ダン・アリエリーのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
タイトルとパラ読みで即買いした一冊。
著者はフランスの心理学者です。
原題は「Psychologie de la Connerie」というもので、「Connerie」とは、愚かなことや愚行という意味ですが、英語にすると、bullshitとか卑俗な四文字単語の表現になるようです。
日本語の単なる「バカ」よりもっとタチの悪い意味のような気も…
ただ、本書で取り上げられるのは、勉強ができない、無知である、IQが平均以下、などということではありません。
なぜ人間はバカなことをしでかしてしまうのか、というのが本書の大きなテーマのようで、その定義や世界は実に奥深いものです。
以前読んだ「ファスト&スロー」(ダニエル・カーネマン)や「知性の罠」(デビッド・ロブソン)にも通じるところがあります。
本書では、世界の錚々たる知性が、「バカ」についてあらゆる角度から真面目に考察を加えていきます。
印象に残るキーワードを列記すると、認知バイアス、ヒューリスティック、アンカリング、偶然への期待、錯誤相関、常識の欠如、知性の欠如、ハロー効果、ナルシシズム、フェイクニュース、トートロジーなどなどですが、心理学や脳科学の領域にまで踏み込んでおり、実は読み応えある学術的な書物であったりもします。
自分自身も、本書で示すバカの定義に色々と思い当たるフシがあるのですが、少なくとも自分がバカであることを自覚していれば、愚かな行動や思考を未然に防げそうです。 -
Posted by ブクログ
1.
"人間は、ものごとを絶対的な基準で決めることはまずない。ものごとの価値を教えてくれる体内時計など備わっていないのだ。ほかのものとの相対的な優劣に着目して、そこから価値を判断する。"
→つまり、相対化できない状態・比較対象がいない環境に身を置くことでより優れたものを選択しなきゃいけないという強迫観念を回避できる。SNSで他人の素晴らしい生活を見ることは不要で不合理な意思決定につながりやすいと解釈した。
2.
"給料の多さと幸福感との間に、私たちが思っているほど強い関連はない(というより、むしろ関連は弱い)(中略)それなのに、私たちは、より高い給料を求めてやまない。そのほとんどは単なる嫉妬のせいだ"
→どれだけ自分の幸福を自覚できなくなっているかということがわかる。お金があれば幸せという外部要因に自分の幸福を測定されることに慣れていて、ほかの人が自分より稼いであればそれを目指すべき・超える努力をすべきという資本主義に都合のいい労働意欲を持ってしまう。
3.
"ソクラテスは、吟味されない人生は生きる価値がないといった。私たちもそろ、自分の人生における刷り込みやアンカーをよくよく検討していい頃だ。"
→意思決定の直前に一見無関係な文脈に触れるだけで、その後の意思決定基準が不合理にぶれてしまう実験が面白かった。自分の社会保険省の下2桁を書いた後に、このチョコレートにいくら出せるか?という質問をされると、下2桁の数字が高い群ほど高く設定するらしい。また、ズルができてしまう前にモーセの十戒を思い出させた軍はズルを働かなかったという実験結果もある。刷り込みはないかと検閲すると同時に、ありたい自分に自己洗脳するためのルーティンも組めると思った。(勉強に取り掛かる前に、なぜ自分が賢いのかを説明している本を少し読むとか?)
4.
"やりとりに金銭が絡まないとなると、必ず社会規範がついてくる。社会規範は人々に幸福を思い出させ、その結果、利用できる資源に負担をかけすぎない程度まで消費を抑えさせる。値段がゼロで社会規範が問題になっているとき、人々は世界を共同体のものとしてとらえる。値段を持ち出さないことが社会規範をもたらし、社会規範があることで私たちは他者のことをもっと気にかけるようになる。"
"プレゼントは経済効率が悪いものの、社会の潤滑油として重要だ。友人を作ったり、山あり谷ありの人生を通じて長く続く関係を気づいたりする助けになる。お金は時に無駄遣いする価値が十分にあるのだ。"
→市場規範と社会規範の話。社会的な関係に市場規範、つまり相手の好意を金銭で定量化する「〜してもらったのでxx円払いますよ」はお互いの関係性を損なう。また、一度市場規範が混ざった社会規範はなかなか純粋な社会規範に戻らないという不可逆性もある。プレゼントは相手の好意や親切をに適切な形で感謝を示す、不合理だけど効果ある方法。社会規範を保つにはそれなりの注意が必要だ。
5.
"ある感情の状態の時、別の感情の状態を考えるのは難しい。(中略)しかし、十分な情報を得た上で決断するには、向こう側にいるときの感情をなんとか経験し、理解しなければならない。人生における重要な決断をするには、この隔たりを埋める方法を身につけることが不可欠だ。"
→痛みや欲望など強い感情の前後で人間は同じテーマについても判断を誤ることを忘れないように心がける。 -
Posted by ブクログ
富永朋信氏とダン・アリエリー氏の対談本。と言っても2人とも知らない方でしたが、めちゃくちゃ面白かったです。私たちの持っている不合理性について行動経済学者の視点でアリエリー氏が語ると言うのが大きな流れです。
不合理性と言うのは、例えば死後の自分の名声を気にしてしまうとか、ゴールした時の達成感を味わいたくて苦しいマラソンに挑戦するとか・・・確かに合理的に考えればそんなこと必要ないことを私たちは好きなんです。こう言った話をしているんですが、全ての話にクリティカルな答えが出てくるわけではないけれども、考え方を追っていくと、すごく勉強になります。
最後の方には企業の業績とアンケート結果の関連も出ていましたが、「悪意のないミスを褒めること」と「公正な給与制度」の2つが業績と関連するクリティカルポイントとのことでした。悪意のないミスを褒めると言うのは、挑戦することを褒めることに繋がるので、長期的には会社の業績を上げる。また、公正な給与制度は給料が高いことよりも重要で、業績に直結するなどは頭に入れておきたいと思いました。
「影響力の武器」を読んでから、行動経済学は好きになりましたが、この本では業績だけでなく、幸せという非常に捉えづらい項目を含んでいて、とても面白かったです。 -
Posted by ブクログ
行動経済学が理解できる本である。なぜか、最近この行動経済学が、かなり気に入った。この問題をどう行動経済学で考えるか?を考えるだけで、随分と視野が広がる。人間って、なんと矛盾した生き物であることだと思うが、そこに人間らしさがあるのだろう。
トランプを行動経済学で見てみると、 「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」や「America First(アメリカ・ファースト)」といったシンプルで力強いスローガンは、愛国心や自己防衛の意識といった感情に訴えかけ、国民に特定の行動(トランプ氏への支持など)を促すナッジとして機能し、支持を集めた。メキシコ国境問題を語る際に、「麻薬密売人」「犯罪者」といった言葉を繰り返し用いることで、移民をネガティブな存在として印象付け、壁を作り、不法滞在者(でない人も)を国外に追い出した。「CNNは嘘をついている」などを繰り返しいうことで、支持者が主流メディアの情報を疑い、自分の発言のみを信頼する状況を作り出し、支持者は「トランプの言うことは本当で、他のメディアは嘘をついている」と思い込むようになり、彼の主張が浸透しやすくなった。とにかく、大統領が率先して分断•差別するから威力がある。「失われた栄光を取り戻す」を繰り返しいうことで、昔の強いアメリカの頭で突き進む。トランプの行動は、有権者の非合理的な意思決定傾向(バイアス)を誘導し、この非合理的行動が、実に時代を先取りしているのが、トランプなのだ。
経済学は、「人間の決断はすべて情報にもとづいた合理的なものであり、あらゆる品物やサービスの価値と、あらゆる決断によってもたらされるだろう幸せ(効用)の大きさについての正確な観念によってくだされる。こうした仮定のもとでは、市場のだれもが収益を最大にしようとし、経験を最高のものにしようと努める。」ということを追求してきた。
しかし、行動経済学は、人間の判断や行動が非合理であることを追求する。
人は物事の価値を比較によって判断するものである。比較対象として「おとり(デコイ)」となる劣った選択肢が存在すると、ある特定の選択肢が魅力的に映りやすくなり、選ばれやすくなるという相対性の法則を示している。つまり、人間は、相対的な観点から物事を選択するのである。これは、販売のシーンで活用されている。売れないものも置くことで、売れ行きが良くなる。
カルガモのように、最初に見たものが、母親である。物事を選ぶのは、最初に見たもので選ぶ。それを、アンカリング効果という。無料だと分別なく、いらないものでも、欲しい。無料のためなら、地の果てまで駆けつける。それほど、無料は人間をワクワクさせる。糖質ゼロも、ゼロに惹きつけられ、魅惑的だ。
社会規範と市場規範があり、親切に対してお金を払うものではない。関係が崩壊する。愛はお金で買えない。ビートルズも歌う「キャントバイミーラブ」と。
興奮すると、見境がなくなる。ドーパミン効果は、全てを許す。だから、興奮するとコンドームをつけるのも忘れるのだ。セックスするために、愛してなくても愛してるとさえ叫ぶのだ。情熱はわたしたちが思っている以上にあついのだ。困ったモンだ。行動経済学は、冷静にデータをとって分析する。
高い化粧品ほど、美しくなるって思い込むのは人間だ。プラシーボ効果は、エジプトのミイラの粉でさえ、万病に効くのだ。聖者が触ると病気が治るのはプラシーボ効果なのだ。民間伝統秘薬でがんが治るって、ありえないのに治る人もいる。多くは、死んでしまうが、人間は一度は死ぬのだ。
共同で使用する冷蔵庫にあるコーラは、なくなるが、冷蔵庫に置いた1ドル札はなぜかなくならない。共同トイレのトイレットペーパーも同様で、そのささやかな罪は容認されるのだ。シェークスピアは、「人間とはなんとすばらしい傑作か!」と表現した人間像とは違う非合理であることに、行動経済学は、解明し、理論づけるのだ。
オレオレ詐欺は、行動経済学に基づいて完成する
犯人はまず、「息子が事故に遭った」「トラブルに巻き込まれた」など、緊急かつ深刻な事態を装い、被害者に強い不安や動揺を与える。
この情動ストレスが高まることにより、被害者は冷静な思考が難しくなり、「騙されているのではないか」という合理的な疑いを抱く余地が失われる。視野狭窄となる。動揺している状態では、人は複雑な状況を深く分析するよりも、提示された具体的かつ単純な解決策に飛びつきやすくなる。
詐欺師が警察官、弁護士、銀行員などの権威ある立場を装うことで、「この人物の言うことは正しいに違いない」と無意識のうちに信じ込ませる。複数の人物(例えば、息子とその上司、警察官など)が関わっているかのように見せかけることによって、「多くの人が関わっている=本当の事態に違いない」と認識させ、信憑性を高める。そして急がせ、周囲の人に相談させないようにする。
返報性の法則を使い。人は他者から恩恵や親切を受けた場合、「お返しをしなければならない」という強い心理的義務感を抱かせる。詐欺者は親身になって話を聞き、トラブル解決に協力的な態度を示すことにより、被害者に対して「この人は信頼できる」「助けてもらっている」と感じさせ、最終的な金銭の要求を断りにくくさせる。シナリオはできているのだ。こうやって、年寄りのタンス預金を奪う。行動経済学のたくましく、完成された構造に感心をするのだ。
ダン•アリエリーは、アンカリング効果、無料の魔力、損失回避などを提唱。
行動経済学は、ダニエル・カーネマン が確立。『ファスト&スロー:あなたの意思はどのように決まるか?』が代表作。2002年にノーベル経済学を受賞。リチャード・H・セイラーが、『行動経済学の逆襲』が代表作、2017年にノーベル経済学を受賞している。
なぜ?を考える上で、行動経済学は、わかりやすいロジックが見つけることができる。 -
Posted by ブクログ
私は自分の行動を振り返ると、「なぜこうしたのか」「また同じことをしてしまった」「おかしいな」と後悔や不思議に思うことが多い。自分で判断し行動しているはずなのに、その理由を理解できないことがしばしばあった。
本書『予想どおりに不合理』を読んで、腑に落ちた。人間の行動は合理的ではなく、むしろ不合理さに満ちている。著者は数々の実証実験を通して、私たちの判断がどのように歪められているかを明らかにしている。その結果は「予想どおり不合理」であり、経済学で語られるような合理的な決断は存在しなかった。私たちは見えない力に操られているのではないかとさえ感じる。
本書で紹介されている不合理さはどれも共感できるものであったが、特に共感できたのは第11章の「価格の力」である。まさに価格によって自分の考えや感情まで変えられていることが多い。それどころか無意識の領域で身体に影響まで及ぼしている。そんなことがあるのかと正直驚かされた。しかし、理解はできても、脳がフィルターをかけているので対処は難しいようだ。
それでも本書を読んだことで、人間の行動が実に興味深いものであることを改めて実感した。完全に合理的なAIのように生きたいとは思わないが、不合理な選択によって「また失敗した」と後悔することは減らしたい。せめて大きな決断をするときには一度立ち止まり、「これは本当に後悔しないか」「自分の判断以外の力は働いていないか」と考える習慣を持てるようになりたい。そう思わせてくれる一冊であった。 -
Posted by ブクログ
様々なバカがあちこちに蔓延する現代、そもそもバカとは何なのかを考察している一冊。
「頭が悪い人」がバカなのか、あいつをバカだと思っている私とあなたはバカではないのか…などのバカげた深遠なる探求へ本書が読者を導きます。
天才には限界があるがバカには限界がなく、しかも彼らは増殖しているように見えるほど目立つ性質を持った生き物です。
様々な専門分野からバカを考察した結果では定義も様々となるわけですが、子供=バカなのかという問いには一貫してNOとなります。
思慮不足、経験不足から引き起こされるバカげた結果は“粗相”であり、もたらされる結果がどんなものかわかっていながらバカげた行動を起こしてしまう大人こそがしっかりと成長したバカなのです。
故に知性とバカは無関係であり、猛獣などに襲われた際にアルゴリズム的知性で「逃げるべきか留まるべきか」などと考えるよりも合理的知性で「とにかく逃げろ」と即決するべきで、状況に応じて知性を使い分けられない人間がバカなのだと考えさせられました。
もし自分がバカをやらかしてしまった場合にも触れられており、やはりというか当然というか…謝罪が一番効果的なようです。
しかし、本書は紛れもなく良書です。
バカをただバカにするのではなく、入念な研究と考察により親身になってバカがどのようにバカなのかを解説しています。 -
Posted by ブクログ
行動経済学は、大雑把に言うと経済学+心理学ということらしいのですが、脳科学にも近いように思えます。そして、実は「マーケティング」の別称にすぎない、とも言われています。
行動経済学ブームの火付け役とも言われるアリエリー教授は、本書で人々のお金にまつわる不合理な判断(エピソード)について、ユーモアを交えながら解説。400ページとやや分量は多めですが、なかなか楽しく読めました。
しかしながら、読み進めていくにつれ、自分自身のお金の使い方に関する無知と愚かさを示されたようで、ちょっとお恥ずかしい限り…
お金に関して合理的な判断力を身に付けたいと思われる方は、本書を読んでおいて損はないと思います。