大前粟生のレビュー一覧
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女性の書き手が綴る身体や性にまつわるエッセイ「私の身体を生きる」の、男性版。
女であり女であることに違和感なく生きてきた私にとっては、女性の書いたものの方が当然共感するところは多かったけれど、男性たちの綴る文章もとても興味深かった。
男女問わず、どんな属性の人だってそれぞれ尊重されるべきではあるけれど、同質である必要は全くないなと改めて思う。
女性と比べて、身体やジェンダー、性のことを直接的に書いている人がかなり少ない印象を受けた。
と同時に、男性が男性性を語ることの難しさとはこういうことかと納得させられる。社会において強い側とされる側が何をどう語るのか、語って良いのか、難しいのかもしれないけれど、もう少し踏み込んだ内容が読みたかったな、というのが正直な感想。
身体より社会、に意識が向いているように感じた。
その中でも田中慎弥さんの偏屈さが滲む文章がとても好きだった。好きだったとかも言われたくないのかなとか思っちゃう。なんだかいじらしい愛しさがある。
最後の最後で朝井リョウが‘やっている’。
両手を掴んでいたはずなのに、その手を掴んだまま大きく振り回されて、遠心力で吹っ飛ばされたような気持ちで本を閉じた。
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Posted by ブクログ
ネタバレ私が好きな作家さんばっかり…!
個人的にかなーり豪華なアンソロジーだったので、とても楽しく読むことができた。
「かわうそをかぶる」「あなたに見合う神さまを」が特に好きだったかなぁ。
「かわうそをかぶる」 浅倉秋成
ゆゆはイサナだったってことだよね?
犯人を仕掛けたのはゆゆだったってことだよね?
きゅーきゅー言っててこわ。
「まぶしさと悪意」 大前粟生
悪口コメントのミームってすごい発想。
「霊感インテグレーション」 新名智
ややムズ。シンプルにシステム理解が追いつかないだけっていう。
デマに踊らされた人間が、嘘を信じて人を殺しちゃうの、現代でもありそうで怖いね。
「ヤリモク」 結城真一郎
殺害目的がやばい。
そして最後の1文もやばい。
真意がわかったときに、そういうことかーーーとなる。どんでん返し系。おもしろい。
「あなたに見合う神さまを」 佐原ひかり
一番好きだったお話。
権藤さん、とてもいいキャラ!!!大好きだ。
途中で出てきたるりちゃんと若尾の話とか、父親の話はなんなんだろうと思ったけど、人を支配したり幸福を妨げるという暴力を、いろいろな形でとってくる奴らだったんだろうか。
それに対して自分の好きなものを好きという、自分が信じるもの・拠り所にするものを自由に決める権藤さんはかっこよく映っただろうなぁ。
嘘がちらばる世界のなかで、対照的に真実が光る。
「タイムシートを吹かせ」 石田夏穂
やっちゃダメだけどレジェンドがうざすぎてもはや良いと思う。
最後のオチが気持ちよくて好き。
「君がため春の野に」 杉井光
『世界でいちばん透きとおった物語』のスピンオフ!
ほろりとする結末がステキ。 -
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ホラーでフェミニズムでヒューマンドラマな、分類しがたい小説
ちょっと難しい小説だった。読む人を選ぶかもしれない。
まず、どうしても残念だったこと。それぞれのセリフが誰のものなのか、判別しづらい。
さて、本作のあらすじを読んだとき、痛快エンタメ作品なんだな、と思った。でも違う。あらすじ詐欺だ。
決して誤りではないけど、読み味はちっとも痛快じゃないし、それは本作のごく一部でしかない。
まず最初はDVを巡る物語だ。痛々しい描写が多く、思わず目を背けたくなる。
そして、これがとんでもなく読みにくい。語り部の「わたし」と、語られる「あなた」が誰なのか理解しにくいからだ。でも、これは意図的なもので、その仕組みは中盤で明かされる。
そして、ようやくあらすじの場面に行きつく。そこからのスピード感といったら、またとんでもない。幽霊による男性への凄惨な殺戮描写でページが埋め尽くされる。私には苦手な描写。
そして後半は、彩姫の視点から見た窓子の思い出。窓子への執着や愛着、彩姫自身が抱える悩みなどが綴られる。これは切ない。
なんとも言えない小説だったけど、世の中の男への行き場のない怒りは伝わってきた。そういうのは嫌いじゃない。 -
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劇団俳優の日記という形式で書かれた小説。この日記の書き手が演じる役(菜月ちゃん)について解釈し、自分のものにしようとする様が描かれている。
菜月ちゃんの幼少期に先生からかけられた「呪いの言葉」、母親との関係、最後は「ぶつかり女」になるという筋書きを自分なりに肉付けしながら菜月ちゃんの感情をトレースしていく。
菜月ちゃんの睡眠時間だとか、使っているシャンプーが何かといった細かい部分まで設定して入り込み、最後には役に喰われてしまう。とまとめると、ストーリーとしてはありきたり感があるが、日記形式で読むと主人公が日々少しずつ変化していく様子が生々しく感じられた。
そして途中から、この日記は誰が書いているのかわからなくなる。主人公と菜月ちゃんの境界線が曖昧になってゆき、更に実際に開催された展覧会について書かれた部分では、著者の感想がそのまま書かれているのではないかとも思えてくる。不思議な体験だった。 -
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ネタバレくっついたり離れたりの2人。そして結婚。そして。一緒にいて気があって楽しくて、でも言いたいこと言い合えてるかと言えばそうではなくて。飲み込んだ言葉や気持ちが澱のように溜まっていく。結婚ってそんなところも折り合いつけていかなきゃなんだろうけど。許せない一線って人それぞれだからね。そんなどうにもならなくなった2人の間に友人の幽霊が現れたことによって奇妙な3人同居生活。おもしろかったです。前半は2人にモヤモヤしたりもしたけど、友人幽霊が登場してから一気にファンタジー。いや、原因や生い立ちなどはしんどくなるけれども3人だからやってける感じがよかったです。
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よき。テーマに共感。
僕自身、男性的な社会の気持ち悪さとその気持ち悪さに加担してしまってることへの罪悪感を抱えて生きてきたから七森に共感。
でもその上で、白城の立場にもすごく共感した。
あとがきを読んでいても思ったが、白城が悪人として描かれていないのがすごくいいと思った。
結局、他人は他人だし傷つけたくないんだけど、でも関わりたいんだよね。
96 白城もその場にいて、麦戸ちゃんになにも聞かないぬいサーの空気を、破滅しあうようなやさしさなんじゃないかと感じた。ただ、そこにいるだけを肯定したり、しんどい状態でいることを肯定する空気。それは、でも、そこから抜け出さなくてもいいといってるみたいに見える。やさしさって痛々しい。あぶない。やさしさがこわいと白城は思う。
109 やさしすぎるんだよ、と白城は思う。傷ついていく七森と麦戸ちゃんたちを、やさしさから自由にしたい白城は、ぬいぐるみとしゃべらない。