阿井幸作のレビュー一覧
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北京生まれの作家、陸 秋槎(りく しゅうさ)の短篇集。一応ミステリ作家だがこれはSF短篇集
なお日本SF作家クラブの会員でもある
各短編◎◯□△☓の5段階評価で
1「サンクチュアリ」△
書籍が700部しか売れず、作家として次は無い主人公に大作家のシリーズ作のゴーストライターの依頼が舞い込む
このあらすじからは明後日の方向に向かう。まるで漁網を投げてからすくい、捕れたものを書いたような。あとがきにグレッグイーガンのような物を書きたかったがそうならなかった、とあり成る程そういう動機なのかと納得した。一応、脳科学SF…なのか?
小さくて綺麗なので簡単に掴めそうなボールと思っていたが小さすぎて潰してしまったので感慨はない、そんな印象
2「物語の歌い手」◯
貴族の娘である主人公がお忍びで抜け出した酒場で物語を歌っていた吟遊詩人に魅せられる。彼女は歌うこと、そしてもう一度吟遊詩人に会いたいと侍女のステファネットと旅に出る
驚くほど台詞がない。地の文で9割構成されており題材も手伝いファンタジー昔話を読んでいる気分になる。何よりその台詞の数の少なさは恐らく最後の展開との対比に利用、効果を発揮しており明らかにワザと。巧みな一作と思う。ミンストレルサガがお好きな方はこれだけでも読んでみては如何だろうか?40ページの量と思えないほど1人の貴族の娘の旅を読める。これは普通にファンタジーでした。リュートという楽器の音色を知っておくと脳内で広がる光景は本当に美しい。が、台詞がとにかく少ないのでドラクエのような問いかけにも思える
3「三つの演奏会用練習曲」△
三つの掌編で構成された、詩とは、文学とは
前編の物語の歌い手と根底のテーマが似通っていて、そして物語ベースにしないで書いた版というか。続けて揚げ物出てこられても胃もたれますし、既視感ありますし
4「開かれた世界から有限宇宙へ」◯
スマホゲーム会社で働く主人公が会社の偉大なプロデューサー宮沼(爆笑)に新しいオープンワールドゲームの開発で手伝ってほしいことがあると呼ばれる。それはズバリ昼夜、影を完全にリアルタイムで表現することで没入感を高める天体をシステム化して欲しいというトンデモ依頼だった
宮沼。爆笑です。ゼルダの伝説のトップ2名の名前からだと思います多分。ついでに白崎社長(笑)も出て来る。業界お仕事小説、と見せかけて理系バリバリの宇宙話の味わいも。とっても楽しい。中国人作家が「中華系クソゲー」なんてワード使う所も茶目っ気たっぷり
5「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」□
たった8枚の嘘八百論文。
これが許されるのがSFの良い所と思う
6「ハインリヒ・バナールの文学的肖像」□
架空の作家、ハインリヒバナールの伝記。
後半の加速っぷりは実に哀しい、世に何も残せなかったらあなたの伝記を作った所でこういうものだよ、と言われたような気もして。嫌われ松子の一生である
7「ガーンズバック変換」◯
ネットへの視覚的アクセスの規制条例が敷かれた香川県から女子高生がやってきた(帯より)
表題作。発想元が「香川県ネットゲーム依存症対策条例」、アニメ「電脳コイル」とのこと。女子高生が主役なので大変読みやすく、そして広範囲にSFオマージュが散りばめられていて楽しかった。SF入門的な作品ではあるけれどその分まさに電脳コイル的な範囲で収まっていて分かりやすく楽しい。にしても日本書くのうめえな
8「色のない緑」◎
ノーム・チョムスキーの有名な無意味文「Colorless green ideas sleep furiously.(緑色のない縁は激しく眠る)」をモチーフに百合感情物語が広がる
巻末に相応しいと思う。まさか色という単語から感情を呼び起こしSF的な叙情を広げるとは。本当に美しい。何か今後も似通ったテーマの際アンソロジーなどに編まれても何も不思議ではないほど抜けているので内容には触れないでおく。百合なのかどうなのかは分かれそうだけれど芯のある作品で文字から派生する受け手の余韻にも余白があると感じた。
全体的にライトなSFで肩に力入れず読める上、中国出身にも関わらず中国が舞台の作品は1つもあらず。また読んだ方は3つ目あたりで感じると思うがあらゆる方向の知識、国、描写が素直に描かれており器用な作家と受けると思う。あとがきにもある通りSF初心者とあるが、SF的なガジェットがあるだけで彼の視点は不思議なお話いかがです?といった印象。枠に囚われず描き続けて欲しいと感じた。良本でした -
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中国の作家・孫沁文の長篇ミステリ作品『厳冬之棺(原題:凛冬之棺)』を読みました。
中国の作家のミステリ作品を読むのは初めてですね。
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華文ミステリ界の▼密室の王▼第一長篇
湖のほとりに建つ陸家の半地下の貯蔵室で、当主陸仁の遺体が発見された。
この地下小屋は大雨により数日間水没しており、誰かが外から侵入した形跡はない密室状態だった。
そして現場には、なぜか嬰児のへその緒が。
さらに新たな密室殺人が陸家を襲い……。
華文ミステリ界の「密室の王」が放つ本格謎解きミステリ
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2018年(平成30年)に刊行された、孫沁文の長篇デビュー作です。
上海郊外の湖畔に建つ陸家の館で殺人事件が起こる……現場は大雨で水没した地下室で完全な密室だった! 天才漫画家探偵・安ジェン(糸へんに眞)登場。
上海郊外の湖・胎湖(タイフー)の畔に建つ陸(ルー)家の屋敷で、3つの密室事件が立て続けに起こる……殺害されたのは、当主・陸仁(ルー・レン)と一族の陸哲南(ルー・ジャーナン)、陸寒氷(ルー・ハンビン)、、、
3件の現場には、赤ん坊のへその緒という不可解な遺留品が残されていた……呪いか? 巧妙なトリックか? 警察は、密室殺人に詳しい人気漫画家・安ジェン(糸へんに眞)に協力を得ながら、陸家に伝わる赤ん坊の呪いと、一族の秘められた過去を手がかりに、連続密室事件の真相へ迫っていく という、王道の本格ミステリでした。
3件の密室トリックを明かす謎解き要素、閉ざされた屋敷、富豪一族の因習、呪いの伝承という館モノ・因習モノ独特の雰囲気、暗くなりがちな展開の中で程よい軽さを与えてくれる探偵役の安ジェン(糸へんに眞)の存在……等々、好みの要素が盛りだくさんで、愉しみながら読めました、、、
真相が判明した……と思わせた後でのどんでん返しも良かったですね
孫沁文は密室殺人など不可能犯罪ものが特に得意で、中国では「中国の密室殺人の王様」として知られているそうです……他の作品も邦訳してほしいですね。 -
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2024年の41冊目、今年のラストを飾るのは、周浩暉の「7人殺される」です。華文ミステリーです。周浩暉の本を読むのは、「死亡通知書 暗黒者」以来です。主人公は、共に龍州市公安局刑事隊長の羅飛(ルオ・フェイ)です。
全体を通して催眠が大きな鍵となっています。が、決して、荒唐無稽なオカルト話で終わっていないのは、本格派の刑事小説という土台が、しっかりと出来ているからだと思います。7に引っ掛けた構図も面白く、細かな伏線も作者の技量を感じます。
事件の真相は、中国社会の冷たさと欺瞞を炙り出します。主人公の羅飛が、自らの信念を曲げてまで、導き出したラストが何とも言えません。
☆4.5 -
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ネタバレ最初にテンポよく陰惨な事件が起こる。
バイオハザードファンがゾンビのように人の顔面を噛みちぎる、自分が鳩になったと思い込んで無防備に空に身を投げる…それが催眠術のせい?という引きの部分がめちゃくちゃ面白くて、ぐんぐん引き込まれた。
ところが。
過去の話、催眠術とはという話、催眠術合戦…と長々続き、なかなか進まない。
あれもこれも実は催眠ね、という感じで話が進み、催眠でした〜はい3歩下がる〜という感じなのだよね。全てが怪しくてスリリングに進むというよりは、話が進んだかと思うと催眠が挟まれて元に戻っちゃうので、テンポが殺されてる感じなのだ。読みづらい。前提がひっくり返るワクワク感よりも、え、またそこから?みたいな疲労感がきちゃうんだよね。なんでかな。
話自体は面白いんだけどとにかく3歩進んで2歩下げられるのがストレスだった。うーん、ちょっともったいなかった。 -
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劉慈欣が認めた二次創作「三体X」の作者、宝樹の短編集。全7篇。
ユーモアの強い「三国献麵記」すれ違いメロドラマ系の「成都往時」など、どの話も読みやすい。
私は一話目の「穴居するものたち」が好き。おうちだいじ。→
「三国献麵記」は三国時代に詳しければ100倍楽しめたなぁ、と思う内容。吉川三国志を3巻までしか読んでない私、曹操と赤兎馬の関羽しかわからん(笑)
「成都往時」は恩田さんの「ライオンハート」が好きな人にはたまらないのではないかと。私は好き。
「最初のタイムトラベラー」は→
読み返すとじわじわくる怖さと面白さ。まさにショートショート。
全体的に恋愛風味な印象はありつつ、楽しめた一冊。 -
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表題作「ガーンズバック変換」は香川県の「ネット・スマホ依存症対策条例」がモチーフ。現実よりは一歩踏みこんだ世界を描いているのだけど、現実と地続きのディストピアで、いかにも実現しちゃいそうでぞくぞくする。主人公が、液晶画面を遮断するメガネに形だけ似せた伊達メガネを作るのは、あくまでも自分のサバイバルを旨とした小さな抵抗。けっして地下組織に加わったり、表立って反対運動をしたりという大きな抵抗ではない。でも、もしかしたらそういう心持ちのほうが長続きするかもしれないし、それが広がっていけば大きな抵抗網になるのかもしれない……ってそれがこの短編の眼目ではたぶんなくて、最後は百合的な友情に着地するんだけど。
「色のない緑」は、『ベストSF2020』で読んだのが最初だけど、今はその当時に比べてAIの状況がずっと進化しているから、はるかにリアルに感じられてちょっとこわいような。自動翻訳をめぐるエピソードも、また、AIが人間が知り得ないブラックボックス化するという状況もよくわかる。
ほかの短編は、中世っぽい舞台のものがあったり、ゲーム開発をネタにしたオタクっぽい作品があったりと振れ幅がすごくて、読んでいてとまどいもあるっちゃあるけど、百味ビーンズみたいな楽しさもあってよかった。 -
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ネタバレ短篇集。8篇収録。
理論とかすっとばしてただひたすらに読んでいく(難しくて理解できないところもあるので…)こういう作品が作られていることが嬉しい。
物語の歌い手
上質な童話というか、こういった中世の世界観大好き。
三つの演奏会用練習曲
こちらはインド。不思議な読み心地。
開かれた世界から有限宇宙へ
ゲーム世界の理論の作り込みってこんなに大変なんですね(汗
インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ
読み終えて、ごめんなさい分かりません(笑)と思ったら
『異常論文』掲載の作品なんですね。私にはハードル高すぎました。
ガーンズバック変換
香川県にだけ存在するガーンズバック変換。面白かったです。
色のない緑
人間を超えていくAI。こちらも面白かった。 -
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湖畔に建つ洋館で密室殺人… 華文ミステリ界「密室の王」が書記す、ど真ん中の本格ミステリ #厳冬之棺
■あらすじ
中国上海の郊外、湖畔のほとりに建つ洋館には、陸家の一家が住んでいた。ある大雨が続いた翌日、半地下のため水没していた小屋の中から、主人が死体となって発見される。警察が捜査するも犯人捜しは難航し、さらなる事件が発生してしまい…
■きっと読みたくなるレビュー
中国の人気ミステリー作家先生のデビュー作とのことで、いやー力作ですね。作品を見れば、明らかに本格ミステリーをこよなく愛しているのがわかります。人に読んで欲しいというより、むしろ自分が楽しんで書いてるのが伝わってきますね。
また日本の文化にも影響を受けているのも嬉しくなります。中国とは政治体制も文化も経済も生活環境も、我が国とは違うところも多いですが、本格ミステリーを愛する共通点があることは、とても喜ばしいことですね。
本作、まず驚かされるのは、ジャンル本格ミステリーとして、しっかり形を成している点。館、密室殺人、見立て殺人、家督争い、探偵役、衝撃的な犯人、信じられない動機、バラエティに富んだキャラクターたち。これらが全て揃っていて、しかもバランスもとれている。読者を惹きつける構成も上手で、もう序盤から読むのをやめさせてくれないんです。
なによりメインの密室トリックの問題提示と、その解法が素敵でいいですね。これぞ本格ミステリーです。発想の角度としては一般的かもしれませんが、読んでると素直に作られた密室トリックが愛おしてしょうがないんですよ。
またキャラクターもポップで愛着があってイイ!本格ミステリーでは登場人物が古臭くなりがちですが、しっかり魅力付けができてる。職業や文化や価値観など、今風にしっかりアレンジができて、親しみをもって作品に没頭できました。
本格ミステリーを素直に楽しめる良作だと思います、続編も期待しちゃう!
■ぜっさん推しポイント
本作の魅力は、絶妙な古臭さと陰湿さの中に、軽快さが光っているところ。動機なんて鬼のようにエグイですし、最序盤の導入とラストの世界観の違いは、なかなか他の作品では見られない。作家先生のミステリーへの情熱を感じてほしい作品です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ華文ミステリ界で「密室の王」と呼ばれる作家さんの長編デビュー作とか。稚気溢れるというか、何のてらいもない感じで、ミステリファンが好きそうなネタ(人里離れた不気味な館に住む、おぞましき伝承に彩られた、奇矯な富豪一族を襲う、呪いとしか思えない連続不可能殺人! に挑む天才探偵)がてんこ盛りである。メインはやっぱり三つの見立て密室殺人。そのどれもが長編を一本支えられそうな重量級のトリックで、作者さんの力の入れようが分かる。トリックの実現可能性とか、そもそもの密室にしなければならない必然性が弱いとか、いろいろ突っ込みどころはありますが、読んでるとまあいいかって気がしてくる。こういう作に対してしかめっ面で、ケチ付けて回るようなミステリファンにはなりたくねーなって感じでしょうか。
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官僚体質が甚だしい中国警察VS謀殺を企てる犯人! 一風変わった倒叙ミステリ #知能犯の時空トリック
■きっと読みたくなるレビュー
中国の人気ミステリー作家先生の新作とのことで、気になって読んでみました。
いや~、確かにこれは面白いです。
本作、独特のプロットで物語が進行します。
いわゆる倒叙ミステリーなんですが、古畑任三郎やコロンボシリーズのように、名探偵が少しの手がかりから犯人やトリックを見抜いていく…という面白さではないんですよね。
どういう面白さなのか詳しくは読んでみてほしいのですが、「痛快」であることは間違いないです。
また本作は中国独特の官僚体質の社会性が切り取られています。
強い者の無理強いが通ってしまう世界で、弱き者が精神力と知恵、そして自らの人生を犠牲にしながら戦っていく。登場人物たちの熱い魂と、直視できないような悲しい背景…
我が国日本も不公平な世の中ですが、中国ではもっと露骨ですね。そりゃ超学歴社会にもなってしまいますよ。
警察と犯人がメインの登場人物なんですが、これが一見クールなんですが実は心根が熱い奴らなんですよ。
特に警察官の高棟の狡猾ぶりがエグイ。彼が権力や人脈を駆使したり、公安内部の筋を通す腕力は、まさに官僚の生き様でしたね。
そして人と人との絆も丁寧に描かれており、東野圭吾先生の作品のような重厚感です。あなたも目頭が熱くなる瞬間がきっとあるでしょう。
そしてミステリーとしての謎解きですが、これもニヤニヤしちゃうようなトリックでGOOD! ただ若干、仕掛けのテイストが一昔前の感じはするかなぁ~。ここは好みだと思います。
総じてエンタメ感が抜群で、激しい人間ドラマが熱いミステリーです。日本人の感覚にもバッチシ合いますし、気になる方はぜひ読んでみましょう!
■ぜっさん推しポイント
本作、何人かの高校生たちが出てきます。
未来がある若者の可能性というのは、とても美しく、誰しも応援したくなりますね。
特に推したいのは、女子高生のフィフィ。
大好きな人に対するまっすぐで気持ちは、あまりにも純粋で鮮明すぎるよ… 彼女のこれからの未来に、幸せがくるように願いました。