜた「納豆醤油」を、小泉武夫は万能調味料として作ってきたという。粘り気のある調味料。気持ち悪いかもしれないが、私は試してみたい。
〈味噌〉
・養老律令(718)によると、調味料は「醢(肉の塩辛)、醤、鼓、未醤、酢、酒、塩」だったという。このうち、鼓は大徳寺納豆に近いもの、未醤が味噌である可能性が高くなった。味噌という漢字は「日本三代実録(901)」に初めて現れる。
・味噌の保健効果は多い。「大豆アレルギーが起きない」「血中のコレステロールを下げる不飽和脂肪酸が多い」「メラニン色素の合成を防ぐ遊離脂肪酸」「動脈硬化を防ぐレチシン」「大腸癌を防ぐ食物繊維」「ビフィズス菌を増やすオリゴ糖」「抗酸化と食品保存効果のビタミンE」「血圧上昇抑制放射線防御効果」「抗腫瘍性と抗変異原性」
〈酢〉
・酢の歴史は酒の歴史と同じ。ブドウ糖から酒が作られて、酒のエチルアルコールから酢酸菌が作用して酢酸ができる。
・奈良時代では既に酢を作るために最初から醸している。
・万葉集巻16に「醤酢に蒜つきかてて鯛願ふ吾にな見せそ水葱のあつもの」→「野蒜を刻んで加えた醤油と酢で鯛を食いたいと思っていたのに、水葵の煮物とは勘弁してくれよ」とある。←かなりのグルメだ!
・食酢の殺菌作用。o-157の様な薬剤に耐性を持つ細菌でも約150分で死滅。
・減塩効果並びに肉魚野菜からカルシウム、マグネシウム、カリウム、リンなどを溶出する力等々がある。
・熟鮓(なれずし)の知恵。保存性、魚臭の消滅、ビタミンの生成、整腸作用。
・酢の保健効果。コレステロール値の低下。糖尿病の予防効果。高血圧症予防効果。肥満の防止(脂肪面積の減少)。骨粗鬆症の予防。疲労の回復。
・食酢の有効摂取量は1日15-30ミリリットル。
←発酵食品博士の小泉武夫さん。現在77歳。これは4年前の書ではあるが、そろそろ身体をご自愛してもらって、無茶な食べ歩きはせずに、発酵食品で健康長寿ができると証明してもらいたいものだ。