山田太一のレビュー一覧
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実際に戦時を生きた作者だからこその描写がリアルで生々しかった。(個人的には銭湯のくだりが1番生々しく感じた。)
ラストの解釈に少し戸惑ったけど、伝えたいことは読み取れた気がしたので満足…!
あとがきにて山田さんが「アメリカが原爆を使用するまでに道徳的葛藤があった。使用したことには全く擁護は出来ないけれど、日本ももし原爆持ってたら絶対使ってたと思います。」と記載されていたのは色々考えさせられる…
反対というわけではなく、自分も同じ意見ではありつつ、アメリカの原爆使用について非難されるべきは「絶対に勝てる状況で使用した」という点で、これについてはどう考えてもおかしい。
同じ状況であれば日本は使ってなかったのでは…と思いたい…
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Posted by ブクログ
現代のロンドンを舞台に同作が映画化されたとのニュースを見て、読み始めました。
離婚して妻にも息子にも遠ざけられる中年の主人公が12歳で事故で亡くした当時の若かった両親に再会?、同時に同じマンションに住む胸に傷痕のある若い綺麗な女性と恋に落ちるも、周りの人からは会うたびにやつれていくと主人公は言われるが、本人は鏡を見ても気づかない。
怪談めいた話なのに妙に引き込まれ、自分が主人公になった気分で、一気読みの様に読んでしまいました。
幼少期の自分を包み込むように温かい親の愛、自分の存在意義の半分を形成する親の深い存在、そんなことを思い起こすストーリーでした。
脚本家の名手山田太一は人物の描き方、話の運び方がやはり上手いのかなあと感じました。
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Posted by ブクログ
映画「異人たち」が公開されるので、原作本を手に取ってみた。
「ひとりで暗闇の中空にぽつんといるような気がする。静かすぎる… 」
妻と大学二年の息子と離別した47歳のシナリオライター。男のとった行動を読みながら、故山田太一さん脚本の数々のドラマを思い出した。
環八近くの騒音が途切れないマンションは殆どが事務所として使われ、夜になると人の気配が消えて行く。無機質なビルの7階に住む男(私)と3階に住む女ケイとの出会い、その先のストーリーに興味が湧いた。
別れた妻と仕事仲間だった間宮に怒り嫉妬する私。離婚で四十男の人生が広がるはずもなく「人に贈る」と言い誕生日に自分のネクタイを選んでいる。やりきれない惨めさが漂ってきた。
「浅草」という文字に懐かしさを覚え、私は生まれ育ったアパートに向かう。
そこには12歳の時、交通事故で亡くなったはずの父母がいた。これは幻覚だろうか? 思いを残し旅立った両親に再び出逢い甘い時間を共に過ごす場面がとても良かった。
「曖昧なもの不透明なもの闇に関わるようなものから遠ざかり、明るく清潔で焦点のはっきりした世界にいたい」と思うが、心地良い感覚にいつまでも浸っていたい!父母が優しく慰撫してくれる時間と、ケイとの濃密な時間を揺れ動く男の心理が見事に描写されていた。
異界とのはざまを抜け現実に引き戻される終盤は私の想像と違ったが、映画ではどのような結末なのか気になってしまう。
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Posted by ブクログ
山田太一(1934~2023年)氏は、東京・浅草生まれ、早大教育学部国語国文学科卒。大学卒業後、教師になるつもりだったが、就職難で教師の口がなかったため、松竹に入社。監督の木下惠介の下で助監督などを務めつつ、テレビドラマの脚本の仕事を始め、1965年、退社してフリーの脚本家になる。1976年からNHKが始めた脚本家シリーズの第1回目に選ばれ、山田太一シリーズとして発表された『男たちの旅路』は人気を博す。その後、TBSドラマ『岸辺のアルバム』(1977年)、NHK大河ドラマ『獅子の時代』(1980年)等を手掛け、1983年に始まったTBSドラマ『ふぞろいの林檎たち』シリーズは大ヒットし1997年まで続いた。2017年に脳出血で倒れた後、創作活動から離れ、2023年11月、死去。芸術選奨文部大臣賞、山本周五郎賞、菊池寛賞、日本アカデミー賞最優秀脚本賞等、多数の賞を受賞。
本書は、著者が主に70代に、「暮らしの手帖」、「文藝春秋」、「東京人」、「考える人」、「波」等の雑誌に書いたエッセイや書評をまとめ、2015年に出版、2018年に文庫化されたもの。
私は、山田氏より30歳ほど若く、『ふぞろいの林檎たち』の主人公達とほぼ同世代ながら、まさに山田氏がこのドラマを作ったきっかけでもあった「テレビ離れをした若者」で、後年になるまで山田氏を優れた脚本家として意識することはなかった。ところが、昨年山田氏が死去した後、追悼的な番組を度々目にし(近年は、年齢や在宅勤務のせいで、家でテレビを見ることが格段に増えた)、そこで語っている山田氏が、テレビでヒットを連発する人物に対する私のイメージとはかけ離れていて、物静かで、朴訥で、不器用そうな雰囲気を醸し、一方で、物事を的確に捉える観察眼を持っていると感じ、山田氏のことをもっと知りたいと思って本書手に取った。
読み終えて、初出がバラバラの文章を集めていることによる雑駁感は已むを得ないとしても、期待に違わず、山田氏でなければ書けないであろう切り口及び感性で、様々なことが率直に語られており、共感すること、納得すること、多数であった。
また、上記の通り大半が70代で書かれており、当然ながら、自らの「老いと死」を意識した視点からの文章は少なくなく、それらに対しては、無闇に抗ったり、恐れたりすることなく、自然体で向き合っている(向き合おうとしている)と感じられ、それが如何にも山田氏らしいと思った。(実際は、亡くなる前の数年は、プロデューサーとして付き合いのあった人とは会わなかったとも言われており、老いと死の難しさを改めて感じた)
稀代の脚本家・山田氏が、70代にして何を考え、感じていたのか、老いや死にどう向き合おうとしていたのか、が垣間見られるエッセイ集である。
(2024年2月了) -
購入済み
昔のテレビドラマとは思えない
山田太一さんと吉田まゆみさん、どちらも好きなので興味があって購入しました。絵もストーリーも懐かしさもあり、一気に読んでしまいました。今では高齢の俳優さんたちがどんな風だったんだろう…と、DVDが出てたら見てみたくなりました。
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27歳のヘルパー(男)と、彼に淡い恋心を抱く46歳のケアマネ(女)と、そのケアマネに複雑な欲望を抱える81歳老人(男)の不思議な関係。なぜか気が合うというか、とても良い関係。通常仲良くなる理由って、RPGのパーティのように、自分にない魅力とか得意ななこととか憧れとかがあること多いと思うんだけど、この物語では自分の弱さみたいなところがちょっとずつ滲み出て、それを共有することで関係性が維持されてる。このつながりの糸は一見弱そうで、本書の途中でもその糸が切れ、関係性が破壊される。でも、別のつながり方をして、それはとても強いものとなる。こういうことってあるんだなあととても共感する。空也上人の存在がぴったりマッチしていて、図鑑で見たあの像、みてみたくなった。
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Posted by ブクログ
以前、同じエッセイ・コレクションの『昭和を生きて来た』を読んでからの、お気に入り。
戦後の生活、思いというのか。
この人の中で切り離せない時間になっていることが、全体を通してよく分かった。
「数秒の笑顔」では、間違えて女子トイレに入りかけ、引き返した時に出会った二十代の女性の、人の好いうなずきと笑顔が、四十三年経っても忘れられずにいるというエピソードが語られる。
私が大学のとき、一方的に大好きだった女の子(恋ではないが)も、人の好い笑顔を振りまいていたなぁと思い出した。
誰かの人生の中で、笑顔を面影に出来ることって素敵だと思わされる。
「新春の願い」は、孫引きになるが小沢昭一さんのコメントから。
「昔は川中島で武田信玄と上杉謙信が戦った。つまり日本人同士が戦争をしていた。そういうことはいまの日本にはない。人間の世界から戦争はなくならないと訳知り顔にいう人がいるけれど、そんなことはない。日本人同士の戦争はなくなっているではないか。戦争はやめられる。希望をなくしてならない」
対称的に「教室の歓声」から。
「ある日、先生が、いま日本はやられているが、実はひそかに開発している強力な爆弾があると、黒板に図を描いてその原理を説明してくれた。あとで思えば、それは原子爆弾だったのだが、原理の方はよく分らないまま、とにかく、これが完成して、ワシントンに一発、ニューヨークに一発落とせば、二大都市の人たちの大半は死んで、アメリカはもう終り、日本の勝利になるという話だった。その時のこみ上げるような喜びを忘れられない。」
今発せば炎上ものの言葉だろうが、それが戦争の一面であり、皮肉である。
見えなくなっている枠組みを見る目を養うことを、考える。想像する。
「文章との出会い」は笑ってしまった。
「私は芥川龍之介の「羅生門」が欲しい、といった。なにかで、芥川という作家のそれまでのすべてをそそぎ込んだ名作だと読んでいたのである。店員はすぐうなずいて持って来てくれた。
私は点検して、これは「ちがう」といった。書面は確かに「羅生門」だが、ひらくと他にも短いものがあれこれ入っていて、「羅生門」という題名の小説にさいている分量は、ほんの数頁にすぎない。作家が、それまでのすべてをそそぎ込んだ作品が、こんなに短い筈がない」
店員さんは改めて探しにゆくのだが、なるほど、面白い根拠すぎる。
最後に寺田寅彦『柿の種』の書評「同じ家族はいない」では、皮膚病の父と小さな娘から、家族であることの理想美だけではない、けれどそこにある温もりを、短い文量でしっかり伝えてくれる。
お気に入りの部分だけでも、まだ幾つかある。