【感想・ネタバレ】新版 親ができるのは「ほんの少しばかり」のことのレビュー

あらすじ

子どもとの距離感に悩んだら――「ふぞろいの林檎たち」「岸辺のアルバム」……家族を見つめ続けた脚本家が語る親子論。わが子も他者であり、親の思いどおりにいくものではない。個々の魅力に気づき、その違いを財産だと思って喜ぶべきではないかと著者はいう。大事なのは「時代の基準」ではなく「その子の現実」。「親が子供にしてやれることの基準」は、「他ならぬその子」にしかないのだということ。「一般的基準を忘れて愛する」「言葉より深いものを子供は読みとる」「人生の意味」……子供が教えてくれる大切なこと。それは親をも育んでくれる。子供は親の成熟する場所だった――。私たちは弱い存在で、なまの真実には耐えられないところがある、などと思うことがあります。(中略)私は子供の「?」を、大切にしてあげたいと思う親でした。本当のことだけをいうように教育するなんてことはできないという思いがありました。(本文より)

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Posted by ブクログ

 子供が、自ら選んだハードルの高い高校に入学し、毎日かなりの無理をしながら頑張っている姿を見ていて、親にも何かしてあげられることはないかと気を揉み、この本を思い出し手に取りました。

 そう、本当は内容を読まずとも、ある程度は頭ではわかっているのです。親ができるのは、ほんの少しばかりの事しかないということは。ですので、できることを知りたいというよりは、余計なことをしてしまっている気がしたので、しない方が良いことを知りたいような気持ちで手に取りました。
 
 内容はとてもためになりました。「人間は、ある程度のいい加減さが必要である」という考えが核になっているようでした。30年ほど前に書かれたものだと思いますが、ここで書かれている考え方は、書かれた当時よりも、むしろより今の方が、皆が心しておかなければならないことなのではないか、と感じました。

 読んで結局、親はせっせとご飯と弁当を作り、子供があまりに無理をしすぎている時は少しだけ声をかけ、健康に気を配り、必要とされる経費を払うことを頑張ろうと思った次第です。それ以外の事はしない方が賢明なのかもしれません。(最近の感触からすると)

以後、心に響いたところの抜粋です。

◯(子どもの)ブレーキになりたくないと願います。親に、そんな権利はないし、責任もない。親のできる事は、ほんの少しなのだ、と思います。ほんの少しだって、随分大変なのだから、それ以上集中して邪魔者になるのはよそうよ、と思います。 160

◯テレビドラマを書き始めた時、犯罪を通して現代を書くことを封じ手にしていこうと思った。社会の歪みが犯罪ではくっきりと現れるから書きやすい。でも、罪を犯さない人の喜びや悲しみとか、平凡さの持っているやりきれなさなどがうずもれてしまわないか。34

→最近は大きな問題ばかりが注目されて、平凡な中にある苦悩が取り残されている気がする。普段の生活を良くすることがなおざりにされて、現在には薄く、政治などにもそれが反映されているようにも思う。

◯親の日常生活が結局は1番子供に影響与えている。親の持っている器量以上の影響を子供に与える事は難しい。60

◯子供が汚れを持ったときに、それにとても驚いてしまうとか、厳しく排除してしまうという事は、人間を知らない愚かで傲慢な所行だと思います。少し正直に自分を見る目があれば、子供に公明正大、清潔などを求めなくなるのではないでしょうか? 41

◯人間というのは、努力とかなんとかと関係なく、ある年齢になると何かに気がつく。その年齢の得とでも言うのでしょうか。反対に気がつかなくなる部分も出てくる。その都度その都度の年齢で輝くものがあるのではないでしょうか。そしてそれぞれの年齢の輝きが社会というものを潤わせているというふうに思いたい。
37

◯家族も拒んで、個を通して生きるには、代わりの共同体が育っていないと言う気がします。132

◯子供の汚れを知った時、それを嫌だと感じることまで封じることはできませんが、かっとなって闇雲に排除する事はやはり間違いだと思います。社会は本気で都合が悪くなって、大目に見ない時は、残酷なほど見ません。しかし、親が子供に対して、社会と同じ基準で裁いては親のの甲斐がないと思う。大目に見る事は親にしかできない場合もあると思います。
なんであんなにみんな大目に見てくれていたのか、不思議な気もしますが、そのおかげで自分で自分の至らなさに気づき、時間をかけてそれを正したりする余裕が持てたのだと思います。だから僕は若い人に対してできるだけ大目に見なければいけないと思ってしまいます。42

◯子供というものは親に全て見られていたら、成長しないところがあると思う。親の目を気にして、自分の中の汚れを排除して生きると、育たないところがあるように思います。暗闇で育つ、という部分が人間にはあるのではないでしょうか。 43

◯配偶者が、自分以外の人を好きになるとか、そういう気持ちが湧くことに敏感で、すぐ光を当て白黒つけないと、自分は偽りの人生を歩いているように思うなどと言うのは、人間を知らないことだと思います。43

◯後ろめたさを持つことも、自他の感覚を育てることです。どう嘘をついても、無駄だと思い知らせるような教育は、無力感を生み、親の言うなりになって、自分の世界を持たない人間を作るということにならないでしょうか? 45

◯社会的基準がものを言っている社会ですから、むしろ逆に、なるべく社会的基準といったものを捨てて、人を見る目を持とうとすることがとても大切なのではないでしょうか。53

◯一般的基準を忘れて愛する。イタリアツアーで歳とか職業とか気にせずにみんな対等に話をしている。いかに自分が他の場所でこういう付き合い方をしていないかを実感させられました。
59

◯人と喧嘩すると、生涯そのまま喧嘩していなければならないと言うような息苦しい律儀さを持っている人もいるから、私は勝手に、もっといい加減なもんなんだよ人間は、って教育しているつもり62

◯育ちの良い人は、さらりと甘えたり、緊張なく咳き込むことができるかな。90

◯「心の傷も栄養になる」という章のいじめについて。いじめから学ぶ事はたくさんあり、決してマイナスばかりではないというメッセージ。102

◯家庭内暴力のこと 
 戦後家庭がどんどん核家族になってきて、なるべく社会性を切ったところでほっとしようという風な方向で動いてきて、そのことで復讐を受けている部分でもあると思う。104

◯人間は正義を体現するために生きているのではないですから、善悪にあまり敏感すぎると、非人間的なところへ入り込んでしまうように思います。134

◯両親の期待を裏切りたくなくて、ある方向へ行きたい願いを諦めるというような事は、親というものが、かけがえがないだけに、ありがちなことだと思います。158

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2025年05月15日

Posted by ブクログ

子どもが外で遊んで帰ってきても、遊んでいたわけではなく、孤独な思いをして帰ってくることもある。つまり、検討違いもあるのだろう。
著者の教育方針はかわいがる。つまり、集中するとのこと。子どもに過剰に反応して、腫れ物に触れるようにしない。
子どもの心の暗闇に触れない。
一般基準を忘れて愛する。
人の決めた基準をものさしから外すことは時に大切なのだろう。
自分の生い立ちを交え、語られており興味深い。
書名の通り、親ができるのはほんの少しばかりのことなのだろう。

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2019年05月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

山田太一著のは、はずれがない。
子どもに全部光を当てなくても良い。陰の部分があった良し。この言葉は響いたわ。

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2014年11月08日

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