福島香織のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
報道などでたびたび見かけていた中国国家による、ウイグルに対する強権的なふるまい。正直これまでどこか遠いところのイメージが強かったのですが、今はウイグル問題がある意味、世界の試金石になりうるかもしれないとも感じています。
本の中では著者のウイグルでの取材の体験や、これまでの報道のまとめ、日本にいるウイグル人への取材、そしてウイグルの歴史などが書かれています。
ハイテク技術も使った住民たちの管理、強制収容、洗脳、拷問……、思い浮かべたのはジョージ・オーウェルの『1984年』だけど、あれはフィクションだからまだ救いがあった分だけマシだったのかもしれないとも思います。
ビック・ブラザーが現実化した、もしくはそれ以上の悲惨さかもしれない。本の中でウイグルと臓器移植をめぐる疑惑について結構ページが割かれているのだけど、これが本当に真実だとしたらと思うと……。そして今の中国を見ていると、絵空事にも思えない。
日本に住むウイグル人たちの言葉も信じがたかったけど、おそらく真実なのだろうな、とも思います。親戚や家族までが収容され会えない、もしくは殺されている、ということはもはや普通のこと。
それでもおおっぴらに助けを求めることもできず、同じ民族内でも、スパイを疑って心を開けない。日本国内にこんな人がいるなんて、にわかに信じられないけど、これも真実なのだろうと感じます。
中国がウイグルに関心を持つ理由というのは、民族統一のためだけでなく一路一帯構想など地政学的な意味もあるそう。そしてウイグルの支配を容認する国もちらほら見られます。それはいずれも中国のような強権的な国家。
もしこのまま中国のウイグル人支配と根絶が成功すれば、それはほかの強権国家にとってもモデルケースになるし、より広い範囲で見れば、民主主義のほころびを突き崩すきっかけになるかもしれない。社会的弱者やマイノリティを一顧だにしない強権的な考えが合理的というメッセージにもなりうる。
だからこそウイグル問題は民主主義と独裁・強権主義という価値観の相剋であり、その価値観の優勢を期せずして図る物差しになっているように感じました。
米中対立に挟まれる日本。難しいところ、考えるべきところはもちろんあると思うけれど、ウイグル問題をはじめ世界の人権問題を考えることは、民主主義の価値観を持ち続けるための、抵抗なのかもしれないと読み終えて思いました。 -
Posted by ブクログ
小説としては正直読みづらいと感じる。今のある程度コロナウイルスが制御されてきたような時期から見るとここで書かれる武漢の状況そのものがデマのように感じてしまいそうになるけど、ここに書かれていることはそれなりの真実を写しているのだろう。そしてコロナウイルスの有無に関わらず中国共産党の抑圧的な社会で生きるということのむずかしさ、そしてそのような世界は現実に今も数多くの人が生きているという現実に目が眩む。それを難しいと感じないように見猿聞か猿言わ猿的に生きていく人はおそらく多し、それはそれほど難しくなくできてしまうのだろうけど、そんな社会を垣間見ることができる。
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Posted by ブクログ
ウイグル人を苦しめている問題が漫画と文章によりわかりやすく書かれた作品。
まず、その現実を知ること。知ったなら、それを広めていくこと。そして、共に声を上げること。
他にも出来ることはある。賢い消費者になることもその一つ。ウイグルに限らず、労働搾取の結果、安価で手に入れられる商品を買わないこと。なぜそんなに安いのか。どんな労働環境で作られているのか。それを知っていくことの重要性。
清水ともみさんの手によるあとがきの文に心を動かされる。
「真の豊かさとは、誰かの人生を踏みつけにした上で享受するものではないはずだ」
そして、ウイグルの人たちへの思いは、自分たちが当たり前のように享受している自由というもののありがたさを再認識させられる。日本という国、民族、言葉、それらを奪われないように、これからも守り続けていくことの重要性を改めて胸に刻みました。 -
Posted by ブクログ
共著者3名が、カンボジア訪問を機にアジア史、特にカンボジアを中心としたインドシナの歴史について書いた本。宮脇氏が、古代から英仏の植民地になるまでの歴史を概説し、江崎氏が、残留日本兵の助けを借りながらカンボジアが独立を果たす経緯を記し、福島氏が、カンボジアにおける中国の影響力について書いている。3者とも内容は深く、かつ3者がうまくマッチしていて読みやすい。とても勉強になった。最後の対談でも繰り返し述べられているが、中国が今まで国際政治や覇権争いの中で繰り広げてきた残虐な行為とそれをリードする中国人リーダーたちの人間性を、日本人はよく理解する必要があると強く感じた。
「インドシナは、インドとシナの中間地帯だからインドシナというわけだが、インドシナ半島の大部分は、歴史的には古代インド文明の影響を強く受けており、シナ文明の影響下にあったのは、独りベトナム、それも長い間、今のベトナム北部だけだった」p25
「東南アジア史は、内部で書かれた史料がほとんどないため、世界史の教科書で取り上げられることが少ない」p27
「17世紀のチャンパにはイスラム教徒の王がいた。カンボジアに住むチャム人はほとんどがイスラム教徒である。現在でもベトナム中部から南部にかけて、約10万人のチャム人が、集団としてまとまって暮らしている」p32
「(カンボジアとラオスでは)フランス人を補佐する下級官吏や警察官として多数のベトナム人を登用した。かつて宗主国としてラオス、カンボジアに君臨したベトナムは、今度はフランスの植民地支配のもとに、新しいよそおいをまとった支配者として現れたのである。カンボジア人、ラオス人とベトナム人のあいだの民族的憎悪は増幅され、両者の不信感は一層高まった」p54
「現在、日本から見ると、カンボジアにおける中国の存在感は増すばかりで、ほとんど属国ではないかと危惧するほどであるが、現地で話を聞くと、中国よりもベトナムのほうがもっと危険だし、ベトナム人の方が嫌いだという。それは、ベトナム戦争のはるか前からの歴史的背景と直接の経験から出たものである」p55
「三野正洋氏は、ベトナム戦争に介入したアメリカと、カンボジア戦争に介入したベトナムは、まったく同じ立場であり、ベトナムにとってのアメリカは強大な国家であるが、カンボジアにとっての統一ベトナムも大国なのだ、と指摘している。現地を見、カンボジア人に話を聞いた私たちも同意見である」p88
「日本の不在と、米中の進出が、アジアに混乱をもたらしている」p100
「防衛省の防衛研究所が残留日本兵の歴史を調べ、このように記録を残そうとしてくれていることは極めて重要だ」p120
「ベトナムの独立運動は共産党主導であったのに対して、カンボジアのソン・ゴク・タン政権は非共産・反仏・親日であり、その政治イデオロギーはまったく異なっていたが、フランスという共通の敵と戦うためにベトミンと手を組んだのだ」p121
「日本軍による義勇軍の創設と只熊さんの活躍がカンボジアの独立に大きな影響を与えた。そしてその影響の大きさを理解していたから、独立を果たしたカンボジアは日本に対する賠償を放棄したわけだ。過去の歴史を直視し、将来に向けて語り継いでおきたいものである」p134
「(1965年インドネシア・スカルノ大統領)「北京・ジャカルタ枢軸」という言葉が登場するようになる」p158
「戦時中に日本軍によって指導された経験を持つスハルトらが1967年8月、反共を掲げたASEANを結成したことから、アジア共産化の危機は辛うじて回避されることになった」p160
「どこの国でも、正義感の強い若者は美辞麗句に弱い」p171
「(カンボジア)ポル・ポト政権下の3年8か月に、飢餓、疫病、虐殺などで100万〜200万人以上ともいわれる犠牲者を出した。この死者数は人口の13%〜29%に当たる」p177
「シハヌーク国王が自らの権力を維持するため、民主主義を否定し、中国共産党やベトナム共産党と組んだことがその後の内戦と外国による軍事介入を生み、結果的にカンボジアをベトナム共産党の影響下に置く事態を生んでしまった。しかも近年、カンボジアは中国共産党の影響も強く受けている。その悲劇の歴史を理解している人がどれほどいるのだろうか。カンボジア復興に協力している日本側は理解しているのだろうか」p182
「その実現のために身を粉にして働き、中共の理想を信じて忠誠を尽くしたのはカンボジア華人、そしてベトナム華人らが形成した僑党、華運であった。だが、中共はその華人たちをも見捨てるのである」p206
「(カンボジア)日本の関係者も、あそこで命を落としているわけですから、もっと日本の足跡というか、影響力が残っていると思っていたのですが、もう、完全に中国に上塗りされていて、プノンペンを含めて、町の至る所が、チャイニーズの影響下にある」p239
「今回カンボジアに行ってみた感想ですけど、カンボジアといえば、ポル・ポト派による大虐殺、つまり「キリング・フィールド」みたいなものと、「ストリートチルドレン」という、貧しくて、悲惨な国で、発展途上国でというイメージを持っていたのですが、実際に訪れて、少なくとも首都のプノンペンとか、アンコールワットのある地方都市のシェムリアップを見ていると、日本の地方都市より発展しています」p242
「安倍首相が中国に軟弱なのは、ビジネスマンから圧力を受けて、そう言ってくれ、中国とうまくやってくれということだと思います」p256
「東南アジアというのは、商売、ビジネスとメディアに対しては、中国の影響力が圧倒的に強いんですよ。特にメディアなどはスポンサー企業の意向もあって軒並み親中派。華僑メディアは中共の資金が直接入って宣伝機関化していますね」p263
「私は、華人・華僑の特徴に、チャンスに乗る、強いものになびく、多数派に加わるという性質があると思っています」p264
「(中国人)「相手を平らげてはじめて、紛争のない世界ができる、というのが我々の考え方なのだ」それなら、どうしたらあなた方は共存を認めるのかと尋ねると「自分たちはかなわないと思わされるなら、日本と共存ができる。それ以外の道はない」と」p271
「日本が大好きな中国人、「精日」を増やすということが、日本にとってもっともよい防衛なのです。それは確かに、評論家の石平(せきへい)先生みたいな人が1万人ぐらいいると、日本はかなり強くなりますね。個人的な感覚ですけれど、どちらが多いかというと、在日華人には、むしろ石平さんみたいな人の方が多いですよ」p278
「全部、習近平が悪い。習近平イコール中国共産党だから。できるだけ、中国人が悪いというふうに言わないほうがいい」p282 -
Posted by ブクログ
ネタバレなるほど、今年2020年1月の台湾総統選の民進党蔡英文の勝利は、香港のデモ学生などの民主主義への思いや何よりも2019年早々に発表された周5条に対する中国共産党の圧力からの忌避感によるものだという。なるほど。
新型コロナウイルス禍に乗じ、アジアをはじめ、オセアニア、ヨーロッパ、アフリカへ、一帯一路のスローガンのもとに世界にその触手を伸ばし、世界のルールメーカーたらんとする習近平の実像が浮き彫りにされている。
中国の躍進の裏で、民への言論統制、行動制限、さらにはチベットやウイグルの弾圧が行われている、そんな国家であることを忘れてはならない。著者は必死に警鐘を鳴らしている。 -
Posted by ブクログ
82ページまで読み、残りは流し読み。序章と第一章では新疆ウィグルの「再教育施設」による迫害を記載。日々のすべてを監視され、人権を収奪された監獄社会であることがよくわかる。しかし残念ながら、再教育施設の実態は間接的な情報に終わっている。▼最後のあとがきで、われわれ日本人がどうすべきか、悩まされる問題を書いており、考えさせられる。▼(以下はメモ)中国にとって新疆ウィグルは「一袋一路」の要の土地となる。米国における中東と同じように国際社会のパワーバランスを査収する要衝の地だ。米中新冷戦構造の中で両国とも譲れないテーマである。周りのイスラム国家は一帯一路の果実を得るために、中国のイスラム弾圧に目をつぶっている。現実は債務返済が濃事実上不可能で借金漬けの中国植民地の状況だ。サウジアラビアにとって中国は石油を買ってくれるお客様。一帯一路を支持している。「日本は中国に侵略されるという恐怖は感じないのですか。中国人民共和国は建国後まもなく東トルキスタンとチベットの土地を奪い、その土地の人々を従属させ、伝統や文化を破壊し続けているのですよ」。