阿井幸作のレビュー一覧
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2024年の41冊目、今年のラストを飾るのは、周浩暉の「7人殺される」です。華文ミステリーです。周浩暉の本を読むのは、「死亡通知書 暗黒者」以来です。主人公は、共に龍州市公安局刑事隊長の羅飛(ルオ・フェイ)です。
全体を通して催眠が大きな鍵となっています。が、決して、荒唐無稽なオカルト話で終わっていないのは、本格派の刑事小説という土台が、しっかりと出来ているからだと思います。7に引っ掛けた構図も面白く、細かな伏線も作者の技量を感じます。
事件の真相は、中国社会の冷たさと欺瞞を炙り出します。主人公の羅飛が、自らの信念を曲げてまで、導き出したラストが何とも言えません。
☆4.5 -
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ネタバレ最初にテンポよく陰惨な事件が起こる。
バイオハザードファンがゾンビのように人の顔面を噛みちぎる、自分が鳩になったと思い込んで無防備に空に身を投げる…それが催眠術のせい?という引きの部分がめちゃくちゃ面白くて、ぐんぐん引き込まれた。
ところが。
過去の話、催眠術とはという話、催眠術合戦…と長々続き、なかなか進まない。
あれもこれも実は催眠ね、という感じで話が進み、催眠でした〜はい3歩下がる〜という感じなのだよね。全てが怪しくてスリリングに進むというよりは、話が進んだかと思うと催眠が挟まれて元に戻っちゃうので、テンポが殺されてる感じなのだ。読みづらい。前提がひっくり返るワクワク感よりも、え、またそこから?みたいな疲労感がきちゃうんだよね。なんでかな。
話自体は面白いんだけどとにかく3歩進んで2歩下げられるのがストレスだった。うーん、ちょっともったいなかった。 -
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劉慈欣が認めた二次創作「三体X」の作者、宝樹の短編集。全7篇。
ユーモアの強い「三国献麵記」すれ違いメロドラマ系の「成都往時」など、どの話も読みやすい。
私は一話目の「穴居するものたち」が好き。おうちだいじ。→
「三国献麵記」は三国時代に詳しければ100倍楽しめたなぁ、と思う内容。吉川三国志を3巻までしか読んでない私、曹操と赤兎馬の関羽しかわからん(笑)
「成都往時」は恩田さんの「ライオンハート」が好きな人にはたまらないのではないかと。私は好き。
「最初のタイムトラベラー」は→
読み返すとじわじわくる怖さと面白さ。まさにショートショート。
全体的に恋愛風味な印象はありつつ、楽しめた一冊。 -
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表題作「ガーンズバック変換」は香川県の「ネット・スマホ依存症対策条例」がモチーフ。現実よりは一歩踏みこんだ世界を描いているのだけど、現実と地続きのディストピアで、いかにも実現しちゃいそうでぞくぞくする。主人公が、液晶画面を遮断するメガネに形だけ似せた伊達メガネを作るのは、あくまでも自分のサバイバルを旨とした小さな抵抗。けっして地下組織に加わったり、表立って反対運動をしたりという大きな抵抗ではない。でも、もしかしたらそういう心持ちのほうが長続きするかもしれないし、それが広がっていけば大きな抵抗網になるのかもしれない……ってそれがこの短編の眼目ではたぶんなくて、最後は百合的な友情に着地するんだけど。
「色のない緑」は、『ベストSF2020』で読んだのが最初だけど、今はその当時に比べてAIの状況がずっと進化しているから、はるかにリアルに感じられてちょっとこわいような。自動翻訳をめぐるエピソードも、また、AIが人間が知り得ないブラックボックス化するという状況もよくわかる。
ほかの短編は、中世っぽい舞台のものがあったり、ゲーム開発をネタにしたオタクっぽい作品があったりと振れ幅がすごくて、読んでいてとまどいもあるっちゃあるけど、百味ビーンズみたいな楽しさもあってよかった。 -
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ネタバレ短篇集。8篇収録。
理論とかすっとばしてただひたすらに読んでいく(難しくて理解できないところもあるので…)こういう作品が作られていることが嬉しい。
物語の歌い手
上質な童話というか、こういった中世の世界観大好き。
三つの演奏会用練習曲
こちらはインド。不思議な読み心地。
開かれた世界から有限宇宙へ
ゲーム世界の理論の作り込みってこんなに大変なんですね(汗
インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ
読み終えて、ごめんなさい分かりません(笑)と思ったら
『異常論文』掲載の作品なんですね。私にはハードル高すぎました。
ガーンズバック変換
香川県にだけ存在するガーンズバック変換。面白かったです。
色のない緑
人間を超えていくAI。こちらも面白かった。 -
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湖畔に建つ洋館で密室殺人… 華文ミステリ界「密室の王」が書記す、ど真ん中の本格ミステリ #厳冬之棺
■あらすじ
中国上海の郊外、湖畔のほとりに建つ洋館には、陸家の一家が住んでいた。ある大雨が続いた翌日、半地下のため水没していた小屋の中から、主人が死体となって発見される。警察が捜査するも犯人捜しは難航し、さらなる事件が発生してしまい…
■きっと読みたくなるレビュー
中国の人気ミステリー作家先生のデビュー作とのことで、いやー力作ですね。作品を見れば、明らかに本格ミステリーをこよなく愛しているのがわかります。人に読んで欲しいというより、むしろ自分が楽しんで書いてるのが伝わってきますね。
また日本の文化にも影響を受けているのも嬉しくなります。中国とは政治体制も文化も経済も生活環境も、我が国とは違うところも多いですが、本格ミステリーを愛する共通点があることは、とても喜ばしいことですね。
本作、まず驚かされるのは、ジャンル本格ミステリーとして、しっかり形を成している点。館、密室殺人、見立て殺人、家督争い、探偵役、衝撃的な犯人、信じられない動機、バラエティに富んだキャラクターたち。これらが全て揃っていて、しかもバランスもとれている。読者を惹きつける構成も上手で、もう序盤から読むのをやめさせてくれないんです。
なによりメインの密室トリックの問題提示と、その解法が素敵でいいですね。これぞ本格ミステリーです。発想の角度としては一般的かもしれませんが、読んでると素直に作られた密室トリックが愛おしてしょうがないんですよ。
またキャラクターもポップで愛着があってイイ!本格ミステリーでは登場人物が古臭くなりがちですが、しっかり魅力付けができてる。職業や文化や価値観など、今風にしっかりアレンジができて、親しみをもって作品に没頭できました。
本格ミステリーを素直に楽しめる良作だと思います、続編も期待しちゃう!
■ぜっさん推しポイント
本作の魅力は、絶妙な古臭さと陰湿さの中に、軽快さが光っているところ。動機なんて鬼のようにエグイですし、最序盤の導入とラストの世界観の違いは、なかなか他の作品では見られない。作家先生のミステリーへの情熱を感じてほしい作品です。 -
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ネタバレ華文ミステリ界で「密室の王」と呼ばれる作家さんの長編デビュー作とか。稚気溢れるというか、何のてらいもない感じで、ミステリファンが好きそうなネタ(人里離れた不気味な館に住む、おぞましき伝承に彩られた、奇矯な富豪一族を襲う、呪いとしか思えない連続不可能殺人! に挑む天才探偵)がてんこ盛りである。メインはやっぱり三つの見立て密室殺人。そのどれもが長編を一本支えられそうな重量級のトリックで、作者さんの力の入れようが分かる。トリックの実現可能性とか、そもそもの密室にしなければならない必然性が弱いとか、いろいろ突っ込みどころはありますが、読んでるとまあいいかって気がしてくる。こういう作に対してしかめっ面で、ケチ付けて回るようなミステリファンにはなりたくねーなって感じでしょうか。
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官僚体質が甚だしい中国警察VS謀殺を企てる犯人! 一風変わった倒叙ミステリ #知能犯の時空トリック
■きっと読みたくなるレビュー
中国の人気ミステリー作家先生の新作とのことで、気になって読んでみました。
いや~、確かにこれは面白いです。
本作、独特のプロットで物語が進行します。
いわゆる倒叙ミステリーなんですが、古畑任三郎やコロンボシリーズのように、名探偵が少しの手がかりから犯人やトリックを見抜いていく…という面白さではないんですよね。
どういう面白さなのか詳しくは読んでみてほしいのですが、「痛快」であることは間違いないです。
また本作は中国独特の官僚体質の社会性が切り取られています。
強い者の無理強いが通ってしまう世界で、弱き者が精神力と知恵、そして自らの人生を犠牲にしながら戦っていく。登場人物たちの熱い魂と、直視できないような悲しい背景…
我が国日本も不公平な世の中ですが、中国ではもっと露骨ですね。そりゃ超学歴社会にもなってしまいますよ。
警察と犯人がメインの登場人物なんですが、これが一見クールなんですが実は心根が熱い奴らなんですよ。
特に警察官の高棟の狡猾ぶりがエグイ。彼が権力や人脈を駆使したり、公安内部の筋を通す腕力は、まさに官僚の生き様でしたね。
そして人と人との絆も丁寧に描かれており、東野圭吾先生の作品のような重厚感です。あなたも目頭が熱くなる瞬間がきっとあるでしょう。
そしてミステリーとしての謎解きですが、これもニヤニヤしちゃうようなトリックでGOOD! ただ若干、仕掛けのテイストが一昔前の感じはするかなぁ~。ここは好みだと思います。
総じてエンタメ感が抜群で、激しい人間ドラマが熱いミステリーです。日本人の感覚にもバッチシ合いますし、気になる方はぜひ読んでみましょう!
■ぜっさん推しポイント
本作、何人かの高校生たちが出てきます。
未来がある若者の可能性というのは、とても美しく、誰しも応援したくなりますね。
特に推したいのは、女子高生のフィフィ。
大好きな人に対するまっすぐで気持ちは、あまりにも純粋で鮮明すぎるよ… 彼女のこれからの未来に、幸せがくるように願いました。 -
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SF短編小説集、というよりは、著者の膨大な知識や興味から編纂された空想小説集といった趣きで、その知識量にまず驚かされました。
少女と吟遊詩人の巡り合いの旅路を描くファンタジックな「物語の歌い手」に、まさに頷かされてしまいそうになる『異常論文』たる「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」から、結論の鮮やかさがミステリの謎解きめいた脳科学SF「サンクチュアリ」、スマホゲームの開発をめぐり小気味いい会話で空想世界の構築を楽しむ「開かれた世界(オープンワールド)から有限宇宙へ」など、かなり高度でディープな仮想世界がぎっしりとどの短編にも形作られていて、凄い密度だなと思いました。
その中で表題作「ガーンズバック変換」は香川県のゲーム禁止条例を題材に取って少女同士の交流を瑞々しく描いた青春SFで、比較的ライトに楽しめます。この日本の少女らしさの描きかたも巧い。
そして「色のない緑」。親友の死の謎を追うミステリであり、近未来の人工知能の行く末を描いたSFであり、なにより彼女らの絆のつよさと切なさが胸を打つ、鮮やかな百合小説でした。彼女が研究を志した動機、絶望した理由、そして取った手段。すべてがひとつの存在がために帰結する、無駄のない硬質の美しさ。この短編、ものすごくただただ好みです。
また素敵な書き手さんと出会えた…という嬉しさを抱けた短編集でした。