Posted by ブクログ
2018年07月24日
小説、映画、ゲームにマンガ、アニメと、物語に触れていると、「こいつやばいやつだ……」というキャラに出会うことがあります。貴志祐介さんの『黒い家』なんかは、その典型です。
しかし、このバビロンに出てくる「曲世愛」(まがせあい)もかなりやばい。第一巻で彼女がしっかりと出てくるのは、取り調べを受ける...続きを読むシーンだけなのですが、それなのにやばさが伝わってくるのです。
具体的に何がやばいのか、と聞かれると、それはまた難しいのですが、強いて言うなら、つかみ所の無さ。主人公の検事の厳しい取り調べに対して、のらりくらりとかわし、いつの間にか自分のペースに持ってくる。そのかわし方が、なんとも言えない気持ち悪さなのです。言葉自体は無邪気な感じなのに、言葉の奥底に邪悪さが垣間見える、と言えばいいのでしょうか。
野崎さんの小説は、今までも普通の小説はもちろんライトノベルでもなかなか出てこなさそうな、キャラが出てきました。そのキャラたちに共通するのは常人の「理解の範疇を超えた」存在だと言うことだと思います。この曲世愛というキャラは、そんな野崎さんが生み出したキャラの黒い部分の集大成のような気がします。
一つの不審死から、始まった事件は大きな政治的な企み、そしてさらに思わぬ展開につながっていきます。二巻への引きも上手くて、次の巻へも思わず手が伸びてしまうのではないでしょうか。