福島香織のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
中国の「マスゴミ」なんていうタイトルがついていますが、副題である「ジャーナリズムの挫折と目覚め」のほうこそ内容を指しているように思いました。背景には、中国関係の書物は売れない、という出版事情があったようですが、できればこの副題に注目してもらったほうが良いのではないかと思います。
本書の中で展開される、SARS発生時の報道をめぐるエピソード。国内で問題が発生した段階で当局が報道規制を敷き、外国メディアが気づいて騒ぎ始めた頃にはすっかり感染が広がっていたという話です。
もちろんこれは中国の報道規制問題を示す事例として紹介されているのですが、これを隣国の未熟な報道環境として笑えるのでしょうか。
折から、日本では原発事故に関連して、情報開示とマスコミの対応についての問題が顕になったばかりです。電力会社の記者会見の様子を、私もネット中継で視聴していたのですが、あれを見た後では本書のエピソードはまったく笑えないし呆れることもできない。まるで一緒。
もちろん、かたや一私企業の、いわば「個人的」ともいえる自己保身、かたや国家崩壊に怯える政府による暴力的な抑えつけがその背景であって、問題の構造は異なるのだけど、結果として伝えるべき情報が伝えられないという点には違いがない。
当時の中国では、不十分な情報を受けた国民の間に奇妙なデマが流れ、SARSに効くとしてヤクルトやキムチがばか売れしたという…
諸々の壁に阻まれて必要な情報にアクセスできないとしたら、果たして記者はどうするべきなのか。
厳しい報道規制と労働条件の下、腐敗していく中国人ジャーナリストたちがいる一方で、なんとかして伝えるべき情報を伝えようと文字通り命がけで取材し、記事を流すべく戦う記者もいるということ。
インターネットの登場によって、少しずつではあるが、報道が規制に打ち勝つチャンスができつつあること。
まっとうなプロ意識を持つ中国の記者から見れば、日本の報道環境はうらやましい限りでしょう。けれど、恵まれた環境(もちろんこれが当然の環境であるべきなのだけど)にいる日本人ジャーナリストはその魂を全うしているといえるのか。
著者は問う…
著者の記者としての誇り、ジャーナリズムへの愛情が感じられる本です。
マスゴミと言われるのは中国に限った話ではない。日本こそ、新聞、テレビは死んだ、スポンサーや社内圧力に迎合するばかり、ろくなニュースはないと見切る動きがあります。ある部分はそうかもしれません。でも、それでも報道の仕事に命をかけて、戦い続けている記者がいるし、自らもそうありたいという思いが溢れていると感じました。
前回読んだ同じ著者による「中国の女」もそうなのですが、具体的な個別の事例を通して、普遍的全体的な問題へと視点を誘ってくれる、血の通った文章。(もっともご本人は、情景描写から入るような文章、マクラとオチがあるような文章が得意で、所謂記事としてのフォーマットにのっかった文章が苦手、と告白しているのですが)
中国に関心のある人にはもちろんですが、今の日本で今のタイミングで読むと、また大変におもしろいのではないかと思います。 -
Posted by ブクログ
この本で紹介されている中国の状況は、筆者のブログなどでほとんど現地にいる間に知っていた内容であり、報道とは関係ないがSARSやネット規制・政府機関との駆け引きは自分でも経験してきた。特にローカルテレビの報道と、GFWを越えたネット上で知ることのできる情報のギャップは非常に大きい。しかし、この2,3年で海外メディアの報道を直接知ることのない庶民にもそういう情報が漏れ伝わる割合が高くなっているような気がする。また、8年ぶりに日本に戻り見聞きする日本国内での中国報道・中国理解と、実際に体験した中国の現実のギャップも非常に大きいと感じる。中国を知らずに中国を語っている人にはとりあえず読んでもらいたい本だと思う。
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Posted by ブクログ
ウイグルという言葉は聞いたことがあるだけで、それが何であるのか、何が問題なのか、全く分かっていませんでした。ウイグル人に対して、いまもこのようなジェノサイドが起きているということは本当に信じがたく、驚きました。
“豊かさとは誰かの人生を踏みつけにしたうえで享受するものではない”という主張には特に共感できます。どんな理由があったとしても、だれかの人生が失われているならば、それは正当化されてはいけないと思います。考え方が違うとか信じるものが違うとかそういうことではないです。浅い知識で他の考えや思想を簡単に尊重することは良くないな、と最近思っています。 -
Posted by ブクログ
中国は巨大な国家であり、世界の至る所に経済の力で影響を及ぼしている。かつて日本が高度成長期に飛躍的に経済が拡大し、何度かの好景気を経ながら世界のトップを覗った頃を更に上回るスピードで経済が巨大化していく。13億人を抱えユーラシア大陸の東に広大な土地を持つ中国。近年では一帯一路構想の元、世界規模で更に影響力を伸ばして行こうとしている。更に中国側から日本を上半分に見た「逆さ地図」を見てわかる様に、広大な太平洋を目指す上では、日本が邪魔な位置に見える。特に台湾や沖縄は日本本土を避けて太平洋へ抜ける上での最良の立地となる。船舶が沖縄で燃料補給しながら更に西の東南アジアや東の太平洋に埋蔵される海底資源を採りに行けることは中国にとっては大きな利点だ。最早、眼前には浮かんでいる日本の姿を飛び越え、アメリカを意識して軍事力強化を図っている。
その様な中国の光が当たるオモテ側の発展とは逆に影に当たる問題、それがウイグル族やチベット族などの自治区の問題である。既に世界中を駆け巡るニュースでも、多くの書籍でも、これら中国の一部になっている民族浄化の国家戦略は世界中から多くの批判を受けている。新疆ウイグル自治区に存在する強制収容所紛いの施設に放り込まれた住人が、リンチや共産党国家思想を無理やり叩き込まれ、進行するイスラムや自分達の言葉さえ禁じられた世界だ。
かつて太平洋戦争に負けて、戦勝国アメリカが日本を長期に渡り間接統治(実質直接統治の状態だが)をしていた。もしその際に日本語を喋っただけで牢屋にぶち込まれ、君が代を口ずさむことも、おばあちゃんから教わった日本の民謡すらも全て禁じられ、英語以外の会話を禁じられたとする。勿論、お正月も七五三もお盆も伝統的な日本の行事は禁止、ハロウィンやクリスマスなどキリスト教的な行事以外はできず、日本食を作ることさえ禁じられたら。今、ウイグル自治区は正にその様な状態にある。徹底的な共産党教育が行われ、幼い頃から中国共産党として生きていく事を強いられる。そして年老いた真のウイグルを知る世代がやがていなくなる頃には、顔はまだ堀の深いウイグル人の面影をかろうじて残しながらも(漢民族との交配が国家的に進められる)いつかはウイグル人そのもの、文化、歴史は地球上から消し去られる。これが中国が行なっている民族浄化の実態なのだろう。様々な書籍でその壮絶な経験が語られ、世界中が批判している内容全てが偽りとも思えず、またかつてのナチスドイツがユダヤ人に対して実施してきた歴史もあるから、共産党が絶対的な権力を持ち、領土拡大に熱心な中国の姿を見ているとほぼ間違いないことだと思われる。
筆者は日本人はこの問題に対しての意識が低く、どこか遠い世界の出来事として関わり合いを持とうとしないことを危惧する。そして日本人としてできることは何か、1人のジャーナリスト以前の人として提案をしている。先ずはこういった書籍を見て実態を知ること、そして虐げられる民族のために何ができるかを考え始める必要がある。
中国が真の世界の覇者になれるとすれば、こうした非人道的な手を使わずとも、あらゆる民族の人権を尊重した形で共に発展していける様なやり方を知らなければならない。こうした力による押さえつけや、暴力的な進め方は、益々世界から中国批判の壁を強固にするだけであり、いつかは反撃を喰らうであろう。だからいつまで経っても覇者にはなれず、火種ばかりを抱えた危うい国家から抜け出すことは出来ない。
習近平が毛沢東や胡錦濤に続く偉大な指導者になるには、それくらいの手腕がないと永続的な中国発展は訪れず、いずれは類を見ない超高齢社会として経済力は徐々に低下し、世界から見捨てられる様な気がしてならない。 -
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ここ数年、中国の権力闘争についてのニュースを読み解くのに、福島さんの意見を参考にすることが多い。
断片的に見聞きする、中国からのニュース。
それも最新のもの、習金平政権による反腐敗キャンペーンによって、獄に繋がれ、あるいは死に追いやられ、または謎の死を遂げる大物政治局員たち。
その反腐敗キャンペーンは、国家人民のために行われているためでは決してなく、胡錦濤、江沢民の流れを汲む権力者たちとの闘争に、習金平が勝ちを収めていく過程に過ぎない。
本書は、その、表面的には反腐敗キャンペーンと糊塗されている権力闘争の真の姿を、細かく解説してくれる。
これは歴史ではなく、いま現在、現実に隣国中国で繰り広げられている闘争である。
その、不安定な国家は、現在、世界第二位の軍事国家であり、核兵器を保有し、隣接諸国との境界線を伺う状態にある。国内の不安定さを解消するには、国外の敵に対して一致団結するという方法も、選択肢のひとつに数えられるはずだ。
本書は、習金平がこれからたどると考えられる道を、4つのシナリオとして提示する。そのどのシナリオも、隣国である我が国に、大いなる影響を及ぼすことになるのだろう。 -
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農民工と呼ばれる工場労働者たちのルポ。
絶望工場とタイトルにあるが、過酷過ぎる労働条件に絶望しているのではなく、諸悪の根源である戸籍制度から決して逃れることが出来ない未来に絶望していると知った。
日本人なら格差があろうと一代で成り上がりも可能だが、中国の農民戸籍の若者はそれが出来ない。本人の努力とは無関係に産まれた時に決まっている。
反日デモが起きると過去の日本の所業がまだ許されてないのか?と思う人や、フォックスコンの自殺が労働条件に因るものと思っている人は、本書を読めばそのベースにある農民工達の絶望を知ることが出来る。中国へ赴任される方にもオススメ。
作者が可能性を示唆するように、中国の社会構造が変わるとしたら、ここからかもしれない。 -
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中国の矛盾の本質は農民工の存在に凝縮されている。農民でありながら工人(労働者)というのが農民工。いわゆる出稼ぎ農民のこと。しかるに日本と決定的に異なるのが戸籍の制度。中国版アパルトヘイトと酷評されている。中国には農村戸籍と都市戸籍があり、農民の子には農村戸籍が、都市民には都市戸籍が与えられる。戸籍は厳格であり、親の身分からは原則逃れられない。都市に押し寄せる農民に資源をくいつぶされないための農民隔離政策である。たとえ大学に進学したとしても就職においては都市民が優先され農民戸籍は大きな挫折を味わうこととなる。今、多くの農村戸籍大卒者が高学歴ワーキングプアとなって都市の片隅で逼塞している。クレバーな頭脳を持ちながら貧困。都市の中での深い孤独を感じながら、社会への憎悪が膨れ上がる。ストライキ頻発の大きな要因がここにある。終章には希望を喪失した中国の若者の救世主となりうべきは日本であると喝破している。日本の今後が大いに期待される。
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それでも生きている
中国人女性は多様な状況に置かれており、その環境によって考え方や思いなどが形成されるのだろうと感じた。
しかし、ここまで格差が大きな国とは何なのであろうか?
日本では、憲法により基本的人権が保障され、貧富の差はあれども国家に完全に見捨てられるような集団(村や集落)はない。
しかし、国が集団の生活を見捨てたとき、女性たちはそれぞれの思いで生きていくすべをみいだしていくのだろう。
反日感情すら感じることができない人々が未だに多く生きていることに中国という国の矛盾を感じた。
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中国には歴史に名を残す女性がトップ政界の周囲によく現れる。しかし、たいていは悪い評価である。そのような悪女は美女、才媛、世間を驚愕させる事件を起こす、政治権力と関わるという4つの条件が揃っているそうだ。
最近では薄熙来夫人の谷開来がそうで、彼女を筆頭に列伝という書名のとおり江青以来の10人を紹介している。基本的にはゴシップ記事を含む本や伝聞が元であるためか、谷開来では新しい話は出てこないし、話題にならない人の話は薄くなってしまう。
この書では、なぜ中国ではこのような悪女が登場するのかという筆者の見解が読みどころで、ひとつの現代中国論を成しているのだ。公共情婦という言葉あるようで、そうまでして成り上がろうとする又は成り上がろうとせざるを得ない中国人はたいへんだな、と私は同情のような感想を持ったが、筆者は切ないと感じたそうである。