小森収のレビュー一覧
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ブラウンのミステリ短編集第三弾。エド・ハンターシリーズから2作品入ってボリュームたっぷりの最高に楽しい一冊!→
シカゴ・ブルース大好きな私はエドたちがでる2作品がイチオシだけど、それ以外ももちろん良作。
「5セントのお月さま」は皮肉が効いていてマル(大衆が求めるのは月ではなく……?)
「球形の食屍鬼」「殺しのプレミアショー」は謎解き部分が好き。
「愛しのラム」は読み進めると感じる違和感の→
正体が分かった瞬間に「ああッ……」ってなる。
「どうしてなんだベニー、いったいどうして」はラストに「うわぁぁぁ」ってなったなぁ。
「死の警告」のなんとなく感じるコミカルさや「最終列車」の余韻など、ブラウンは空気を描くのが上手いんだよなぁ、としみじみ。
最高のコース料理でした。満足! -
Posted by ブクログ
ネタバレ目次
・5セントのお月さま
・へま
・女が男を殺すとき
・消えた役者
・どうしてなんだベニー、いったいどうして
・球形の食屍鬼(グール)
・フルートと短機関銃のための組曲
・死の警告
・愛しのラム
・殺しのプレミアショー
・殺意のジャズソング
・死の10パーセント
・最終列車
『5セントのお月さま』『フルートと短機関銃のための組曲』『死の警告』が初訳。
フレドリック・ブラウンのSF短編全集が出たとき、どうしてSF限定なのだろうと思った。
ミステリの短編もそこそこあるのに。
『最終列車』が収録されたアンソロジーには、これが最後のアンソロジー未収録作品とあったような気がするけれど、その後にこれが出たということは、つまりまだ未訳の作品が眠っている可能性があるというわけか。
『真っ白な嘘』とか好きだったので、なんとか頑張って全集を刊行してほしい。
買うから。
エド・ハンターシリーズは長編のイメージが強かったけど、短編もあったなあと懐かしく思い出した。
今の作品に比べると、テンポがゆったりとして、必要なことはすべて書いてあるけれど、最後に大きく話が動くという展開は、まどろっこしく感じるかもしれない。
だけどこのテンポに慣れ親しんで育った私には、久しぶりに大きく呼吸ができるような気持ちで作品を読んだ。
ドキドキはしたけども。
『球形の食屍鬼』と『殺意のジャズソング』が特に好きかな。
落としどころの意外性が。
読後感は全然違うけど。
とにかく東京創元社さま、短編全集完全版をぜひ出版していただきたいのです。
お願いします。 -
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最近にわかにはまっているフレドリックブラウンの短編集。
各短編をコースになぞらえ、オードブルから始まり食後のコーヒーで締めるフレドリックブラウンのフルコースが味わえるという美味しい1冊でした。
以下お気に入り作品。
「殺意のジャズソング」
友人と中古車販売業を営む主人公。ある日友人が何者かに暴行される事件が起こり、犯人の目星がつかないまま、今度は昔の音楽仲間の一人が殺される。
最後のオチが予想外だった。信頼できない語り手。
「死の10パーセント」
俳優崩れの主人公がとあるきっかけで出会った男にマネジメントされトントン拍子にスターへの階段を上っていく。男との約束は、すべての10%を取り分として男に払う、ということ。
主人公は死神とでも契約してしまったのか、悲惨な末路。そもそもその男と出会ったのが財布を拾って勝手にクレジットカードを使ってしまったからであって、悪いことはするもんじゃないなと思った。
「真っ白な嘘」「不吉なことは何も」に比べたらオチがよくわからなかったりする作品もあったけど、訳者によるものが大きいのかもしれない。たまたま上記2作品は前2冊と同じ越前敏弥氏訳のものだった。
3冊のフレドリックブラウンの著書を読んでみて、お酒を飲んだ後車を運転するシーンがたくさん出てくるんですが、飲酒運転が合法な世界なんだろうか。とかどうでもいいことが気になった。 -
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本書の元版は2002年刊行の『はじめて話すけど…』(フリースタイル)で、文庫のボーナストラックとして北村薫との記事が新たに収録されている。聞き手の小森氏は「短編ミステリの二百年」の編著者であるから、そのご縁での創元推理文庫入りだろうか。
〇各務三郎さん、懐かしいお名前。各務さんもミステリマガジンの編集長をされているのか。田村隆一、生島治郎、都筑道夫、常盤新平など錚々たる人たちが早川書房の草創期に働いていたのだな。
〇皆川博子さん、皆川さんには濃いファンが多いと聞いたことはあるが、残念ながらその著作を一冊も読んでいない。子どものころに読んだ本のことをこんなにも覚えているものなのか。巻末付録の「皆川博子になるための136冊の本」は戦前の本から最近の本まで、日本のものから外国のものまでバラエティに富んでいて、タイトルを見ているだけでも楽しい。
〇三谷幸喜さん、「作戦もの」について熱く語っておられる。理想とする作戦ものの条件を占めつつ、具体的に作品の長短を指摘するのだが、中でも「スパイ大作戦」は名作との評価。これまたほとんどの作品を見たことがないのだが、文章からだけでもその言いたいことは伝わってくる。「古畑任三郎」シリーズのことなど自作品の作劇術のことなどを率直に語っているところも興味深い。
〇法月綸太郎さんはアントニー・バークリーについて語る。世界探偵小説全集で『第二の銃声』の新訳、さらに『ジャンピング・ジェニイ』の刊行などでバークリーの再評価が始まった時期に行われたインタビューだったが、まだその全貌は出ていなかった。『殺意』と『レディに捧げる殺人物語』もキモになる作品なのだが、あまりに昔に読んだきりなのでほとんど記憶に残っていない。このインタビューを読んで、バークリーを再読したくなった。
〇石上三登志さん、お名前は知っていたがその評論を読んだことはないので、このインタビューは興味深かった。自らの好き嫌いの評価軸がはっきりしている方のようなので、名作と言われている作品でもはっきり面白くないと言っているところなど面白かった。
〇松岡和子さん、劇団雲に2年弱在籍していとは知らなかった。主にシェイクスピア戯曲の翻訳について、役者さんの疑問から自分の訳語や訳文、解釈の見直しに至ったことなど、深い話が聞ける。
〇和田誠さん、本業のデザインやイラストのことはもちろん、アメリカ映画やミステリーなどバタくさいものが好きとのこと。
〇北村薫さん、イーディス・ウォートン「ローマ熱」を熱く語る。すぐにも読みたくなった。 -
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・フレドリック・ブラウン「死の10パーセント」(創元推 理文庫)を読んだ。私はフレド リック・ブラウンをほとんど知らない。どちらかと言ふとSF 作家だと思つてゐた。さうではあるがミステリー作家でもあつ た。「フレッドは“二面を持つ作家”で、SF作家としてもミステリー作家としても同じくら いよく知られていた。」(ウィ リアム・F・ノーラン「序文ーフレッド・ブラウンを思い起こして」13頁)ここではミステリー作家としてのブラウンである。本書では「序文」以外はフルコース仕立てになつてをり、 最初のオードブルから始まつて最後のコーヒーまで13編所収、うち3編は初訳で、それらはいづれも第二次世界大戦前の若い頃の作品である。
・オードブルは「5セントのお月さま」、これが「ブラウンの商業誌デビュー作で」(「編者解説」436頁)あり、初訳である。月を望遠鏡で5セントで見せようといふ男の話、最後はそれが「望遠鏡で犯行現場の見物、五十セントだよ!」(26 頁)と変はる。ごく短い作品である。記念すべきデビュー作ゆゑにオードブルにふさはしい。スープは「へま」、これも戦前の作品だが旧訳がある。ただし初出誌のみである。当時、敵国だつたドイツのスパイになれといふ、これもごく短いから、 スープにはふさはしさうであ る。以下、魚料理2,口直し1,コールドミート3,サラダ 1、ローストミート2,デザート1、コーヒー1と続く。魚や 肉料理はさすがに食ひ出があ る、いや、読み出がある。コー ルドミートの「フルートと短機関銃のための組曲」「死の警 告」は初訳、戦前のパルプマガジン発表作である。「組曲」がおもしろい。「日本の大家の有名な作品に類似のアイデアがある」(439頁)らしいが、私はそれを知らない。これも密室物なのであらうか。外から撃たれたといふのだから違ふのだらう、たぶん。個人的にはこのタイトルが気が効いていておもし ろいと思ふ。これがポイントになる。かういふ曲、フルートの 吹き方はどんな楽器でもあり、 それはミステリーにもなるのであらう。ミステリーをよく知つ てゐる人には当然のことであつても、私には決してさうではなかつた。「死の警告」には「犯人のしゃあしゃあとした登場ぶりが、最後まで主人公を苦しめるところ」(同前)とある。私にはこれよりも旧訳のある今一つのコールドミート、「球形の食屍鬼」の方がおもしろかつた。食屍鬼はもちろんグールとのルビがつく。これも戦前のパ ルプマガジン発表作、大江健三郎の「死者の奢り」みたいなも のだといふのはあまりに大雑把だが、検死局の死体置き場とい ふ点では似てゐるとも言へる。 主人公が学生であり、ここのバイトで稼いでゐる点も似てゐる。違ふのは事件性である。こ ちらは殺人事件が起きて主人公はそれに巻き込まれる。密室である。ただし、人が通れないほどの換気扇口が外に開いてゐる。主人公は第一発見者である。さてどうなるか。「金枝篇」を読む主人公ゆゑにポイン トは食屍鬼であらう。といふことで、大江とは全く別の世界が展開する。グールが出てくると ころなどはパルプマガジンにふさはしい。タイトルは原題の直訳である。勘の良い人ならばこれで犯人を推測できてしまひさうである。これ以外は戦後の作 品である。私にはエド・ハンター物2編以外はパルプマガジ ン所収作の方がおもしろかつた。さういふ作品を読んできた といふことがあるかもしれない。ブラウンであらうが誰であ らうが、古くて安つぽいけれど パルプマガジンはおもしろいのである。本書は日本オリジナル 傑作集であるらしい。短編全集もある作家である。それをこのやうに並べるのは一つのアイデ アであつた。