山田太一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
現代のロンドンを舞台に同作が映画化されたとのニュースを見て、読み始めました。
離婚して妻にも息子にも遠ざけられる中年の主人公が12歳で事故で亡くした当時の若かった両親に再会?、同時に同じマンションに住む胸に傷痕のある若い綺麗な女性と恋に落ちるも、周りの人からは会うたびにやつれていくと主人公は言われるが、本人は鏡を見ても気づかない。
怪談めいた話なのに妙に引き込まれ、自分が主人公になった気分で、一気読みの様に読んでしまいました。
幼少期の自分を包み込むように温かい親の愛、自分の存在意義の半分を形成する親の深い存在、そんなことを思い起こすストーリーでした。
脚本家の名手山田太一は人物の描き方、話の -
Posted by ブクログ
映画「異人たち」が公開されるので、原作本を手に取ってみた。
「ひとりで暗闇の中空にぽつんといるような気がする。静かすぎる… 」
妻と大学二年の息子と離別した47歳のシナリオライター。男のとった行動を読みながら、故山田太一さん脚本の数々のドラマを思い出した。
環八近くの騒音が途切れないマンションは殆どが事務所として使われ、夜になると人の気配が消えて行く。無機質なビルの7階に住む男(私)と3階に住む女ケイとの出会い、その先のストーリーに興味が湧いた。
別れた妻と仕事仲間だった間宮に怒り嫉妬する私。離婚で四十男の人生が広がるはずもなく「人に贈る」と言い誕生日に自分のネクタイを選んでいる。やりきれ -
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山田太一(1934~2023年)氏は、東京・浅草生まれ、早大教育学部国語国文学科卒。大学卒業後、教師になるつもりだったが、就職難で教師の口がなかったため、松竹に入社。監督の木下惠介の下で助監督などを務めつつ、テレビドラマの脚本の仕事を始め、1965年、退社してフリーの脚本家になる。1976年からNHKが始めた脚本家シリーズの第1回目に選ばれ、山田太一シリーズとして発表された『男たちの旅路』は人気を博す。その後、TBSドラマ『岸辺のアルバム』(1977年)、NHK大河ドラマ『獅子の時代』(1980年)等を手掛け、1983年に始まったTBSドラマ『ふぞろいの林檎たち』シリーズは大ヒットし1997年
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- カート
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試し読み
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Posted by ブクログ
純粋に面白いと感じた。
主人公はかなり不幸な人生を歩んでいた上に、仕事仲間に妻を取られていたという残酷な現実。
仕事はフリーで、身寄りもほとんどおらず、離婚して、人との強いつながりをどんどんなくしていき、社会からふわりの浮いてしまったよう。それで異人たちが現れたのだろうか。
「〜の会社に所属の〇〇さん」「〜さんの旦那さん」という社会での肩書きは自分がこの世との強固な繋がりなのかもしれない。社会に"所属"することで、人は現世にいられるのかもしれない。
ラストにかけては個人的には少し陳腐な印象を抱いてしまった。
異界のものと出会ってる時とその直後は力が出るが、離れると衰弱して -
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随分前テレビで放映されたのを観て、両親と息子がすき焼きを食べるやるせない場面が頭に残ってた。
数年前、東京へ出かけ(そちらに住む)叔母と浅草ですき焼きを食べた(こんなことは後にも先にも一度きりだ)。この懐かしい感じは…、と辿ってみたらその映画で舞台となった店だと知った。すき焼きの後はどうだったか覚えてなかったので、いつか読みたいと。
喧騒に包まれる都会とは裏腹、孤独が身に沁みる主人公。そんな主人公原田のもとに訪れたものは。
するするっと非現実に入り込む、怖いというより、ラストはすっきり心が晴れ温かさを感じた。
わかってはいても両親との別れのすき焼きの場面は泣けてしまう。父母の言葉に。子供をよく -
購入済み
昔のテレビドラマとは思えない
山田太一さんと吉田まゆみさん、どちらも好きなので興味があって購入しました。絵もストーリーも懐かしさもあり、一気に読んでしまいました。今では高齢の俳優さんたちがどんな風だったんだろう…と、DVDが出てたら見てみたくなりました。
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27歳のヘルパー(男)と、彼に淡い恋心を抱く46歳のケアマネ(女)と、そのケアマネに複雑な欲望を抱える81歳老人(男)の不思議な関係。なぜか気が合うというか、とても良い関係。通常仲良くなる理由って、RPGのパーティのように、自分にない魅力とか得意ななこととか憧れとかがあること多いと思うんだけど、この物語では自分の弱さみたいなところがちょっとずつ滲み出て、それを共有することで関係性が維持されてる。このつながりの糸は一見弱そうで、本書の途中でもその糸が切れ、関係性が破壊される。でも、別のつながり方をして、それはとても強いものとなる。こういうことってあるんだなあととても共感する。空也上人の存在がぴっ
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ネタバレ『少し早めのランチへ 』 山田太一らしい。
何だろう、この感覚。癖になる。
『黄金色の夕暮』 このテンポ好きだなぁ。
どんどん山田太一ワールドに引き込まれていった。
最後の『読んでいない絵本』の怖さといったら・・・。
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〈東京には得体のしれない悪がひそんでいる〉--一九五〇年代と現在の東京を往還し幻想的な物語が展開する「あの街は消えた」と「読んでいない絵本」、老人の白昼夢のような時間を描いた「少し早めのランチへ」--傑作短篇小説三篇に加えて、ビジネスマンの一日に流れ込む一瞬の幸福と死を切り取った二篇のショートショート。さらには、好評を博した俳優座の名舞台、家族の再生を描いた傑作戯曲