藤沢令夫のレビュー一覧

  • 国家 下

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    『国家』の第6巻~第10巻までを収録。プラトンの正義論については、ポパーはじめ多くの批判的意見が提出されてきた。しかし、洞窟の比喩、エルの物語など、いまなお人の精神にゆさぶりをかける優れてアクチュアルな内容が含まれていることは間違いない。その意味で、やはり『国家』は第1級の古典と言えるだろう。

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    2011年06月09日
  • パイドロス

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    プラトンの中期対話篇。

    「恋(エロース)」について
    恋を"美のイデアを想起する神的狂気"と規定して、想起説や魂-三部分説を援用しながら称揚し、打算的な観点から恋を貶めようとする議論を批判する。恋とは、功利的な i.e. 即物的な立場からその是非を論じるべきものではないのであり、現世的な実用主義を超えた形而上的な観点から論じようとするソクラテス=プラトンの姿勢には、一面に於いて共感できる。但し、私の場合は、恋をイデアとの結びつきを根拠にして称揚するのではなく、合理性を超越しようとする実存の投企として肯定するのであるが。本筋とは関係ないが、人間の五感の中で視覚を最重視する

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    2011年03月27日
  • メノン

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    徳を題材とした、ソクラテスとメノンの対話短編。「徳の性質」にこだわるメノンに対して、ソクラテスは「徳とは何か」に論題を見事に誘導し、対話者を操るかのようにして結論へと導く。解説文の言う通り、圧巻の「珠玉の短編」。

    「徳とは何か」を対話を通して得ようとしたソクラテスだったが、解説にもある様に、仮定の上での徳の本質までしか、本書では言及されていない。解説ではこれを後のソクラテスの論と対比して、イデアの論拠が『メノン』の段階ではなかったと指摘する。

    それ以外にも、初期対話篇と対比して、ソクラテスの「何であるか」への執着の度合いや、メノンの人間性をクレアルコスと『アナバシス』のクセノポンとの関係か

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    2010年11月06日
  • 国家 上

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     『国家』第一巻に登場するトラシュマコスは次のように言う。
     「<正義>とは、強い者の利益にほかならぬ」
     
     「もろもろの国家のなかには、僭主政治のおこなわれている国もあり、民主政治のおこなわれている国もあり、貴族政治のおこなわれている国もある」

      「しかるに、その支配階級というものは、それぞれ自分の利益に合わせて法律を制定する。(中略)そして、そういうふうに法律を制定したうえで、この、自分たちの利益になることこそ、被支配者たちにとって<正しいこと>なのだと宣言し、これを踏みはずした者を法律違反者、不正な犯罪人として懲罰する」

      このトラシュマコスの立場は様々に解釈されてきた。ここで

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    2011年11月05日
  • パイドロス

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    プラトンの著作ではおなじみ、ソクラテスとの対話形式です。
    固有名詞が多くて注釈を何度も行ったり来たりしなければなりませんが、内容は哲学なのにかなり簡単。
    ただ、「恋」の概念とか、現代の日本人にはない発想なので(古代ギリシャですから……)、共感できるものかどうかは……?

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    2009年10月30日
  • 国家 下

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    有名な「洞窟の比喩」が出てきます。
    私のゼミでは「洞窟」=「現代の映画館」論へ強制的に持って行かされます。

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    2009年10月04日
  • 国家 下

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    上巻を読み終えてからしばらくたちました、ようやく読み終えたプラトンの『国家』。イデア論を中心に、ソクラテスとグラウコン、アディマントス兄弟の答弁は続きます。知ること、知識こそが真理を見出す唯一の道といい、感情がいかに芸術を求めようともそれを切って捨てることが正義。ホメロス批判が響きます。上巻で取り上げられた『ギュゲスの指輪』に対する答えも一応答えられています。結局は本心の問題。死後の世界が巻末に広がりますが、当時の価値観としては意味がある答弁だったのでしょう。黄泉の有無よりも、そういった恐怖信仰以前の人間の本性としての正義を追及した点で哲学のすばらしさを感じます。今より2500年ほど昔に、この

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    2009年10月04日
  • 国家 上

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    ソクラテスとその他の知者達の問答によって国家のあり方を問いただす。
    その答弁がとても新鮮で興味をそそられました。
    万物の起源、世界とは、追い求めていたタレスから始まる哲学が、ソクラテス=プラトンによって大きく転換していく様がよく分かる。
    少年愛好とか論点が理解不可能な部分は時代の背景で仕方が無いとして、国家と人の類似やその内容は面白い。
    『ギュゲスの指輪』のグラウコンの問いは心を捉えました。


    09/3/11

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    2017年09月17日
  • 国家 下

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    若いころに政治に熱心だったプラトンは、ソクラテスの裁判以後哲学に傾倒していくが、それでも政治に対して完全に決別できず、どこかで、ソクラテス的哲学と、政治の融合できる方法を探していた。しかしこの両極の二つが融合するには、そこに揺るぎない理論的支柱がなければならない、その確信が得られたのは、プラトンがアカデメイアを創設してから10年もの歳月を要した。
    その哲学と政治の融合、哲人政治をこの「国家」によって明らかにしたのである。

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    2009年10月04日
  • メノン

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    最初に読んだ時は、「徳は教えることができるか」と「√2の求め方」に何の関係があるか、理解出来なかった。
    再読し、「人間本来の知恵や本性は教えられうるのか」が共通するテーマだと理解できた。が、私の関心は徳そのものであり教示の可否ではなかったので、またも徳の理解には及ばなかった。

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    2024年12月10日
  • パイドロス

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    パイドロスは教養として読んでみたかったので、その目的は達したが、面白いとか思索に繋がるかというと、それ程でもなかった。寧ろ、プラトンの生きた紀元前の社会を想像する好奇心が満たされる楽しさ勝る。その時代の価値観である。

    つまり、これは解説で触れられる事だが、言論の自由と法のもとにおける平等をたてまえとする民主制下のアテナイでは、人は国民全体の集会である国民議会や陪審法廷の世論を動かすことによって国政を支配し、あるいは身の保全と立身をはかることができたという。そのために言論技術が重要であった。弁論術とは、まさに時代の要請であった。

    そこでその弁論術。ソクラテスと恋人のパイドロスの対話形式で、愛

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    2024年04月13日
  • パイドロス

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    ネタバレ

    「自分を恋するものより恋していない人に身を任せる方が良い」という一見常識に反するリュシアスの言説を聴くことを発端に、恋することについて、そして弁論術批判についてソクラテスがミュートス(神話)を交えながら滔々と語るという内容。魂がかつて見た美のイデアへの欲求(エロース)の芽生えとしての恋を語り、弁論術に本当に必要なのは哲学により物事の真の姿を問答することであると語ることでどちらの主題も哲学礼賛へとつながるようになっている。
    一読した感じだと最後の方の弁論術批判の辺りがよくわからず、うーん?となってしまった。しかし解説はさすがのさすがで過不足なく要点と解釈がまとまっており、そうだったのか、なるほど

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    2023年12月21日
  • 国家 下

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    ネタバレ

    下巻は洞窟の比喩、善のイデアの役割、様々な政治形態の国家とその国民の性格の解説、詩人追放論、あといつもの巻末魂の不滅神話など。国家の様々な政治形態のくだりの、形態から別の形態への移り変わりの部分はプラトンの洞察力のすごさを感じた。
    下巻まで読むと、正義の議論で始まり正義の議論で閉じるきれいな構造もあって見通しが良く感じるし、イデア論・四徳・洞窟の比喩・魂の不滅など有名な理論がそろい踏みするので壮観でもある。ただそれらは国家論の下敷きであって、その上に立った壮大な国家論こそがプラトンの思想の結晶というべき存在なのだろう。解説にもあったが、ソクラテスの徳や正義の問答、魂を磨き続けるという目標と自ら

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    2023年12月15日
  • 国家 上

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    ネタバレ

    訳が藤沢令夫氏で非常に読みやすい。1979年の訳とは思えない。
    最初の正義問答は面白かったけど、すぐにソクラテスの独り舞台となってしまう…というか、「パイドン」といい、プラトンが自分の思想を開陳する時にそうなっているんじゃないかということに気づいた。アカデメイアの講義もこんな感じで、ひたすらよいしょされながら話を続けていたのだろうか。

    正義とは何か→国家における正義とは何か→個人における正義とは何かという感じで探究する中でプラトン理想の国家について語るのが上巻の主な内容。有名な「知恵・気概・節制・正義」や哲人政治などの要素も出てくる。
    私有財産や貧富の差が国家を堕落させる、というところから始

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    2023年12月09日
  • ソポクレス オイディプス王

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    「先王を殺したやつを探せー!」と号令をかける主人公が実は犯人であることを読者は最初から知っていて、散りばめられたピースが回収されるたびに物語が破滅に向かってまっしぐらな様子を神の視座から楽しめる、こんな構造を2400年前に編み出していたソフォクレスさんすごい。

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    2020年12月25日
  • 国家 上

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    あまりに有名なので義務感から上巻だけ頑張って読んだが、知的刺激も新規性もなく極めて退屈であった。知識のない中高生が考える姿勢を学ぶために読む本としてはおすすめだが、現代を生きる成人が改めて読む必要は感じられなかった。もちろん歴史的背景から学問的価値の高さは述べるまでもないが、書籍としての価値は教養書として名を連ねるほどのものではないかと。

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    2020年10月24日
  • ソポクレス オイディプス王

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    古代ギリシャ三大悲劇詩人の一人、サポクレスの作品(戯曲)
    なんと紀元前427年頃の作品
    完成度が高過ぎて驚く
    これほど時代が移り変わっても、違和感なく受け入れられる不条理作品だ

    ネタバレ…というか内容が世間的にあまりにもオープンになっているのでネタバレにあたるのかよくわからないが…
    ネタバレ有りです

    テバイの王ライオスは、
    自分が、やがて生まれる子供の手にかかって亡き者にされ、
    またその子は母親とまじわる運命にあることを神託に告げられる

    その男の子であるオイディプスは、お前は父親を殺し、母親とまじわるだろうと告げられる

    そしてオイディプスは4人の男女の子供を授かる

    ああ、悲劇以外の

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    2020年08月02日
  • パイドロス

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    ネタバレ

    恋と弁論術について。

    正直よく理解できなかった。個々の論旨というよりも全体の位置づけ的な部分について。

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    2017年05月21日
  • 国家 上

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    ネタバレ

    「お金の所有が最大の価値をもつのは、ほかならぬこのことに対してであると考える。……たとえ不本意ながらにせよ誰かを欺いたり嘘を言ったりしないとか、また、神に対してお供えすべきものをしないままで、あるいは人に対して金を借りたままで、びくびくしながらあの世へ去るといったことにないようにすること、このことのためにお金の所有は大いに役立つのである。」(26頁)


    個人と国家の共通項を探し、一方を他方に当てはめている。
    演繹のし過ぎ、というのは現代的な感覚だろうか。

    優れた国家に必要な三つの徳…知恵、勇気、節制。
    勇気と知恵は、国家のある特定の部分に存在するが、節制は国家の全体にいきわたっていて、支配

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    2017年01月15日
  • パイドロス

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    ソクラテスとパイドロスの対話。
    恋についてと文章術、弁論術について。

    パイドロスは若者で、文章を書く能力で有名な別の人物に心酔しているが、ソクラテスはそれを否定する。
    ソクラテスの話す魂についての話はよく分からない。1000年の生を10回繰り返すとか、何の根拠もない話を好き勝手にしているだけのような。

    とにかくよく分からん。

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    2018年11月04日