藤沢令夫のレビュー一覧
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ソクラテス先生若者と恋と弁論について議論の巻。
恋についてと弁論について、
二つのテーマを扱っているように見えるが、
藤沢令夫先生のあとがきによると、
哲学という一つのテーマで一貫しているらしい。
恋は狂気と同じではあるが、
偉大なものは狂気から生れるとしているが、
弁論は正しくないことも
もっともらしく見せるための方法。
ついでに文章はどんな相手にも
同じ答えしか言うことの出来ない
欠陥品とソクラテス先生は手厳しい。
ソクラテス自身は著作が全く残っていないため、
本当にそういう考えの持ち主だったんだろうけど、
プラトンは師の思想を継承して哲学するために
師が否定した文章という方法を
用 -
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エマニュエル・レヴィナスさんが「これは読んでおくべき」と推奨された3冊の哲学書の一冊である。
後の二冊はヘーゲルさんの『精神現象学』とハイデッカーさんの『存在と時間』
恋する者のはなしから始まって、狂気や神的なものの効用、ものの考え方、書くということの優劣、語るべき言葉を持つことの困難さやそのことを目指すことの尊さまで余すことなく見事に書かれた書物なのだろうと思う。
思うと書いているのはわたしにはまだわからないからで、その大事さを感じることができるといいなぁという期待というか望みというかそんなものをもてるだけだからである。
いずれまた読み返してみなければと、思っているうちに死んでしまうのかもし -
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メノン:徳は人に教えることのできるものなのでしょうか?
ソクラテス:その前に、そもそも徳とは何かを考えてみよう。
メノン:はい、わかりました!で、結局のところ、徳は教えられうるのでしょうか?
ソクラテス:(唖然)
・プラトンの遊び心が感じられる小品。それはともかくとして、ソクラテスは、結局メノンの天然ぶりに押されてしまい、徳とは何かを定義することなく、徳は教えられうるかについて検討する羽目になる。
・仮に徳が知識だとしたら、徳は教えられうるものであるし、徳の教師だっているはずだ。しかし、実際には徳の教師など存在しない。したがって、徳は教えられうるものでもなければ知識でもない。徳は、教 -
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久々に読むのに骨が折れた。
正義とは何か、正しい国家の姿とはどのようなものなのかを根源的に問い詰めたプラトンの著書。ある種の理想の姿なのかもしれないが、この理想を目指して失敗したのがナチス・ドイツだったりレーニンのソヴィエト連邦だったりポルポトだったりするのだろう。家族を否定し、心を揺さぶる娯楽的なものを排除し、理想的な人間の完成をひたすらに目指す。宗教の原理主義もこんな感じなのかもしれない。
だが、だからと言って本書を悪書とは思わない。元来哲学とか思想とかは、斯様に根源的であり、社会にとって劇薬―薄めると薬にもなり、原液だと毒にもなる―であるべきだから。
とは言え、私はプラトンよりもホ -
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ネタバレ解説を読めば概ね理解できるものの、ソクラテスとメノンその他との会話では真意が推し量りづらい。恐らく彼らとの会話に伍しない限りは分かりえないのだろう。
ここでは「徳」とは教えられるものであるのか?ということを延々と話し続ける。まずソクラテスは徳とはなんなのか?どういったものか?を云う。
①知識は授かるだけではなく、云われて思い起こすこと。(想起)
しかしこの後、徳がなんであるかがあいまいのまま、「教えられるのか?」という質問に逆戻りする。
②性質を語るには、仮設する必要があったこと。
③ ②を踏まえて、徳は教えられるものである、という結論に達した。
④しかし②においては、仮説 -
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プラトン以降の歴史は全て、彼の手の平の中だったのかもしれない-そんなことを痛切させれらる。とにかく国家の形態とその推移に関する分析は圧巻だった。ここでプラトンは自由と平等を愛する民主主義というのを決して優れた国家形態とはみなしていない。またこの制度は富者が支配する寡頭制に対する反発として、寡頭制の次に必然的に現れるものと考察している、正に歴史がそれを証明している通りに。そして何より恐ろしいのは、この民主制というのが自由と平等を愛する結果、守るべき秩序も失われ僭主独裁制、つまりファシズムを必然的に生み出すものと描かれているのだ。そう、歴史は今まさに、その事実を証明しようとしつつある。
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質問「徳は教えることができるか?」
結論「徳」は「知」ではなく「神の恵み」でもたらされる「正しいおもわく」というものなので教えることはできない。
「徳」とは何か?という探求をしたかったソクラテスに無理を言って、後に俗物の権化のように評価されるメノンとともに辿り着いた結論である。但し、解説によれば「真の徳」が「知」であることを知るソクラテス自身を除けばということである。
ソクラテス・プラトン哲学の導入部であり、初期プラトン対話集という位置づけの短編としてなかなか面白かった。
特に初等幾何学の問題を解決へ導く手法から、魂は不滅でわれわれはかつて学んだ事柄を想起するだけだという有名な話はとても面白い