阿部賢一のレビュー一覧
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カレル・チャペックの戯曲「白い病」を一気に読みました。
作家のチャペックはナチス・ドイツを痛烈に批判したチェコの国民的作家です。
また、ロボット という言葉を初めて使ったことでも知られています。
まず、この戯曲を読んで、すぐ頭に浮かんだのがナチス・ドイツまもとより、
スターリン時代のソ連、軍事政権下の日本でした。
戦争・侵略を目指したこれらの国々では、軍事拡大を強力に推し進め、
自国民の優秀さを強調し、敵国を倒すためには一致団結しなければならない
という全体主義的な考え方を洗脳化してきました。
この戯曲はそうした状況の下にあるある国で
「白い病」という疫病が蔓延すというパンデミックが襲ってき -
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チャペック1937年作の戯曲。中国発の未知の病が世界中でパンデミックを引き起こすというあまりにも予言的な物語。
疫病は世界中に深刻なパニックを引き起こし、50歳前後以上の人のみが感染し死に至る疫病は世代間の軋轢をも生む。特効薬を発見したガレーン博士は永久平和を国家に要求し貧乏人以外への薬の提供を拒む。
国家元帥もクリューク男爵も間違いなく偉大な人物である。国家と自身の信念にとっては。元帥の台詞「...この若者は有能だ、だが分別がありすぎる。偉大なことはなし得んだろう...」は本当に大事なことは「偉大さ」でなく「分別」だと語っている。
物語はハッピーエンドには終わらない。今現在の世界も永久平和は -
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ロボットが出現→人間が産まれなくなる?!
何で?!
と思って調べてみた。
「陣痛」は英語で「labor pain」。「labor」は「労働」と訳すことが多い。同じく、チェコ語で「陣痛」は「prace」。これは「仕事」を意味する語らしい。
ロボットによって人間が滅ぶ、という展開は、もはや古典的と言ってよい程。だけれど、作者はこれを「悲劇」ではなくて「喜劇」として書いたつもりだという。
とすると、冒頭に書いたあれはディストピアあるあるではなくて、言葉遊びと言えそうだ。
「laborからの解放」=「苦役からの解放」=「出産からの解放」
そして、ヘレナの扱い。
たぶん、背景にあるのは「楽園追放」だろう -
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ロボット:
1. 電気・磁気などを動力源とし、精巧な機械装置によって人間に似た動作をする人形。人造人間。
2.目的の作業・操作をコンピューターの制御で自動的に行う機械や装置。人間の姿に似るものに限らない。自動機械。「産業ロボット」
3.自分の意志でなく、他人に操られて動く人間。傀儡 (かいらい) 。「軍部のロボットである大統領」
[補説]チェコの作家チャペックが作品中でチェコ語の働くの意のrobotaから作った造語。
この”ロボット”という言葉がカレル・チャペックにより作られて100周年ということで出た新訳。
あとがきでカレル・チャペックは「部分的には科学についての喜劇、また部分的には真実に -
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ネタバレロボットの語源となった話。
AIに人類が滅ぼされるという内容は、今やSFではよくある話ではあるが、カレル・チャペックはその発想に至った最初の人物なのではないだろうか。
これが大昔に書かれたとは思えない内容だった。
まず読み終わった感想として、ヘレンが余計なことをしたから…と考えてしまった。
読者は大体同様に思うのではないだろうか。
ロボットに人間的な仕組みを組み込むように企てたこと、設計図を独断で燃やしてしまったこと、色々引っかかるところはある。
そもそもヘレンが工場に来た時から開発陣はヘレンの虜になってしまった。
開発陣はヘレンのわがままを聞くようになった。
度々ヘレンの影響力が大きすぎ -
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この作品によって、ロボットと言う名称が世に広まったのは有名な話。
ただし、ロボットと言う名称を唱えたのは、作者のチャペックの兄のヨゼフである。これも既に有名な話か。
ただ、この作品のロボットは、私達がイメージする機械や鋼鉄で出来ている機械人形と言うより、人造人間(アンドロイド)的なイメージ。生きた物質を発見して、人間の臓器を大量に作り出して、人型に組み上げると言う、非常にグロテスクなものだ。
ヴィリエ・ド・リラダンは「未来のイブ」でアンドロイドと言う名称を作ったが、こちらの造られたイブの方が機械人間的のなのが面白い。
内容は、既に古典的とも言える。ロボット(奴隷)の人間としての権利を与えるべき