阿井幸作のレビュー一覧
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表題作「ガーンズバック変換」は香川県の「ネット・スマホ依存症対策条例」がモチーフ。現実よりは一歩踏みこんだ世界を描いているのだけど、現実と地続きのディストピアで、いかにも実現しちゃいそうでぞくぞくする。主人公が、液晶画面を遮断するメガネに形だけ似せた伊達メガネを作るのは、あくまでも自分のサバイバルを旨とした小さな抵抗。けっして地下組織に加わったり、表立って反対運動をしたりという大きなた抵抗ではない。でも、もしかしたらそういう心持ちのほうが長続きするかもしれないし、それが広がっていけば大きな抵抗網になるのかもしれない……ってそれがこの短編の眼目ではたぶんなくて、最後は百合的な友情に着地するんだけ
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ネタバレ短篇集。8篇収録。
理論とかすっとばしてただひたすらに読んでいく(難しくて理解できないところもあるので…)こういう作品が作られていることが嬉しい。
物語の歌い手
上質な童話というか、こういった中世の世界観大好き。
三つの演奏会用練習曲
こちらはインド。不思議な読み心地。
開かれた世界から有限宇宙へ
ゲーム世界の理論の作り込みってこんなに大変なんですね(汗
インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ
読み終えて、ごめんなさい分かりません(笑)と思ったら
『異常論文』掲載の作品なんですね。私にはハードル高すぎました。
ガーンズバック変換
香川県にだけ存在するガーンズバック変換。面 -
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湖畔に建つ洋館で密室殺人… 華文ミステリ界「密室の王」が書記す、ど真ん中の本格ミステリ #厳冬之棺
■あらすじ
中国上海の郊外、湖畔のほとりに建つ洋館には、陸家の一家が住んでいた。ある大雨が続いた翌日、半地下のため水没していた小屋の中から、主人が死体となって発見される。警察が捜査するも犯人捜しは難航し、さらなる事件が発生してしまい…
■きっと読みたくなるレビュー
中国の人気ミステリー作家先生のデビュー作とのことで、いやー力作ですね。作品を見れば、明らかに本格ミステリーをこよなく愛しているのがわかります。人に読んで欲しいというより、むしろ自分が楽しんで書いてるのが伝わってきますね。
また日 -
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ネタバレ華文ミステリ界で「密室の王」と呼ばれる作家さんの長編デビュー作とか。稚気溢れるというか、何のてらいもない感じで、ミステリファンが好きそうなネタ(人里離れた不気味な館に住む、おぞましき伝承に彩られた、奇矯な富豪一族を襲う、呪いとしか思えない連続不可能殺人! に挑む天才探偵)がてんこ盛りである。メインはやっぱり三つの見立て密室殺人。そのどれもが長編を一本支えられそうな重量級のトリックで、作者さんの力の入れようが分かる。トリックの実現可能性とか、そもそもの密室にしなければならない必然性が弱いとか、いろいろ突っ込みどころはありますが、読んでるとまあいいかって気がしてくる。こういう作に対してしかめっ面で
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官僚体質が甚だしい中国警察VS謀殺を企てる犯人! 一風変わった倒叙ミステリ #知能犯の時空トリック
■きっと読みたくなるレビュー
中国の人気ミステリー作家先生の新作とのことで、気になって読んでみました。
いや~、確かにこれは面白いです。
本作、独特のプロットで物語が進行します。
いわゆる倒叙ミステリーなんですが、古畑任三郎やコロンボシリーズのように、名探偵が少しの手がかりから犯人やトリックを見抜いていく…という面白さではないんですよね。
どういう面白さなのか詳しくは読んでみてほしいのですが、「痛快」であることは間違いないです。
また本作は中国独特の官僚体質の社会性が切り取られています。 -
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SF短編小説集、というよりは、著者の膨大な知識や興味から編纂された空想小説集といった趣きで、その知識量にまず驚かされました。
少女と吟遊詩人の巡り合いの旅路を描くファンタジックな「物語の歌い手」に、まさに頷かされてしまいそうになる『異常論文』たる「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」から、結論の鮮やかさがミステリの謎解きめいた脳科学SF「サンクチュアリ」、スマホゲームの開発をめぐり小気味いい会話で空想世界の構築を楽しむ「開かれた世界(オープンワールド)から有限宇宙へ」など、かなり高度でディープな仮想世界がぎっしりとどの短編にも形作られていて、凄い密度だなと思いました。
その中 -
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周浩暉『邪悪催眠師』ハーパーBOOKS。
ハヤカワから刊行された『死亡通知書 暗黒者』の前日譚にあたる珍しい中国の警察ミステリー小説。
最初は慣れない登場人物の名前に戸惑うものの意外にもサクサクと読める。催眠術による殺人事件扱ったミステリーというのが面白く、次々と明らかになる事実と謎に包まれた真相に興味は深まる。
しかし、突如として被疑者が浮上したり、美人看護師が僅か3日で天才催眠師に変貌したりと凡そ納得出来ないような展開もあり、ストーリーに粗さを感じる。と、思っていたら、そういう風にストーリーが展開し、このような結末ならばと少し納得出来るような気もする。
最初に描かれた運転手の男の顔 -
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中国の警察ミステリ。官僚たちが次々と狙われる連続殺人。防犯カメラの死角を掻い潜り、目撃者も決定的な証拠も残さない恐るべき知的な犯人。事件を追う高棟と、彼の友人でありながら実は事件の犯人である徐策との攻防を描くサスペンス感溢れる倒叙ミステリでもあります。
まあ中国に限らずなんだろうけれど……官僚の勢力争いがえぐい(苦笑)。事件の解決を目指すのも、メンツのためだけなんですねそうなんですね。だからこそこの結末での各所の動きにものすごく納得ができたし、理不尽だともあまり感じないんだよなあ。終章で、それまでに緻密に打たれた布石が一気に繋がってくるのが爽快だし、彼の最終的な目的がこれだったのか! ってのが -
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中国SFの短編アンソロジー、ハヤカワ文庫をはじめとして各社からゾクゾク刊行されています。これはハヤカワから出る3冊目かな?
鴨の全く個人的な感想ですが、うーん・・・出版されるたびに、面白みを感じなくなってきている自分がいます。要するに、「慣れちゃった」ということなのかもしれません。
中国SFの特徴の一つ、と言ってしまうと乱暴な気はしますが、割と幻想小説的な作風が多く、ロジカルに落とし前をつけるハード系の作風は大劉他の少数派、というイメージがあります。ブラッドベリ系が多くて、クラーク系があまりない感じ。鴨はどちらかというとクラーク系のSFが好きなので、単に好みの問題ということかと評価しています