藤沢令夫のレビュー一覧
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ソクラテス先生の僕が考えた最強の国家の巻。
プラトン哲学の集大成の呼び声も高い本書。
正義とは何か?という導入部から始まっており、
理想の国についての議論に移っていくという流れだが、
扱うテーマは職務や結婚、戦争など多岐に渡っており、
男性も女性も分け隔てなく向いている職務に着き、
幸福を皆で共有し、それを実現するために支配者は
真理を追究する哲学者であるべきと結論を出している。
個人的に印象に残ったのは以下の二点。
一つ目は、神々の不道徳な逸話を問題視している点。
ギリシア神話の神々のやることがひどいというのは、
「図解雑学ギリシア神話」の感想に書いたが、
神々を人々の道徳の規範とすべ -
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ギリシア神話。率直なところでは、非常な驚愕と共に心の内で叫びをあげる程に恐るべき作品だと感じた。まさに驚異・驚嘆であり、その震えをこの身で感じたまま、作品そのものを抽象的に述べることが許されるならば、爆破と爆発であったと表現しても過言ではない程の、怒涛の劇的進行だった。オイディプス王は、所謂フロイトの提唱したエディプス・コンプレックスで有名であり、並のひとであれば知る物語であるし、ラカンにおいても最重視する項目であるから、概要はわたしも以前から知っている。むしろ知っているからこその驚異が文面にあり、最低でも二度読むか、確実に記憶に留めて序盤を正確に回想することが想定されているだろうと考えられて
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「パイドロス」はプラトンによる対話篇で、紀元前370年代に書かれたもの。プラトンの活動においては中期に位置する著作である(解説 p.191)。
時は真夏の晴れた日盛り、アテナイ郊外にあるイリソス川のほとりで、ソクラテスとパイドロスが対話する。
このパイドロスなる人物は、プラトンの他の著作(『饗宴』『プロタゴラス』)にも姿を見せ、「時代の風潮に敏感な、全般に快活で好奇心に富んだ一人のアテナイの知識人」(解説 p.189)だったようだ。
対話の主題は弁論術についてである。弁論術は当時のアテナイにおいて花形的技芸であったらしい。「言論の自由と法のもとにおける平等をたてまえとする民主制下のアテナ -
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プラトンの著作で僕が一番好きな本。
この本の題名になっているパイドロスとスーパーおじいちゃん(ソクラテス)との対話編。
「自分に恋している人ではなく、自分に恋していない人に身を任せるのがよい。」そんな恋愛論からこの本は始まります。
恋についての3つの説話から派生して、魂について、弁論術について、文字の弊害、真実、愛知者(哲学者)について対話が続いていきます。
これがとても面白く刺激的。
まったく紀元前に書かれたとは思えない。
訳も読みやすく古くささを感じさせません。
とてもおすすめ!
注:イデア論をそのまま信じると形而上学的な悩みに陥る方はウィトゲンシュタイン(青色本)な -
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プラトン最大の対話篇。
正義から始まり、国家、真実在、教育、芸術、魂を対話によって哲学する。
2000年以上たっても何も変わっていないのだなあとつくづく感じる。イデアはどこか天上界にあるのではない。洞窟の比喩が間違って解釈されてしまっている。イデアは、見るー見られるの関係と同じく、知るー知られるの関係によるものなのだから、ほかでもない、自分自身の思推の力によってしかたどり着けないもの。
優れた芸術は常に感覚による模倣だから、真実在へ思考する力を養う教育において大きな役割を果たすが、模倣であることからは逃れられない。ワイルドのいう「芸術は人生そのものではない」や「外観で判断できないような人間」「 -
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「その国において支配者となるべき人たちが、支配権力を積極的に求めることの最も少ない人間であるような国家、そういう国家こそが、最もよく、内部的な抗争の最も少ない状態で、治まるのであり、これと反対の人間を支配者としてもった国家は、その反対であるというのが、動かぬ必然なのだ」(p109-110)
・この認識を土台として、支配者となるべき者は、金銭や名誉に関心がなく、かつ優れた人間でなければならないとする。すなわち、哲学者が支配者となるか、支配者が哲学するかのいずれかでなければ、国家はうまく統治されない。
・この哲人王が支配する極度に理想的な国家との対比として論じられる、他の政体(寡頭制→民主制→ -
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・「熱でふくれあがった国家」(p141)を「理想国」に浄化するための方法を考察することが本書の中心テーマ。
・良い国家を作るためには良い教育が必要で、教育に悪影響を及ぼすものは徹底的に排除されなければならない。さらに、病弱な者は治療せずに死んでいくに任せ子孫も残してはならない一方で、有能な男女間には可能な限り多くの子種が作られるべきだ。そして、国家は有能な少数の者が支配するべきであり、国民全員が国家のために苦楽を共有すべきである。
・言論統制と優生思想と少数支配と滅私奉公とに基づいたこの「理想国」は、プラトンの死から幾千年後の20世紀になってようやく実現した。「もしそのような国制が実現した -
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ネタバレ「なんであるか?」(本質)と「いかなるものであるか?」(属性)の区別は重要。
例となるものをどんどん出していく。
例をだして、それとも君は違うと考えるのか?
話に飛躍がない。一つずつ進歩して行く。
人間には、知っていることも知らないことも、探究することはできない。知っていることであれば、人は探究しないだろう。その人はそのことを、もう知っているので、このような人には探究など必要ないから。また知らないことも人は探究できない。何をこれから探究するのかさえ、その人は知らないからである。
主張の方法
知識の何にもまさる重要性を、「よさ」を生むものという観点から主張しようとする。
例を交えて説明してい -
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誰もが知っている有名な物語。奈落の底へ沈んでいく劇的な展開に思わずオイディプスの運命に憐れみを感じないではいられない。
アリストテレスが「悲劇とはあわれみと恐れをひき起こすことによって、この種の諸感情のカタルシスを達成するものである」(詩学)の例の挙げたほどの古典名作であるが、徐々に沈んでいき明るみにされる衝撃的事実に(筋は知っていても)自分は気持ち悪くなって、次に沈黙してしまった。まさにアリストテレスの言の通りに感じ入ってしまいました!
スフィンクスの謎かけを解いた知恵者として、荒廃したテバイの民を慈しむ王として登場するオイディプスの末路はまさに悲劇といってよいが、その前後の対比が象徴的で劇 -
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哲学の入門書として「ソクラテスの弁明」と同じ程優しく読めると言われるプラトンの著作。
「徳は教えられうるか」というテーマで対話がすすめられています。
そして、魂の不死や想起についても触れられています。
「人間は、自分が知っているものも知らないものもこれを探求することはできない。というのは、まず、知っているものを探求するということはありえないだろう。なぜなら、知っている以上、その人には探求の必要はないわけだから。また、知らないものを探求するということもありえないだろう。なぜならその場合は、何を探求すべきかということも知らないはずだから」
というソクラテスの言葉が非常に不思議に思われます。