道尾秀介のレビュー一覧
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ぺトリコール➡️ゲオスミンの順で読んだ。
最終的にはバッドエンド。劇団員全員とホームレスのいじめっ子カップル、ゆうか(姉)ゆうか(妹)が死んだ。
ぺトリコール、ゲオスミンともにそれぞれの短編の中に、面白い要素があった。ぺトリコールは戸籍がないと言う点。主人公が本当はゆうかという名前ではなかったり先輩の隠し事と共通してたりと意外性がありとても面白かった。
ゲオスミンもずっとゆきお(医者)の視点での話かと思いきや、突然視点がその妻に変わっておりそこでもまた驚かされた。
全体的にそもそも構造が面白いことに加えそれぞれの短編も面白く読むのに全然時間がかからなかった。
また、時系列を変えることで、赤い傘、最後の火事、死んだゆうかがどっちなのかなどが変わるという発想がヤバすぎる。
これ作ったん凄すぎると思うし、できた時気持ちよかったやろうなと思う。 -
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ネタバレすごく難しかった。考察を読んでやっと意味が分かる。
『弓投げの崖を見てはいけない』
一番すいすい読めて面白かった。最後の最後、誰が車に轢かれたのかわからなかった。考察を読んでびっくり。事件を必死に追っていた隅島が事故に遭うなんて……。
『その話を聞かせてはいけない』
ラスト、珂(カー)が昔祖父から聞いた妖怪のやっつけ方で誘拐犯を崖に引っ張ったのかと思ったけれど、ピンチを助けてくれたのは山内だったのか……。
『絵の謎に気づいてはいけない』
唯一オチがスッと理解できた。新人刑事:水元は頑張ってたのに、コンビの先輩:竹梨に殺される最悪の最後。殺意が芽生えていくような意識がもうろうとしてそうなラストは怖かった。
『街の平和を信じてはいけない』
珂が安見先生を思い出して礼を言ったシーンはすごく救われた。安見が事故を起こした2人を殺したことは結局、代筆した妻が便箋を白紙で出すことで誰にもバレず、竹梨の犯した罪も安見が間違って破棄してしまった。
「平和を信じてはいけない」というタイトルだが、真犯人は何もなければ罪を犯さない人ばかりだったのでは?と思うので、平和というのもあながち嘘ではないとも思える、なんとも面白い終わり方だった。 -
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ネタバレ各章の最後のページに1枚の写真が載っていて、それを見ることで物語ががらりと変貌する。
という情報をみて、面白そうだと思い読んでみた。
自分が想像していたのはその1枚の写真でガラリとひっくり返るどんでん返し系だったのだが、読んで想像していた物語が瞬時に変わるというわけではなく、その写真をよく読み解いてからじわじわと真相に近づいていくといった感じであった。
第2章の写真ははじめはよく分からなかったが、Hの文字を見つけた時はドキッとした。全て読んだ後は、ネットなどで色々な人の考察を読みながら、物語の文章で書かれていない部分をも読み取ることができて、結構楽しむことができた。 -
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終業式の日にプリントを届けた先で自殺していた友人、その死んだはずの友人があるものに姿を変えて主人公の前に現れる。
冒頭から奇妙な展開ではあるものの、小学生の目線で描かれていることで、不思議とリアリティーは落ちていない。
小学生の頃って、こんな不思議な妄想あったな、夢の話が現実のように感じてることもあったよな(本作とは関係ないが)と、小学生の頃の夏休み特有のカゲロウを見ているようなトロンとした世界観で物語が進んでいく。
話の内容は、他の評価にもあるとおり、決して明るいものではないが、ミステリー性も高いことから非常に引き込まれた。
不思議な作品、正直言うとぶっとんだ作品だとは思ったが、その奇妙な世界観はクセになるものがあった。 -
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ネタバレ
短編集なんだけど、主人公が他の短編のモブだったり脇役だったりして、どこかしらでリンクしてる。
読む順番によって印象が確かに変わるなと思った。
面白かった。
私は、最後に落ちない魔球と鳥を読んだ。
錦茂が、天使の梯子によってできる花を見たがっていることを、2つ目くらいに読んで知っていたので、最後に彼の願いが叶った形。
いい順番で読んだなと思った。
と同時に、あっけない終わりだなとも思った。
どの登場人物にもその人の人生があって、
希望の光が見える瞬間が丁寧に描写されてる。
その先になにがあるとしても、
その瞬間だけは幸せと思えるような。
いい小説だった。 -
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ネタバレキラキラとしたお日様の陽を浴びて真っ直ぐに咲く多くの向日葵。その中で、アブラゼミに侵され、項垂れ、咲かないのではなく、【咲く事の出来ない】一本の向日葵。
夏休み前に気持ちを昂らせ、明るくはしゃぐクラスメイトの小学生。その中でその光景を一歩下がった場所で俯瞰しながら、窓の外に居ないはずのSくんの姿を見つけるなど、仄暗い一面が垣間見えるミチオ。
咲かない向日葵は、心を傷ませる過去の出来事に巣喰われたミチオそのものであり、その比喩表現の対比が実に美しく描かれていると感じた。
普通の小学生にとっての楽しい夏休みも、ミチオにとっては、精神を病んだ母親と、それを傍観し全てを諦めた父の3人で暮らす時間が増える憂鬱さに対する、漠然とした不安要素の一つに他ならない。
味方の居ないあの家で、本来なら無条件で愛情を注いでくれるはずの母親が3年も自分の名さえ呼ばず、死んだはずの妹に見立てて人形に化粧をしたり、自分にさえ作らない夕食を与えたりする。父親とは会話するだけでも気を遣い、夜中になると狂った母親が低い声で叫び始める。
学校では、クラスメイトからいじめに遭っているS君と演劇会のペアを組まされている。一見気に掛けてくれているかのような担任も、結局はS君のいじめを黙認しており、小児愛の性癖を持つ裏の顔がある。唯一恋心を抱いていたと思われる後ろの席の女の子は、車に轢かれて亡くなっている。S君の母親からは、猫を小瓶に詰めて飼ったり、死体を見つける練習を飼い犬にさせているS君の異常行動を聞かされ、野良猫を亡くなった母親の生まれ変わりだと信じ込んでいる製麺屋の主人、S君の隣人で、死体の足を折る事に快感を覚える老人…。
ミチオを取り巻く世界は、【どこかがヘン】で、狂いかけている。そしてミチオ自身も、じわじわとアブラムシに身体を侵されて、自分でも気付かぬうちに、ゆっくりと、けれども確実に、精神を病んでいく…。
あの時、3年前自分が嘘をつかなければ、母親が階段を踏み外さなければ、妹が亡くならなければ、そうしたら父親の目には生気が籠っていただろう。母親は発狂せずにいただろうし、妹のミカは無事に産まれて、今頃自分の隣で笑っていただろう。家庭環境に問題が起こらなければ、性格が明るくなれば、クラスメイトとももっと近しくなれただろうし、S君以外にも友人が出来ていたかもしれない。ミチオは、そんな事柄を一体何百回思案し、何百回後悔したのだろう。
どこからか狂い始め、花は萎れて、閉じこもっていったのだ。
その過程が、実に哀しく、どうしようもなく、切なく描かれている。
誰かが、彼の異変に、異常に、気がつくべきだった。9歳の少年が、抱え込んでいる闇の大きさに気が付いて、救ってあげるべきだった。
真夏に美しく明るく花咲く向日葵(少年)が、【咲く事ができなかった】夏。物悲しくも美しく、ラストのどんでん返しの伏線回収含め、生涯記憶に残る完成度の高い作品であると感じた。