Posted by ブクログ
2020年04月11日
行動経済学の大家であっても、50歳過ぎて離婚するという事実にびっくり。
…心理学者のポール・ブルームは、意味がいかに物体にくっつくかについて素晴らしい実験を行っています。
ブルームはこう言いました。「俳優のジョージ・クルーニーが一度着たスウェットシャツがあったと想像してみてほしい。あなたならい...続きを読むくら払いますか」と。ジョージ・クルーニーが好きな人は、そのシャツにかなり高い値段を払ってもいいと考えます。次にこう言った。「このスウェットシャツを洗ったら、いくら払いますか」。すると値段は下がるけれど、まだ何か残る。私たちは普段、「象徴的な消費」について考えませんが、象徴的な消費は至るところにあります。そして、象徴的な消費はものの価値を高める。あなたが好きな人から贈り物をもらい、その人がなぜこれが大事かを説明したカードが入っていたとしたら、どうでしょうか。たとえそれが、歯磨き粉のような平凡なギフトだったとしても、その贈り物の消費は象徴的な消費になります。
まず、歯磨き粉の入った箱が玄関先に届く。あなたはこの歯磨き粉からどれほどの喜びを得られますか。一方、「私はこの歯磨きが大好きで、いつも使っているものです。あなたにも同じものを使ってほしかったので、どうぞ」と書かれたカードを受け取る。この2つは、大きく異なる体験です。常に最も意味のある体験を求めることはできないけれど、時として、私たちは生活の機能的な側面ばかりにこだわり、感情的な意味合いを軽んじてしまうのではないかと思います。
…何が違うかというと、家とパートナーの違いというよりは、一切動かないために背景に溶け込んでいくものと、注意を引くために私たち私たちが適応できないものとの違いだと思います。
結婚に関する分析があります。かつて結婚というものは、「一緒になって、寒さを逃れよう」という話でした。生活は厳しく、働かねばならなかった。だから「一緒になろう、2人が一緒になったら、生活がラクになる。経済的な工場のように、もっとうまく働けるようになる」と。そういう時代がありました。
次に、人々が「愛情」を求める別の時代がありました。そして今では、人は「自己実現」を求めます。パートナーに対し、一緒に働き、愛することができるだけでなく、自分を向上させてくれることを求める。恋愛関係から、かなり多くのことを求めているんです。
もちろん、それが実現すればとても素晴らしい。ただし、実現する確率はとても低い。うまくいくことを願いながら、その過程で多くの犠牲が出るんです。良いアドバイスがあるとすれば、「自分の期待値を下げなさい。」それが一つ。さらにもう一つ、カップルが常に一緒にいることによって、互いを激怒させる可能性があることが多々あることを理解することも重要です。
…ジョン・リンチの研究があります。その研究では、カップルが一緒になるとき、誰がお金の管理をするかを片方が決めることが分かりました。必ずではないけれど、男性がお金の管理をする。すると、その人はお金を管理するのがどんどん得意になり、もう片方はそれがどんどん不得手になっていくんです。
大事なのは、自分たちが変わることを認識する必要があるということ。そして、一緒に変わる必要がある。もしカップルが別々に変わっていくと、本当にひどい事態になるからです。それから、短期的にはとても心をそそられる専門特化は、2人をただ別々の軌道に乗せてしまうために、長期的には悲惨な結果になりかねないことを理解する必要があります。
…ここで参加者は、無作為に編成された集団でも、それがひとまとまりのチームだと定義されると結束すること、そして、同じく無作為に編成された別の集団を敵とみなしてしまうことを思い知らされました。人間は組織の壁や国境を境に良くも悪くも「私たち」の感覚を抱くのです。
幸せを希求するために、人間のその性質を理解し、常に自覚しながら行動し、無用な対立を避け、必要な結束を高めるのがリーダーのみならず、すべての人が持つべき態度なのではないでしょうか。
2006年から2018年までのデータで、企業約800社を対象に従業員の処遇の80項目を調べたデータベースです。ここで基本的にやろうとしたことは従業員の処遇方法の中で、企業が株式市場で最も成功するようにする要素は何かを見つけることでした。
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従業員がどう処遇されていると感じるか、ということです。例えば、「給料」はそれほど重要でないことが分かりました。給料を増やしても、企業の業績は向上しません。一方、「給料の公正さ」はとても重要でした。
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…本当に重要なことは、オートノミーと関係していることでした。「この会社では、悪意のないうっかりミスが評価されると感じるか」という問いへの回答が、最も重要なカギの一つだと思います。…
悪意のないミスが評価されると言うとき、これは会社が「結果」よりも「意図」を大事にすることを意味しています。
…人が結び付いていると感じ、信頼されていると感じ、自主性を感じ、会社を大事に思うということ。活躍する手段があるということ。こうしたことが、重要なことになります。
また、「重要でないことが何か」を知ることも重要です。例えば、私たちの研究では、医療保険のような「福利厚生」はあまり重要ではないことが分かりました。「オフィスの家具の質」もあまり重要でないことが分かりました。本当の問題、企業を本当に前進させるのは、社員が会社とつながっていると感じ、余計に頑張ろうとすることです。自動装置のような人がいて、ただ言われたことだけをしていたら、その人には非常に限られた価値しかない。一方で、会社のミッションに本当に興奮している人がいる。欲しい人材はその人です。これはただ契約で手に入るものではない。その人との互恵関係から得られるものです。会社の成功と自分の成功が同じものだということを心から受け入れることから得られるものです。
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モチベーションと報酬は異なります。人にやる気を与えられないという意味ではありません。それはできます。
実際、HRはR&D部門の機能と似ていると思うんです。何が理想的でないかを継続的に探し、問題を正そうとする。ただ、大半の企業では、HRは新しいことを模索し、見いだそうとする権限を持っていません。けれど、本当はそうしなければなりません。私が望んでいることは、組織の役割を変えること、そして人間のやる気についてもっと深い理解を得ることです。私たちが知識経済へ移行するにしたがって、個人の裁量に任されることが増えていくということを、もっと深く理解する必要があると思います。