あらすじ
芸大の映画サークルに所属する二見遭一は、天才とうわさ名高い新入生・最原最早がメガホンを取る自主制作映画に参加する。
だが「それ」は“ただの映画”では、なかった――。
TVアニメ『正解するカド』、『バビロン』、劇場アニメ『HELLO WORLD』で脚本を手掛ける鬼才・野崎まどの作家デビュー作にして、電撃小説大賞にて《メディアワークス文庫賞》を初受賞した伝説の作品が新装版で登場!
貴方の読書体験の、新たな「まど」が開かれる1冊!
アニメ映画『HELLO WORLD』などを手掛けた鬼才のデビュー作!!
主人公の二見遭一は、天才・最原最早にスカウトされて映画製作に巻き込まれる。しかし、最原が作る作品には秘密があって……? 芸術大学を舞台に、青春とミステリを融合させた傑作です。
この作品の特筆すべきところは、メインヒロイン・最原最早の魅力です。謎の新入生・最原最早。手を替え品を替え示される、彼女の異常な"天才性"が物語をより一層面白いものにしてくれています。彼女の作る映画の秘密とは? 目的は? そのすべてが明かされたとき、物語は戦慄のラストを迎えます。
野崎まどワールドに初めて触れる方も、既にほかの作品を読んだことがある方も、ぜひご一読を!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
天才少女・最原最早。最原が作ったアムリタを見て衝撃を受けたニ見。
アムリタの影響力のすごいなぁ、むしろ怖いな最原とか思いつつ読んでたら、最後の映画館で明かされる真実に愕然。
ポップな文体に騙されましたわ。
最原の初めてできた彼氏・定本との愛の物語なのね。その過程が怖過ぎる。呪いか…いや、魔術だなこりゃ!
Posted by ブクログ
[映]アムリタ
一体いつから学生映画サークルの青春小説を読んでると錯覚していた…?
これは愛の物語なのか、ミステリなのかホラーなのか。すごい小説に出会ってしまった˙ᴥ˙。
登場人物も魅力的で一気読みでした。
続編もあるみたいなので読みます˙ᴥ˙
Posted by ブクログ
アムリタから2までの6作読んだけどこれが一番おもろい。他も全部おもろいけど特に。
犯人の動機が「愛する男に命をかけて守ってもらいたかった」とか「命をかけて守った女に殺されたと知った時の顔が見たかった」とかなかなかのサイコっぷりでやばい。
そして読み返すとビデオ屋の店長のセリフからあの時点からずっと入れ替えさせられてたのだと気づく。
Posted by ブクログ
一体いつから? 最初から
一風変わった小説を読みたいならこれ!
サクっと読める劇薬
青春映画製作・失恋物語
せっかく二見くんを定本さんにしたのにね
最原さん本人ではなく、才能に惹かれてたんだね......
最後の方は読みたくなさすぎて娼婦風スパゲッティーを食べる億泰みたいな感じになってました
結末を見たくない物語は恐らくこれが初めて
続き?後日談? があるらしいのでそちらも読んでみようかと
Posted by ブクログ
主人公やヒロインたちの掛け合いのテンポ感がよく、サクサク読めた。映画サークルを巡る青春のストーリーかと思いきや、ヒロインについては端々にどこか引っかかりがあり、だんだん雲行きが怪しくなる。最終章に近づくにつれ背筋がゾワッとしました。前半と後半でガラッと印象が変わった不思議なお話でした。続編まだまだあるので読みます
Posted by ブクログ
短くて読みやすいけど面白かった。オチは予想してなかったから驚いたけどあのまま平凡に終わってくれても…という気持ちもある。
とりあえずシリーズ?を全部読みたい。
Posted by ブクログ
結構バタバタとしたコミカルな映画作成の話。
だった筈が最後はホラーの様なオチ。映画の可能性を追求し、どこまで感動させられるか、どこまで揺さぶれるか、どこまで感情を操作出来るか。
さすがの「野崎まど」作品でした。
Posted by ブクログ
一気読み。
今年も残すところあと2週間強。ここにきて今年読んで良かった本ベストに食い込もうとする作品に出会うことになるとは。
あえて何も語りません。ただ、野崎まど先生にそしてこのシリーズに出会わせてくれたXに感謝を。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ有名ではないけど一部ではカルト的人気がありそうな本作。
とっても面白かったです!!
短いのでサクッと読めちゃいます。
でもかなり引き込まれました。
近日中にこのシリーズを全作読み切りたいと思います。
Posted by ブクログ
映画サークルの活動として、天才とうさわ名高い新入生・最原最早がメガホンを取る自主製作映画に参加した芸大生たち。そんな彼らの活躍を描く、ハートフルな青春小説。
では、なかった。
物語は主人公である二見のツッコミを中心として軽快に進んでいくのだが、ライトノベルを連想させる読みやすい文体とは裏腹に、定期的に目に飛び込んでくる狂気を孕んだ描写とのギャップが癖になり、食い入るように読み進めていった。
多くの創作物には作中で天才と称され、目覚ましい活躍する登場人物たちが存在する。だが、私の今後の読書体験において、本作に登場する最原最早を凌ぐ天才が現れることはそうないだろう。
むしろ、この作品を書いた野崎まど氏こそが天才ではないのかと、読み終えて心底思う。
作中において、異常なほど感情を揺さぶる映画のことを「魔法」や「薬」と表現しているのだが、まさに本作自体が「それ」に近いなにかであることは間違いない。わずか200ページ前後の劇薬である。
裏表紙のあらすじ通り、読書体験の新たな「まど」を開け放たれ、濃密な読書体験と得も言えない読後感を味わえた。
Posted by ブクログ
200ページ弱しかないのにこんなに引き込まれるとは思わなかったです。
人格全て変わっちゃうけどどんな映画なのか
観たい自分がいますw
Posted by ブクログ
野崎まどさんのデビュー作品を読むことができました。野崎まどさんを知るきっかけになった「バビロン」三部作へと繋がる片鱗が伺えました。
人間という生物を科学者の目線で眺めた上で、閾値を超えた人間が及ぼす影響を観察しているような作品です。主人公は読者寄りの人間で、いわゆる多数派の人間の目から、超越した人物と接していきます。主人公と一緒に、閾値を超えた人物のことをなんとか理解し、解釈していくプロセスに引き込まれていきます。時にコミカルな面もあり学園恋愛物語の展開に、読者としてはいろいろと気になることになり、ページが止めることなく最後まで導かれていくのです。
本書に登場する絵コンテのごとく、野崎まどさんの本作品で、自分自身も何かしらの影響を受けてしまっているのかもしれないという「不安」な気持ちを持ちました。ただ、受けてしまった影響を認識できていない可能性もあり、何事もなく野崎まどさんの次の作品も手に取るのです。
現実の世界で、強烈なサブリミナル効果を作ることができるのか?
この方面の文献を調べたくなりました。
Posted by ブクログ
220ページほどで且つ軽快な語り口で半日も経たず一気に読んでしまった。
一言で感想を言うと「な、なんじゃこりゃあ」
6部作の1作目ということなので、早く続きを読みたい。ていうかこれがデビュー作なのかぁ。すごいなあ。
読んでいて、川又千秋の『幻詩狩り』を思い出しました。
野崎まどさん入門編?
野崎まど先生が好きな友人が
こちらの[映]アムリタをまず読む事を
勧めてくれました。続きが気になって
あっという間に読めました。野崎まど先生の
他の著書が気になって仕方なくなるような
奇妙な一冊でした。
最初に話した野崎先生ファンの友人によると、
アムリタ
舞面真面とお面の女
死なない生徒殺人事件
パーフェクトフレンド
2
を順番に読む事で、驚くべき仕掛け?に
気がつくことが出来ると聞いています。
私はこれからパーフェクトフレンドを読みますが、この順番通りに読んでいて面白いので、
初めての方におすすめの順番なんじゃないかと
思います。
Posted by ブクログ
為人の十分な説明がなく、登場人物に深く肩入れ出来ない。最原最早の天才性や、兼森と二見の関係(二見の安否を心配するほどか?)など。
なんだか薄気味悪い読後感
途中までただの大学生活を綴っているだけかなと思っていた。説明が少ないことが最原の怖さを引き立たせているように思う
そんなに心が動く映画は見てみたい!!
様子を聞いた感じ全然面白くなさそう
Posted by ブクログ
野崎まど先生の言葉選び、世界観全てが楽しかった。
嘘を会話に混ぜるとの記載から、どこまで本当のことだったんだろうかと感じる。映画の見方の変化が始まるときに、見せられたのだろうか。結末は主人公にとって良かったのか悪かったのか。
Posted by ブクログ
流行りにはならない。
けど、綺麗な心理描写とか優しい物語とかに飽きて、一風変わった作品が読みたい人にオススメ。
普通の大学の映画サークルでの、映画製作の話だと思ったら、後半で人智を超えた怒涛の展開で、読んだ後、放心状態。
野崎まどさんの作品は怖い。「小説」でもそう思った。
ホラーとかの怖さじゃなくて、理解できない事柄を理解させられてしまうのと、ファンタジーと現実との境界を曖昧にさせられる感覚。
Posted by ブクログ
実は積読気味になってた著書。
読み始めたら『ああ、なるほど』と展開が読めたつもりがどんどん予想外な方向にガツンとやられた。読破後一応シリーズものとわかりすぐに次作を購入。いい作家さんに出会えたことに感謝です。
Posted by ブクログ
あなたは、『仮に天才監督が居たとしたら、どんな監督だと思いますか?』
『映画』を見たいと思う時、何がその起点となるかは人それぞれだと思います。シリーズものであれば
それだけで起点となると思いますが、そうでない場合はどうでしょう?好きな『役者』さんが出演しているから、内容が面白そうだから、話題になっているから…等々その起点にはもちろん正解はありません。
では、その理由が『天才監督』が指揮した『映画』だという場合はどうでしょうか?
『役者を使って、スタッフを使って、それで面白い映画を作れる人』。
『天才監督』をそのように定義した場合、そんな人物が作った『映画』だと思うと、それだけで興味が湧いてもきます。
『誰にも真似できない。でも絶対的で凄絶で唯一で無二の映画。それはきっと、天才と呼ばれる人間に変装した、神様が作った映画なんだよ』。
う〜ん、ますます見たくなってきましたね(笑)。
さてここに、『天才監督』と言われる少女が『監督』する作品に『役者』として参加することを決めた一人の男子大学生を描く物語があります。『映画作り』を興味深く見るこの作品。そんな『作業工程』がわかりやすく記されてもいくこの作品。そしてそれは、『僕は最原最早の作る映画が見てみたい。それがどんなものかを知りたい』という中に謎が謎を呼ぶ野﨑まどさんのデビュー作な物語です。
『大学の巨大な並木を抜けて、掲示板の前で足を止め』、『休講は無い』と確認したのは主人公の二見遭一(ふたみ そういち)。『原付の事故』による『学生の訃報』を目にし、『他人事ながら少しだけ気持ちが重くな』った二見でしたが、『サークル棟に向かって歩き出した時には』、『再び幸せな気持ちになってい』ました。『健康的で見目麗しいビジュアルと、それを裏切らない溌剌とした性格で誰からも好かれている』という『映画学科の華』、『撮影コースの画素はこび(かくす はこび)』に『呼び出された』二見は、彼女の『撮影の腕』を『一番魅力的』に感じてもいます。『我らが井の頭芸術大学』の『サークル棟の』『四階の端』にある『映画サークル「キネマ・マグラ」』へとやってきた二見は、『同学科の同学年な』ものの『画素さんと話したのは昨日が初めて』でした。『僕は役者コースなので、撮影コースの画素さんとは正直接点があまり無い』という二見。そんな中、『画素さんが撮る映画に役者として出演してほしい』と言われた二見は『二つ返事でOK』を出しました。『多分顔の印象とか背格好の都合で選んだのだろうと思うも『彼女のカメラの前で演技できるというのは大変魅力的な誘い』と思う二見は、『結論としては画素さんが大好きだ。映画のような恋をしよう。そうしよう』と思います。そして、『満面の笑みで』画素に出迎えられた二見は、早速画素から説明を受けます。『さて何から話そかな…』、『えーとですね、映画を撮ります…六月の末には完パケしたいんですね』、『でもコンテがもう出来てるので。だから後はスタッフが揃えば、すぐにでも撮影インできるんですよ。二見君が最後のスタッフなので、撮影期間は二見君の決断で左右される』と話す画素は、『ま、でも。今この場で出演を決めてっていうのも乱暴ですし。コンテを読んで面白そうだったら是非ってことで』と言うと『絵コンテ』を手渡し、『了解です』と二見は受け取ります。『というか、そのー。自分たちで言うのもなんなんですけど。この映画、絶対良い映画になると思うんですよ。コンテの段階でもかなり引き込まれる内容でしたから…もう本当に楽しみで』と、『絵コンテについてまるで他人事のように話す画素』。『画素さんが撮ると聞いて、画素さんに誘われた。だから画素さんが監督だと思いこんでしまっていた』二見は、『その、今回のコンテを描いた人は…』と『一抹の不安を払拭するため聞いて』みます。それに『監督ですよ』と答えられ『あ、監督さんいるんですね…』と返す二見に『そりゃあいますよ。私は撮影専門ですし…』と画素は話します。それを聞いて『もっともな話だ。しかしそうなると問題なのは監督が誰かである』、『いくら撮影の腕が見事でも、いくら役者に力があっても(無いけれども)、監督の裁量で映画の出来は大きく左右されてしまう』と不安になる二見を見て、『そんな顔しなくても平気ですよぉ』と『困り顔で言』う画素は、『二見君も多分知ってると思いますけど。ほら、あの、有名人ですよ。一年の最原最早(さいはら もはや)さん。天才の』と話します。そして、『彼女の噂は入学する前からすでにあった』という『天才美少女監督最原最早の大学デビュー作』に役者として出演することになった二見のそれからの日々が描かれていきます。
“芸大の映画サークルに所属する二見遭一は、天才とうわさ名高い新入生・最原最早がメガホンを取る自主制作映画に参加する。 だが「それ」は’ただの映画’では、なかった”と内容紹介にシンプルに紹介されるこの作品。2009年12月に”メディアワークス文庫”で刊行された野﨑まどさんのデビュー作です。しかし、私が手にしたのは、”電撃小説大賞にて《メディアワークス文庫賞》を初受賞した伝説の作品が新装版で登場!”と補足される通り、2019年9月25日に”新装版”として刊行されたものです。
そんなこの作品は、〈あとがき〉で、野﨑さんご本人が”本書は’映画監督’のお話でした”と語られる通り、『映画監督』が登場する『映画作り』のお話でもあります。しかし、その舞台は『井の頭芸術大学』という『芸大』の『映画サークル「キネマ・マグラ」』となり、”学園物語”の雰囲気感も漂います。物語では、『映画作り』に打ち込む学生たちの姿が描かれていきますが、まずはそんな中心メンバーについてご紹介しておきましょう。
● 『映画作り』に関わっていく学生たち
・二見遭一: 主人公、大学二年。『主演男優』
・最原最早: 大学一年、『監督、コンテ、主演女優』
・画素はこび: 大学二年、『撮影』
・兼森: 大学三年、『音楽と音響全般』
・定本由来: 大学三年、『監督、シナリオ、コンテ、主演男優』を担当予定だったが、『二週間前、原付の事故で』逝去
何か隠されているのでは?と思ってもしまう意味ありげな名前が付けられた5人。物語に登場する人物もほぼほぼこの5人のみで完結します。とは言え、定本由来はこの作品の冒頭で、訃報が掲示板に掲出されていることを二見が目にするシーンがある通り、すでに故人となっているため、実質4人の登場人物のみで物語は展開していきます。文庫本240ページという分量ではありますが、4人のみで展開していく物語は、思った以上に密度感が濃い印象を受けます。一方で『映画作り』を描いていくこの作品では、『映画作り』の舞台裏を見せてもくれます。6つの章から構成されるこの作品は、その章題がそもそも『映画作り』を表してもいます。
● 「[映]アムリタ」の章構成
・〈I. 絵コンテ〉
・〈II. 撮影〉
・〈Ⅲ. 編集〉
・〈Ⅳ. 試写〉
・〈Ⅴ. 試写-Ⅱ〉
・〈Ⅵ. スタッフロール〉
『試写』が二つあるのが少し気になりますが、『映画』がお好きな方からすれば、章題だけでもこの作品が気になって仕方がないのではないでしょうか?そして、作品中では、『映画』の用語についても触れられていきます。
『完パケというと撮影後の編集やらダビングやらの作業も完全に終わらせるという意味だ』。
『完パケ』と聞いてなんの違和感も持たれなかった方もいらっしゃるかもしれませんが、私には、何?という思いが込み上げました。しかし、野﨑さんはそんな疑問で読者を放り出したりはしません。このように自然な会話の中で疑問を埋めてくださいます。一方で興味深いのは、『映画作り』の中で視聴者側があまり意識していない『作業工程』に意識を導くものです。
『映画についてあまり明るくない多くの人は往々にして、映画は撮影して終わりだと思っているものだ』。
そんな書き出しで説明されるのが『編集』です。『映画の工程の中でもかなり大きな力を持つポジション』という『編集』はこんな風に説明されます。
『撮影とはあくまで編集で使う素材を作る作業に過ぎない。撮ってきた材料を使って「映画を作る」作業が編集であり、映画制作の肝と言っても差し支えないだろう』。
↓
『どんなに素晴らしいカットをどれだけ撮影できたとしても、編集次第では簡単に平凡な映画に変わってしまうという事でもある』。
なるほど。『編集』という工程の大切さにものすごく納得させられます。『映画の運命を左右する超重要な作業工程』という『編集』。物語では、そんな『編集』を作品の中心に位置付けながら展開していきます。もちろん、”学園物語”レベルなのでどこまでも好き嫌いが分かれそうではありますが、『映画作り』に興味のある方には是非手にしていただきたい一冊だと思いました。
そんなこの作品は、主人公の二見遭一が、『同学科の同学年』で『撮影コース』で学ぶ画素はこびから『映画に役者として出演してほしい』と依頼を受けたことから動き始めます。『撮影』は自身が担当するものの、監督は別にいると話す画素は、それが『天才』と噂される一年生の最原最早であることを説明するとともに彼女が描いたという『絵コンテ』を手渡すことから物語は動き始めます。上記した通り、文庫本240ページしかないこともあって、下手に書くとネタバレにもなってしまうこの作品ですが、冒頭の成り行きで想像される以上に、かっ飛んだ展開を見せます。その片鱗を窺わせるのが、
『読み始めてから五十六時間が経っていた』。
そんな言葉で説明される『意識が蘇った』二見を襲う衝撃の瞬間です。最原が描いた『月の海』という作品の『コンテを読み続け』るだけでそんな時間がかかってしまうという異常感。『僕の理解の範疇を超えている』という経験の先に、二見は最原と初めて会い、会話します。
・『「月の海」の絵コンテを読まれましたか?』
・『体に異常はありませんか?』
『絵コンテ』を読んだことの確認をする次の言葉が『体に異常』がないかを確かめる質問という不思議感。しかし、最原はさらに不思議な質問を続けます。
・『二見さん。愛とはなんですか?』
・『何かを愛したことがありますか?』
・『私の事を愛していますか?』
二見が最原と直接対面したのはこの時が初めてです。そんな中に、この問いかけは全くもって意味不明です。そして、そんな最原は、こうも語ります。
・『映画は素晴らしいものです。映像を通して、人の人生に語りかけることができる』。
・『私たちの作る映画は』『とても素敵なものになりますよ』
これが自分の前で言われている言葉だとしたら、恐怖でしかありません。そもそも『五十六時間』という途方もない時間の経過を招いた『絵コンテ』含め最原最早という人物への不思議感が読者を一気に襲います。物語は、最原が見せる謎の言動を節々に垣間見せながら展開していきます。そんな中で、二見は自らの決意を固めます。
『僕は最原最早の作る映画が見てみたい。それがどんなものかを知りたい』。
その一方で、
『絵コンテに五十時間も囚われてしまった僕がもし完成した映画を見たら、一体どうなってしまうのだろう』。
そんな風に戸惑いも見せながらも『主演男優』として、『映画作り』に携わっていく二見。そんな二見の姿を描く物語は、後半になって大きく動き出します。そして、内容紹介に、”「それ」は’ただの映画’では、なかった”と読者を煽るように語られる『映画』に隠されたまさかの真実が明らかになる結末。そこには、表紙に描かれた最原最早のほのぼのとした姿が別物に見えてもしまう衝撃的な物語が描かれていました。
『なぜそこまでして映画が見たいのだろう。なぜそんなに映画が好きなのだろう。僕にとって映画とはなんなのだろう。映画とは、一体なんなのだろう』。
そんな思いの先に『映画作り』に深く関わっていく大学二年生の二見遭一の姿を描くこの作品。そこには、作品冒頭からは全く予想できなかった衝撃的な物語が描かれていました。『映画作り』の奥深さを感じるこの作品。そんな物語に謎が謎を呼ぶ展開で魅せるこの作品。
これって、SFなの?という展開含め最後まで楽しませてくれた、そんな作品でした。
Posted by ブクログ
すごい。2009年に出た単発のライトノベルで、以前から気にはなっていた。『タイタン』『パーフェクトフレンド』と著者の他の作品を読んで面白かったので何れ此方も読んでみようと思っていた。
自分が読んだ野崎まど作品の中では暫定にして断トツの最高傑作である。新装版も出版されて既に久しいが今なお高く評価され、ネットには最近の感想が見受けられる。
天才とは何か、而して芸術とは、映画とは何かと云う深遠な問いを孕みつつもサクッと読めてしまう。ライトノベルとしてこれほど質が高く完成度の高い作品にはそうそうお目に掛かれない。最後の最後まで楽しませてくれる。それでいて背筋が寒くなるような読後感もある。
これは果たして映画と呼べるのか?
Posted by ブクログ
自分は途中まで芸大の映画サークルの子たちの
青春を読んでいたはずだったんだ・・・。
ラストのどんでん返しが予想外過ぎた。
ジャンルを恋愛か青春かミステリーか
ホラーで迷ったくらいには。
(結局ジャンル分けできなかった)
主人公、二見君のキレのあるツッコミは最高で
画素さんの明るさ元気さに場が和み、
天才、最原最早は不思議ちゃんで
その作品も不思議であふれていて、
そして兼森さんは何かを感じている・・・。
200ページないくらいの比較的短い作品なのに
インパクトがあり過ぎた。
Posted by ブクログ
何を読んだんだ!?
軽快で読みやすい、笑わせてくるテイストの文章。映画制作を志す大学生たちの話。ライトな青春ストーリーだと思って読み進めたら、終盤のとんでもないどんでん返しに困惑と恐怖。
こんな少ないページ数に張り巡らされていた伏線。
一回じゃ理解できない。再読必至。
Posted by ブクログ
映画サークルに所属する主人公が天才と呼ばれる新入生の最原最早と自主制作映画を作っていく、という青春小説かと思いきや、映画制作の中に仕込まれた不可解な謎や最原最早の目的が何なのかが分かったとき、途轍もない狂気を感じた。また終章の展開は読者をさらに驚愕させるもので、「読者によってはこれはホラーといえるものだ。」という感想も浮かんだ。
Posted by ブクログ
「野崎まど劇場」を先に読んでしまったので、エキセントリックなアホな作者(褒め言葉)と思っていましたが、こちらは真っ当な長編(中編?)小説でした。ラノベレーベルですが、やや普通の小説っぽくもあり、でもやっぱり最後まで読んだらラノベだなぁと思いました。(どうでもいいなこの件)
そんな客観的に書いてますが、読んでる最中は完全に作者の掌で転がされてましたよ。ほんとに力のある作家さんですね。加えてバカのセンスもあるので楽しみで他の作品も読んでみようかと思いました。
映画「ハローワールド」が最高に面白かったので、ノベライズを読んでみたのが作者を知ったきっかけですが、もしハローワールド知らないなら、ぜひ映画見てみてください。多少人を選びますが、ハマれば最高ですよ!
Posted by ブクログ
独特の雰囲気という『小説』を読む勇気が無く、それ以外の野崎まどさんの著作に手を出している半端ものです・・・。
この前読んだ『タイタン』もそうですが、世界観が独特なのはわかります。フワフワした展開からオチはダークというかホラーというか。ただ、オチが無いと小綺麗に終わりすぎだったため、何かあるだろうと身構えていたので、そこまで衝撃はなかったかも。あと、画素さんのリテイクは伏線かと思っていたんだけど、何かありましたっけ?
短めの小説だったこともあり、まだまだ著者の印象はつかみどころがない感じです。
Posted by ブクログ
まさかこんな展開が待っているとは…!
軽い気持ちで自主映画を見ていたら、知らないうちにダークな世界に囚われてた感じ。この後も最原最早は出てくるの?怖すぎるー!
Posted by ブクログ
この人の文章とても好きだなと気づいた。
この本のボケツッコミの感じは西尾維新にとても似てた。そして面白かった。
映画を介して人のことを操れる天才が主人公を亡くなった元彼の人格にしていたよという話。ちょっとしたホラーを感じた。怖かった。
最後がちょっとよくわからず、、最原や画素さんのリテイクはなんだったんだろうか?とか考えてしまった。
イマイチわかりきれないところが多かったので星は3つ。次の話も読んでみます。