藤沢令夫のレビュー一覧

  • パイドロス

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    ソクラテスはお釈迦様やイエス・キリストのように真理を悟った聖者には至っていないものの、本質への思索はかなりいい線まで行っているように思えます。

    魂とかスピリチュアルな要素を含んだ哲学ですね。(魂も仮想で実在ではないのだろうが…)

    今のような情報化社会ではない、はるか昔にこんな賢者がいたとは驚きです。存在自体が奇跡的です。

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    2025年12月27日
  • メノン

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    最初に読んだ時は、「徳は教えることができるか」と「√2の求め方」に何の関係があるか、理解出来なかった。
    再読し、「人間本来の知恵や本性は教えられうるのか」が共通するテーマだと理解できた。が、私の関心は徳そのものであり教示の可否ではなかったので、またも徳の理解には及ばなかった。

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    2024年12月10日
  • パイドロス

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    ネタバレ

    「自分を恋するものより恋していない人に身を任せる方が良い」という一見常識に反するリュシアスの言説を聴くことを発端に、恋することについて、そして弁論術批判についてソクラテスがミュートス(神話)を交えながら滔々と語るという内容。魂がかつて見た美のイデアへの欲求(エロース)の芽生えとしての恋を語り、弁論術に本当に必要なのは哲学により物事の真の姿を問答することであると語ることでどちらの主題も哲学礼賛へとつながるようになっている。
    一読した感じだと最後の方の弁論術批判の辺りがよくわからず、うーん?となってしまった。しかし解説はさすがのさすがで過不足なく要点と解釈がまとまっており、そうだったのか、なるほどと唸らされる。今までの著作の内容も盛り込み、充実した内容を余裕を持って語っている姿が分かるようになってきた…と思う。最初は面食らったミュートスもだんだん癖になってくるというか、壮大さとロマンを感じられるようになってきた気がする。この調子で後期の作品も読んでいきたい。

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    2023年12月21日
  • 国家 下

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    ネタバレ

    下巻は洞窟の比喩、善のイデアの役割、様々な政治形態の国家とその国民の性格の解説、詩人追放論、あといつもの巻末魂の不滅神話など。国家の様々な政治形態のくだりの、形態から別の形態への移り変わりの部分はプラトンの洞察力のすごさを感じた。
    下巻まで読むと、正義の議論で始まり正義の議論で閉じるきれいな構造もあって見通しが良く感じるし、イデア論・四徳・洞窟の比喩・魂の不滅など有名な理論がそろい踏みするので壮観でもある。ただそれらは国家論の下敷きであって、その上に立った壮大な国家論こそがプラトンの思想の結晶というべき存在なのだろう。解説にもあったが、ソクラテスの徳や正義の問答、魂を磨き続けるという目標と自らの政治への興味が長い年月をかけてこうして実を結んだのだろうかと思うとなんだか感慨深い。

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    2023年12月15日
  • 国家 上

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    ネタバレ

    訳が藤沢令夫氏で非常に読みやすい。1979年の訳とは思えない。
    最初の正義問答は面白かったけど、すぐにソクラテスの独り舞台となってしまう…というか、「パイドン」といい、プラトンが自分の思想を開陳する時にそうなっているんじゃないかということに気づいた。アカデメイアの講義もこんな感じで、ひたすらよいしょされながら話を続けていたのだろうか。

    正義とは何か→国家における正義とは何か→個人における正義とは何かという感じで探究する中でプラトン理想の国家について語るのが上巻の主な内容。有名な「知恵・気概・節制・正義」や哲人政治などの要素も出てくる。
    私有財産や貧富の差が国家を堕落させる、というところから始まる理想の国家の中身は非常に全体主義的なもので、徹底した優生政策(出来の悪い人間が作った子供は殺す!)と無菌室のような教育によりそれを実現させようとするものである。共産主義っぽいけど、共産主義のほうが真似ているのか、思考の始まりからただ似通っているのかは勉強不足で分からない。子供は誰が誰の子供か分からないように育てて資質によって職業を決定すると言っていたかと思えば、のちの軍隊の運営の箇所で当たり前に職業世襲っぽいことを言っていたりとその時その時のトピックで場当たり的に話をしている感は否めないのだが、プラトンの理想主義と、理想にわずかの傷も許さない完璧主義は伝わってくる。やはり人間の繁栄を志そうとすれば優生思想に行き着くのは自然な成り行きなのだろうか、ということを少し考えた。

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    2023年12月09日
  • ソポクレス オイディプス王

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    「先王を殺したやつを探せー!」と号令をかける主人公が実は犯人であることを読者は最初から知っていて、散りばめられたピースが回収されるたびに物語が破滅に向かってまっしぐらな様子を神の視座から楽しめる、こんな構造を2400年前に編み出していたソフォクレスさんすごい。

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    2020年12月25日
  • 国家 上

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    あまりに有名なので義務感から上巻だけ頑張って読んだが、知的刺激も新規性もなく極めて退屈であった。知識のない中高生が考える姿勢を学ぶために読む本としてはおすすめだが、現代を生きる成人が改めて読む必要は感じられなかった。もちろん歴史的背景から学問的価値の高さは述べるまでもないが、書籍としての価値は教養書として名を連ねるほどのものではないかと。

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    2020年10月24日
  • ソポクレス オイディプス王

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    古代ギリシャ三大悲劇詩人の一人、サポクレスの作品(戯曲)
    なんと紀元前427年頃の作品
    完成度が高過ぎて驚く
    これほど時代が移り変わっても、違和感なく受け入れられる不条理作品だ

    ネタバレ…というか内容が世間的にあまりにもオープンになっているのでネタバレにあたるのかよくわからないが…
    ネタバレ有りです

    テバイの王ライオスは、
    自分が、やがて生まれる子供の手にかかって亡き者にされ、
    またその子は母親とまじわる運命にあることを神託に告げられる

    その男の子であるオイディプスは、お前は父親を殺し、母親とまじわるだろうと告げられる

    そしてオイディプスは4人の男女の子供を授かる

    ああ、悲劇以外の何ものでもない
    どうして、こんなひどい運命を授かるために生まれてきたのか

    物語は劇として進行するため、登場人物もそう多くなく、シンプルでわかりやすい
    いちいち「宮殿の扉が開かれ、〇〇が登場」
    といった感じの注釈がある
    また劇の本編の対話部分が一段落するごとに、コロス(合唱隊)が登場し正歌と対歌で構成される
    作品の補足的かつ、重要な役目をし、韻律を踏んだコーラス部門という感じなのだが、これを訳して活字にしてしまうと、難しく、非常にわかりづらい
    想像力が不足し、コロスの重要さが伝わらずとても残念だ
    結構な紙面を使っているだけに、もったいないなぁ…
    というわけでコロスは気になりつつも、本編に集中することに

    不運のオイディプスは、ある時、真実をなんとしても追求しようと、躍起になる
    徐々に真実が明らかになる過程の緊張感は、答えを知っていても、ページをめくるのが恐ろしいほどだ
    オイディプスが躍起になればなるほど、自分自身が追い詰められていく
    読んでいて酸素が薄くなって苦しくなる
    皆が楽観的な結論を望み続ける中、悲劇の真実が明らかになるこの逆行する展開もなんとも胸が痛い
    全てを知ったオイディプスはどうするのか
    オイディプスの母であり、妃は、子供達は…

    現代の小説からすればツッコミどころは満載だが、なんせ紀元前に書かれたものである
    よくできた構成と、真実に近づいていく緊張感、オイディプスや彼の母親兼妃の心情が手にとるようにわかる
    親子、近親者、異性、運命…
    人間の本質を突いた作品だからこそ、何世紀に渡って、受け入れられているのではないか

    前々から一度きちんと読んでみたかったので満足
    コロス部分以外、とても読みやすい(笑)

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    2020年08月02日
  • パイドロス

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    ネタバレ

    恋と弁論術について。

    正直よく理解できなかった。個々の論旨というよりも全体の位置づけ的な部分について。

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    2017年05月21日
  • 国家 上

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    ネタバレ

    「お金の所有が最大の価値をもつのは、ほかならぬこのことに対してであると考える。……たとえ不本意ながらにせよ誰かを欺いたり嘘を言ったりしないとか、また、神に対してお供えすべきものをしないままで、あるいは人に対して金を借りたままで、びくびくしながらあの世へ去るといったことにないようにすること、このことのためにお金の所有は大いに役立つのである。」(26頁)


    個人と国家の共通項を探し、一方を他方に当てはめている。
    演繹のし過ぎ、というのは現代的な感覚だろうか。

    優れた国家に必要な三つの徳…知恵、勇気、節制。
    勇気と知恵は、国家のある特定の部分に存在するが、節制は国家の全体にいきわたっていて、支配関係について支配者と被支配者との間で合意されている状態(293頁~)。

    上記3つの徳に匹敵するのが正義。
    正義とは、自分が自分の仕事だけを果たすこと。

    国家のためという観点から、男女の平等を肯定する(357頁~)。

    望ましい国制を移行するためには、哲学者が王になって統治するという変革が必要である(404頁~)。

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    2017年01月15日
  • パイドロス

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    ソクラテスとパイドロスの対話。
    恋についてと文章術、弁論術について。

    パイドロスは若者で、文章を書く能力で有名な別の人物に心酔しているが、ソクラテスはそれを否定する。
    ソクラテスの話す魂についての話はよく分からない。1000年の生を10回繰り返すとか、何の根拠もない話を好き勝手にしているだけのような。

    とにかくよく分からん。

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    2018年11月04日
  • メノン

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    ソクラテス先生若者と徳について探求の巻。

    「徳は教えられるか?」というテーマであり、
    これはプロタゴラスと被っているが、
    当時流行の議題だったらしい。なるほど。
    あっちこっちに話が飛んで分からなくなる
    プロタゴラスに比べると比較的分かり易い。

    結局見事なロジックにより結論が出るのだが、
    これはソクラテスやプラトンの思想では無いらしい。
    師のソクラテスにはそれが可能だったとし、
    プラトンもそこを目指していたのかなあ。

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    2016年02月06日
  • 国家 上

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    ネタバレ

    尊敬する先生に勧められて読んだ一冊。たぶん3割も理解できなかったのではないか。ちゃんと読む初めての哲学書だったが、かなり読みやすかった。どうも私はソクラテスの考えに賛同できないなあ。結構ずるくない、彼。言い返せないのが悔しい。

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    2015年05月24日
  • メノン

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    「徳とは何か」という問い。
    どうも、「政治家が目指すべき徳とはいかなるものか」という裏設定があるように見える。
    プラトンの回答は、
    徳は規定可能な知識ではないが、《正しい思いなし》という水準であれば、活用していける、というもの。
    具体的な徳の内容については、中期の『国家』、後期の『法律』などに当たる必要があるか。

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    2015年04月25日
  • 国家 下

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    「西洋の全ての哲学はプラトン哲学への脚注に過ぎない」という有名な言葉がある。この『国家』を読んだだけでも、なるほど確かにそうなのかも、と思わされてしまう、それほど広範かつ重要なテーマを扱った本である。

    ただ、完全無欠の神のような人間の存在(ないしは創造可能性)を前提とした国家設計は許容しがたい。個人より国家を優先して思考を突き詰めれば当然の帰結なのかもしれない。

    プラトン曰く、理想的な哲人政治もいつかは落ちぶれる運命にあるという。しかしそれがなぜかを説明する箇所は意味不明の数式で煙に巻く。そもそもプラトンが説くような、完全無欠な哲人が統治を続ける限り、その国家の衰退はありえないはずではないか。この部分のプラトンの論旨展開は、統治者として君臨すべき完全無欠な人間の存在を自ら否定するようなものだ。

    下巻で展開された詩人追放論は、上巻で主張された音楽・文芸の効用と矛盾するものではないか?という陥りがちな疑念は、訳者による説得力のある註釈により晴らされた。
    本書は、世人の間で哲学が文学よりも重要であるとは必ずしもみなされていなかった時代に書かれた。そしてプラトンは哲学の地位向上を図るためにあえて強い書き方を選んだのだった。

    2400年も昔の人が書いた本を読むというのは刺激的な体験であった。ルソーやニーチェなど後世の哲学者を先取りしたかのような考え方が随所に見られた。ニーチェが否定した西洋哲学の伝統とは何かを知るための重要な手がかりとなることは間違いない。

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    2014年12月13日
  • 国家 下

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    古代ギリシアの哲学者プラトン(前427-347)の主著。副題「正義について」。

    真/偽、善[正義]/悪[不正]、美/醜、存在/生成、同一性/差異、概念/個物、一/多、内/外、イデア[界]/仮象[界]、知識/臆見、彼岸/此岸、秩序[cosmos]/混沌[chaos]、必然/偶然、精神/肉体、理性/感性、観想/実践 ・・・。世界をこうした階層化された二項対立的図式によって解釈し、ヨリ価値の低い後者の現実とヨリ価値の高い前者の理想とを区別して(現実とは、イデアを分有しただけの不完全な代物である)、後者から前者への階層移動を志向する、そういう機制としての西洋形而上学は、プラトンによって見出され、その後2000年以上ものあいだヨーロッパの思想の骨格となっていった。存在論としてのイデア論、認識論としての想起説も、それぞれの時代に於いて変奏されながらその基本的な機制は反復されてきたと云える。

     □ ユートピア思想

    ここで語られているのは、西洋最古の壮大なユートピア思想である。

    ユートピアは理想郷として現実に於いて場所をもたない[ou-topos]が、と同時に、理想の完全性により生成変化することもなくそれゆえそこには時間が無い[ou-chronus]ともいえる。そこには人工的な空想の無表情な不気味さがある。そこで語られるユートピア社会の構成員の"顔"が見えないのだ。空間や時間が無いだけでなく、人間もいない。

    本編における大きな特徴は、個人の問題が国家の問題へと接続されている点にある。「ところで、国家は一個人より大きいのではないかね?」「するとたぶん、より大きなもののなかにある〈正義〉のほうが、いっそう大きくて学びやすいということになろう。だから、もしよければ、まずはじめに、国家に於いては〈正義〉はどのようなものであるかを探求することにしよう。そしてその後でひとりひとりの人間においても、同じことをしらべることにしよう。大きいほうのと相似た性格を、より小さいものの姿のうちに探し求めながらね」

    匿名的な知性=徳性によってあらゆる価値が一元化されたソクラテス/プラトン思想の下に展開される理想国家の構想は、一部の隙も無い息苦しさがどこか狂気染みている。人間は知性=徳性の下位に置かれ、それを否定=超越する自由が無いものとされているように思われる。空想に於いて実行される理想の"独裁"である(勿論、プラトンが本書後半で述べる独裁僭主 tyrannos とは全く意味が異なるが)。そこに、人間的な自由や文化は、その存在余地があるのか? 歪な初等教育論然り、「詩人追放論」然り、国家に無用な者に対する死刑の肯定然り、「国家の守護者」の選抜試練然り、管理生殖然り、女と子どもの共有然り。表現統制・優生思想・選民主義・個人の国家への全き同一化の要求・・・。個人の人間としての尊厳や、そもそも私生活それ自体が、国家の存立よりも下位に置かれている。端的に云って、グロテスクである。「・・・、一人の人間のあり方に最も近い状態にある国家が、そうだ[苦楽の私有化による国家の分裂から最も隔たっている]ということにもなる・・・。――たとえば、われわれの一人が指を打たれたとする。そのとき、身体中に行きわたって魂にまで届き、その内なる支配者のもとに一つの組織をかたちづくっている共同体が、全体としてそれを感知して、痛められたのは一つの部分だけであるのに、全体がこぞって同時にその痛みを共にする。そしてこのようにしてわれわれは、その人が指を痛めている、ということになるのだ」。ここに、国家と国民の区別はない。国民は国家に溶解してしまっているようだ。これは、最古の素朴な全体主義思想ではないか。「人間性」「個人の尊厳」「人権」という現代の我々にとって"自然"な観念が決して普遍的なものではなく"歴史"的なものであるという事実を、痛感する。

    (尤もプラトンは、独裁制(僭主制)は民主制の崩壊によって生じる、というファシズムを通過した我々にとって極めて鋭い指摘をしている。優秀者支配制国家〈理知〉→名誉支配制国家〈気概〉→寡頭制国家〈金銭欲〉→民主制国家〈自由〉→僭主制国家(欲望のアナーキー、狂気、カリスマ希求? 自由の隷属化)。「・・・、民衆の慣わしとして、いつも誰か一人の人間を特別に自分たちの先頭におし立てて、その人間を養い育てて大きく成長させるものではないかね? ・・・。則ち僭主(独裁者)が生まれるときはいつも、そういう民衆指導者を根として芽生えてくるのであって、ほかのところからではないのだ」「まず第一に彼[独裁者]のすることは、たえず何らかの戦争を引き起こすということなのだ。民衆を、指導者を必要とする状態に置くためにね」「さらにその目的はまた、人々が税金を払って貧しくなり、その日その日の仕事に追われるようになる結果、それだけ彼に対して謀反をたくらむことができにくくなるようにするためでもある」。まるで現代の我々の社会のことを2000年以上前から指摘されているような気にならないか。なお、別の個所で国家の起源としての社会契約論の萌芽が見出されるのも興味深い)

    これが、アテナイ民主制によって師ソクラテスが殺されたプラトンの政治的到達点なのか。

    〈正義〉の原則は次のようなものとされる。「各人は国におけるさまざまの仕事のうちで、その人の生まれつきが本来それに最も適しているような仕事を、一人が一つずつ行わなければならない」。さて、理想たるべき国家には、〈知恵〉〈勇気〉〈節制〉の三つの徳が備わっていなければならないとされる。つまり、国家の構成員が各自の分に応じた仕事に専念し、思い上がりによって自らの分を逸脱することなく、三つのうちの各自の分に応じた徳を体現することが、国家に於ける〈正義〉といわれる。そして、国家が三部分に区分されるように、個人の魂にもそれに対応した三部分〈理知的部分〉〈気概的部分〉〈欲望的部分〉が存在するとされる。そして、〈理知的部分〉が魂全体を支配し〈気概的部分〉がそれに服従し(欲望的部分)の放埓を制御する、則ち自分で自分自身を支配し秩序づけ節制と調和のうちに一人の人間と成ること、これが個人に於ける〈正義〉といわれる。こうした考えのうちにも、ユートピア思想特有の「構成員の匿名性・"顔無し"性」「理性による理想的な統御」が現れていないか。

    繰り返し見てきたように、ソクラテス/プラトンの政治哲学の裡には、共同体の構成員たる個々人の「実存」という視点が見事に抜け落ちているのである。それが数学や哲学的問答法の訓練を受けた哲学者=哲人王の理性によって統制可能であると考えられている。唯物史観に基づく共産主義の革命思想にも欠落している観点である。「実存」との緊張関係を通過することのない「政治」はもはや通用しない。事象の本質的概念的把握を目指す哲学的精神を政治権力と結合させる哲人王思想では、「実存」という人間の存在様態に追いつかないのである。

    現代の我々に、ユートピアは不可能である。では、「革命後の世界」は?

     □ 自己関係性

    〈善〉のイデアとは、太陽が見られるものを照らし出し以て視覚=見ることの原因となるように(「太陽の比喩」)、認識対象に真理性を付与し認識主体に認識機能を働かせるものとされる。しかし、〈善〉のイデアが"在り"且つ"かく在る"ことを、ソクラテス・プラトンは如何に認識しその認識を正当化するのか。彼の哲学体系の内部に於いてその正当化は可能か。そこが問われない哲学体系は、端的に独善であり無意味ではないか。

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    2014年04月12日
  • メノン

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    わかりやすい論理で地道に対話が進む。
    ソクラテスのそらとぼけをかなり感じる。

    知識、知恵、知性など、知の言葉がいくつか出ており、その訳し分けが難しい。

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    2013年08月12日
  • 国家 上

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    対話という形式、わかりやすい翻訳だからまだ読みやすい。紀元前400年代の人の思想に触れていることに歴史の厚みを感じた。

    なかなか友達にはしたくないプラトン。正義について調べるつもりが理想の国家の話に・・・。

    女・子どもの共有とか、選民思想などかなり奇天烈な発想。ここまで読み継がれてきた理由には疑問が残るけど、頷ける所もあり、よくわからない魅力がある。

    あと、ひとつひとつ言語や意味を突き詰めていく姿勢には学ぶものがある。

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    2013年05月20日
  • メノン

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    ギリシャ神話と哲学を少しだけちゃんと読みたい今日この頃。
    哲学やってた友達に、「ソフィーの世界よりはももう少し深く
    知りたくて、初心者でも読みやすい本ってある??」
    と聞いたところ、プラトンの対話篇をお薦められました。
    ソクラテスとの対話の流れで書いてあるから読みやすいよー、と。

    本屋さんで物色してみて、これともう一冊を購入。
    確かに読みやすい!!
    大学時代、ニーチェのツァラトストラを読んで10ページで挫折した私、
    先にこれを手にとってたらもう少し哲学に触れることができてたかもなぁ。。

    えにうぇい。
    この本のテーマは、「徳」について。
    徳とは何か、そして徳とは教えられうるものであるのか。
    メノンという人とソクラテスの対話の中で
    徳というテーマが掘り下げられます。
    対話だからこそ、話題が前後したりというのはあるのだけど
    堅苦しい言葉じゃないので読み進めやすいです。
    ただ、言葉の使い方や、言葉の定義の幅が捉えづらい部分もあるので
    そのへんは時々立ち止まったりはしますが。
    こういうのって原文で読めたらもっと読み易いのかなぁ。

    時折、「ゼウスに誓って」というフレーズが出てきたのが
    ちょっと面白かった。「神に誓って」じゃないのね。
    魂の話とかも、なんか時代を反映してる気がする。
    この時代だからこそなのか、最後は
    「えぇっ、そういう落とし所!?」と思ったりもしたけれど。

    人間の中の、時代を超える普遍的なものってあると思うのだけど、
    その一方で、その時代の科学と乖離した発言は、
    多くの人を相手にした場合、説得力が薄くなるのかなぁ、
    思想の話であっても科学とつながってるんだな、とも思いました。

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    2012年04月30日
  • 国家 上

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    正義とは何かという問で本書は始まる。

    脚注によると、古代ギリシアでは「友を益し敵を害するのが正しいことだ」という考えが広く正義ととらえられていたようだが、プラトンはそうは思わなかったようだ(p42)。人を害することは不正なことだと言っている(害することによって、相手は正しくなるのではなく、不正になるから)。
    個人にとっての正義を考える上で、より包括的な存在――国家――にとっての正義を考えていく。
    そのために「理想的な国家」を創りだした。
    この「理性的な」というのは、「国の全体ができるだけ幸福になるように」(p261)ということ。
    理想的な国家には4つの性質があるらしい:「知恵」「勇気」「節制」そして「正義」
    勇気は「恐ろしいものとそうでないものについての、正しい、法にかなった考えをあらゆる場面を通じて保持すること」(p289)のことを言う。
    また、自身の中で「すぐれた本性をもつものが劣ったものを制御している場合」(p292)に、そこに節制があるという。
    それで、正義とはそれぞれが自分の生まれ持った才能に合った役目を全うすることだという。自分の分を越えてはならない。

    終盤は難しくて何を言っているのかよくわからなかった。


    ■ 余談
    ・序盤で書かれている、お金持ちになることの効用が興味深かった。「たとえ不本意ながらにせよ誰かを欺いたり嘘を言ったリしないとか、また、神に対してお供えすべきものをしないままで、あるいは人に対して金を借りたままで、びくびくしながらあの世へ去るといったことのないようにすること、このことのために、お金の所有は大いに役立つのである。」(p26;ケパロス)
    ・神に世俗的な振る舞いをさせるような詩は守護者の教育によくないから、そういうものはチェックして世に出ないように書いている(p172のあたり)。国が作るべき/作ってはならない物語のルールを規定すべきだとも書いている(p159)。国家検閲を推奨しているように見える。詩に厳しいのは、プラトンが詩を挫折した過去もあるから?
    ・病気になったからといって、仕事を奪ってでも延命させることは医者のやることではないといっている(p233のあたり)。怪我や病気で役に立たなくなった大工は、諦めてさっさと死ぬべきだという。
    ・男性の壮年期がp370において25歳〜55歳となっているが、当時で55歳はまだ元気な部類だったのだろうか
    ・戦争をしても、それは善意を持って正すわけだと主張して、ギリシア人同士で奴隷にしたり、されたりすることは否定しているように思う(p398)

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    2012年04月21日