大前粟生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
乗り越えるために過去や目の前の出来事を物語化して飲み込んでいく。それをただの傷として、蓋をせず、向き合ったまま静かに受け入れる。
向き合い続けることは痛みを伴うけど、蓋をし続け日常を蝕むよりもずっと健全。
そういうことを思い出させてくれる。
物語化するのと同列に、感情をラベル化することで整理しやすくなるけど、実際には100%当てはまるものではないから、やっぱり口に出して、人に話していくしかないよなぁ。
ぬいぐるみ〜と同じで、今すぐどうにか出来るものじゃないけど、人と対話することを諦めないでいきたいという希望があっていい。
たまに読み返したい。 -
Posted by ブクログ
7つの短編集
新進気鋭の作家たちによる現代のリアルを切り取る7つの物語。
わかってるようでちゃんと理解していなかった
「推し活」「VTuber」についての理解が深まりました
どの作品も味わい深くオススメできるものばかりですが個人的には
『あなたに見合う神さまを(佐原ひかり)』が一番心に刺さりました
人を支配するもの、人の幸福を妨げるものはおしなべて暴力よ
と語る権藤さんのカッコよさと、少しづつ勇気をもって言葉の暴力に立ち向かう主人公。。
初めて著者・佐原ひかりさんを本作品で知りましたが他作品も追いかけてみます
あと石田夏穂さん作品はほぼ全部読んでいますが短編向きなのかも、とも感じました
=======本の概要======
『世界でいちばん透きとおった物語』の杉井光、『六人の噓つきな大学生』の浅倉秋成、『#真相をお話しします』の結城真一郎など、最注目の作家が集結!“今を生きる私たち”をリアルに切り取る7つの物語!
彼らのその後が読める。本書のための書きおろし! 『世界でいちばん透きとおった物語』スピンオフ「君がため春の野に」収録!
これが当たり前になった時代で、あなたならどう生きる?
信者に人生を壊されたVTuber、バズって神格化された女子高生、呪いのアプリの謎に迫る調査員、娘に似た女性をマッチングアプリで探す男、学校の机に「推し」の祭壇を作る彼女、上司を騙して残業代を増すOL、未だに動く亡き夫のアカウント。それぞれの物語に隠された、生きていくための秘密と噓。ベストセラー『世界でいちばん透きとおった物語』のスピンオフも収録した、新進気鋭の作家たちによる現代のリアルを切り取る7つの物語。
かわうそをかぶる(浅倉秋成)
人気音楽クリエイターが殺された。犯行動機は『VTuberを守るため』。彼と交際の噂があったVTuber雨露ゆゆは失意の中、事務所に言われて釈明配信の準備を進める。身も蓋もない噂だけで人生を壊されたゆゆは、これまでの人生が走馬灯のようにフラッシュバックしてくる。
まぶしさと悪意(大前粟生)
信じられないだろうが、ショート動画を撮りたくてうちに入学してくる子はいる。理由は赤羽海荷がいるから。動画がバズり、カリスマ女子高生として崇められた彼女は、ある日を境に動画を投稿しなくなった。かつて副担任だった私は彼女の様子が気になり、動画を撮らなくなった理由を探ろうとする。
霊感インテグレーション(新名智)
訳あり社員が集まる会社に入社した私は、「幽霊からプッシュ通知が届くらしい」といった報告が多発している通称“呪いのアプリ”の調査に乗り出す。どこにも不具合が見つからない中、ひょんなことから解決の糸口を見つけ出すのだが……。
ヤリモク(結城真一郎)
三十二歳。独身。そう彼女は信じているが、実際は四十二歳。妻子持ち。我ながら罰当たりな男。マッチングアプリでお持ち帰りを企んでいる男は、今回も小柄でショートカットの女性と出会い、いつものテクニックで目的を果たそうとする。
あなたに見合う神さまを(佐原ひかり)
権藤さんの机には、ダンス系ユーチューバーWataruさんのグッズを奉っている祭壇がある。クラスでは浮いた存在の権藤さんだが、ある日、日課の早朝ランニングをしていた私は、推しのダンスを練習している権藤さんを見つける。
タイムシートを吹かせ(石田夏穂)
月末。上司のアカウントにログインをして、今月の食費分だけ残業代をかさましする。それは私と会社を繫ぐためのもの。パソコン音痴でパワハラは当たり前、前時代的な上司、通称“レジェンド”の介護をしている私は、どうにかこうして会社を辞めずに生きている。
君がため春の野に(杉井光)
前作『世界でいちばん透きとおった物語』を書きあげた僕は、「SNSがテーマ」のアンソロジーに短編を依頼される。無事書き上げた僕は打ち上げで、亡き夫のSNSアカウントが未だに動いているという相談を受ける。そこに隠された秘密と噓とは。 -
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ネタバレ琴美は失踪した想い人の新太を親友のミアと一緒に探す。弱い琴美を可愛いと言い、琴美を守ろうとするミアは、弱い人に寄り添いありのままに全肯定してくれるインフルエンサーとして有名だ。失踪の直前、新太にはチワワのピンバッチがつけられていた。他にもチワワのピンバッチを知らないうちにつけられる「チワワテロ」が世間に起こり、そこからチワワがブームになっていく。新太を探すうちに、迷惑行為通報系YouTuberのMAIZUとチワワテロ、MAIZUが炎上するきっかけになった「チワワを救った少年」の事故との関連が浮かび上がってくる…
世の中の人はみんな弱くなりたい。強いものは責められるから、弱くなって、守られ、肯定されたい。そんなチワワシンドロームは、たしかにあるかもしれない。自分は被害者だ、傷を負っている、と自分で声高に言うことは、客観的にみるとなんかダサいな、って感じするけどまあ心理としてはあるかもな。その弱さを可愛いと言い、そんな君を愛しているよ、と全肯定して人気を得ていくミアは、弱さに寄り添っているように見えて実はすごく支配的で怖いんだけど、そんな彼女も悪なのではなくて、周りから期待される「ミア」から解放してくれる存在を求めている。世の中を善か悪かで二分して世間の評価は下されるし、善は同情を買い悪は炎上する、一方でこの小説に出てくる人には完全な悪はいない。多分MAIZUを半殺しにしたミアはこの後逮捕されて、世の中は人気インフルエンサーの逮捕で炎上するんだろうけど、ミアとて完全な悪とは描かれていない。世の中本当はそんなものなのに、みんなが善か悪かで物事を見ていて、だからこそみんなが確実に善であるところの弱さを求めるんだろう。生きづれえな。何はともあれ、かわいいチワワは絶対的善。 -
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私は七森や麦戸のように、自分に無関係でもあるすべての出来事に感情移入してしまうタイプなので、自分が肯定されている気がしてとても大事な本になった。
でもすべて表裏一体で、七森や麦戸の「やさしさ」は時に弱く、甘い。そして、=正しさではない。だから白城の存在が際立つし、彼女のスタンスも=優しくないではなくて、別種の「やさしさ」でもある。
映画の方が「ぬいぐるみとしゃべることを超え、人間と対話することのあたたかさ」が簡潔にまとめられているけれど、小説の方がどんな人でも物事でもすべて表裏一体でいいや悪い、正しいや間違ってるで括れないことの葛藤がありありと描かれていてよかった。
この物語に共感できる人はきっと繊細で人の気持ちに敏感なやさしい人なのかもそれない。でも、この物語に共感できない人を「やさしくない」と決めつけてしまうことも暴力性があって嫌だなと思う。
そういう風に、「〇〇は〇〇だ。」と確定的な意見を言えないことは配慮という優しさでもあるし、時に自分の意見を持つ覚悟が足りないことでもあるなと思う。
私みたいな弱い人間にとって、この本はお守りになりました。この本を書いてくれた大前さんに、心から感謝を申し上げたい。 -
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初めましての作家さん。薄い本に1800円もするなんて購入してまで…。なんて思いながら読んでいたけど、自信家のコメンテーターの男と片足が不自由な男との共同生活から自信家のコメンテーターの内面はおれなんてという全然違う性格で麻酔クリームを塗る事でコメンテーターとして活躍している内情と片足が不自由なだけで就活で内定をもらえず憐れみの目を向けられるだけの卑屈になった男性、浮浪者同然の生き方で真逆の2人がお互いを認め合い生きにくい世の中で心開き存在を認めていく。もう少し掘り下げどう人生を全うしていくのか知りたかったけどみんな悩みを抱えて鎧をまとっているのとそれを開かせるきっかけは自分から変えていかなくてはいけないと励ましてくれる一冊。
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Posted by ブクログ
地方都市にあるバブルの時にできて、今は存続が危ういかもめジムが舞台。
会員は高齢の方ばかりだけど、ジムのロビーでは彼らが話す恋バナがいつも盛り上がりを見せている。
そんなかもめジムでバイトする高校生の柏夢(かしわ・ゆめ)ちゃんは、ひそかに利用者やジムで働くスタッフを観察していろいろと想像を巡らせていたりする。
そんな中利用者のひとり70過ぎの西原さんと話すようになって、近くの河原で彼の恋愛相談に乗ったりします。
夢ちゃんも自分の話をするようになり...。
なんとなく殺伐とした今の時代に、懐かしくしみわたる人の優しさ。
ちょっとおせっかいかな?と戸惑いながらも人との距離を詰めていく夢ちゃんの姿に自分を投影したりして、思わずがんばれ!って心で呟いちゃう。
大前さんの小説は初めて読んだけれど、期待以上に良かった。
他の作品も読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
恋愛にはいろんなかたちがあって、人の数だけ種類がある。いろんな種類があるわけなんだから、それをわざわざカテゴライズしなくてもいいと思うけど、カテゴライズされることで安心するところがあるのもたしかで。人間ってややこしいな〜って思う。多様性、他人を受け入れること、って昨今当たり前になってるけど、言葉にするのは簡単でも、実際自分の身に降りかかってみるとどうしたら正解なのかわからなくなりそう。でもどうしたらいいのか考えて、悩んで、相手を思い遣って、それから自分のことも大事にすることが必要なのかも、と思いました。圭吾くんいい人すぎるよ〜と思ってたけど第三部ずいぶん人間らしくて同じ人間でも恋愛するとこんなに変わるんだって思った。視点がころころ変わるのに、不思議と読みやすかった。