あらすじ
官僚を殺すだけでなく、官僚組織自体を翻弄する犯罪者。倒叙ミステリとしては珍しいほど大規模な犯罪計画に圧倒された。
―― 文芸評論家 千街晶之
硬直した社会システムへの風刺に満ちた、まったく新しい倒叙ミステリー。名刑事と天才的殺人者との息詰まる対決!
―― 作家 大倉崇裕
計画停電の夜、県検察院のトップが殺害された。周囲の監視カメラがシャットダウンする間隙を突いた犯行。唯一の目撃証言が指し示した容疑者は――地域の人々から愛されるベテラン警官・葉援朝だった。葉には愛娘を有力政治家の息子に轢き殺されながら、示談に甘んじ揉み消しに協力させられた過去があった。被害者の検事長は、事件隠蔽の調整役のひとりだった。
葉への内偵が慎重に進められる中、新たな死者が出る。人民法院の裁判長が、自宅マンションで上階から落下した敷石材の直撃を受けたのだ。不幸な偶然が重なった事故死と思われたが、捜査責任者の高棟は現場の些細な痕跡から、力学の知識に長けた人物による計画犯罪を疑う。葉援朝の背後には、彼を伯父と慕うエリート校の物理教師の影があった――前作『知能犯之罠』を上回る狡猾な計画犯と捜査陣の頭脳戦、その果てにある壮絶な人間ドラマに刮目せよ!
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Posted by ブクログ
華文ミステリー。中国の官僚体質や権力者に都合良く回される社会で、虐げられた側が知力を武器に逆襲していく。犯人は予め分かっているので、犯罪の方法とかを解き明かしていく刑事の分析も面白い。知能対決、と言うのも頷ける。次作もあるのかな、楽しみ。
Posted by ブクログ
前作に続き面白かったです。
紫金陳さんの官僚謀殺シリーズに出る容疑者は絶対悪ではないので読者に同情を誘います。
とはいえ、犯罪は犯罪なので容疑者を追う側の刑事には捕まえてほしいと思ってしまう。
しかし、、権力とコネがモノをいう世界を渡るのは難しいと紫金陳さんの著書を読む度に思います。
Posted by ブクログ
官僚体質が甚だしい中国警察VS謀殺を企てる犯人! 一風変わった倒叙ミステリ #知能犯の時空トリック
■きっと読みたくなるレビュー
中国の人気ミステリー作家先生の新作とのことで、気になって読んでみました。
いや~、確かにこれは面白いです。
本作、独特のプロットで物語が進行します。
いわゆる倒叙ミステリーなんですが、古畑任三郎やコロンボシリーズのように、名探偵が少しの手がかりから犯人やトリックを見抜いていく…という面白さではないんですよね。
どういう面白さなのか詳しくは読んでみてほしいのですが、「痛快」であることは間違いないです。
また本作は中国独特の官僚体質の社会性が切り取られています。
強い者の無理強いが通ってしまう世界で、弱き者が精神力と知恵、そして自らの人生を犠牲にしながら戦っていく。登場人物たちの熱い魂と、直視できないような悲しい背景…
我が国日本も不公平な世の中ですが、中国ではもっと露骨ですね。そりゃ超学歴社会にもなってしまいますよ。
警察と犯人がメインの登場人物なんですが、これが一見クールなんですが実は心根が熱い奴らなんですよ。
特に警察官の高棟の狡猾ぶりがエグイ。彼が権力や人脈を駆使したり、公安内部の筋を通す腕力は、まさに官僚の生き様でしたね。
そして人と人との絆も丁寧に描かれており、東野圭吾先生の作品のような重厚感です。あなたも目頭が熱くなる瞬間がきっとあるでしょう。
そしてミステリーとしての謎解きですが、これもニヤニヤしちゃうようなトリックでGOOD! ただ若干、仕掛けのテイストが一昔前の感じはするかなぁ~。ここは好みだと思います。
総じてエンタメ感が抜群で、激しい人間ドラマが熱いミステリーです。日本人の感覚にもバッチシ合いますし、気になる方はぜひ読んでみましょう!
■ぜっさん推しポイント
本作、何人かの高校生たちが出てきます。
未来がある若者の可能性というのは、とても美しく、誰しも応援したくなりますね。
特に推したいのは、女子高生のフィフィ。
大好きな人に対するまっすぐで気持ちは、あまりにも純粋で鮮明すぎるよ… 彼女のこれからの未来に、幸せがくるように願いました。