あらすじ
妻子と別れ、孤独な日々を送るシナリオ・ライターは、幼い頃死別した父母とそっくりな夫婦に出逢った。こみあげてくる懐かしさ。心安らぐ不思議な団欒。しかし、年若い恋人は「もう決して彼らと逢わないで」と懇願した……。静かすぎる都会のひと夏、異界の人々との交渉を、ファンタスティックに、鬼気迫る筆で描き出す、名脚本家山田太一の独自の小説世界。第一回山本周五郎賞受賞作品!(解説・田辺聖子)
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思っていたのとはちょっと違ったけど、さすが山田太一、第一回山本周五郎賞の名に恥じぬ名作。とにかく筋書きが面白く、導入部での主人公の離婚の顛末から一気に引き込まれる。作者と同じく脚本家である設定も効いていて「なるほど、脚本家というものはこういう風に日常をドラマとして捉えてしまったりもするものなのか」と変に感心させられたりもする。
古典的な幽霊譚の構造を踏襲しながらも、現代人の心に直に訴える魅力を絶妙に加えて素晴らしい出来栄えでした。
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非常に読みやすく、面白かった。
ページ数が少なく物語もコンパクトなため、自分のような読書初心者におすすめだと思う。
主人公と亡くなったはずの両親が浅草で会う場面が出てくる度にノスタルジックな気分になり、良かった。
次は夏に読みたい。
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今年始まったばかりだが…今月読んだ中では一番か二番に面白い。
ドラマを描く脚本家だけあり、読んでいて脳内で映像化できそうなくらい読みやすい。昭和の古きよき親子関係がある
有名な本で、映画化もされたらしいし、本の名前は知ってはいたが、やっと読めてこの歳になってジーンとくる話だった。
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アンドリュー・ヘイ監督の映画『異人たち』(2023年)を観てとても好きだったので原作を調べたら日本の作家さんの小説だったのですぐに入手して読んだ。設定は異なるけれど主人公の孤独さやアパートや街の妙な静かさ、両親と再会する戸惑いと温かさ、切なさは共通していた。描かれている妙とも思える世界がとても好きで時間を忘れて読み耽った。終盤は2023年の映画版に比べると和製ホラーだったけれど、そこも好きだった。はー、好きなところが多くて満たされた。
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冒頭のひと段落で心が掴まれた。「妻子と別れたので、仕事場に使っていたマンションの一室が私の住居になった。テレビドラマの脚本を書くのが職業である。多くの時間、一人で部屋にいる。少し前には、やって来る女がいたが、妻と別れ話をしているうちに離れて行き、それはそれでよかった。離婚で多量の感情を費やし、人間との接触は、快楽を含めて、しばらくは沢山だった。」
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離婚したばかりのシナリオライター。浅草をぶらついていると12歳の時に亡くなった両親と会う。しかし、彼らと会うたびに痩せていき…同じマンションの新しい恋人は引き留めようとするが。
真夏の怪談、とも言える傑作。すごく日本風で、懐かしくもあり、心地よくもある。ラストのどんでんも無理がなく、さもありなんという感じ。
ホラーでもあり、ラブストーリーでもあり、親子愛の話でもある本作。映像化もされているので、そちらも楽しみ。
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映画化されたのをテレビで観て、原作を読んでみたかった。
映像が浮かぶような描写がとても良かった。
あのすき焼きの場面はやはり切なくていいですね。
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大人になって、今日明日ばかりを見ながら一日一日を送り、家庭を持ち、子供たちも大きくなると、色褪せたはずの過去が懐かしく思い起こされる。 一言で言うなら、子供時分に亡くなった父母たちが現れる怪談話でホラー染みたシーンもあるけど、ランニングシャツ姿で両親に囲まれて卓を囲むほの温かい思いが全体を包んでいる。 子供時代の何とも言えない温かさに触れたくなった時に再読したい。(o^^o)v
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第1回山本周五郎賞受賞。大林宣彦による同名映画及び、アンドリュー・ヘイによるリメイク作品を観たことがあって、その流れで本作にも手を出してみた。内容はほとんど同じだけれど、1987年に書かれたとは思えないほど一切古さを感じない。情景描写も人物描写も分かりやすく丁寧なので、鮮明に映像が浮かぶ。そりゃ何度も映像化されるわ…と思った。
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かなり前にCSで放送されていた映画を観た。映画は1988年制作。片岡鶴太郎の演技が印象的でよかった。小説は未読だったゆえ、読んでみた。
この話はテレビの脚本家の主人公(風間杜夫)が妻に逃げられ一人で住んでいるマンションで、ある女性・Kei(名取裕子)と知り合い恋に落ちる。また浅草で幼い頃に交通事故で死んでしまった父親(片岡鶴太郎)に声をかけられ、家に誘われるとそこには母親(秋吉久美子)もいた。
何度も通うが、やがて主人公は痩せこけていく…
山田太一ゆえ映画よりも細かい描写、特にセリフの量が多く誰の発言だかわからない箇所があった。
ラストシーンでKeiは実は幽霊だったというオチになるのだが、映画はまだ特殊メイクやCGも雑で拍子抜けだったが、活字のほうが想像力がかき立てられよかった。また両親がすき焼き屋で『お前は自慢の息子だ』と言って、やがて消えていくシーンはセリフひとつ一つの重みを感じ、やはり涙腺を熱くした。
僕の父は定年まで勤め、ようやくリタイアし、さあゆっくりしようと思った60歳で亡くなってしまった。寡黙で酒もあまり飲まず、優しくて内弁慶。真面目な父だった。
今の僕は父の年齢をいつのまにか超えてしまった…
この物語のように死んでしまった父が目の前に現れたら、酒でも酌み交わしながら話をしてみたい…年下の父に、違う印象も感じるのかね…
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あらすじが好みだったので読んでみましたが、面白かったです。昭和感も感じられるし、ノスタルジックな雰囲気もあり、いかにもなスプラッターなホラーじゃないところも良かったです。最近映画化されていた事も知りませんでした。こういうお話は沢山読んでみたいです。
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アンドリュー・ヘイ監督によるリメイクである『異人たち』がとても良かったので、原作も手にとってみた。
原作は1987年発行された山田太一による『異人たちとの夏』
読む前は『異人たち』と比べたら、1987年発行の本書は古臭いんじゃないかって訝っていたが、まったくそんなことはなかった。
もういない思い出のなかの両親と出会うという物語から、誰がいつ読んでもノスタルジーと普遍的な面白さがある作品だと感じた。
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現代のロンドンを舞台に同作が映画化されたとのニュースを見て、読み始めました。
離婚して妻にも息子にも遠ざけられる中年の主人公が12歳で事故で亡くした当時の若かった両親に再会?、同時に同じマンションに住む胸に傷痕のある若い綺麗な女性と恋に落ちるも、周りの人からは会うたびにやつれていくと主人公は言われるが、本人は鏡を見ても気づかない。
怪談めいた話なのに妙に引き込まれ、自分が主人公になった気分で、一気読みの様に読んでしまいました。
幼少期の自分を包み込むように温かい親の愛、自分の存在意義の半分を形成する親の深い存在、そんなことを思い起こすストーリーでした。
脚本家の名手山田太一は人物の描き方、話の運び方がやはり上手いのかなあと感じました。
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映画化されるということで読んでみた。
何となくハートウォーミングなストーリーかなと思いながら読み進めていたところ、最後にやられた。若い恋人とのくだりのために、この作品の流れが大きく変わった。ある意味、衝撃的。
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「異人」との繋がり
箸は持ち帰れたが、履物は残っていなかった
両親とケイが妻と息子(現実)との喪失を埋めてくれたが、
引き戻してくれたのは間宮だった
今の彼を本当に気にかけていたのは間宮だったことに安堵する
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映画「異人たち」が公開されるので、原作本を手に取ってみた。
「ひとりで暗闇の中空にぽつんといるような気がする。静かすぎる… 」
妻と大学二年の息子と離別した47歳のシナリオライター。男のとった行動を読みながら、故山田太一さん脚本の数々のドラマを思い出した。
環八近くの騒音が途切れないマンションは殆どが事務所として使われ、夜になると人の気配が消えて行く。無機質なビルの7階に住む男(私)と3階に住む女ケイとの出会い、その先のストーリーに興味が湧いた。
別れた妻と仕事仲間だった間宮に怒り嫉妬する私。離婚で四十男の人生が広がるはずもなく「人に贈る」と言い誕生日に自分のネクタイを選んでいる。やりきれない惨めさが漂ってきた。
「浅草」という文字に懐かしさを覚え、私は生まれ育ったアパートに向かう。
そこには12歳の時、交通事故で亡くなったはずの父母がいた。これは幻覚だろうか? 思いを残し旅立った両親に再び出逢い甘い時間を共に過ごす場面がとても良かった。
「曖昧なもの不透明なもの闇に関わるようなものから遠ざかり、明るく清潔で焦点のはっきりした世界にいたい」と思うが、心地良い感覚にいつまでも浸っていたい!父母が優しく慰撫してくれる時間と、ケイとの濃密な時間を揺れ動く男の心理が見事に描写されていた。
異界とのはざまを抜け現実に引き戻される終盤は私の想像と違ったが、映画ではどのような結末なのか気になってしまう。
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某所読書会課題図書: テレビドラマのライターの原田英雄が体験する奇妙な出来事をドラマ風に記述した物語だが、現実の世界と非現実的な風景が頭の中で入り乱れる感じがした.48歳の英雄の両親は36年前に交通事故で死んだが、浅草のアパートで生活している部屋を訪ねて交流する英雄.一人住まいのマンションに現れる藤野桂との交流も奇妙だ.両親に会って痩せ衰えた英雄を労わる桂.プロデューサーの間宮が英雄の状態を心配し、彼を幻想から救い出すことになるが、顛末はすっきりしない.
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純粋に面白いと感じた。
主人公はかなり不幸な人生を歩んでいた上に、仕事仲間に妻を取られていたという残酷な現実。
仕事はフリーで、身寄りもほとんどおらず、離婚して、人との強いつながりをどんどんなくしていき、社会からふわりの浮いてしまったよう。それで異人たちが現れたのだろうか。
「〜の会社に所属の〇〇さん」「〜さんの旦那さん」という社会での肩書きは自分がこの世との強固な繋がりなのかもしれない。社会に"所属"することで、人は現世にいられるのかもしれない。
ラストにかけては個人的には少し陳腐な印象を抱いてしまった。
異界のものと出会ってる時とその直後は力が出るが、離れると衰弱していっているというのは、別のホラー作品でも見たことがある光景だった。
それが父母と出会っている時だけに起きている現象ではないことに気づき、"異人たち"が父母だけではないことに途中で分かったので、それもあり、ラストのホラー展開に物足りなさを感じたのだと思う。
父母の、言葉にせずともわかる、自分を包んでくれる温かさ。嘘でもいいから亡くなった両親に会いたいというのは人間の素直な感情だと思う。
すき焼き屋でのシーンは何とも言えないやるせなさがあった。主人公はこれで両親と二度目の別れになる。それがまたつらい。
ケイとは一時的な愛だったかもしれないが、ラストの一行が全てだと思う。
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随分前テレビで放映されたのを観て、両親と息子がすき焼きを食べるやるせない場面が頭に残ってた。
数年前、東京へ出かけ(そちらに住む)叔母と浅草ですき焼きを食べた(こんなことは後にも先にも一度きりだ)。この懐かしい感じは…、と辿ってみたらその映画で舞台となった店だと知った。すき焼きの後はどうだったか覚えてなかったので、いつか読みたいと。
喧騒に包まれる都会とは裏腹、孤独が身に沁みる主人公。そんな主人公原田のもとに訪れたものは。
するするっと非現実に入り込む、怖いというより、ラストはすっきり心が晴れ温かさを感じた。
わかってはいても両親との別れのすき焼きの場面は泣けてしまう。父母の言葉に。子供をよく理解しているのは親だな、と思う。ノスタルジー漂う下町の背景は、ざ昭和で、自分の子供の頃(より少し前かな)、親の時代だったなと思う。親孝行しなくては。
とても郷愁に駆られ、親の愛を感じるお話だなと思う。田辺聖子さんの解説、良かった。
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おもしろくて一気読み!
したけれど何がおもしろかったのかわからない。
もう会えない人に会えるなら自分の生気が取られても構わない、という気持ちはわからなくもない。ただ、ケイの登場はなんだったのだろう?生気が吸い取られる理由に別の側面もあるということ?
辛く悲しい思い出だけでなく、懐かしい暖かい思い出にもすがり続けてはいけない、と言いたいのか?
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妻子と別れ人生どん底。
そんな折、死別した両親にそっくりな夫婦と出会う。
懐かしさに何度も訪れてしまうが、
「顔色が悪い、もう近づかない方がいい」と恋人に諭される。
異人との交流で崩壊していく
顔面がなんとも不気味だった。
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1988年第1回山本周五郎賞
「あれは、どうかしていたんだと思います。」
主人公の脚本家は、そう言う
だけど どうかしていたなどと思っていなかったのではないでしょうか
男は強がっていたけれど
離婚、息子との折り合いの悪さ
住んでいた家は元妻のものに
ひとり都会の夏の夜に 心に隙間ができてしまったんですね
そこに優しく入り込んで異界の者
この小説は新刊で出た時、 確か化粧箱に入っていたような記憶があるんです
映画化され、秋吉久美子が印象的だった
2023年イギリスの「異人たち」の原作もこちららしい
なぜこの表紙になってしまったんだろう?
再びのカップ論争
Posted by ブクログ
作者の職業柄だと思うけど、最後に一波乱あるところが、テレビドラマ的なつくり。
傷ついた中年男性が、夢か幻かわからないけれど死に別れた両親と交流する描写は、切ないような温かいような感じで良かった。
Posted by ブクログ
薄気味悪い話ではあったけど、幼い頃に生き別れた両親に再会できたのはよかったし、お別れするときは、涙が出そうになった。不思議な読後感、夏の終わりに読めて涼しくなった。