【感想・ネタバレ】何もしないほうが得な日本 社会に広がる「消極的利己主義」の構造のレビュー

あらすじ

橘玲氏推薦! 貧しいニッポン、働かないおじさん、無気力な若者、進まない女性活躍……。実態とは裏腹に、「失敗を恐れないチャレンジ」「イノベーション」といった威勢のいいスローガンが虚しく響く。なぜ、ここまでに理想と現実がかけ離れてしまっているのか? 乖離の理由は、多くの日本人が消極的利己主義――すなわち自己利益と保身のために、現状を変えないほうが得だという意識を潜在的に持っているためだ。多くの日本人は、その事実に気づいている。しかし、あえて口にはしなかった日本人の胸裏に隠されたタブーを、本書は大規模アンケート調査により浮き彫りにする。そして、その背景にある「全体主義のパラドックス」についての打開策を提示する。日本の組織が積極的に挑戦する空気を生むために、必要なこととは?

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Posted by ブクログ

 同僚が貸してくれた本。著者は、同志社大学政策学部教授で、組織研究が専門の方。
 企業や学校や町内会などで、率先して動こうとする人が減っている背景には、イジメ問題が起きた学校の校長が「うちの学校にイジメはない」と言い切るような、根拠のない楽観主義と、それに基づいた素朴な全体主義による組織の運営体制がある。全体と個の対立など存在しない、という建前のもとでは、役割を求められることは負担ととらえられ、何もしないほうが得という態度になりやすい。それは一見消極的な態度だが、実際には自らの利益のために他者を攻撃するような激しい態度と、利己的という点では同じことである。しかし、そういう態度を個々人がとるようになってしまったのは、それぞれの人々が悪いのではなく、そのシステムを放置し続けた側にある。みんなが、何もしないほうが得という態度を続ければ、組織は維持できない。ではどうすればいいのか。企業も学校も町内会も職能団体も、自らの権益と影響力を維持するために資格制度や登録制などのハードルを新たに設けて個人を抱えこもうとしているが、それではダメだ。まず、各企業に委ねられてきた、社員全員にある程度の生活を保障する仕組みは、社会保障の本来の担い手である国や自治体が中心となるように社会全体を設計し直す(ベーシックインカムの導入など)。その上で、企業や学校などは、所属している各々の社員や学生が組織内だけでなく、広く世界で活動できるようにその枠をゆるやかにし、また、多様な人材を外部から積極的に受け入れ続けるべきだ、ということを著者は主張する。
 連日残業し続け、連休も滅多にとれず、公休日も職能団体の会議などに時間を取られ続けている日々を延々と送っている身からすると、うんうん、と頷けるところが多く、しかし、そんなふうに今更この社会は変われるのかなあ? どうせ無理でしょ? と醒めた気持ちになってしまうのも正直な読後感でもあり。まあでも、自分の所属するいくつかの組織を少し客観的にみることはできたかな。

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2024年08月13日

Posted by ブクログ

何回か出てきたエピソード

著者が働く大学で、
大学生の少人数クラスに、
留学生や帰国子女が2、3人入っていると、
彼ら彼女らは臆せず自由に発言し続けるので、
他の学生も次々と発言をするようになる。
空気が変わる。

という話が、リアルでいちばん面白く感じた。
そうでない場合、
最初に学生が自分の意見を主張したり、
ウケをねらったた発言をすると、
教室がシラッとした空気になり、
沈黙のクラスができる。
だそうで、こちらが典型的だそうです。

しくみや、一人一人の考え方や態度や能力を変えるのは難しそうだなあと思いますが、
もう少し本気で多様性を受け入れてみることなら、
できるのではないかと思いました。

皮肉的なタイトルでしたが、
思ったより軽く読めました。
未来に期待を持ちたいです。

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2024年05月19日

Posted by ブクログ

企業経営者、政治家、社会学者はチャレンジ・挑戦が必要であり、イノベーションなくして未来なしという。しかし、声高に言われ続けているが我々の社会は皆が新しいことにチャレンジしている社会だろうか?そういう問いに一定の見方を示してくれる本でなかなかよかった。「見せかけの勤勉」、「忠誠の演技」、「働かないおじさん」、「受験勉強以外に意欲を示さない受験生」、「地域活動に後ろ向きな住民」などは日本に蔓延する消極的利己主義が生み出しているという。ただ、個人が問題なのではない。社会の仕組みがそうさせている。それはその通りだと思った。

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2024年04月04日

Posted by ブクログ

表題のインパクトに比較すると内容は知っていた内容が多かったような印象

出る杭にそもそもなりたくないという無気力層が多いとなると日本も危うですね

その一方で徐々に起業する人も増えている。この2つを分けるのは何か?素養?強烈な体験?

出る杭を奨励するインセンティブを電気の節約要請とピーク料金で説明しているが、モチベーションは金銭的損得では動かないことは心理学的に実証済みでは?より精神的な損得としての制度設計が必要と感じた。

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2023年05月17日

Posted by ブクログ

出る杭は打たれる日本社会に順応した人々は、積極的に動かない、かといって全く仕事をしないわけではない。分別を知った人が多すぎるのが問題なのはわかるが、ではどうしたら打開できるのか、という面からは本書の提言は理想論というか現実打破には弱い気がした。

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

内容はライトであまり深い考察には至っていないけど、その分読みやすい。同調圧力をぶっ壊すためには多様性が必要というのには、閉鎖的なクソ田舎で男尊女卑にまみれて生きてきた身からすると納得するが、「出る杭」側はその組織や共同体にもはや期待をもたず外にいくだろうし、出る杭を打つ側は、その必要性を感じないまま静かに滅びていくほうを選びそうなのが今の日本人ではないか。

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2025年07月14日

Posted by ブクログ

共同体の空洞化
消極的利己主義
個と全体の利害対立を認めないという建前
「公」を装う「私」

個々の指摘は鋭いが,現状分析としてはやや一貫性に欠ける。解決策が抽象的もしくは現実性がない。

同調圧力に関する著作もあるようなので読んでみたいとは思う。

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2025年06月09日

Posted by ブクログ

何もしない方が得な状況に陥っていることにはひどく共感。利己的主義、組織の利益よりも自分の利益を重視しながら、表面的には忠誠心のあるように振る舞うのはすごくわかる。
ただ対策のところは一般論で腑に落ちない点が多かった。

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2025年02月13日

Posted by ブクログ

まだ読んでいる途中ですが、惹きつけるタイトルです。確かに実感としても腑に落ちます。あとはこの本のタイトルが、如何にして何もしないで得をするかのノウハウ提供に進むのか、あるいはそんな日本を変えるためにはどうすべきかに進むべき論に進むのか、楽しみです。何もしないで得するとは、
何かをすることが、得をとりそびれるという意味で機会損失になるという倒錯した世界。そのコストを負担しているヒトが何処かにいるのでしょう。結局得すると思って何もしない全員がそのコスト負担してる(する事になる)のかも。

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2024年09月01日

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『静かに退職する若者たち』で紹介されていたため購読。
損得勘定した結果、今はしないほうが良いよねという合理性は分からなくも無いが、将来的に考えたらしたほうが良いという考えが必要だと感じた。
働いていても思うが、言ったもん負けの文化があると、誰も新しいことを言わなくなってしまうので、するほうが得、言ったもん勝ちのような仕組み作りをしていきたいと思った。
起業精神も、年々歳をとるに連れてチャレンジ精神が減ってしまうグラフはショックを感じた。

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2024年07月22日

Posted by ブクログ

 なぜ学校で生徒たちは誰も手を挙げないのか、なぜ失敗を恐れず挑戦する人が少ないのか。やる気のない人が増えたからではなく、日本の構造上の問題と著者は指摘する。解決策としては、面倒がらずに小さな声からでも少しずつ変えていこうと行動することに尽きるのだろうか。ゴールまで遠すぎてモチベーション維持が困難と思ってしまう。私自身、やった方が結果として自分にプラスになると気づいたのはごく最近。それでも周りの空気を読んでからでしか手を挙げられない。染みついたマインドは容易には変えられない。

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2024年06月24日

Posted by ブクログ

いわゆる「フリーライド」の問題を組織面から考察したもので、目の付け所は面白い。が、決定的な視点が一つ欠けている。それは日本社会は「相互監視による暗黙の強制力」がベースになっていることである。個人が組織に溶け込んでいるから嫌なことでも進んでやるのではなく、仲間の目が気になるから嫌々やっているだけである。逆に他人の目が気にならない場面では日本人はモラルも何もなくやりたい放題である。これはここ30年の話ではなく、おそらく江戸の昔から日本人に根付いてきた文化だ。最近その非合理な面が可視化されてきたのは、組織が流動的になって仲間の目が利きにくくなっているからに過ぎない。この視点で見ると、最終章の対策で効果がありそうなのはダイバーシティ確保くらいで、あとは的外れだ。組織設計でできることは限られている。
フリーライド問題解決のポイントはインセンティブの設計だと思う。会社の例では何かにチャレンジして失敗するよりも、何もしないで成功も失敗もしない方が得な制度になっていることが根本原因であり、減点主義の評価制度を何とかしないと解決しない。要は成果の大きさではなく挑戦自体を評価し、挑戦しなければ評価が下がる仕組みにすれば良いだけ。PTAや町内会も同じだ。義務だけあって権利のない役職なんて誰がやりたいものか。金銭報酬でないものを含め適切なインセンティブを設計する以外に解決はない、と思う。

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2023年10月22日

Posted by ブクログ

「消極的利己主義」の構造を平易に文書化していることや、「するほうが得」な仕組み・処方箋(目新しさは皆無だが)を提示しているところは一応認めるが、大事なのはその先で、その実践の施策が全く語られていない。処方箋まででは絵に描いた餅で、それを人々が美味しいと食べさせる施策(実行力)と継続運用・PDCAが不可欠なはず。そこを語らなければ意味がなく、日本の社会政策を研究している学者先生の底の浅さが見える。

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2023年08月14日

Posted by ブクログ

沈みゆく日本の必然が、そのロジックが、実に分かりやすく説明されている。「経営リーダーのための社会システム論」とともに必読だ。

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2023年01月24日

Posted by ブクログ

キャッチーなタイトルに惹かれて読んでみました。「何もしない方が得」という課題はなるほどそのとおりで納得感な一方、「するほうが得」にするために提示された対策案はあまり目新らしいものではありませんでした。

日本社会はもはや詰んでいるのでは、と思わせます。

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2023年01月21日

Posted by ブクログ

「何もしない方が得な日本」の現状分析が第1章から第4章、「するほうが得な仕組み」づくりを提言するのが第5章という構成。

多くの人にとって、何もしない方が得なため動こうとしない人が多いのは感覚的にわかっていると思うので、この本の読者の需要は、「する方が得な仕組み」づくりという、いわば処方箋にあると思う。だから、「するほうが得な仕組み」を提言する第5章の内容について内外の成功事例を多く紹介するか、現状分析を半分、処方箋を半分にするなど構成にしてほしかった。

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2022年12月11日

Posted by ブクログ

自分で言うのもなんだが、子供の頃から損な役回りをついつい受けがちで、タイトル見て、そうだそうだ!とジャケ買いしてしまった。
まあ、書いてあることにタイトル以上の驚きはない。要するに、公務員も会社もPTAも町内会も、日本の至るところでムラ感(一定期間は基本そこから動かない)、空気読め感が強すぎて、頑張って何かしても叩かれるのだ。
著者なりの処方箋に踏み込んでくれているのは有難く、ジョブ型雇用も一つとして、ムラの解体、個への分化と理解した。やることやってんだから、あとは自由にしてていいでしょ?という状態。それは一理ある気がした。

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2022年11月20日

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