緒方剛志のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
一見、ごく青臭い学園青春ジュブナイル・ホラー風の展開でスタートするこの作品だが、そこで軽い評価を下してはいけない。作品にちりばめられた黒魔術的オカルティズムの底知れない悪夢世界が結末には待ち受けている。アクアリウムの底に眠るモノ、それに飲み込まれる主人公。クトゥルー神話譚を彷彿とさせるような現実を一皮剥いたところに出現する異次元恐怖が光る一冊。
それゆえに謎の真相を明瞭にしていないのがこの作品の好悪を分ける事になりそうだが、地下暗黒の異界感覚の実体のない朦朧とした描写の連続には肌に迫るただならぬものを感じさせる。
再刊であるこのスニーカー文庫版は、平成ライトノベル的な作品イメージのフィルタリングこそ施されているものの、本作の出版が文庫版より10年前だということを顧慮すれば、この作品の小説的価値もまた違った評価があるのではなかろうか。 -
Posted by ブクログ
(注意)このレビューはネタバレを含んでいるかもです。ごめんなさい。
********************************************************************************
本書はあちこちに知的なしかけがしてある。英語のアナグラムを説明しているあたりは、本職の英文学教授っぽいし、戦中に弾圧された「白神教」のカリスマ教祖「出門鬼三郎」=デーモン「鬼」三郎=大本教の出口王仁三郎というシャレや蛇神が地の(あるいは地に囚われた)神であるという設定もまた宗教学っぽい。それ以外にも、多佳子と英子の対決場面(というか多佳子の妄想かも知れない場面)での心理描写とかよいとおもた。
何といっても圧巻なのは、最後の数行である。読者は、ずっと主人公ギーの顔の後ろにいて、彼の心の独白までも全て知り尽くしていたはずなのに、最後の数行で、彼が狂気の闇へ落ちようとしているのに気づいて、はっと我に返るのである。いつのまにか感情移入していた対象が異形であることに気づいたときの恐怖、いや自らも異形の身に変化せんとしていたことに気づいたときの恐怖だろうか。ともかく読者自身が狂気に誘い込まれるところだったのだ。
探偵小説だと思い込んで読んでいたので、その意味ではかなり不満も残るのだが、それでもミステリアスな展開はうまい。あまりこういった小説は読まないので、評価基準が低すぎるのかもしれないが、ともかくおもしろかったかな。