【感想・ネタバレ】発酵食品と戦争のレビュー

あらすじ

一見、関わりなど無いように思える「発酵」と「戦争」。
しかし太平洋戦争末期からの食糧欠乏期、国民全体が発酵食品にいかに救われたか、
また食糧のみならず爆薬・燃料・薬品をもつくる驚異のパワーを、
古今東西の豊富な事例で紹介。その幅広さには、「発酵」の豊かさと
無駄のない強靭さ、無限の可能性が感じられる。

【目次】
第一章 戦争と発酵食品
納豆/味噌/醤油/食酢/漬物/食パン/鰹節/チーズ/甘酒/チョコレート/紅茶/缶詰/軍隊調理法

第二章 戦時下の酒
日本酒/焼酎/泡盛/ビール/ワイン/ウイスキー/酒保/密造酒

第三章 戦争と知られざる発酵
小便から発酵で爆薬をつくる/発酵で爆薬ニトログリセリンを生産/芋を発酵させて爆撃機の燃料をつくる/傷病兵のための抗生物質の発酵生産/海藻を発酵させて軍需用品の沃素をつくる/戦争と堆肥/戦争と柿渋

第四章ウクライナとロシアの発酵嗜好品
ウクライナとロシアの伝統発酵料理/ウクライナのワイン/ロシアのワイン/ジョージアのワイン

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Posted by ブクログ

発酵学といえばこの人、というべき小泉先生。
発酵を戦争という切り口から見た、少し毛色の変わった本。

第一章は戦時下の発酵食品。
続いて第二章では戦時下での酒の製造。
主に太洋戦争期の日本についてだが、紅茶、ワインやウィスキーなどは欧米の状況が説明されている。

発酵とはどういう現象かなども最初の方にきちんと説明はされているのだが、主になってくるのは社会情勢の方だ。
例えば、最初に出てくる納豆について。
「愛国納豆売り」の名で、少年少女が納豆を売り歩き、売上金で慰問袋を作っていたという話や、戦後食料危機対策に納豆を活用すべく、GHQに運動したなどというエピソードが紹介される。
こんなふうに、戦時下で豆や麦、イモ類が統制される中で、軍用品はどのようなものが作られたか、民用品はどんな代替食材で作られたかが紹介されている。
例えば醤油などは、一度絞った粕からタンパク質と炭水化物を希塩酸で分解し、そこに醤油粕麹を加えて作るという手法が生み出されたそうだが…いかにもおいしくなさそうである。
折々、もっと昔の話(例えば戦国時代に武士たちが味噌を戦場の食料にしたこと)も織り込まれる。
大学の名物先生が、持てる知識を縦横に話をしているかのようだ。

チョコレートについてのエピソードも面白い。
アメリカの話が中心で、アメリカ軍では兵士の携行食料としてチョコレートが利用され、それを一手に生産したのがハーシーズ。
あまりおいしくしすぎないように、という軍からの要請があったという。
アメリカ兵が日本でチョコを配ったことについて、当時からアメリカ軍の好意醸成のためじゃないかとか、日本政府がアメリカにチョコレート代を払っていたなどの憶測が流れていたというのも面白い。
実際はどういうものだったのだろう。

第三章は戦争と知られざる発酵のいうタイトル。
五箇山の塩硝づくりや、ニトログリセリン、爆撃機の燃料などの生産、あるいは抗生物質の生産などについて取り上げられ、どのような化学変化が起きてそれらの物質ができるのかが説明されている。
柿渋は太平洋戦争時、風船爆弾生産にも使われたが、兵隊の薬として利用されたりしたらしい。
それ以前から村上水軍が防水剤、接着剤として活用し、そのために彼らの本拠地因島にはもともとなかった柿が栽培されることとなった、などという話も紹介されていて、興味がひかれた。

最終の第四章はウクライナ・ロシアの発酵食品。
太平洋戦争時の日本の発酵食がまずそうなのに対し、ここで紹介される発酵食品や酒類の説明は何ともうまそうだ。
ボルシチに関して、サトウダイコンの高い栄養価、ベタシニアン抗酸化作用や、トッピングするスメタナというサワークリームの話が興味深い。

自分は酒が飲めないので、あまりワインに関心がなかったが、ロシア・旧ソ連でも困難な時期があったと知る。
ではそれが建国から間もない時期かというとそうではなく、ペレストロイカ期、ゴルバチョフが行った反アルコールキャンペーンの時期だったというのは意外だった。
ベルルスコーニとプーチンがウクライナのマサンドラというワイナリーで「国宝級」ワインを試飲した廉でウクライナの検察に検挙された一件、この先どうなるのだろうか。

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2025年03月26日

Posted by ブクログ

「発酵」といえばこの人である。今回は戦争と関連させ色々と紹介。
味噌、納豆、醤油、酢…どれも生活に欠かせない。

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2024年04月01日

Posted by ブクログ

太平洋戦争くらいの話かな、と思ったら戦国時代の発酵食品なんかも登場し、話題も多岐に渡っていて面白かったです。漫画でよく見る糞尿で硝石を作るのの具体的な方法初めて読んだ気がする。先生の実体験(旅先ですっげえチーズをもらった)が一番面白いのはさすがだなと思いました。

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2023年11月28日

Posted by ブクログ

発酵学の権威。戦争をテーマに発酵食品を振り返る。

戦時下の食糧難の時期であったり戦国時代に人々がどのように発酵食品を活用してきたか。化学、生物学のなかった時代から、発酵食品を見つけてきた先人たちの知恵、納豆、味噌、醤油にはじまり、パン、チーズ、チョコレートなど。

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2023年09月18日

Posted by ブクログ

小泉先生の発酵本。面白くないわけがない。

かの大戦下にあっても、納豆、味噌、醤油、酢、何としても確保しようと。
いろんなことやったのね。

かつ、火薬やら燃料やらも、発酵で手に入れようとしていた。

普通に面白いです。
先生の本の、文章硬い方。

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2023年12月12日

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