大前粟生のレビュー一覧
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ネタバレネガティブな気持ちやつらい気持ちを人に話すと、その人までつらい気持ちにさせてしまうから、そういうことは人に話さないでぬいぐるみに話す。そういうやさしい人たちの物語だった。他者を「もの」ではなくて、自分とは異なる人間として尊重すること。好きになるとその境界が分からなくなりがちだけど、あるいは他者をジャッジする視線は他者を対象化しているけれど、相手を一人の相手として尊重し、見守ること。支配するのでも無関心でいるのでもないその距離感って実はすごく難しいと思う。やさしい、というのは、距離をとりすぎて無関心に近くなりがちだと気付かされた。
オートロックではない家に住める側の性=男性である七森は、セクハラ的な風潮に合わせてしまった過去の自分を悔やみながら、今の自分の行動が女性に気持ち悪がられたり怖がらせたりしないように気を遣いながら生きている。麦戸ちゃんは痴漢を目撃してしまってから、何もできなかったり他人事だったりした自分が嫌で、人間が怖くて、大学に行けなくなった。そんな二人が、ぬいぐるみに話すだけじゃなくて、お互いの領域に一歩踏み込んで、あるいは自分を少し開示して、それぞれに話し、聴くのがよかった。やさしさは無関心にも似ている。だから敢えてぬいぐるみには話さない、という白城さんも本当に良い。誰も傷つかない世界が来れば良いのに、と願いながら、そう言う世界は絶対来ないから、ぬいぐるみに話を聞いてもらいつつ、本当に信頼できる人にはこうして話せるって大事だなと思う。表題作以外の3編も似たようなもので、相手を傷つけないようにしながら自分も侵犯されないように距離を守る人たちの話だなと思った。
私も七森と同じで、友達として好き、と恋愛として好き、の違いはわからない。でも、七森と麦戸ちゃんの間にあるような信頼感というか、一人で生きていくのは心細いから、何も言わなくてもただ隣にいるだけの存在みたいなのはパートナーとしてあらまほしいと思う。 -
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ネタバレたくさんの恋愛の形が出てくる。相手と自分のスタンスが違う時、どう折り合いをつけるか。。という答えのないことについて心の動きが細かく書かれている。相手にあわせればいいということでもない。作品にも出てくる通り、性別の違いなどもあり、「対等」は難しいなあと共感した。
あとは片付けもモチーフとして出てくるのだが、片付けも結局、自分の中の優先順位をつけることであり、主人公はそこにも苦しさを感じている。いっそ全部捨ててしまいそうにもなったり。
解決策や答えがあるわけじゃない。相手も自分も大事にしたいと思っても結果的には自分が傷つくことも傷つけることもある、て受け入れることなのかなあと思った。
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ここが良かった、このセリフが胸を打ったとか、そういうものを残しておけないくらい引き込まれて読んだ。
あやめの不自由さや孤独、そのおもてにあるような快活さが好きだし、圭吾がお化けから始まり葛藤をじっくり炙るように燃させながらひとつ結論を得るまでが好きだし、青木の「おまえが幸せにならないと私は……」とか元木の「誰だって自分の信じたい考え方に洗脳されに行っているだけ」とかは手を固く握りたい衝動を得た。
ポリアモリーという言葉が出て、それについてもじっくり扱っているが、それに限らずとにかく愛についての話。ひとがひとを愛そうとすることをとにかく言語化した物語だった。 -
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ネタバレ映画化すると聞いて原作から読んでみました。表題作は独特の文章と主人公のあまりに繊細な思考がしんどくてしんどくて。でもそこがとても良い。私もたぶん学生の頃に漠然と考えていたはずのことが丁寧に丁寧に言語化されていて、痛々しいったらなかったです。(いやでも私はこんなに優しくなかったしもっとアホでした)
とはいえ、インターネット黎明期だった私の学生時代とは他者や社会との関わり方も全然違っていて、今の時代だからこその生きづらさもヒシヒシと伝わってきて。「あーこんなに先回りしちゃえるんだ」とか「あんなに繊細なのにここはスルーできちゃうんだ」とか。今っぽい感覚が新鮮でもありました。
映画祭ではよりによって監督がマンスプレイニングされたとTwitterで話題になってましたが、さもありなん。わかりたくない人には存在すら認めたくない世界観だと思います。優しく繊細で傷つきやすく、見る人が見れば「面倒くさい」思考がどこまでもまとわりついてきて、とても息苦しい。そこが良いのです。映画をみるのがめちゃくちゃ楽しみです。 -
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日本のお笑い界で、男性優位の世界で、男性自身が違和感を持ち意識を変えていこうとする姿を見せてくれる本は初めて読んで、しかも男性の作家さんで、それがすごく嬉しかった!フェミニズムは女性だけの話ではない。古くからある根拠のない男らしさ・女らしさや価値観からみんなが解放されるべき。
「自分が楽しんで笑っているものがダメなところを持っているのだと認めたくなかった。」(p84~85)というところ、すごく気持ちがわかる…。今こそ変わりたい。
彩花と友達になりたいし、つぐみぼんぼんぴょん丸のネタが観たい…!
めっちゃ読みやすい。2日間で読めた。早い人だと数時間で読めるのでは。 -
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「本当に素晴らしい小説は、真に差別的であることはありえない」と言っていた人(たぶん佐藤亜紀『小説のストラテジー』だと思うが不確定)がいたのだけど、「おもろい以外いらんねん」もそういう意味で、そういう話だったと思う。「笑い」は「普通」からの逸脱とそれに対するツッコミで成り立つものだが、その「普通」が変わりつつある令和という時代には誰かを傷つけてしまうこともある。誰かの容姿や性を踏みつけて取る笑いに順応できる空っぽな漫才師と、それでひとりだけ売れていく相方に「漫才をしろ」と怒る相方、誰かを踏みつけて笑いを取ることは良くないのだと気づいてはいても、過去にそれに加担してきたことを認めるのが怖い親友。三者三様の葛藤には、ネット上でのフェミニズム活動が盛んになってきた現代が、価値観のアップデートの過渡期にあることがとても生々しく現れている。
「おもろい以外いらんねん」の含意が、「おもろければなんでもいい」から、「人を踏みつけなくても成立するほんまのおもろさを見せてみろ」に変わりつつある時代なんだろう。 -
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ネタバレGOAT '24年秋号での紹介をきっかけに買った本(中古)。
よかった。タイトルの通り恋愛の話ではあるけれど、恋をして相手に伝えるあたりまでの話が並び、その時期の感情「この気持ちをどうしたらよいのだろう?」が書かれていた。(どろどろした恋愛話ではなかった)
恋は思い詰めてはダメだと思う。特に10代・20代の若い頃は。好きな相手に彼氏・彼女がいても、それがずっと続くかはわからない。いつか別れるかもしれないし、いつか自分の気持ちも変わるかもしれない。だから思い悩み過ぎずに話ができる関係を始めればよいと思う。…とこの本を読んで改めてそう思った。若い頃の自分にこの本を読ませたい。
そして最後、「これからも、また明日ねと言って別れたい」で終わるところもよかった。 -
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ネタバレ島崎和歌子さんが出てきませんが、読んで良かったです。
優しくあろうとすることは、自傷行為なのかもしれない。
全ての欲望が暴力に感じてしまう。
実際、全ての欲望は暴力なのかもしれない。
何も気にせず豪快に行動してくれることも優しさかもしれないし、気にして何もできなくなることも優しさだと思う。
てか『優しい』ってなんだろう
そもそも優しいことは正しいことなのか。
かといって優しくないことが正しいとも思わないし。
優しくあることって全然易しくないし、全然柔しくもないし、優しくすらもない。
それでも優しくあることを諦めない、強烈な弱さと強さを感じました。