小泉武夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
発酵学といえばこの人、というべき小泉先生。
発酵を戦争という切り口から見た、少し毛色の変わった本。
第一章は戦時下の発酵食品。
続いて第二章では戦時下での酒の製造。
主に太洋戦争期の日本についてだが、紅茶、ワインやウィスキーなどは欧米の状況が説明されている。
発酵とはどういう現象かなども最初の方にきちんと説明はされているのだが、主になってくるのは社会情勢の方だ。
例えば、最初に出てくる納豆について。
「愛国納豆売り」の名で、少年少女が納豆を売り歩き、売上金で慰問袋を作っていたという話や、戦後食料危機対策に納豆を活用すべく、GHQに運動したなどというエピソードが紹介される。
こんなふうに、戦時下で豆や麦、イモ類が統制される中で、軍用品はどのようなものが作られたか、民用品はどんな代替食材で作られたかが紹介されている。
例えば醤油などは、一度絞った粕からタンパク質と炭水化物を希塩酸で分解し、そこに醤油粕麹を加えて作るという手法が生み出されたそうだが…いかにもおいしくなさそうである。
折々、もっと昔の話(例えば戦国時代に武士たちが味噌を戦場の食料にしたこと)も織り込まれる。
大学の名物先生が、持てる知識を縦横に話をしているかのようだ。
チョコレートについてのエピソードも面白い。
アメリカの話が中心で、アメリカ軍では兵士の携行食料としてチョコレートが利用され、それを一手に生産したのがハーシーズ。
あまりおいしくしすぎないように、という軍からの要請があったという。
アメリカ兵が日本でチョコを配ったことについて、当時からアメリカ軍の好意醸成のためじゃないかとか、日本政府がアメリカにチョコレート代を払っていたなどの憶測が流れていたというのも面白い。
実際はどういうものだったのだろう。
第三章は戦争と知られざる発酵のいうタイトル。
五箇山の塩硝づくりや、ニトログリセリン、爆撃機の燃料などの生産、あるいは抗生物質の生産などについて取り上げられ、どのような化学変化が起きてそれらの物質ができるのかが説明されている。
柿渋は太平洋戦争時、風船爆弾生産にも使われたが、兵隊の薬として利用されたりしたらしい。
それ以前から村上水軍が防水剤、接着剤として活用し、そのために彼らの本拠地因島にはもともとなかった柿が栽培されることとなった、などという話も紹介されていて、興味がひかれた。
最終の第四章はウクライナ・ロシアの発酵食品。
太平洋戦争時の日本の発酵食がまずそうなのに対し、ここで紹介される発酵食品や酒類の説明は何ともうまそうだ。
ボルシチに関して、サトウダイコンの高い栄養価、ベタシニアン抗酸化作用や、トッピングするスメタナというサワークリームの話が興味深い。
自分は酒が飲めないので、あまりワインに関心がなかったが、ロシア・旧ソ連でも困難な時期があったと知る。
ではそれが建国から間もない時期かというとそうではなく、ペレストロイカ期、ゴルバチョフが行った反アルコールキャンペーンの時期だったというのは意外だった。
ベルルスコーニとプーチンがウクライナのマサンドラというワイナリーで「国宝級」ワインを試飲した廉でウクライナの検察に検挙された一件、この先どうなるのだろうか。 -
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ネタバレ実在する粗屋というお店のノンフィクションだと思ったまま最後まで読んだら、解説で小説だったことが分かる。人々の負の側面が、別れた奥さん以外ほとんど描かれないのは、ノンフィクションだから実際あったとしても書かないのだろうと思ったが、フィクションなら書けるのではないだろうか。フィクションだとしてもモデルとなるお店があるから書かないのかもしれない。主人公は築地でマグロの解体の名人だったが、それを辞めて粗だけを扱う料理店を始める。素晴らしい出会いに恵まれ、順調に開店してどんどん繁盛してつまずきが一切ない。そのため物語としてのコクが足りない。
民間伝承で粗を使った薬を自作して、店員の体調不良で人体実験をするところが面白い。
僕自身、粗がスーパーで売られていると買って圧力なべで粗汁などを自作する粗愛好家であるため、出てくる料理が食べたくて仕方がない。ただ、自分では最低の手間しか掛けない手抜き料理なので真似しようとは思わない。粗が一番うまいというのは非常に同感だ。その上安い。 -
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タイトルそのままで、醤油、味噌、酢について知れる本。
単なる調味料としてしか思ってなかったが、どうやって作られるのか、歴史的にいつごろからあったのか、体にどういいのか、などいろいろと勉強になることが多かった。
味噌汁などで味噌を日常的に取るようにするとお通じなど体調がよくなるのは自分でも体感していたけど、昔の人々も経験的にそれを知っていて、戦国時代などはタンパク源としても味噌を重用していたと知ってすこし驚いた。現代ではそのすごさが科学的にも解明、裏付けされている。
体に良い、疲れも取れる、ということで、味噌、酢をもっと取るようにしようと思った。 -
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小泉武夫『熊の肉には飴があう』ちくま文庫。
食のエッセイかと思って読み始めたら、まさかの料理小説。ちくま文庫オリジナル。
熊鍋、筍の鉄砲焼き、錆鮎の赤煮、冬泥鰌の筏焼きなど、馴染みの薄い鳥獣や山菜、自らが育てた野菜を使った食べたことのない料理が次々と登場する。こんな店があったら面白いと思うが、ここまで拘るのは難しいだろう。
料理は素材と料理人の感性でほぼ決まる。昔、野菜料理が評判というシェフのレストランで前菜の地野菜のグリルを食べたが、単純な調理方法であるにも関わらず、驚くほど美味かった。その後の料理も野菜中心で、初めて食べたライスコロッケなどは絶品だった。地方の小さなレストランでこんな凄い料理が味わえるとはと感心した。後にこのシェフはテレビ番組の『料理の鉄人』に登場し、あっさり鉄人に勝利したので驚いた。
タイトルの『熊の肉には飴があう』というのは『右官屋権之丞』秘伝の熊肉の臭味消しに生姜ニンニク飴を使うという技術のようだ。
ただひたすら鳥獣、川魚、山菜などを使った野趣あふれる見たことも聞いたこともない料理が紹介され、殆どストーリーらしいものは無い。
飛騨の古川に飛騨匠の末裔が開いた一軒の料理茶屋。藤丸誠一郎という伝説の料理人が腕を奮うその店の名前は『右官屋権之丞』。扱う食材は、鳥獣、川魚、山菜など自然の恵みや、塩鯨など歴史的に用いられてきた素朴な食材のみで、誠一郎の感性と素材を活かし切る技法が想像を絶する一皿を生むのだ。
本体価格800円
★★★★