ねこ助のレビュー一覧
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ぼんじゅ山脈の馬禿山、そこの滝の近くで父親と小さな茶店を営む15歳のスワは、父が炭を売りにしょっちゅう村へ下りて行くので、その度に一人で店番をしている。
ことしの夏の終りごろ、スワは滝の淵に落ちて亡くなる人をその目で見た。店はほとんど閑散としており、暇な時間でスワは滝について思いをめぐらせる。父親は酒臭い息をさせて帰ってくる。
秋土用も過ぎてすっかり客足も遠のくと、二人は店をたたむ。スワは山奥できのこを採集して持ち帰り、それをまた父親に託し、じぶんは小屋にこもりくろい飯に焼いた味噌をかけてひとりで夕飯を食べる。
夢心地で見えた初雪の晩が明けると、スワはからだに疼痛を覚えていた。あのくさい呼吸を聞いた。
吹雪のなか滝壺に飛び込んだスワは、自分は大蛇になったのだと嬉しく思うのも束の間、じっさいは小さな鮒だった。鮒は口をぱくぱくさせ、尾鰭をつよく振って底深くもぐり遊んでいたが、やがて何かを考え込むかのようにじっと動かなくなった。
やがてからだをくねらせながら滝壺に向かい、そのまま吸い込まれていった。
太宰治が23歳ごろ、作家人生の初期に書いた短編(『晩年』所収)。
とても幻想的だと思ったのだけど、考察を読んでみるにどうやらスワは酔った父親に犯されたようだと分かってゾッとした。
投身し大蛇になれたと思って喜び勇んでいたはずなのに、ほんとうは鮒だったこと、そしてその結末が物悲しい。 -
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夢野久作氏による童話『ルルとミミ』。
水晶のような水がいっぱいにきらめく美しい湖のほとりに存在する、とある小さな村。
この村で鐘造りの名人であったルルとミミの父親は、寺のあたらしい鐘を造ることに失敗し、それを恥ずかしがって湖に身投げしてしまう。
成長した兄のルルは、父の跡を受け継いで、お寺の鐘をいよいよ完成させたのだが——
という話。その村には、「湖が真っ黒に濁るとよくないことが起こる」という恐ろしい言い伝えがある。
兄を救うために湖に飛び込んだミミの大冒険と、ゴシック調のダークファンタジーな雰囲気、その対比は大人の童話という感じがした。
ルルとミミの兄妹愛が尊い。メリーバッドエンドという感じでとっても好き。
湖、鐘、水底の後殿というキーワードもあいまって、『夜叉ヶ池』と似たような読後感。 -
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乙女の本棚シリーズから、堀辰雄さんとねこ助さんのコラボ作品「鼠」です。「山月記」の虎のような、迫力のある「鼠」が描かれていたらどうしよう…と恐る恐る手にした作品です(汗)。でも、そんなことは全くなく、美しい美少年が描かれてます!
少年たちは、暗くカビの匂いのする秘密の隠れ家で鼠のように遊んでいた。思い思いのものを持ち込んで同じ時間を過ごしていた…。ある日石膏の像が持ち込まれたのだが、それが破損したことが契機となりその後お化けが出ると少年たちはその隠れ家に寄り付かなくなる…。ただ1人の少年をのぞいては…。少年は亡き母を思い、1人泣ける場所としてその隠れ家に留まっていたのだった…。
この作品、本当に表題からは想像もできないほどキレイなんです!少年の母を思う気持ちに切なさを感じました…。そういえば、私も隠れ家というか、小学生のころ物置小屋を秘密基地のようにして遊んだことがあったなぁ~とか、そんなことを思い出させてくれました…。 -
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乙女の本棚シリーズから、太宰治さんとねこ助さんのコラボ作品「魚服記」です。ねこ助さんの繊細でどこかさみしさを感じさせるイラストが印象的な作品です。
炭焼きの父とその娘のスワ…父が炭焼きの仕事をしているときは、スワは茶屋の店番をしていた…。また、父がふもとの町に下りるときには、ひとり炭焼き小屋で過ごすのだった…。スワは15歳、少女から女性に成長する時期…「おめえ、なにしに生きてるば」「くたばった方あ、いいんだに」なんとも切ない会話…。季節は秋から冬に向かう頃、いつものようにひとり父を待ちながら過ごすスワ…外を見ると初雪、酒臭い父から逃れるかのように小屋を出ていき…。
スワは父に、自分のことをもっとわかってほしかったんじゃないかな…それとも父から解放されたかったのか…。でも私的には、父に愛してほしかったんじゃないかと感じました。なんとも切ない最期は、しんみりと心に広がって静寂な余韻を残してくれました…。