78回転のSPレコードにまつわる全13編を収めた短編集。様々な時間や場所が舞台となるが、どのエピソードも実は微妙に繋がっていて、ひとつの長編作品としても楽しめた。情景的で叙情的な文体で紡がれる物語はノスタルジックで時に感傷的。殺伐とした現代社会とは一線を画した穏やかな時間の流れや、沁み渡るような優しさが心地良い。著者の作品は「電球交換士の憂鬱」に続き二冊目だが、明快な物語性やエンタメ性のあったそちらに比べ、こちらは掴み所のない童話やお伽話のよう。恐らくこちらが本来の作風だが、前者の方が自分の好みではある。