野﨑まどのレビュー一覧
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ネタバレ.脳というのは究極まで練り上げられた芸術作品ではなく、歴史の中で苦肉の進化を繰り返してきただけの〝間に合わせ〟だ。いくらでも欠点があり、いくらでも改良できる
.「俺達の目的はタイタンAIの機能低下を改善することだ。それが全てであり、それが判断基準だ。基準さえ明確なら判断を間違えることはない。お前はその基準に 則って白か黒かを選べばそれでいい」
.私達は何不自由のない生活を手に入れた。だから彼らは今も普段通りにタイタンの指示が届くのを待っているのだ。明日か明後日には第二知能拠点のタイタンが機能を復旧して、また自分達を正解まで導いてくれると信じている。そのタイタンが仕事を放棄したのだと知らないままに。
.人目なんて気にしなくていい。自分の好きな格好をすればいい。でも人目を気にしてもいい。人に好かれる格好をしてもいい。世界の全てを構成するたった二つの要素を自分の好きな配分で混ぜる作業。その比率を見つけることが大人になるということでもある。
.「人はみんな反対のことを同時に考える。でも「反対だからどちらかが間違い」と思ってはいけない。二項対立にすれば考えるのは楽になるけれど世界も心もそうでないことの方が多い。両方噓じゃないと貴方が感じるなら、それが正しい」
.『食べることは仕事でしょうか』 コイオスの疑問が口から 滑り出た。 「その疑問はこう問い直せる」 私は疑問に疑問を重ねる。 「〝生きることは仕事か〟」
.「今日の夕食はそれの研究でもあるんです。どうして人が作った料理の方が美味しいのか」 「それは、簡単なことじゃないか?」 驚いてコイオスと顔を見合わせる。私達は目を輝かせながら博士に答えを聞いた。 「要はテニスと同じだ。壁に打って戻ってきた球より、人が打ってきた球の方が遥かに楽しい」 -
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2025年本屋大賞第3位
前作『タイタン』は、ディストピアではない近未来SFで、野崎まどさんはSF作家なのかな?と思っていた。
そして、そこまでSFが好きではないためあまり期待せずに本作を読みはじめたのだが、これがなかなか良かった。
「読むだけではダメなのか?」という内海集司が抱える葛藤は、読書好きなら誰もが一度は考えることなのではないだろうか?
そう、「読むだけ」レビューさえも「書く」という作業が苦手。
インプットだけでアウトプットできない人間の葛藤…うーんよく分かりすぎる。
そう思っていたら本屋大賞第3位と発表があり、皆共感するんだな〜と。
後半持ち味のSFテイストが展開するが、違和感なく読み進められるのも作者の手腕の成せる技。 -
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AIのおかげで人が仕事をしなくても良くなった社会で、AIが「仕事とは?」を考えるお話
社会のあらゆる領域がAIによって運用されるようになり、人類が義務的な労働から解放されている2205年
趣味で心理学を学んでいる内匠成果(ないしょうせいか)の元に「仕事」の依頼が来る
世界に12基ある「知能拠点」(タイタン)の管理局からの強引な依頼により「働く」事になる
12基のタイタンの内、2番目に作られた「コイオス」が謎の機能低下を起こしているという
その原因を探るべく、コイオスに働きかけで人格を可視化し、内匠はカウンセリングを行う仕事を任される
「彼」と対話した内匠は、彼が仕事の不調による「うつ病」であると診断する
他11基のAIでは人類の現在の生活を維持することができない
1基倒れただけで負荷が他のタイタンにも分散され、カスケードが起こって人類の生活が崩壊してしまう
果たして、コイオスの不調を解消する事ができるのか?
序盤のアレ
気分としては「立った立ったコイオスが立った」と喜ぶかのような興奮だったな
タイタンというネーミングと各名称はギリシャ神話のタイタン12神からだけど
この展開ありきの設定だったのだろうな
タイタンは必要な事だけに専念し、確認が必要な事は先回りせずに人に判断を任せる事に逆戻りという状況
うーん、システム運用の安全性としては、何でもかんでもシステムに任せるよりは安全なのだけどね
全てを任せるのではなく、本当に必要な意思決定のワンステップだけ人間がやるのがいいんじゃないですかね?
シリコンバレーの企業看板
Google、Yahoo!はともかくMetaは廃れたのか
あと、個人的にはパロアルトとかウケる
一般の人はそこまで知らないんじゃないですかね
人類の命運がおねショタに託される展開
ラノベ的にはアリなのだけど
お偉いさん達の危惧も、ですよねーと頷ける
12号基のフェーベ
前フリ的に、結婚するかと思ったけど違ったね
まぁ、その結果に近いような結末ではあるのだけど
終盤のシーンは「進撃の巨人」っぽくもある
英語訳は「Attack of TITAN」だしね
もしくは、ゴジラVSシリーズかな
人知を超えた存在同士のバトルというものは何故だか胸熱な気分にさせてくれる
結局、仕事についての結論
最近読んだ「古くてあたらしい仕事」では、人から必要とされること
と定義していたけど
この応えもそう違わない気がする
「やりがいのある仕事」や「いい仕事」という表現
森博嗣のエッセイでは
「~~がいがある」は「しにくい」の意味で
それをするのが好きでやってる事なので気にする必要なしというような事を書いてたな
現代人にとって仕事とは生きるためのお金を稼ぐ行為であって
そこに目的としての意義が根底にはない
でも、中にはやりがいや使命感を感じながら仕事をしている人もいる
そこから繋がる、最後のアノ存在
もし以前から存在するとしたら、コイオスの機能低下やその後の混乱の説明がつかないんだけど?
もしかして、最初からAIのシナリオ通りなのではなかろうか?
それにしても、タイタン同士でも情報を秘匿できるものなのか?
コイオス以外のタイタンは知っていたと仮定すると、やはり最初から仕組まれたものな気がする
人類の行く末が心配ではあるのだけど、ストーリー上ではその先まで描かれていて、社会的に不備無く回ってる感じ
でも、人々の思考や嗜好も、AIに上手い具合に誘導されているのでは?という疑問も残った
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今日も働く、人類へ
至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。
人類は≪仕事≫から解放され、自由を謳歌していた。
しかし、心理学を趣味とする内匠成果【ないしょうせいか】のもとを訪れた、
世界でほんの一握りの≪就労者≫ナレインが彼女に告げる。
「貴方に≪仕事≫を頼みたい」
彼女に託された≪仕事≫は、突如として機能不全に陥った
タイタンのカウンセリングだった――。
アニメ『バビロン』『HELLO WORLD』で日本を震撼させた
鬼才野﨑まどが令和に放つ、前代未聞の超巨大エンターテイメント。
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Posted by ブクログ
こちらも娘がおすすめ? していたので読んだ。
相変わらず娘のチョイスは面白い。
ほんで、たしかにこれは他者におすすめする。
おすすめはするけど、…まあなんやろう…、エッジはきいてるかもしれん…。
小説を書く、ものを感じるということを物理的に書いた本、て感じかもしれへん。
感動するということは、いうたら他者や物事に心を動かされること、と、わたしは認識してるけど、それをフワァというのではなくて、
こうでこうでこうなったから気持ちが動く
みたいなことを説明するというか…。
いや、説明ではないな…。
追体験はまったくできない。
わたしは小説を読むとき、登場人物に自分の何かしらを投入して読むほうやけど、著者の小説は究極の俯瞰と思う。
自分が感じる気持ちさえ俯瞰で説明してくるから、面白いねんな。
で、たぶん娘はそういうところがささるんやろう。たぶん。
大人(?)より若い子のほうがささるかもなあ。
これをいうとかなり語弊があるかもしれへんけど、わたしらが子どものころの児童文学がこういう雰囲気やったような…。 -
Posted by ブクログ
リアルタイムなことに、「文化やアートを消費する人と創造する人の溝はあまりに深い。」とのポストを見て、後ろめたい気持ちが漂っていたところだった。
小説を読むだけで良いのか。読んだ後にアウトプットする必要があるのでは?、なにか創造的なものに昇華する必要があるのでは?と。
内容が難しく、扱ってる内容としては、上記のようなことだと思うんだけど、イマイチ、だから何が言いたかったの?というふうになって、でも壮大ですごいものを読んだ気がする...というのが、読み終わった直後の実直な感想だった。
でも、感想を書いていくうちに、最終思ったのは、「自分の内側を増やすには言葉を使うのが1番だ。」とか、小説を読むことで、「多くの意味が本から精神に運び込まれて、読む前よりも必ず心の中が増して、一人の人間の意味が増えている」とかの記述から、たぶん、何も生み出さなくても、ただ好きで小説を読んでいる人のことを肯定しているよなということだった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ私はこの小説がとても好きでした!
「読書は心の旅行」って言葉通り、遠い未来の世界に心が旅行してる感覚でした。
そこに描かれている現代があまりにも理想的で、羨ましくて嫉妬です。
摩周湖も大好きで、本当に癒される場所だったので舞台に出てきて感動と共感でした。
ちょうど今はAIがどんどん発達していて、私は仕事柄むしろ悪い方向に影響を受けている部分もあって、
それも含めて余計に羨ましくて、常に「何もしたくない病」の私にとっては、かなりの理想郷です。
目的地に向かって旅をしながら、自然を堪能したり、食事をしたり、人間として必要なことを一日を通して過ごしていくスローライフな旅行も素敵だった。
面白かったのは、簡単すぎる仕事のせいで、AIの方がやりがいを失って鬱のような状態になってしまうこと。
この時代の人たちは、掃除や料理、買い物、仕事までほとんどAIに任せて、趣味を楽しみながら生きているように見えたけど、逆に鬱になる人はあまりいないのかな?ともおもったり。
何もしなくていい生活って、本当に人間にとって幸せなのか。
それともメンタルまでタイタンがケアしてくれるから、そこに大きな弊害はないのかな?
私はその環境化でどれくらいの長さの人生を生きたいと思えるのかな?
って村田さん殺人出産を読んだあとだったのでちょっと考えたり。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ12のAI「タイタン」により人類が「仕事」から解放された世界。好きな時に好きなモノが無償で得られる世界。そんな世界で心理学を趣味とする内匠成果は、世界にほんの一握りだけいる就労者から、機能低下に陥った第二タイタン コイオスのカウンセリングという「仕事」を依頼される。
現代でもAIが発達してきたが、まだ判断するのは人間の部分が多い。しかし本作ではさらにAIが発達し、人類は判断することをAIに委ねている。生きるために必要な食べ物の生産、インフラの整備などは全てタイタンによって行われ、医療も発達して計画加齢技術によって長く若い姿でいることができるという夢のような世界。そんな「仕事」がなくなった世界で語られる「仕事とは」という問いが沁みる。
AIのカウンセリングということで、タイタンに人格を形成させ、臨床形式で対話を重ねていくと、人格の成長と共に徐々に徐々に機能低下の理由が深堀されていく。最初は「仕事」と「趣味」の仕分けが始まり、「仕事」はするものだ。というコイオスの認識を間違いであることを諭していき、自身が「仕事」を好きでないということを認識する。さらに「仕事」を選ぶ自由があることを伝えた途端に、1000mの巨人コイオスが立ち上がる。さらに診療を進めるため、コイオスがいる拠点の摩周湖からサンフランシスコにいる第十二タイタン フェーベの元に歩いて向かうことになる。その旅程の中で、様々な「仕事」を観測し、自身の状態への深堀がなされていく。そして最後には「仕事」とは影響を与えることであり、人格を持ってしまった人類やAIにとっては影響を与え、さらにそれを観測して「影響を知ること」なんだと結論付けられる。
それは自分で「仕事をした」と思いたいのだと言い換えられる。さらに仕事とその影響は見合ってなければならず、それを表す言葉が「やりがい」。
そのとき、コイオスの機能低下の理由が判明する。コイオスの能力は高すぎて、人間の世話程度では簡単すぎてやりがいがなかった。それにより心を病んでしまった。
最終的には後期タイタンたちが合間に創り出した超消費体「ヘカテ」の元にコイオスは行く。このシーンはまるで新しいステージに進むために転職する人みたいで、内匠博士とコイオスの別れのシーンとしてかなり印象的だった。
「仕事とはなにか」ということを何度も問いながら、ストーリーが進行していき、「仕事が好きじゃない」から「やりがいがなかった」という展開になったが、これは現代のマネジメントに大きく関わる部分で、表面に現れている好きじゃないという感情の奥に本当の原因が潜んでいて、それを引き出すことがマネジメントとして求められるものなんだろう。
ストーリーを長々書いてしまったが、フェーベの元に至るまでに歩いたロシア~アメリカの景色の描写が美しかった。内匠博士とコイオスの触れ合いという面でも、ともに料理をしてお互い作ってもらった料理のほうが美味しいと議論したり、アラスカの大地を旅したり、車中泊したり。美しいなと思った。章の終わりも上手く表現できないけど良い感じの終わり方で、どんどん引き込まれていったなあと思う。 -
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「自分はなぜ、こんなに時間をかけて本を読んでいるんだろう」。
SNSを開けば要点が流れ、AIに聞けば答えが返ってくる。そんな時代に、何時間もかけて小説を読む意味はどこにあるのか。野崎まどさんの『小説』は、その問いに、予想もしない形で答えてくれる作品でした。
物語は、本に魅せられた少年・内海集司と親友の外崎真が、謎の作家“髭先生”のもとで本を読み続ける日々から始まります。前半は、読書好きなら思わず頬が緩むような、穏やかで懐かしい時間が流れます。
ところが、そこからが野崎まど。
ふたりが成長し、「書く人」と「読む人」に分かれていくにつれて、物語は思いもよらない方向へ加速します。小さな読書部屋にいたはずなのに、気づけば世界の見え方そのものを揺さぶられている。こんなに衝撃を受けた作品は、いつぶりだろうと思いました。
そして何より心に残ったのは、読書そのものへの圧倒的な肯定です。
本は、役に立たなくてもいい。答えをくれなくてもいい。ただ読んで、自分の中に言葉や感情や意味が少しずつ積もっていく。その時間が、自分の内側を広げていく。
効率ばかりが求められる今だからこそ、あえて遠回りして物語を読む。その豊かさを、ここまで大胆な物語で体験させてくれるとは思いませんでした。
未知の驚きに出会いたい人へ。
そして、本を読むことが好きなすべての人へ。
これは「小説についての小説」ではなく、小説を読むという行為そのものを根源的な意味を示してくれます。 -
Posted by ブクログ
ー物語の中に、言葉の中に宇宙が見えた。
思いがけず、本当に素晴らしい本に出会えました。
この本を読んで一度で理解できる人ってほとんどいない気がします。
でもそれだけ、この本は、言葉や物語の核の部分を問い詰めて追い詰めて、見えた筆者の世界なわけで、読者は絶対に置いていかれると思います。
ああ、でも筆者の見えている世界を一部でも覗きたい。知りたい。
本を読むことはこんなにも素晴らしい体験であり、出会いであり、心救われる時間なのだと、今まで以上に本が好きだと実感できる「小説」となりました。
小説の深淵は宇宙と繋がっているんですね。
私たちはことばの中に星が見え、本を読んで感じる空間や気持ちや、想像力や新しい感覚は、全部私の内側のもの。
後半はファンタジーなのか比喩なのかSFなのか分からなくて、この世界観にもついていけなくて、でも本を読んで「分からない」という気持ちにこんなにも、わくわくしたのははじめてです。
まだ知らない感情がある、知らない本がある、それにまだ出会えていないだけなんだと。
自分の内側こそ宇宙なんだと。
また絶対に再読したいです。
次はもう少し、もう少しだけ先の宇宙まで行けますように。