降田天のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ一気読みできたのと叙述トリックが面白かったので高評価。名前と名字、アカウントのみのやり取りなどを駆使して実行者をミスリードさせる構造が素晴らしい。ただ、楓に降りかかった住所特定、誹謗中傷、実際のストーカーが全員違う人物で、それぞれの動機が必ずしも楓を恨むものでなく、夫の浮気調査やら直接会って謝罪したいなど自己都合なものであることが残酷。楓からしたら全部丸めて「精神を蝕むもの」だったのに「実は楓がそう思ってしまっただけ」というのはあまりにも彼女が可哀想すぎる。また、真犯人が利一なのは理解できたが棚島がうざい。どんな理由があれ娘に向き合ってこなかった(或いは愛し方を間違えた)り、浮気したのは彼自身なのに「反省」という形でほぼほぼ罰を受けていないのはモヤモヤした。
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Posted by ブクログ
ネタバレ何十年も前の事件を当事者達の証言で解き明かすという構造が新鮮だった。当事者といっても第一印象は屋敷にお使えしていた使用人達の証言なので、信憑性も無く、皆がいろんな「説」を述べているだけだと感じてしまう。しかし事件は複雑で、使用人の中でも主人や三姉妹との関係性の近さによって聞かされている事件の内容が異なり、それぞれが本当に体験した事実として話しているので、「(各々が)体験したことには嘘が無いが真実は部分的には異なる」状態となる。証言者が移り変わるために事件の概要が塗り替えられていき最期に真実に辿り着くという類稀なるストーリーセンス。読み終えたあとに最初の信子の証言に戻ると、彼女の捉える主要人物の解釈と真実との乖離具合が分かり驚かされる。
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Posted by ブクログ
丘の上にそびえる洋館を舞台とした殺人ミステリー。
といっても、館モノのクローズドミステリーでもなければ、現在進行形で犯人とかけ引きしていくスリリングな連続殺人でもない、独特の味付けの作品です。
廃墟と化した洋館の庭から古い白骨死体が発見された。かつては栄華を誇った名家の衰退と一体どのような関係が?
当時の使用人や出入り業者などからの証言を拾う形式で、淡々とストーリーが進行していきます。
証言が追加される度に驚きの新事実が一つ一つ明らかとなり、最後にはまったく予想しなかった結末が待っていました。
もの悲しくもどこか温かい展開に心が揺さぶられます。
タイトルの「すみれ」も上手くストーリーに組み込まれていて、しっかりと作品のカラーになっていると思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読んで一番最初に感じた感想は、これはミステリーというよりも純愛。
戦前・戦中にとあるお金持ち一家に起きた出来事について、現代になってから追う、というお話です。
話の中心になるのがその一家の美人三姉妹。盛大なネタバレですが、その三姉妹の子孫が、当時何が起きたかを知らないまま(何なら自分が子孫だと知らないまま)、当時の出来事を調査するという流れで進みます。インタビュー形式で話が進むので、要所要所でまとめのようなものが挟まれていて、一気読みできず細切れにしか読めないという人にも読みやすいです。
そしてお話の鍵を握るのが、一家に雇われていた少年(後に老人になってから取材される側として登場)。
再び盛大なネタバレになりますが、この少年、話す分には全く問題ないのに生まれつき読み書きができないんです。
ちょっと本筋からは逸れますが、今年に入ってから映画・ドラマ・小説(本作)と、読み書きが困難な人のストーリーに触れる機会が多くて。
日本語話者の約8%がこの障害を抱えているそうなので、これまで人生で出会ってきた人の中にもきっといたんだろうなと思います、私が気づかなかっただけで。気づけなくてごめん。
そして今でこそ「発達性ディスクレシア」という障害の名称があって、名称を知らなかったとしても、きっと何某かの障害なんだろうと周りの人は認識する環境がある。でも本作の少年が生きた時代では障害なんて思われることもなく、ただ出来損ない・愚か者として生きていくしかない。そんな少年の置かれた境遇を思うと、涙なしには読み切れず。。。
⭐︎ひとつマイナスなのは、三姉妹の長女の行動にどうも共感できなかったから。私が他の姉妹や屋敷の関係者に感情移入しすぎたせいであって、お話自体が面白く無いという訳では全く無いので悪しからず。。。
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Posted by ブクログ
ネタバレ自殺幇助業者という、これまで読んだことのない職業がメインキャラの物語だった。
殺し屋とか殺人事件を解決する探偵とか、そういう話はたくさん読んできたけど、自殺を手助けすることを物語にしてしまおうというのはユニークな発想だと思った。
それぞれの章は話が長すぎず、視点もコロコロ変わるので気持ちを切り替えて読みやすいと感じた。
4章目のラストでやっと本名が出て、そこから5章へのつながりがとても面白く、ドキドキしながら読み進めた。
最後あれで終わるのはちょっと心がムズムズするというか、もう少しゆっくり話が展開していってもよかったのかなあとは思う。
まあ、自殺の理由は本人にしかわからないというのと同様に、5章以降の展開も作者にしかわからないのだろうしそれは読者が勝手に想像を膨らませるしかないのだろう。
「女王はかえらない」を10年前に初めて読んだ時の衝撃は流石に超えてこなかったが、降田さんの作品はやはり面白い。
むしろこの作品を読んで、「女王はかえらない」の恐ろしさを実感したかも。
もう一回読みたくなってくる。 -
Posted by ブクログ
★3.9
盲信は破滅への道しるべ。
才能と傲慢、崇拝と孤立が交錯し、覚醒と堕落の群像劇。
シェイクスピア「マクベス」を巧みに翻案した、現代学園ミステリー。
物語の舞台は演劇学校。
この舞台の「王」である設楽了という“カリスマ”は、その周囲の生徒たちの欲望と嫉妬を掻き立てる。
絡み合う野心は、「王」の死を引き金に、疑心暗鬼と混乱を加速させていく。
この“マクベス構造”を現代の心理劇として巧みに再構成した点が、本書の最大の魅力だ。
劇中劇「百獣のマクベス」は、内容が語られぬまま象徴的な外枠として機能する。
このメタ構造が、原典「マクベス」の気配を忍ばせながら本作に独自の深みを与えている。
キャラクター描写も緻密で、生徒たちの複雑な感情や揺れ動く関係性が丁寧に紡がれている。
野心と疑念、そしてそれがもたらす破滅的な連鎖は、原作の悲劇性を引き継ぎつつ、青春群像劇としての共感も呼び起こす。
ただ、このような「"マクベス"がマクベスの脚本を書いている」とも受け取れるメタ視点は、あくまで一つの解釈に過ぎない。
マクベス構造をなぞるのも一興、という程度。
物語の駆動力となるのはあくまで「設楽了の死」の真相追求であり、若者たちの心理と関係性のドラマにある。
誰が嘘をついていて、誰が演じているのか。
演劇という閉鎖空間で繰り広げられるのは、切実な人間模様と、その果てに待つ代償だ。
単なるリライトや翻案を超えた「マクベス的エネルギー」の具現化。
最後は希望か、諦めか。
あなたの「少女マクベス」はどこへ向かう?