太田肇のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
表題の1章をはじめ各章のタイトルは「なぜ鳴り物入りの新人が凡庸な中堅社員に育つのか」「なぜ社内で抜擢されるのは保守的な人材ばかりなのか」「なぜ時給の高い役職者が『誰でもできる仕事』に時間を取られているのか」「なぜコンプライアンス万全なはずの一流企業で不正がおこるのか」「どうすれば日本型組織の悪弊から脱却できるのか」‥
中でも本書のタイトルは核心を突いていると感じさせる良い題名だ。本書はそんな日本型組織の欠点を「低すぎる社員のエンゲージメント」というポイントから批判的に考察する。この「エンゲージメントの国際比較下位の日本」をどう克服できるかがキモになるのだけど、著者は構造的転換の難しさもよく理解しており、「これならできそうでは?」というかみ砕いた提案がなされる。キーワードとしては「多様性」「オープン」「フラット」。特に組織内の「裏の承認」に心を奪われる濃密な人間関係を解きほぐすことに焦点が置かれている。ただパワハラも濃密な人間関係の中で発生する上司から部下への愛情の裏返しとする説等、悪いことはすべて共同体型組織に原因があるとする捉え方は大いに疑問であった。パワハラなんか世界中どこでもあるんじゃないですかねぇ? -
Posted by ブクログ
この本で印象に残ったのは、人は単に恵まれた待遇や労働条件だけで動くわけではなく、自分の力で目標を追い、課題を解決していくプロセスそのものにやりがいを感じるという点。
日本は勤勉な国と言われる一方で、働くことへの意欲や愛着が高いとは限らず、受け身のまま長時間働かされている側面があるという指摘も考えさせられた。背景には、業務分担の曖昧さや評価制度、波風を立てたくない社内風土があるのだと思う。
メンバーシップ型かジョブ型かという単純な二択ではなく、半ば自営業者のようにまとまった仕事を担う「自営型」という考え方。
デジタル技術やAIを活用しながら、一人ひとりの職務範囲を広げ、自分の考えで計画し遂行できる状態をつくることが、満足度や生産性、さらにはイノベーションにもつながるという視点には納得感があった。
一方で、自営型は属人化と隣り合わせでもある。だからこそ、チーム内で互いの業務を理解し、ノウハウを共有できる仕組みが欠かせない。
管理職の役割も「人を管理すること」ではなく、「仕事をうまく管理すること」なのだと捉え直せたのも大きな学びだった。働き方や組織のあり方を考える上で、かなり示唆の多い一冊。 -
Posted by ブクログ
メンバーシップ型、ジョブ型に対する第三の選択肢として自営型を提唱し、日本の社会や文化などにはジョブ型よりも自営型が合うことを、社会や組織の状況、農業や職人のあり方など歴史を参照するなどして説いていくというのが大筋。
私自身自営型で働いており、周囲にもそのような人が多いので自営型のメリットはよくわかるし、これからさらに増えていくのだろうとも思う。ただ自営型が万能という訳ではないように思う。自営型が活躍するために組織や地域が「インフラ化」することと、教育機関の目的を本人が自営型人材として仕事をしていけるような対人能力の養成に置くことなどが解かれていて、まぁそれも必要だろうけど、肝心の各業界や仕事で必要とされる専門性の育成を誰が担うのかについては触れられていない。元からこの点について考えたくて読んだのでちょっと物足りなかったかな。 -
Posted by ブクログ
褒めて伸ばすという言葉や風潮が近年顕著になり、会社では部下の良いところを見つけて「褒めてあげよう」といった教育がリーダー層に対しても良く行われている。私もその様なやり方は良いと思うし、何より褒めるためには部下の仕事ぶりをしっかり見て、尚且つ何ができるか、何処が優れているか常に探す必要があるから、その分更にしっかり見るという増長効果もある。人の良いところを探して、自分もそれに倣ってみたいと思うし、そうした良い部分に気づく事で、更に他人に対する敬意や好意を持つ事にも繋がる。こうしてみると「褒める」事は良い事づくめに思えてくるが、私自身について少し思い出してみると、それは自身のプレッシャーになっていた事もあった。周囲からの期待に対して裏切りたくないという想い、次もその期待に応えなければならないという強烈なプレッシャーとなって押し潰されそうになった記憶。私だけでなく誰もが人生の中でこれまで味わった経験があるのではないだろうか。
昭和の時代は褒められる事は少なかった、これは私の考え感覚かもしれないが、幼い頃は親に叱られてばかりで、毎日毎日勉強しろ、スポーツも音楽も学びごとばかりで日々忙しく遊ぶ暇もなかった。良い成績をとっても特に褒められる事もなく、恰も学習教材を大量に与えているんだから、それが当たり前だろうといった風に思われていたのかもしれない(親はその様な感覚ではなかったと、後年気づいたが、当の本人である私はそう感じていた。何で褒めてくれないの?)。私なりに厳しい親だなと思っていた記憶があり、そんな厳しい親(特に母親)が、たまに褒めてくれたりすると、それが大きなプレッシャーとなっていた事を覚えている。ダメだしばかりで、文句を言われていた方が楽なのに、大学受験前の学内試験で相当の成績を残した時は、お前なら絶対大丈夫と褒められた事、それまでの成績からも間違いなしの様に思われていたというプレッシャーは物凄かった。昔はその様な状況は勉強でも運動でも当たり前にあったし、就職してからも最初の研修で「お前らは皆馬鹿だから覚える以外にない」という当時の研修担当次長の言葉や態度は今でも鮮明に覚えている。そして、今の自分がそうした親や上司のお陰でできている事も理解する。いずれも今となっては尊敬するし、感謝しかないのであるが、そうした態度や言葉は、既に令和の世の中ではアウトだ。簡単にDVやパワハラ扱いされるだろう。だから昭和の時代という訳だ。
話はだいぶ逸れたが、現代人は他人から褒められる事、承認される事に飢えている。本書が扱う承認欲求というものである。マズローの欲求5段階説はよく知られているが、食べ物も水も困る事のない生理的欲求が満たされ、平和憲法の下で安全の欲求も満たされ、失業率も低く会社に就労し社会的欲求もあり、その上の四段階目が人から認められたいという承認欲求である(その上は自己実現の欲求)。他人から認められたい、「良いね」が欲しいという風潮は近年はSNSへの投稿が当たり前となった状況で誰もが持ち始めた欲求だ。本書はそうした欲求が持つ問題点を検証する内容である。前述した褒めることが、本人の成長を促すだけでなく、逆にプレッシャーとなり潰してしまう事、過度の承認欲求で自らの精神が縛られてしまう事など、その弊害や負の効果について様々な事例を挙げて検証していく。主には会社などの共同体内で起こった不正や自殺、離職などの問題である。これを読むと褒めることを習ってきた私にも普段の人との接し方に注意しなければならないふしが沢山ある事に気づく。自分が経験したプレッシャーもそうであるし、過度の期待は本人を潰してしまう事にも繋がりかねない。とは言えある程度の期待がなければ人は成長しないし、やり過ぎは慢心を産むしと、中々バランスをとった褒め方は難しいのであるが、そこにヒントをくれるのが本書である。期待をしつつ本人の能力や成果に見合った具体的な内容について、過度に受け止めない様な事の大きさを抑える工夫。文字にしていても難しいが、ビジネスパーソンなら、やはり周囲の人間とその特性や個性、能力をじっと見つめて観察する以外には無いなと改めて感じさせてくれる一冊である。