【感想・ネタバレ】はじめて話すけど…… 小森収インタビュー集のレビュー

あらすじ

各務三郎に海外ミステリの魅力を、皆川博子に本に溺れた子ども時代を、三谷幸喜に理想の〈作戦もの〉とは何かを、法月綸太郎にバークリー作品の真骨頂を、石上三登志にヒーロー論での読み解きを、松岡和子に戯曲を翻訳することの困難さと楽しさを、和田誠にアメリカ文化に触れる喜びを、それぞれはじめて話してもらいました――〈短編ミステリの二百年〉で日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をW受賞した評論家による他に類を見ない贅沢なインタビュー集が待望の文庫化。本書では新たに、北村薫に「良き読者」であり続ける秘訣を訊ねています。/【目次】各務三郎「ミステリがオシャレだったころ」/皆川博子「皆川博子になるための136冊」/三谷幸喜「理想の作戦ものを求めて」/法月綸太郎「本格推理作家はアントニイ・バークリーに何を読みとるのか?」/石上三登志「札付きファンのミステリの接し方」/松岡和子「戯曲を翻訳する幸せ」/和田誠「バタくささのルーツを探る」/北村薫「良き作品の良き読者であるために」/あとがき

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Posted by ブクログ

 本書の元版は2002年刊行の『はじめて話すけど…』(フリースタイル)で、文庫のボーナストラックとして北村薫との記事が新たに収録されている。聞き手の小森氏は「短編ミステリの二百年」の編著者であるから、そのご縁での創元推理文庫入りだろうか。

 〇各務三郎さん、懐かしいお名前。各務さんもミステリマガジンの編集長をされているのか。田村隆一、生島治郎、都筑道夫、常盤新平など錚々たる人たちが早川書房の草創期に働いていたのだな。
 〇皆川博子さん、皆川さんには濃いファンが多いと聞いたことはあるが、残念ながらその著作を一冊も読んでいない。子どものころに読んだ本のことをこんなにも覚えているものなのか。巻末付録の「皆川博子になるための136冊の本」は戦前の本から最近の本まで、日本のものから外国のものまでバラエティに富んでいて、タイトルを見ているだけでも楽しい。
 〇三谷幸喜さん、「作戦もの」について熱く語っておられる。理想とする作戦ものの条件を占めつつ、具体的に作品の長短を指摘するのだが、中でも「スパイ大作戦」は名作との評価。これまたほとんどの作品を見たことがないのだが、文章からだけでもその言いたいことは伝わってくる。「古畑任三郎」シリーズのことなど自作品の作劇術のことなどを率直に語っているところも興味深い。
 〇法月綸太郎さんはアントニー・バークリーについて語る。世界探偵小説全集で『第二の銃声』の新訳、さらに『ジャンピング・ジェニイ』の刊行などでバークリーの再評価が始まった時期に行われたインタビューだったが、まだその全貌は出ていなかった。『殺意』と『レディに捧げる殺人物語』もキモになる作品なのだが、あまりに昔に読んだきりなのでほとんど記憶に残っていない。このインタビューを読んで、バークリーを再読したくなった。
 〇石上三登志さん、お名前は知っていたがその評論を読んだことはないので、このインタビューは興味深かった。自らの好き嫌いの評価軸がはっきりしている方のようなので、名作と言われている作品でもはっきり面白くないと言っているところなど面白かった。
 〇松岡和子さん、劇団雲に2年弱在籍していとは知らなかった。主にシェイクスピア戯曲の翻訳について、役者さんの疑問から自分の訳語や訳文、解釈の見直しに至ったことなど、深い話が聞ける。
 〇和田誠さん、本業のデザインやイラストのことはもちろん、アメリカ映画やミステリーなどバタくさいものが好きとのこと。
 〇北村薫さん、イーディス・ウォートン「ローマ熱」を熱く語る。すぐにも読みたくなった。

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2023年12月18日

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