【感想・ネタバレ】空也上人がいたのレビュー

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Posted by ブクログ

主な登場人物は3人だけ。吉崎さんがずっと抱えている罪の意識を告白する場面が良かった。派手じゃないけど優しい物語。いい小説だった。

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2022年12月08日

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ネタバレ

中津草介27才。
重松雅美46才。
吉崎征次郎81才。
三毛猫、年齢性別不詳 。
空也上人。

それだけ・・・



「もう願いごとも
いくらも果たせない齢になり
あと一つだけ
小説を書いておきたかった。」

2011年 山田太一さんの作品。


中津草介27才。
特別養護老人ホーム(特養)で勤務していたが、ある事件がきっかけで退職。現在は吉崎征次郎の介護中。

重松雅美46才。
ケア・マネージャー。独身。

吉崎征次郎81才。
独り住まいだが、ある程度の生活力はあるが今は草介に介護をしてもらっている。

三毛猫、年齢性別不詳 。
ところどころで出没。

......................................................

この青年、女性、老人。
これまでの生き方、価値観
3人とも異なっている。
3人とも秘密がある。
3人とも心に傷をもつ。

それでも
この3人は日々真剣に生きてきた。
そして生きている。
それぞれを思いやりながら。


例えば青年(草介)・・・
特養でヘルパーをしていた時に
認知症の女性を乗せた
車椅子から
老女を転げ出してしまう。

“はずみ”で。

誰も責める人はいなかった。
「よくあることだから」と。

しかし
草介は特養を退職し
ケアマネの重光さんの紹介で
現在の吉崎さんの介護につく。

ある日吉崎さんから
京都に行くよう依頼を受け
六道の辻を通り
西光寺(六波羅密寺)で
木造の空也上人と出逢った。

空也上人――――――――――――
死屍累々の鳥辺山を
歩き続けた。

善人悪人なく
誰もが持つ生きている悲しさ
死んでしまう事の平等さを
汚れた草履で
疲れても
小さな声でも
少し顎をあげながら
それでも
歩き続けた。――――――――――――

楽しみや悲しみや悔しさを
お互いに共有しながら
生きていく。

約2ヶ月
3人での時間が終わる時
空也上人と出逢う意味を知った。

吉崎さんの持ち続けた自責の念
重光さんの虚勢の強さ
草介の自分との葛藤

そんな3人であっても
ともに歩いてくれるのが
空也上人。

......................................................

さすが山田太一さん。

私のような普通な人間でも
「よくあること」でも
人によって
それぞれ
どうしようもない
大きな悲しみや傷
弱さや欲を抱えている。

それでも
誰にでも
空也上人と出逢う事が出来るんだ!

生きる希望と勇気を与えてくれる。

この本も大切にしよう。

あと
三毛猫は六道の辻かしら…

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2016年05月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一気に読んでしまった~私は27歳の介護士で特養で老婆を車椅子から放り出してしまい,それっきりで辞めてしまったが,ケアマネージャーの46歳の重光さんは一人暮らしの81歳の吉崎さんの在宅介護を紹介してくれる。車椅子だが病気も呆けもなく,月25万だが,それ以上に出てくるご馳走に驚かされる。病院の付き添いの帰りにはデパートで自分の体型に合った有名ブランドの服まで買ってくれ,京都への使いを言いつかる。東山の松原通りの六原の辻に行けと携帯で指示され,六波羅蜜寺の宝物殿で空也上人の像を下から覗くと,空也上人の眼が光り,どうしようもなく動揺し,特養の入所者を死なせてしまっても仏教に帰依すれば大丈夫だと言われているようで,雇い主の吉崎さんの押しつけが不快で,辞めることを重光に告げると,雇い主は素直に詫び,重光と私が結婚したら財産を相続させようと新たな申し出がなされる。吉崎さんが重光さんを気に入っているのは解るが,ちょっと気になる相手であることは年齢の差が障害であることは確かだ。結婚はありえないと答えると,新しい提案は,目の前でセックスすることだと呆れたことを言う。六波羅蜜寺に行かせた理由を吉崎さんは話し出し,証券会社のお得意さんに儲けさせて褒美を貰って帰る道で,2・3歩道を踏み出し,偶々通りかかった自動車が急ハンドルを切って死亡した事件で取り返しの付かない事をしでかした自分に,空也上人が寄り添ってくれる感覚を得たからだった。一切の申し出はなかったことにされ,たまには実家に顔を出すように言われて5万円のボーナスまで渡されて,豊橋へ出掛けた夜,警察に呼び出された重光さんから吉崎さんが死んで,書き置きが遺されたことが告げられた。睡眠薬を飲んでの入浴。通夜の夜,吉崎さんが熱望し,二人が密かに夢想した関係となる。呼びかけても返事が返ってこない妻の車椅子を押して,新宿の町を歩く~山田太一って,もしかしたら初めて読んだかも。夜10時過ぎから2時間で読んでしまった。81歳の男性って山田さんの数年後の姿だろうか。二人が年取った最後の場面は,やっぱり必要なんだろう。ドラマになるとしたら,シナリオライターは最後の部分をカットするかも知れない。一晩限りか,一生を共にするか,という含みを持たせるためにね。木下恵介のシナリオライターとしての拘りが見える気がする。いずれにしても2時間ドラマ

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2011年06月29日

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介護ヘルパーの青年と40代のケアマネ、そして介護される老人。
役割を超えた関係のようで、やはりその枠内の付き合いのようで。
生と性←実践はなくとも。は切り離せないものなのだな、と。
そして空也上人の存在が刺さる。性善説、というか、人には誰しも人に言えないちょっとした悪事やミスやあるだろうから、きっと読む人皆に刺さるのではないかと思った。

一番良かったのは老眼に優しいフォントサイズだったこと!

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2022年03月26日

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27歳のヘルパー(男)と、彼に淡い恋心を抱く46歳のケアマネ(女)と、そのケアマネに複雑な欲望を抱える81歳老人(男)の不思議な関係。なぜか気が合うというか、とても良い関係。通常仲良くなる理由って、RPGのパーティのように、自分にない魅力とか得意ななこととか憧れとかがあること多いと思うんだけど、この物語では自分の弱さみたいなところがちょっとずつ滲み出て、それを共有することで関係性が維持されてる。このつながりの糸は一見弱そうで、本書の途中でもその糸が切れ、関係性が破壊される。でも、別のつながり方をして、それはとても強いものとなる。こういうことってあるんだなあととても共感する。空也上人の存在がぴったりマッチしていて、図鑑で見たあの像、みてみたくなった。

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2019年11月28日

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介護士の男の人が主人公。なんともいえない雰囲気のある話。許されているのかなという気持ちになる。
2013/1/29

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2013年01月29日

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ネタバレ

久々に山田太一を読んだ。
やっぱり、映像が浮かんでくるその構成力と、淡々とした冷めた語り口が、独特の世界感を生み出している。
いつのまにか山田太一の指揮で踊っているような。

空也像は好きで六波羅蜜寺まで見に行ったけど、下からは見たことがない。
でもその眼力はすごかった。さすが運慶の4男康勝作。鎌倉中期作のこの像は、慶派に代表される、くりぬいた部分に水晶を嵌め込む「玉眼」という手法が使われている。どこまでも見通す目は確かに平伏してしまうような凄みがある。空也の修行でやせ細った身体、少し乱れた法衣、その口から魂の叫ぶのように出てくる六仏。
恐らく山田太一はこの像を見てこれだけの話のプロットがまざまざと浮かんだのではなかろうか。それだけの像なのである。

ラストは「目の前のセックス」がそうきたか、という感じはあった。まるでダンスのような、儀式のような。敢えてそのものの描写は避けて。
正直すごく意外ではなくて、山田太一ならこうくるだろう、と想像は出来る。その辺は、「飛ぶ夢をしばらく見ない」などの小説より弱い気がする。

しかしやはりその流れる音楽のような進行と余韻を感じさせる文体は好きだ。
一貫して見えるのは、枯れた色。
吉崎老人だけではない。若い草介も、ケアマネの女性も。
いや、むしろ吉崎老人のほうが色をもっているのかもしれない。

以前ラジオドラマで大滝秀治さんが吉崎老人役をやったそうだ。
見かけではもっと俗物的な老人がいいような気がする。

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2012年11月03日

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 会話の表現がうまいのは、脚本家が本業だから当然。それと最近、『キルトの家』を見たからか、老人は山崎努、ケアマネージャーは松坂慶子がイメージぴったりでおもしろかった。27歳のヘルパーは、どんな役者がいいのだろうと考える面白味もあった。小説にしたのは、話の内容が過激なものがあるからなのか。老人もケアの人々もまだまだ自由な行動が可能なのではないかと思わせる展開も見えます。

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2012年02月26日

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介護士の若者が抱えてしまった誰にも言えない心の重さを思いやる老人の話。
空也上人の目が光るシーンが衝撃的。
人間のしでかす罪と、魂の救済がテーマ。
考えさせられた。

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2012年02月16日

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たまに久しぶりに小説を読みたくなる。
そしてサクサクと読めるととても気分がいい。

山田太一と山田洋次がごっちゃになっている。
とてもいい話だった。
軽すぎず重すぎず、現実的過ぎず非現実でもなく。
役にたたなさそうで役に立ちそうな。

またこんな小説を見つけたい。
ドラマにしたら、いや、いつかドラマになると思った。
配役は誰がいいかしばらくの妄想の種になった。

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2011年08月27日

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「とりかえしのつかないことは帳消しにはならない」
罪の意識にさいなまれる男たちは、心情を吐露したことで少しは気が楽になったのだろうか。
81歳の介護を必要とする老人、世話を依頼された27歳の青年、46歳独身ケアマネの女性。3者3様の赤裸々な真実と短いけれど濃密なかかわりが語られるが、どうもNHKかなんかの単発ドラマになりそうな話だ。もう少し深みがほしい。

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2011年08月07日

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もっと読み進めにくいと思っていたけど、いつの間にか読み終わっていた。
「もう願いごともいくらも果たせない齢になり、あと一つだけ小説を書いておきたかった。二十代の青年が語る七十代にならなければ書けなかった物語である。」という筆者の言葉が全てを表しているとも思える。

何というか、印象に残る、心に響く物語なのだけれど、誰かに薦めたり、誰かと感想を言い合ったりということが気軽にはできない作品。

これを最後の一つにしてほしくないと、強く思う。

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2011年07月29日

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日々身体に精神に忍び込む老いと付き合っていく人たち。それを支える介護の人たち。お互いに折り合いをつけて日々を過ごしていく。吉崎さんの数々の奇怪な言動に戸惑いながらも、対処していく草介と重光さん。人間だれでも忘れ去ることのできない深い悔恨を伴う罪悪的出来事を経験しているのだな。吉崎さんの決断は痛く悲しい。

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2011年07月21日

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110422byNHK review
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六波羅蜜寺 空也上人目が光る 63 ←行こ
『異人たちとの夏』 158
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・・・悪いと思ったら、まだ生きているお年寄りにやさしくすればいい・・・ 77
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山田太一の19年ぶりの書き下ろし力作小説。特養ホームで老婆を死なせてしまった27歳のヘルパー草介は、女性ケアマネの重光さんの紹介で、81歳の老人の在宅介護を引き受ける。介護する側の疲労、介護される側のいたわり。ヘルパーと老人とケアマネの風変わりな恋がはじまる。彼らはどこまで歩いていくのか。そして、心の痛みを抱える人々と一緒に歩いてくれる空也上人とは?重くて爽やかな衝撃作。

ヘルパーと老人とケアマネと、介護の現場で風変わりな恋がはじまる。ぬぐいきれない痛みを抱える人々と一緒に歩く空也上人とは?都会の隅で起きた、重くて爽やかな出来事。

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2011年06月12日

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それぞれの世代の性(生)がリアルに描かれている。山田太一さんが書く作品なのでドロドロした感じは受けなかった。ラストもさすが山田太一さんと思う結び。

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2011年06月02日

Posted by ブクログ

メルヘンだと思えば、ギャハハと笑いつつやがて哀しき…。文学少女だった叔母の憧れの山田太一氏、いまだ健在!

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2011年10月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

山田太一の描く大人の御伽話。誰もが心に持つ「抜けずにいる小さな針先」のような罪と赦し、高齢化社会における尊厳死のあり方、介護の現場の厳しさ、40半ばの女性と20代の若者との恋愛。こんな都合のいい筋書きは現実にはないだろうと思いつつ、最後に救いのある話だった。

人は幾つになっても恋をするし、恋をするとその人の幸せを願うものなんだな。
「サバサバしていて色っぽいのはせいぜい十代の終わりくらいまでで、四十代のサバサバは、ただしらじらとしているだけと思うけど、八十代から見ると、自分の齢の半分くらいなのだから随分若く感じるのかもしれなかった。」イタい言葉だ。
来年は、京都に行ったら、六波羅蜜寺の空也上人の光る眼を見たい。

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2011年05月23日

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「ただ空也上人に会わせたいと思った。なにもかも承知で、しかし、ただ黙って、同じようにへこたれて歩いてくれる人に会わせたいと思った。」

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2014年07月05日

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何だか最後のおじいちゃんにショック・・・
そこがなければ良かったのになぁ~
一瞬で読み終わります

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2011年11月25日

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口調などがいかにも山田太一さん、という1冊。
何が書きたいのかちょっとわからないな・・・自分の力量不足か?と思いながら読み進め、ラストでわかったようなわからないような?

まだまだ小説(脚本でなく)を書いて欲しいと思う。

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2011年10月06日

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「事故」を起こして勤務先を辞めた介護士の青年草介は、ケアマネージャーの重光さんの紹介で独居老人で80代の吉崎さんの世話を始める。
吉崎さんの指示で京都の六波羅蜜寺へ行った草介は空也上人像を見上げて、「事故」ではなく、自分がキレて車いすから放り出した認知症の老女の目を思い出し衝撃を受ける。吉岡さんはかつて自分のせいで交通事故死した一家のこと、空也上人像を見て赦されたのではないが一緒に歩いてくれると感じた経験を語る。
吉岡さんは40代で独身の重光さんに恋し、重光さんが草介を密かに意識していることを感じ取って、草介を自分の代理のようにして、重光さんと結婚させようとしたり、自分の目の前でセックスさせようとするが、重光さんに拒絶され、覚悟の上で介護なしで風呂に入って溺死する。
身寄りのない吉崎さんの葬儀を終えた夜、ふたりは吉崎さんの棺の前で結ばれる。

自分の親が介護が必要になり、介護施設の人と接点ができたので、介護に携わる人たちの「思い」を読むことができた。

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2011年07月20日

Posted by ブクログ

山田太一さんの小説ははじめて読んだ。小説というには物足りない気がする(行間を味わうのかなあ……? 私が味わいきれていないのだろうなあ)
でも、ひっかかりのある会話のやり取りはさすがという感じで、映像が思い浮かぶ。山田太一さんのドラマの空気があって、やっぱり小説で読むより映像で観たい気がする。弱っているときに読むには重すぎて、ちょっと読み続けるのが辛かった。

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2011年06月09日

Posted by ブクログ

ベテランの筆。口から「南無阿弥陀仏」の言葉が小さな仏となって出ている空也上人の像は一度見たら忘れられない。
老健施設の元職員だった青年と40歳代のケアマネが、在宅介護を依頼した老人を介在として温かい交流が芽生える・・という話。
年齢についての社会の概念、そんなものハズセヨってメッセージは、スナオに腑に落ちる。

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2011年05月19日

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