西村由美のレビュー一覧
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「貴重な真珠」がとりわけ好きだった。ラウレンゾーは、脅迫されても拘束されても、真珠を預かった責任を放棄しない。かっこいい。
ラウレンゾーとジャコモの双子は、性格も願望もちがう。だけど、どんな困難があったとしても正しい道を歩もうとする点は同じ。正しい道を歩もうとするから高い壁が立ちはだかる。でも、意思と知恵の力でもって乗り越えていく。そんな兄弟の魅力が堪能できる作品がこの「ふたごの兄弟の物語」。
拘束されたラウレンゾーを、今度はジャコモが助けにやってくる。上巻の「タラムーラ城の銀のジョッキ」ではジャコモが城に捕えられ、ラウレンゾーが救出した。ここではその反対で、胸が熱くなる。上下巻通して、兄弟の固い絆が見事に描かれていて心を打った。互いを思う心の美しさは疑心暗鬼な王様の心を変えるほどで、「走れメロス」を思い出した。
子どもに必ず出会ってほしい作品で、今5年生の子どもたちに読み聞かせ中。上巻の1章、3章、4章まで読んであげようと思う。 -
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ネタバレ◯本の構成の話
ティウリがお世話になった人に挨拶しに行く話が丁寧に描かれていた。物語のエンディングにあたる、お世話になった人への挨拶は、ダイジェストのように短くカットされていることは多いから、その部分が詳細に物語られる様子が新鮮に思えた。
◯かっこいい大人
ティウリを導いた大人(ウーベェン王、ナトリウス、ダナホウト王)たちは、若者(ティウリ、ピアック)たちに、耳を傾けるができる。若者に自分で考えることを伝える。その決定に、責任を持つこと持たないことどちらも大切だとを教えるため、若者が決定がひと段落しその後に生じる発見に気づくまで待つ。人の成長を待つことができる人ってかっこいいなぁと思った。
◯ティウリの感想
ティウリが騎士になるための儀式と、「人を助ける」という本質的な騎士道を天秤にかけて後者を選んだ。ほかの人には助けを呼ぶ声が聞こえなかったし(?)、ティウリは「余人を持って変えがたいこと」ができる人だった。
だが目的を達成してから自分が唯一の任務でないことを知る。これや他の要因で、ティウリは旅の誇りを失ってしまう。だが、彼はその感情を自分で再解釈し、お世話になった人との触れ合いにより、葛藤から抜出していく。
ダナホウト王国へ帰還したティウリの態度から、人間的な器量の大きさ、今後も成長していく未来像を見た。
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可愛らしい絵の表紙からはまさかテロがからむ話だとは思いもせず。
記念列車のイベントで大事な役を任された車掌は、時間通りに発車しようとしていたまさにその時、ヨリーがおじさんを止めます。ハリネズミが列車の下に入り込んでいると。ヨリーとひげおじさんは必死にハリネズミを探し、すっかり汚れてしまい、ひげおじさんなんて、車掌なのに列車に乗せてもらえませんでした。母の住むホームで、ハリネズミを数えているうちに、ハリネズミではないものを見つけたひげおじさん。直ちにこれを処分しなければとホームを飛び出します。それは時限爆弾だったのです。さらにヨリーはもう一つ列車の下に仕掛けてあったと恐ろしい事を告げ、2人は列車を追いかけます。
いわゆる幼年文学なのですが、ハラハラさせられます。見かけで判断しては真実を見落としますよ、と語りかけているのでしょうね。
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王道の少年冒険小説。王道を侮るなかれ。
旅の目的は、隣国の王へ秘密裏に手紙を届けること。
道中、手紙を届けさせまいと邪魔をする敵や、旅の目的を話せない主人公を訝しむ人に足止めされつつも、一つ一つクリアして、仲間や道具を手に入れながら目的地を目指す。
極々シンプルなストーリー展開だけど、道中の危機をどう乗り越えるのか、無事に手紙を届けられるのか、ハラハラドキドキしながら読み進めた。
一つの難題を超えると、信頼出来る仲間が増えていくのも飽きさせない。騎士や隠者、街の人々に王、魅力的な人が多くいる。特に騎士はかっこいい…
語り口はいま流行りの児童書に比べれば、単調で堅苦しく感じるかもしれないけど、そのシンプルさが物語の展開を際立たせているように思う。
なので、絶対映像化作品も面白いんだろうな、と思いつつ、この語りでの良さとは別物なんだろうなという気がしている。
同著『白い盾の少年騎士』でティウリとピアックの旅はまだ続くようなので、そちらも読みたい。 -
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なかなかまとめて読む時間がなく、読み終えるのに何日もかかりましたが、登場人物たちの冒険の時間を考えるとこうやって何日もかけて読むのもありかな、と。
私は慣れない名前や地名はあまり気にせずどんどん読んでいき、読むうちに人間関係など理解していくタイプですが、それに苦手意識を持つ人は、作者自身が描いた地図や人物紹介を見ながら読むといいかもしれません。
読んでいるうち、ティウリが17歳の「少年」であることを忘れそうになりますが、ピアックの存在は相変わらず心強く、そして、原書はわかりませんが、翻訳の口調で登場人物それぞれの異なる性格が生き生きと伝わってきます。
映像とはまた違う、自分で想像する楽しさが味わえる、おすすめの本です。 -
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作家のラヴィニアの家には、謎めいたドアがある。ドアの向こうには多くの国があり、パスポートとビザをもつ人だけが開けることができるらしい。トム先生のクラスのラウレンゾーたちは、作家からの課題に取り組みながら、自分と仲間たちを深く知っていく。
「本を読むのは、ドアを開けるのと似てるの。いま、この本を開いたら、あなたをまっているのはなにかしら?」
「物語を読むこと・きくこと」の喜びや力強さがすごく伝わってきた。本を開けばどんなところへも行くことができるというメッセージはもちろん、先生の読み聞かせを「手のかかる子どもたち」がとても楽しみにしていたり、ラウレンゾーとパパを今でも繋いでいる思い出が『メネッティさんのスパゲッティ』の読み聞かせであったり……。
作家ラヴィニアが出してくる粋な課題に取り組むなかで、子どもたちの関係性が徐々に変わり始めるところもよかったな。もちろんそれは、トム先生の優しい眼差しがあったからこそで、それが感じられる場面は読んでいてとても心地よかった。渡し守がポツポツと語る大事な言葉も魅力的だった。 -
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うりふたつの双子ラウレンゾーとジャコモが、さまざまな困難にぶつかりながらも、助け合い、知恵を絞り合って乗り越え、正しい道を歩んでいく物語。
兄弟が別々の道を行く分かれ道が印象的だった。人生は「選択」の連続だということを象徴するような分かれ道。この物語には二人の兄弟が自分の進む道を「選択」する場面が多く出てくる。性格が全然違うラウレンゾーとジャコモだが、二人が選択する道はいつも自分の良心に真っ直ぐな道だ。
「盗み」の力を証明しなければならないが「泥棒」にはなりたくない。客に預かった品を譲るよう脅されるが、どうしても渡せない。愛する人と結ばれるためには嘘をつかなければならないが、偽りたくない。
だから、二人の行く手には困難が待ち受ける。どうやってこのピンチを乗り越えていくんだろう、どうやってこの問題を解決するんだろうと、どのお話もワクワクしながら読めた。そして、決して楽な道に逃げず、たとえ困難でも自分の信じる道を行く二人の姿がかっこよかった。そんな二人に心を打たれていく人の姿が描かれていることもよかった。 -
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アンネ・フランクは、過去ではない。
ナチスの手から逃れるため、かくれ家にひそみ暮らしたアンネ・フランク。どんなにおそろしい状況の中でも希望を失わずに生きた彼女を支え続けたものは、彼女が「キティー」と名前をつけた日記帳だったーー。アンネが無邪気に遊んでいた幼い頃から、悲しい最期を遂げるまでを描いた物語。
「書くことは、アンネにとって何よりも、いちばんすてきで、いちばんたいせつなことだったのです」
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アンネの一生を、十のテーマ(章)に分けて描く。各章冒頭に、アンネが生きていた時代の様子を簡潔に紹介していて、背景知識がない子どもたちにとって理解の助けになる。
希望を失わず「書き」続けるアンネの姿にも心打たれるが、生きることを諦めず励まし続けるアンネの父や、計り知れない勇気をもってかくれ家に住む八人を支え続ける支援者たちの姿にも深く感動した。
どうして人間はこんなに残酷になれるのか。ユダヤ人を迫害し、大切な思春期を生きるアンネたちにかくれ家におびえて暮らす生活を強いたナチスに怒りが渦巻いた。
アンネの最期を見届ける悲しみも深かった。ただ、「その後」の章で、支援者のミープが大切に保管していたアンネの日記やノートをオットーに渡し、オットーがアンネの夢を叶えさせるシーンに、悲しみだけではない涙がこぼれた。 -
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オランダ人の女性作家が、書いたアンネ・フランクの伝記。
過去のアンネフランクについての文献を基に、家族がドイツを離れてからの、オランダでの生活が書かれている。アンネをはじめとした家族や友人の会話、またアンネの気持ちや様子が生き生きと描かれていて、読み手はアンネに寄り添って物語に入り込むことができる。その上、小さな10の章に分かれているので、中学年でも読みやすい。
しかし一方で、章の初めには、歴史的背景が(異なる字体で)説明されていて、これがフィクションではないことを認識させられる。
児童がこの事を知る事で、自身の生活を振り返えり、ひいては世界の人々の生活に思いを馳せてくれる事を願う。