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Posted by ブクログ
人々の行動の不合理性を行動経済学の視点から考察してベストセラーとなった『予想どおりに不合理』『不合理だからすべてがうまくいく』に続く著者の第3弾。本書ではさらに突っ込んで不正行為について述べている。不正と言っても紙面を賑わすような汚職や粉飾決算などの話ばかりではなく、身の回りのちょっとした「ずる」について、人はどんな時に不正を働くのかを検証したものだ。人々を不正行為に駆り立てるものは何なのだろう。
簡単な問題を解き自己申告した正解の数によって報酬が支払われるという実験を行い、様々に条件を変えて正解数のごまかし(報酬金額の不正な上積み)がどれくらいの割合で起こるかを調べると実に興味深い結果になる。ごまかしが露見する恐れが有る場合と無い場合、他人のごまかしを目撃した場合、その人が自分の仲間内だった場合とライバル集団に属する人だった場合、見知らぬ同士がペアになってお互いを監視した場合、親しくなった同士がペアになった場合、ごまかしをすると自分ではなくペアの相手が得をするという場合、偽物のブランド品を身につけた場合等、様々な実験を行うと、設定した条件によってごまかしの数も変わってくるのだ。
実験により、不正を作る要因は、自分の不正を正当化する能力(自分に対して言い訳上手)、利益相反(経済的な利益関係により公正な判断が損なわれる)、きっかけになる小さな1回の不正、自分が大切に思う他人の得になる、他人の不正を目撃する、疲れて自制力が消耗した脳、文化的背景などであり、不正を減らすものは道徳心を呼び起こすもの、宣誓や署名、監視などであった。そして予想外の事に不正によって手に入る金額や露見する確率などはあまり影響しないことがわかった。
「ずる」を引き起こすものは何なのかを理解すれば行動を自制することもできるし、不正に対する対策を取ることもできるだろう。それが社会科学の真の目的だと著者は述べている。「自分はずるなんてしない」と思っている人、小さな「ずる」を無意識に正当化してしまっていないだろうか。人々の行動には様々な要因が影響を及ぼすことがよく分かり大変興味深い一冊だ。
Posted by ブクログ
誰でも、「ずる」不正行為をする。しかし、自分が悪い人間だとは思いたくない。そこで「自分は正直でまっとうな人間だ」と思うための物語を紡ぎ出す。
人間はどういうときに、ずるをすることが多いのかということを、さまざまな心理学の実験をすることで、解き明かしていく。このさまざまな実験を考え出すということがすごい。「なるほどなぁ。でも、どうやってこんな実験を考えついたのだろう」と思ってしまう。
これこそ創造性だろう。
忘れるといけないのでメモしておこう。
「ずるを助長する要素」
正当化の能力
利益相反(サービス提供者がふたつの方向に引き裂かれる状況):歯科医のCAD/CAM機器の例
創造性(知能は無関係)
一つの反道徳的行為
消耗(ダイエットの例)
利他的不正(自分に利益にならないと、より正当化しやすい)
他者の不正を目撃する(同じ仲間が重要)
不正の例を示す文化(いろいろな実験では調べられない文化というものが重要)
ずるを減らす要因:
誓約
署名(最初にまず署名)
道徳心を呼び起こすもの
監視(見知らぬ他人による。ただ、目の写真だけでも効果あり)
ずるには影響なし:
つかまる確率
不正から得られる金額(SMORC: シンプルな合理的犯罪モデル)
「ずるを減らしたい」ずるの横行に悩んでいる人には良い本だ。
Posted by ブクログ
表紙の「ずる」に惹かれて読みました。
内容は、人間のシンプルな合理的犯罪についての多くの実験結果に基づき進められます。
シンプルな合理的犯罪とは、誰もいない車もこない深夜の赤信号渡るなど日常で人間がやってしまう「ずる」が、どどのような要因で起こり、どのように「ずる」を回避できるのかを説明されており、人間の意思の弱さを感じました。
割れた窓ガラス効果ように職場の人数が、多いほど「ずる」が起きやすくなる。
名前のない仕事(コピー用紙補充、書類整理など)を一部の職員がやって困っていたのでこの本を参考に少しでも「ずる」の少ない職場になってほしいと願います。
Posted by ブクログ
「予想どおりに不合理」の著者が不正と意思決定について著したもの。不正といっても、エンロンの不祥事のような大きなものだけでなく、ゴルフのスコア申告のように、そのほとんどが多くの人に関わりのあるありふれた不正である。
不正が起きるしくみについて、合理的経済学では、人は自分の置かれたそれぞれの状況を合理的に分析し、それをもとに犯罪を行うかどうか決めるというもの(シンプルな合理的犯罪モデル「SMORC」)らしい。しかし、少し考えればわかることだが、あらゆる決定について費用便益分析を覆ない、最も合理的に思われることをするとするなら、たぶん職場を一分離れるときも、財布を引き出しにしまいこむだろうし、どんな取引にも法的契約が必要になり、そのせいで法的闘争や訴訟に時間をとられるようになる。本書は、SMORCでは説明のつかない、「人を不正に向かわせる本当の力」を明らかにしている。
多くの事例に共通するのは、人の行為はちょっとした契機で変わってしまうものだということ。確定申告などの申告の不正を試す実験では、署名の位置を、(道徳心を呼び起こすため)一番上にするか一番下にするかで不正の数が減ったという。こういう工夫は、ビジネスでも十分考えるべきテーマであると思う。
一番興味深かったのは、「創造性が高い人ほど、ごまかしが多い」ということ。
「だれもがごまかしをする能力をもっている。またごまかしをする自分がなぜ不正直でも不道徳でもないのか、その理由を説明する物語を自分に語るのがとてもうまい。さらに始末の悪いことに、わたしたちは他人のごまかし菌に『感染』しやすく、またいったん不正なことをし始めると、同じ方法で不品行を続ける可能性が高い。」
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