加藤元のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
切れ者の友人と謎に挑む、児童向けミステリ
本作の探偵役となる仲川冴は、大人に物おじせずに言い返せるすごいやつ。さらに心理戦の名手でもあり、真実をうまく隠し、相手を油断させながら質問を重ねていきます。
一方で、主人公・高木とわは普通の小学生だ。しかし、仲川冴や周囲の人たちに対して、心の中で突っ込みを入れてくれる。この二人のコンビネーションが実にちょうど良い。
また、登場するクラスメイトなどは等身大の子供で、確かにこういう子はいるよな、と思わせてくれる。
特に興味深かったエピソードは、3話の「うらしまたろうの真実」。本作中で唯一事件が起こらず、うらしまたろうの絵本と原作を読み比べながら、2人で考察やツッコミを入れていくというもの。「うらしまたろうが恩着せがましい」とか「乙姫様のたろうへの束縛が重すぎる」とか、言いたい放題で面白かったです。 -
Posted by ブクログ
短編集には二種類あると思う。
もう終わっちゃったの?長編で読みたかったなぁと思うものと、読後ズーンと余韻が残るもの。
この作品は後者です。これだから時々短編って読みたくなるんだよなぁと思わせてくれる一冊。
七編の短編、どれも主人公はまぁはっきり言って幸せとは言えないんですよね。
舞台も裏寂れて治安がよろしくないところばかり。
どのお話も過去を振り返っていて、後悔していながらも、そんな自分を受け入れている。
なんだか結局こんな小説や映画が好きなんだよなぁ。
生きてると色々ある、でも大切な人って結局は人生で一人か二人‥‥そんなことを気付かせてくれる一冊。
しばらくこの余韻の中に浸らせてもらいます。
-
Posted by ブクログ
加藤元さんの作品を読んだのは、『嫁の遺言』,『金猫座の男たち』に続いて本書『ごめん。』が3冊目となりました。
加藤さん、・・・・・やはり「凄い」です!
『嫁の遺言』でとてつもない衝撃を受け、『金猫座の男たち』で才能を確信し、『ごめん。』で加藤さんの全作品を読む決心をするに至りました。
さて、本書は主人公である吉本佑理(三十二歳独身女性)を中心として、恋人、職場の上司や同僚やその家族、友人、(時に猫)との間で、「ごめん」を共通のキーワードとした人生模様を描いた、十一話からなる連作短編集です。
最初に読んで衝撃を受けた『嫁の遺言』は短編集であり、収録されている全作品が「傑作」でしたが、本書の収録作品も勝るとも劣らない「傑作」揃いでした。
一冊の本として読んだ場合、連作短編集という特長(更に、共通キーワードを持った展開)を存分に生かした本書に分があるのかもしれません。それだけ面白く「凄い」作品でした。
本書のタイトルどおり、キーワードが「ごめん」であることから、謝罪に関する場面・文章・解釈が何度も描かれていますが、とりわけ、「誤魔化しのための謝罪」と「自己満足のための謝罪とそれによる暴力」の描写は考えさせられました。(町田そのこさんの作品『宙ごはん』を思い出しましたね)
その都度、自分もそうだな、そうだったな、情けない。あの時のあの人の謝罪はどういう気持ちだったのかな。人と人が相手の身になって行動し、完全に理解し合うことがいかに難しいことか、と暗い気持ちにもなりましたが、それだけでは終わらないのが加藤さんの作品の「凄い」ところで、また、私が大好きなところでもあります。
そのあたりはあえて書きませんが、とにかく本書が面白くて「凄い」作品であることに間違いはなく、多くの皆さんの心に届くことを願うばかりです。 -
Posted by ブクログ
11話の「ごめん。」の連作短編集。
そうだよね、と共感できることが多かった。
『第二話 いつも俺から』
口先だけのごめん。謝っているから受け入れろという態度。妻が病気でも優しい言葉をかけるだけでいいと思っている。子どもの世話は、いいとこ取り。義理親と妻は仲がいいと思っている。
こんな杉田課長の行く末は、自己満足で、自分はなんでもしてやっているのにという夫の行く末。自分が、ではなく相手がどう思っているのかを、どうして考えられないのだろうか、と思う。義理関係は妻の辛抱で平和をもたらしていることもある。子育ても、1人では大変すぎる。夫になった人達に、妻に甘えていないか、職場の女性に対して軽んじたことをしていないか、考えてみてほしいと思った。
『第七話 ナニサマ』
「謝りなさいよ。」上から目線の言い方。一方的に謝罪を求める人には、毅然とした態度が必要なように思う。謝っておけば、丸く収まるわけではない。他人の理不尽な、ストレスの捌け口になっていい人なんていない。その結果、身を守るために図太くなってしまった人のことは悪くは言えない気がした。楓子を助けてくれた店長の言葉と杉原香奈の言葉に胸のすく思いがした。信じられる人もいることは、忘れないでいたいと思った。
私の場合、「ごめんなさい。」と泣きながら言う子どもの気持ちを、今ならばもう少し落ち着いて受けとめられるなぁと思った。あの頃は、余裕がなかった。周りの目も気になった。未熟だった。今更だけど、「ごめんね。」と、小さな我が子へ謝りたいと思った。
-
Posted by ブクログ
加藤元さんの作品を読んだのは、本書『嫁の遺言』が初めてです。
本書は全7編の短編集ですが、そのどれもが「傑作」と呼べるほど粒ぞろいで、読んでいて息つく暇もないとはこのことでした。
感想を一言で表現するならば、「凄い」という言葉が最適だろうと思います。
心からの畏敬の念と、畏怖の念も覚える作品で、衝撃を受けながら読んでいました。
少なくとも短編集に限ってとなれば、これほどまでに「凄い」と思わせられたのは、
町田そのこさんのデビュー作である『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』
以来です。
*このような作品を読むたびに、小説家さんの作品への精励(畏敬)と、才能(畏怖)に頭が下がりますね。
本書を買って読もうと思った切っ掛けは、いつものように本屋さんで物色していた時に、目に飛び込んできた『嫁の遺言』というタイトルと、「満員電車の中、ふと冷たい手が触れた。それは、死んだ嫁の優しい手だった。」という帯の文面でした。
それもあってか、『嫁の遺言』以外の6作品にはあまり期待していなかったのが正直な気持ちでしたが、良い意味でその考えは浅はかであったことが分かりました。
*加藤さん、出版社の皆さん、申し訳ありませんでした。
このような出逢いがあるのも、本屋に行く楽しみのひとつですよね‼️
さて、本書に収録されている7編は全て「傑作」であると先に述べましたが、その後の「あとがき」2編と「解説」がこれまた秀抜でしたので、最も心に残る文章を最後に抜粋します。本書を読みたくなること間違いなしだと思いますし、とりわけ、(私のように)町田そのこさんの作品が好きな方には届くのではないでしょうか。
・あとがき
大人向けの「おとぎ話」を書きたかった。
そこには鬼も悪い魔法使いも登場しない。その代わり、救いがたく悲しい不和の連続がある。さまざまな思いを抱く人間たちがいる。
ありふれているようで、実際には起こりがたい「おとぎ話」が書きたかった。ひととひとがわかり合う、それだけのことが、現実にはどれほど難しいことか。
・・・
以上、七編。どの物語も、ハッピーエンドとは呼べない。それだけの現実を背負っている。
しかし、主人公たちは、みな、昨日よりほんの少し、優しいひとになっている。そして、それ以上に幸福な「おとぎ話」の結末はないと、著者は考えているのである。
・解説
かつて、加藤元はこんな言葉を残している。
「自分が本当に欲しいもの、そのために手放さざるを得ないものを、つらい選択の末に知ることができた人間は、結局、誰よりも幸福になれるのだと思う。それがいかに他人の目からは平凡でつまらない生き方に映っても。」
本書に描かれている不器用ながらも一途に生きている人の営みから、まさにこの言葉の意味を感じてほしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ噂や偏見で人を決めつけることはしてはならない、これは誰もが認識していることだが社会における人間関係には気を付けていても噂や偏見が邪魔をしあの人はあまり良くない人だ、と思ってしまったり況してや面識のない人物の事を、人から聞いた情報だけでイメージを作り上げてしまうなどといったこともある。
これが度が過ぎてしまった場合、イメージやレッテル張りにより酷く相手を傷付けることにもなりかねない。集団虐めの根底にも上記のようなことが混在しているのではないか、と思うことも度々ある。
本日はどうされました?は、そのような噂や偏見、レッテルなどといった社会にありふれた、目を背けてはならないものについて深く考えさせられる本であった。
まず目次に人の名前が羅列してあるのにまず目を引かれた。"まなちゃん"のヒントがそこに隠されているような気がしたので敢えて目次に戻って確認することはしなかったが、それをしなかったことにより"まなちゃん"が本当に真中さんなのではないか???と読んでいる自分自身も一瞬惑わされたのも事実である。
病院関係者の複数人からの異なる視点から事件を見ることができた。人をどう印象付けてしまうかは、その時の環境や生まれ育ち培った性格などが反映される気がすると感じた。
人間関係に迷った時や人付き合いが増えたときに人の何を見るか、決して他人から聞く噂や偏見によって決めつけるなんて事はしてはならないのだと改めて感じさせられた一冊だった。 -
Posted by ブクログ
素敵な内容の本を買ってじっくりと読む。できれば何日かに分けて読むのではなく、物語に没頭して一気に読み切ってしまう。本好きの方にとっては、こういう時間を過ごすのは贅沢なことなのではないだろうか。私も読書が好きなので「没頭して一気読み」という時間を過ごすのは大好きなのだが、「素敵な内容の本」と「じっくりと読める時間」と「一気読みできる気力」の三つが揃わなければ実現しない。
「素敵な内容の本」は自分の好きな作家さんの本であれば高い確率で出会える。緊急事態宣言でおうち時間が増えている今は「じっくりと読むこのとできる時間」も、いろいろと家庭の事情はありながらもなんとかなりそうだ。個人的に一番問題なのは「一気読みできる気力」。睡眠不足だったり体調が悪かったりすると気力が湧かないし、心配事などがあっても本を読む気にならない。暑すぎても寒すぎても気持ちが乗らないので、好きな作家さんの素敵な本を一気読みできる機会というのは案外少ないものだ。
逆に、だからこそ、そういった機会が訪れるととても得した気分になって、今日はなかなか良い日だったななどと自己満足に浸ることもできる。ちょっとしたことだが、本好きの私にとってはささやかで小さな幸せだし、精神的な安定度のバロメーターにもなっている。
加藤 元さんが書かれた「ごめん。 (集英社文庫)」は、久しぶりに一気読みをした素敵な内容の物語だった。「ごめん」という三文字が題材となった連作短編集で、人の心の中にある強さや弱さや哀しさなどが丁寧に綴られた素敵な物語だ。
連作短編集はたくさんあるが、今回読んだ「ごめん。」は全11話という話数の多さも特徴で、それぞれの物語の主人公がすべての物語に共通しているという点も興味深い。また、ある物語の中では無気力だった登場人物が、他の物語ではとても頼もしい活躍をする人物であったりと、人は単見る人、関わる人によって見方が変わるのだという当たり前のことを改めて教えてもらった。
第一話は学生服専門の用品店で働く吉本佑理が主人公。彼女は幼い頃から本好きで、友達と遊んでいるよりも一人で本を読んでいる方が好きな「変な子」だった。大人になってもその性格は変わらず自分の時間を静かに過ごしていたが、職場で無神経な発言を繰り返すセクハラ上司のせいで気持ちが沈みがちだった。そんなある日、セクハラ上司に対して「無礼ですね」と毅然とした態度で言い返した青年がいた。彼は出入りの配送業者の青年だったが、そんな彼に対して佑理は好感を持ち、それがきっかけで距離を縮めることになった。しかし、ちょっとした一言でちょっとした行き違いが出てしまうのだが、それでもそこから二人の素敵な付き合いが始まった。
第二話以降も、第一話の中に登場する人物や、その人物に関連する人物が主人公となるのだが、 読んでいる最中に胸に響く言葉が出てきたり、登場人物を探して前のページをめくったり、そして読み終わってからは心の中がふわっと暖かくなったりと、とても素敵な時間を過ごさせてもらった。
題材が「ごめん」という謝りの言葉なのだが、謝るということがどういうことなのかを改めて考えさせてくれるという意味でも、単に素敵なだけではなくてとても大切なことを教えてくれる一冊だった。