加藤元のレビュー一覧
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短編集には二種類あると思う。
もう終わっちゃったの?長編で読みたかったなぁと思うものと、読後ズーンと余韻が残るもの。
この作品は後者です。これだから時々短編って読みたくなるんだよなぁと思わせてくれる一冊。
七編の短編、どれも主人公はまぁはっきり言って幸せとは言えないんですよね。
舞台も裏寂れて治安がよろしくないところばかり。
どのお話も過去を振り返っていて、後悔していながらも、そんな自分を受け入れている。
なんだか結局こんな小説や映画が好きなんだよなぁ。
生きてると色々ある、でも大切な人って結局は人生で一人か二人‥‥そんなことを気付かせてくれる一冊。
しばらくこの余韻の中に浸らせてもらいます。 -
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加藤元さんの作品を読んだのは、『嫁の遺言』,『金猫座の男たち』に続いて本書『ごめん。』が3冊目となりました。
加藤さん、・・・・・やはり「凄い」です!
『嫁の遺言』でとてつもない衝撃を受け、『金猫座の男たち』で才能を確信し、『ごめん。』で加藤さんの全作品を読む決心をするに至りました。
さて、本書は主人公である吉本佑理(三十二歳独身女性)を中心として、恋人、職場の上司や同僚やその家族、友人、(時に猫)との間で、「ごめん」を共通のキーワードとした人生模様を描いた、十一話からなる連作短編集です。
最初に読んで衝撃を受けた『嫁の遺言』は短編集であり、収録されている全作品が「傑作」でしたが、本書の収 -
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11話の「ごめん。」の連作短編集。
そうだよね、と共感できることが多かった。
『第二話 いつも俺から』
口先だけのごめん。謝っているから受け入れろという態度。妻が病気でも優しい言葉をかけるだけでいいと思っている。子どもの世話は、いいとこ取り。義理親と妻は仲がいいと思っている。
こんな杉田課長の行く末は、自己満足で、自分はなんでもしてやっているのにという夫の行く末。自分が、ではなく相手がどう思っているのかを、どうして考えられないのだろうか、と思う。義理関係は妻の辛抱で平和をもたらしていることもある。子育ても、1人では大変すぎる。夫になった人達に、妻に甘えていないか、職場の女性に対して軽んじた -
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加藤元さんの作品を読んだのは、本書『嫁の遺言』が初めてです。
本書は全7編の短編集ですが、そのどれもが「傑作」と呼べるほど粒ぞろいで、読んでいて息つく暇もないとはこのことでした。
感想を一言で表現するならば、「凄い」という言葉が最適だろうと思います。
心からの畏敬の念と、畏怖の念も覚える作品で、衝撃を受けながら読んでいました。
少なくとも短編集に限ってとなれば、これほどまでに「凄い」と思わせられたのは、
町田そのこさんのデビュー作である『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』
以来です。
*このような作品を読むたびに、小説家さんの作品への精励(畏敬)と、才能(畏怖)に頭が下がりますね。
本書を買 -
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ネタバレ噂や偏見で人を決めつけることはしてはならない、これは誰もが認識していることだが社会における人間関係には気を付けていても噂や偏見が邪魔をしあの人はあまり良くない人だ、と思ってしまったり況してや面識のない人物の事を、人から聞いた情報だけでイメージを作り上げてしまうなどといったこともある。
これが度が過ぎてしまった場合、イメージやレッテル張りにより酷く相手を傷付けることにもなりかねない。集団虐めの根底にも上記のようなことが混在しているのではないか、と思うことも度々ある。
本日はどうされました?は、そのような噂や偏見、レッテルなどといった社会にありふれた、目を背けてはならないものについて深く考えさせ -
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加藤元。ファンの間では通称:カトゲン。
恥ずかしながら今回の作品で初めて知りました。
目次にずらりと並ぶ人物名。
私はミステリーなんかを読むときにはメモ帳と人物名を羅列せずには読み進められない性質なのですが、この作品はメモなどなくともするすると読み進めることができました。
トリックや謎解きは一切なし!
(とはいっても謎はあります)
唯一の手掛かりは一章ごとに入れ替わる“証言”だけ。
このシンプルかつ口語での(記者の聴いた)陳述だけが頼りの謎解きは新鮮でもあり、ワクワクさせられる構造でした。(こういう進め方って面白くなくなりそうなのに、そうならないところが作者の手腕ですね!)
主となるテー -
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素敵な内容の本を買ってじっくりと読む。できれば何日かに分けて読むのではなく、物語に没頭して一気に読み切ってしまう。本好きの方にとっては、こういう時間を過ごすのは贅沢なことなのではないだろうか。私も読書が好きなので「没頭して一気読み」という時間を過ごすのは大好きなのだが、「素敵な内容の本」と「じっくりと読める時間」と「一気読みできる気力」の三つが揃わなければ実現しない。
「素敵な内容の本」は自分の好きな作家さんの本であれば高い確率で出会える。緊急事態宣言でおうち時間が増えている今は「じっくりと読むこのとできる時間」も、いろいろと家庭の事情はありながらもなんとかなりそうだ。個人的に一番問題なのは