大前粟生のレビュー一覧
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ネタバレネガティブな気持ちやつらい気持ちを人に話すと、その人までつらい気持ちにさせてしまうから、そういうことは人に話さないでぬいぐるみに話す。そういうやさしい人たちの物語だった。他者を「もの」ではなくて、自分とは異なる人間として尊重すること。好きになるとその境界が分からなくなりがちだけど、あるいは他者をジャッジする視線は他者を対象化しているけれど、相手を一人の相手として尊重し、見守ること。支配するのでも無関心でいるのでもないその距離感って実はすごく難しいと思う。やさしい、というのは、距離をとりすぎて無関心に近くなりがちだと気付かされた。
オートロックではない家に住める側の性=男性である七森は、セクハラ -
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ネタバレたくさんの恋愛の形が出てくる。相手と自分のスタンスが違う時、どう折り合いをつけるか。。という答えのないことについて心の動きが細かく書かれている。相手にあわせればいいということでもない。作品にも出てくる通り、性別の違いなどもあり、「対等」は難しいなあと共感した。
あとは片付けもモチーフとして出てくるのだが、片付けも結局、自分の中の優先順位をつけることであり、主人公はそこにも苦しさを感じている。いっそ全部捨ててしまいそうにもなったり。
解決策や答えがあるわけじゃない。相手も自分も大事にしたいと思っても結果的には自分が傷つくことも傷つけることもある、て受け入れることなのかなあと思った。
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ここが良かった、このセリフが胸を打ったとか、そういうものを残しておけないくらい引き込まれて読んだ。
あやめの不自由さや孤独、そのおもてにあるような快活さが好きだし、圭吾がお化けから始まり葛藤をじっくり炙るように燃させながらひとつ結論を得るまでが好きだし、青木の「おまえが幸せにならないと私は……」とか元木の「誰だって自分の信じたい考え方に洗脳されに行っているだけ」とかは手を固く握りたい衝動を得た。
ポリアモリーという言葉が出て、それについてもじっくり扱っているが、それに限らずとにかく愛についての話。ひとがひとを愛そうとすることをとにかく言語化した物語だった。 -
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日本のお笑い界で、男性優位の世界で、男性自身が違和感を持ち意識を変えていこうとする姿を見せてくれる本は初めて読んで、しかも男性の作家さんで、それがすごく嬉しかった!フェミニズムは女性だけの話ではない。古くからある根拠のない男らしさ・女らしさや価値観からみんなが解放されるべき。
「自分が楽しんで笑っているものがダメなところを持っているのだと認めたくなかった。」(p84~85)というところ、すごく気持ちがわかる…。今こそ変わりたい。
彩花と友達になりたいし、つぐみぼんぼんぴょん丸のネタが観たい…!
めっちゃ読みやすい。2日間で読めた。早い人だと数時間で読めるのでは。 -
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「本当に素晴らしい小説は、真に差別的であることはありえない」と言っていた人(たぶん佐藤亜紀『小説のストラテジー』だと思うが不確定)がいたのだけど、「おもろい以外いらんねん」もそういう意味で、そういう話だったと思う。「笑い」は「普通」からの逸脱とそれに対するツッコミで成り立つものだが、その「普通」が変わりつつある令和という時代には誰かを傷つけてしまうこともある。誰かの容姿や性を踏みつけて取る笑いに順応できる空っぽな漫才師と、それでひとりだけ売れていく相方に「漫才をしろ」と怒る相方、誰かを踏みつけて笑いを取ることは良くないのだと気づいてはいても、過去にそれに加担してきたことを認めるのが怖い親友。三
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ネタバレかもめジムのスタッフや顧客4人それぞれの視点で各章が語られる。最初は、高齢者の出会いの場になっているというかもめジムや、そこで31歳下の男性に恋をして「やりてえ」とか言ってる75歳のおじいさん(西原さん)についていけないというか、そのノリに合わないような気もしたけど、現代的な繊細で優しい感覚で恋愛が語られていて、最終的にはよかった。告白はされたものの遠距離恋愛になるから、付き合うかどうか会いに通って決める、という道重徳弥に、一方的に決めるのはキモいから私からも会いに行く、っていう柏夢の最後の考え方がとても好きだ。恋愛の責任はどちらかが負うものでもなく、主導権も片方の手にあるのではなく、担いあっ
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映画が良かったので読みました!
文体というか雰囲気が独特で…たまに戻りながら読みました。本作の雰囲気を残しつつ、かつ描きたい主題やキャラを損なわず映像化できた映画に改めてすごいと思いました…。
小説でもう少し欲しいなと思った情報を、映画がしっかり補完してくれていたイメージ。
ほか収録作品も良かった。
辛いよ!しんどいよ!みたいな事があって、それでも各々のしんどさがあって、でも譲れないところもあって、生活しながらちょっとずつしんどさと向き合い手放さず、極端に後ろ向きや過激にもならず…
明るさは本人の努力、みたいな言説をしみじみと思います。