阿井幸作のレビュー一覧
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SF短編小説集、というよりは、著者の膨大な知識や興味から編纂された空想小説集といった趣きで、その知識量にまず驚かされました。
少女と吟遊詩人の巡り合いの旅路を描くファンタジックな「物語の歌い手」に、まさに頷かされてしまいそうになる『異常論文』たる「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」から、結論の鮮やかさがミステリの謎解きめいた脳科学SF「サンクチュアリ」、スマホゲームの開発をめぐり小気味いい会話で空想世界の構築を楽しむ「開かれた世界(オープンワールド)から有限宇宙へ」など、かなり高度でディープな仮想世界がぎっしりとどの短編にも形作られていて、凄い密度だなと思いました。
その中で表題作「ガーンズバック変換」は香川県のゲーム禁止条例を題材に取って少女同士の交流を瑞々しく描いた青春SFで、比較的ライトに楽しめます。この日本の少女らしさの描きかたも巧い。
そして「色のない緑」。親友の死の謎を追うミステリであり、近未来の人工知能の行く末を描いたSFであり、なにより彼女らの絆のつよさと切なさが胸を打つ、鮮やかな百合小説でした。彼女が研究を志した動機、絶望した理由、そして取った手段。すべてがひとつの存在がために帰結する、無駄のない硬質の美しさ。この短編、ものすごくただただ好みです。
また素敵な書き手さんと出会えた…という嬉しさを抱けた短編集でした。 -
Posted by ブクログ
周浩暉『邪悪催眠師』ハーパーBOOKS。
ハヤカワから刊行された『死亡通知書 暗黒者』の前日譚にあたる珍しい中国の警察ミステリー小説。
最初は慣れない登場人物の名前に戸惑うものの意外にもサクサクと読める。催眠術による殺人事件扱ったミステリーというのが面白く、次々と明らかになる事実と謎に包まれた真相に興味は深まる。
しかし、突如として被疑者が浮上したり、美人看護師が僅か3日で天才催眠師に変貌したりと凡そ納得出来ないような展開もあり、ストーリーに粗さを感じる。と、思っていたら、そういう風にストーリーが展開し、このような結末ならばと少し納得出来るような気もする。
最初に描かれた運転手の男の顔を食いちぎった事件は、2012年にアメリカのマイアミで実際に起きたゾンビ事件をモデルにしているのだろう。
龍州市でIT企業に勤める普通の男がまるでゾンビのように運転手の男の顔を食いちぎる事件が発生する。現場で男の犯行を止めようした警官が男を射殺する。続いて、出稼ぎ労働者の男が、まるで鳩になったかのようにビルから羽ばたきながら飛び降り、墜落死する。
その後、ネットで人びとの生死を操れる世界一の催眠師と名乗る人物が、2つの奇妙な事件への関与と龍州市で開催される催眠師大会への参加を表明するスレッドが発見される。
刑事の羅飛は、大会主催者で催眠療法の第一人者といわれる催眠師の凌明鼎に協力を仰ぎ、捜査を進める。まるで催眠師大会を妨害するかのような犯行。謎の催眠師の正体は……
定価1,320円
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中国の警察ミステリ。官僚たちが次々と狙われる連続殺人。防犯カメラの死角を掻い潜り、目撃者も決定的な証拠も残さない恐るべき知的な犯人。事件を追う高棟と、彼の友人でありながら実は事件の犯人である徐策との攻防を描くサスペンス感溢れる倒叙ミステリでもあります。
まあ中国に限らずなんだろうけれど……官僚の勢力争いがえぐい(苦笑)。事件の解決を目指すのも、メンツのためだけなんですねそうなんですね。だからこそこの結末での各所の動きにものすごく納得ができたし、理不尽だともあまり感じないんだよなあ。終章で、それまでに緻密に打たれた布石が一気に繋がってくるのが爽快だし、彼の最終的な目的がこれだったのか! ってのが。徐策、あまりに見事な手口です。
「逮捕さえしてしまえば、喋りたいことを何でも喋らせられます」って何。怖すぎるんですけど。だけどそういうのって日本でもないとは限らないよね……? -
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読み終え一言、催眠術最強すぎ。
龍州市で怪事件が発生した。ある男はゾンビのように人の顔を食いちぎり、
またある男は鳩のようにビルから飛び立ち死亡。
まもなく生死を操れるという催眠師による犯行予告がネット上で発見され、
数日後に開かれる催眠師大会への参加が判明する。
刑事の羅飛は、大会主催者で催眠療法の第一人者と言われる凌明鼎に
協力を仰ぎ、捜査を進めるが、その先には恐るべき陥穽が待ち受けていた。
中国の作品を読むたびに起こる、
登場する地名と人名を覚えるの苦労する問題はあるのだが、
冒頭の流れはなかなか面白く、続きが気になってしょうがなかった。
だが、結局は催眠術という曖昧なものがメインとなるので
段々と大味な展開になっていき、段々面白さが減速していった印象かなと。 -
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最初の一行は共通で、あとの展開が作者によって異なる、メフィストリーダーズクラブのショートショート企画の第七弾。「検索結果はありません」の一文で始まる24の短編集。
この一文で始まるので、あるはずのものがない、という内容が多め。そのためか、「小説版の世にも奇妙な物語短編集」のような内容が多く、楽しめた。
少々、落ちがわかりにくかったものがあったのはやや残念。
(ちなみに、短編集なので、ボリューム不足云々言うのはお門違いだと思ってる)
特に面白かったのは、風森章羽「検索の怪物」、金子玲介「お前のためのハンバーグ」、梨「被り拒否強火担なんで自衛でブロックします」、時農(著)阿井幸作(訳)「変容」、麻根重次「ロスト・マム」。
次回作『引き出しの奥に何かがある』を楽しみにしよう。 -
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呼延雲『掃鼠嶺 廃駅を喰らう火群 下』二見文庫。
下巻に突入。
第10作まで刊行済みのシリーズを第8作からいきなり読まされる弊害なのか、余りにも唐突過ぎて面食らう描写が散見される。
劉思緲も郭小芬といった主要な登場人物は散々使い回された挙句に何時の間にかフェードアウトしてしまうというトンデモな展開が目立ち、上巻の前半で準主役級の活躍を見せていた呼延雲の親友の林香茗までもが突如として姿を消してしまうのだから、余りにも乱暴過ぎる。
林香茗が姿を消す原因となった呼延雲が暴いたとされる凶悪な犯罪については全く触れられていない。
西郊連続殺人事件で逮捕された当時17歳の周立平を林香茗が庇ったことで周立平は1件の殺人でしか罪を問われず、懲役10年のところ8年で出所する。西郊連続殺人事件から10年後に掃鼠嶺事件が起きるのだが、その間に林香茗は呼延雲に凶悪な犯罪に手を染めていたことを見破られ、姿をくらましたのだ。
さて下巻である。周立平が西郊連続殺人事件と掃鼠嶺事件の真犯人か否かというのが最大の疑問であり、もしも周立平が真犯人で無いとしたら、一体誰が犯人なのかという疑問が湧いてくる。それらの疑問を警察と探偵の呼延雲が少しずつ紐解いて行くのだが、掃鼠嶺事件の方は予想通りだったのだが、西郊連続殺人事件の方は全く予想もしない真相だった。
しかし、警察が10年もの間、西郊連続殺人事件の真相に気付かなかったとは、お間抜けもいいところだ。10年前にこの事件に親友の林香茗と深く関わったはずの呼延雲も警察に負けず劣らずのとんだ迷探偵ぶりだ。
そして、捻りに捻った結末と真相。やはり呼延雲は何も解決出来ない迷探偵だったようだ。
本体価格1,600円
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Posted by ブクログ
2026.07.28
このショートショート企画のなかでいちばん「これ、おもしろいな」と思った本。
お気に入りは3作。
市塔承さんは『最後の一行』がはじめましてで口調の軽さが好きで読みやすかったのだけれど、今回も突拍子もない物語でありながら一気に読めた。想定外にほっこり。
横関さんははじめましての作家さん。会社勤めしたことある?と思える内容。ヤマシタ、人事が天職だわ。出来る人ってこうよねと関心してしまった。
河村さんの物語はクイズ作問者ならではの視点かもしれない。動画でふくらPが「使う側より作る側が強い。世の中ってのはそういうもん」という言葉を思い出してにそにそした -
Posted by ブクログ
龍州市で怪事件が発生した。ある男は人の顔を食いちぎり、ある男はハトのようにビルから飛び立ち死亡した。
まもなく、"生死を操れる"という催眠師による犯行予告がネット上で発見され、数日後に開かれる催眠師大会への参加が判明する。
刑事の羅飛は、大会主催者で催眠療法の第一人者と言われる催眠師に協力をあおぎ、捜査を進めるが……。
中国発の警察小説です。タイトル通り、人の生死まで操れるという邪悪な催眠師を追っていく話。
読んでいるとなんかこう、催眠術ってすっごい!! って気分になります。万能すぎる。何でもありだ……。催眠術に対する誤った認識をうえつけられそうです。一時期ちょっと催眠音声にはまっていた事があるんですが、この小説を先に読んでたらあんなにはまらなかったかもしれない。怖すぎる(笑)
ファンタジー・フィクションとして読めば面白いんですが、終始警察が催眠師に振り回されて後手後手にまわっているので、かっこいい刑事さんやスカッとする小説を求めていると違うと感じるかも。
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中国SFの短編アンソロジー、ハヤカワ文庫をはじめとして各社からゾクゾク刊行されています。これはハヤカワから出る3冊目かな?
鴨の全く個人的な感想ですが、うーん・・・出版されるたびに、面白みを感じなくなってきている自分がいます。要するに、「慣れちゃった」ということなのかもしれません。
中国SFの特徴の一つ、と言ってしまうと乱暴な気はしますが、割と幻想小説的な作風が多く、ロジカルに落とし前をつけるハード系の作風は大劉他の少数派、というイメージがあります。ブラッドベリ系が多くて、クラーク系があまりない感じ。鴨はどちらかというとクラーク系のSFが好きなので、単に好みの問題ということかと評価しています。
あ、でも「彼岸花」はめっちゃ面白かったです!洒脱な訳文の妙も相まって、とってもオシャレでウイットに富んだキラキラ系お花畑ゾンビSF。って、自分で書いてても訳わからんのですが(笑)本当にそういう作品で、誰が読んでも面白いと思います。これはおすすめ。