藤沢令夫のレビュー一覧
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プラトンの中期対話篇。
「恋(エロース)」について
恋を"美のイデアを想起する神的狂気"と規定して、想起説や魂-三部分説を援用しながら称揚し、打算的な観点から恋を貶めようとする議論を批判する。恋とは、功利的な i.e. 即物的な立場からその是非を論じるべきものではないのであり、現世的な実用主義を超えた形而上的な観点から論じようとするソクラテス=プラトンの姿勢には、一面に於いて共感できる。但し、私の場合は、恋をイデアとの結びつきを根拠にして称揚するのではなく、合理性を超越しようとする実存の投企として肯定するのであるが。本筋とは関係ないが、人間の五感の中で視覚を最重視する -
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徳を題材とした、ソクラテスとメノンの対話短編。「徳の性質」にこだわるメノンに対して、ソクラテスは「徳とは何か」に論題を見事に誘導し、対話者を操るかのようにして結論へと導く。解説文の言う通り、圧巻の「珠玉の短編」。
「徳とは何か」を対話を通して得ようとしたソクラテスだったが、解説にもある様に、仮定の上での徳の本質までしか、本書では言及されていない。解説ではこれを後のソクラテスの論と対比して、イデアの論拠が『メノン』の段階ではなかったと指摘する。
それ以外にも、初期対話篇と対比して、ソクラテスの「何であるか」への執着の度合いや、メノンの人間性をクレアルコスと『アナバシス』のクセノポンとの関係か -
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『国家』第一巻に登場するトラシュマコスは次のように言う。
「<正義>とは、強い者の利益にほかならぬ」
「もろもろの国家のなかには、僭主政治のおこなわれている国もあり、民主政治のおこなわれている国もあり、貴族政治のおこなわれている国もある」
「しかるに、その支配階級というものは、それぞれ自分の利益に合わせて法律を制定する。(中略)そして、そういうふうに法律を制定したうえで、この、自分たちの利益になることこそ、被支配者たちにとって<正しいこと>なのだと宣言し、これを踏みはずした者を法律違反者、不正な犯罪人として懲罰する」
このトラシュマコスの立場は様々に解釈されてきた。ここで -
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上巻を読み終えてからしばらくたちました、ようやく読み終えたプラトンの『国家』。イデア論を中心に、ソクラテスとグラウコン、アディマントス兄弟の答弁は続きます。知ること、知識こそが真理を見出す唯一の道といい、感情がいかに芸術を求めようともそれを切って捨てることが正義。ホメロス批判が響きます。上巻で取り上げられた『ギュゲスの指輪』に対する答えも一応答えられています。結局は本心の問題。死後の世界が巻末に広がりますが、当時の価値観としては意味がある答弁だったのでしょう。黄泉の有無よりも、そういった恐怖信仰以前の人間の本性としての正義を追及した点で哲学のすばらしさを感じます。今より2500年ほど昔に、この
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パイドロスは教養として読んでみたかったので、その目的は達したが、面白いとか思索に繋がるかというと、それ程でもなかった。寧ろ、プラトンの生きた紀元前の社会を想像する好奇心が満たされる楽しさ勝る。その時代の価値観である。
つまり、これは解説で触れられる事だが、言論の自由と法のもとにおける平等をたてまえとする民主制下のアテナイでは、人は国民全体の集会である国民議会や陪審法廷の世論を動かすことによって国政を支配し、あるいは身の保全と立身をはかることができたという。そのために言論技術が重要であった。弁論術とは、まさに時代の要請であった。
そこでその弁論術。ソクラテスと恋人のパイドロスの対話形式で、愛 -
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ネタバレ「自分を恋するものより恋していない人に身を任せる方が良い」という一見常識に反するリュシアスの言説を聴くことを発端に、恋することについて、そして弁論術批判についてソクラテスがミュートス(神話)を交えながら滔々と語るという内容。魂がかつて見た美のイデアへの欲求(エロース)の芽生えとしての恋を語り、弁論術に本当に必要なのは哲学により物事の真の姿を問答することであると語ることでどちらの主題も哲学礼賛へとつながるようになっている。
一読した感じだと最後の方の弁論術批判の辺りがよくわからず、うーん?となってしまった。しかし解説はさすがのさすがで過不足なく要点と解釈がまとまっており、そうだったのか、なるほど -
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ネタバレ下巻は洞窟の比喩、善のイデアの役割、様々な政治形態の国家とその国民の性格の解説、詩人追放論、あといつもの巻末魂の不滅神話など。国家の様々な政治形態のくだりの、形態から別の形態への移り変わりの部分はプラトンの洞察力のすごさを感じた。
下巻まで読むと、正義の議論で始まり正義の議論で閉じるきれいな構造もあって見通しが良く感じるし、イデア論・四徳・洞窟の比喩・魂の不滅など有名な理論がそろい踏みするので壮観でもある。ただそれらは国家論の下敷きであって、その上に立った壮大な国家論こそがプラトンの思想の結晶というべき存在なのだろう。解説にもあったが、ソクラテスの徳や正義の問答、魂を磨き続けるという目標と自ら -
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ネタバレ訳が藤沢令夫氏で非常に読みやすい。1979年の訳とは思えない。
最初の正義問答は面白かったけど、すぐにソクラテスの独り舞台となってしまう…というか、「パイドン」といい、プラトンが自分の思想を開陳する時にそうなっているんじゃないかということに気づいた。アカデメイアの講義もこんな感じで、ひたすらよいしょされながら話を続けていたのだろうか。
正義とは何か→国家における正義とは何か→個人における正義とは何かという感じで探究する中でプラトン理想の国家について語るのが上巻の主な内容。有名な「知恵・気概・節制・正義」や哲人政治などの要素も出てくる。
私有財産や貧富の差が国家を堕落させる、というところから始 -
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古代ギリシャ三大悲劇詩人の一人、サポクレスの作品(戯曲)
なんと紀元前427年頃の作品
完成度が高過ぎて驚く
これほど時代が移り変わっても、違和感なく受け入れられる不条理作品だ
ネタバレ…というか内容が世間的にあまりにもオープンになっているのでネタバレにあたるのかよくわからないが…
ネタバレ有りです
テバイの王ライオスは、
自分が、やがて生まれる子供の手にかかって亡き者にされ、
またその子は母親とまじわる運命にあることを神託に告げられる
その男の子であるオイディプスは、お前は父親を殺し、母親とまじわるだろうと告げられる
そしてオイディプスは4人の男女の子供を授かる
ああ、悲劇以外の -
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ネタバレ「お金の所有が最大の価値をもつのは、ほかならぬこのことに対してであると考える。……たとえ不本意ながらにせよ誰かを欺いたり嘘を言ったりしないとか、また、神に対してお供えすべきものをしないままで、あるいは人に対して金を借りたままで、びくびくしながらあの世へ去るといったことにないようにすること、このことのためにお金の所有は大いに役立つのである。」(26頁)
個人と国家の共通項を探し、一方を他方に当てはめている。
演繹のし過ぎ、というのは現代的な感覚だろうか。
優れた国家に必要な三つの徳…知恵、勇気、節制。
勇気と知恵は、国家のある特定の部分に存在するが、節制は国家の全体にいきわたっていて、支配