阿部賢一のレビュー一覧

  • 白い病

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    この作品は戯曲形式で書かれたSFで、ページ数にして文庫本で150頁少々とかなりコンパクトな作品となっています。ですが彼の代表作『ロボット』と同じく、驚くべき濃密さです。物語に引き込まれてあっという間に読み切ってしまいました。この作品もチャペックの魅力がこれでもかと詰まっています。非常におすすめな作品です。

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    2024年08月18日
  • ロボット RUR

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    人間にとって、最も重要な労働力は人間である
    しかし、我々が他人を労働力という単純な商品として捉えたとき、何が起こるであろうか
    それは大量生産と大量消費である
    人間であるのに人間ではなく、労働力の化身として生み出されたのがカレル・チャペックの想像するロボットだ
    発表された時代は1921年。資本主義の暴走に抵抗し、共産主義が台頭し始めた、労働における人間性が問われた時代の一つであった
    人間はどう生き、どう働き、他者とどのような関係性を築くべきだろうか
    彼の神話的回答がこの本にはある

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    2023年11月29日
  • 白い病

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    カレル・チャペックの戯曲「白い病」を一気に読みました。
    作家のチャペックはナチス・ドイツを痛烈に批判したチェコの国民的作家です。
    また、ロボット という言葉を初めて使ったことでも知られています。
    まず、この戯曲を読んで、すぐ頭に浮かんだのがナチス・ドイツまもとより、
    スターリン時代のソ連、軍事政権下の日本でした。
    戦争・侵略を目指したこれらの国々では、軍事拡大を強力に推し進め、
    自国民の優秀さを強調し、敵国を倒すためには一致団結しなければならない
    という全体主義的な考え方を洗脳化してきました。

    この戯曲はそうした状況の下にあるある国で
    「白い病」という疫病が蔓延すというパンデミックが襲ってき

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    2023年04月04日
  • 白い病

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    チャペック1937年作の戯曲。中国発の未知の病が世界中でパンデミックを引き起こすというあまりにも予言的な物語。
    疫病は世界中に深刻なパニックを引き起こし、50歳前後以上の人のみが感染し死に至る疫病は世代間の軋轢をも生む。特効薬を発見したガレーン博士は永久平和を国家に要求し貧乏人以外への薬の提供を拒む。
    国家元帥もクリューク男爵も間違いなく偉大な人物である。国家と自身の信念にとっては。元帥の台詞「...この若者は有能だ、だが分別がありすぎる。偉大なことはなし得んだろう...」は本当に大事なことは「偉大さ」でなく「分別」だと語っている。
    物語はハッピーエンドには終わらない。今現在の世界も永久平和は

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    2023年01月26日
  • 白い病

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    怖かった。
    あまりにも現代と酷似していて、ぞっとした。
    平和は来ない、恒久の平和は人間には来ないのだ。
    誰かに読ませたい、と感じたのは実に久々。

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    2022年12月04日
  • 白い病

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    あっという間に読める。話も面白い。皮肉が効いている。コロナ禍やSNS、ロシアウクライナ戦争等、現代の実社会にも充分通じる内容で驚いた。もちろん架空の国のお話ではあるのだけれど、基本が同じという感じがした。カレル・チャペック氏がこの作品を書いた頃からずっと人類のやり方は変わっていないのだなと、半ば悲しい気持ちにもなった。

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    2022年10月14日
  • 白い病

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    昨今の状況にも繋がるものがあるということで、本屋で紹介されていたので購入。

    戯曲形式の文体で進行する物語で、内容は軍国主義が蔓延る国に、突如として原因不明の病が発生するといったもの。

    病の治療法を提供する代わりに、戦争を止めさせようとする医師。どうしても戦争がやりたい体制側。

    ゆずれない主張を繰り返していくうちに、病は蔓延し、発症してしまう人の身体と精神を蝕む。

    最後は狂った群衆により、全てが台無しになるのがなんともやるせない。

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    2021年12月13日
  • 白い病

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    社会階層、不条理、ジレンマ、群集心理、それらが複雑に混ざり合った先に、戦争と疾病があり、それぞれを利用する人間がいる。元帥には戦争それと対するように病にはガレーン医師が。コロナ渦の中、注目されている本作は、まるで今の状況を予言しているのではないかと思う人も多いだろう。設定まで似ている。。。チャペックが今の状況の中にいたらどんな作品を書くのだろうか?

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    2021年12月05日
  • わたしは英国王に給仕した

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    B・フラバルのように生きたい! 軽い語り口で人間の表と裏、悲劇と喜劇、権威と失墜、愛と憎しみ、貧乏と金持ち。人は対局を持っているが、人前では隠しているし、時として自分自身にも嘘をついている。そんな人間の本性を面白く、切なく、身近に感じさせてくれるすごい本。鳩に餌を上げようとして転落死したとされる作者の、教養に随伴する知性を前面に出さないことをモットーとしているところ、カッコいい!!

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    2021年05月14日
  • ロボット RUR

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    ロボットが出現→人間が産まれなくなる?!
    何で?!
    と思って調べてみた。
    「陣痛」は英語で「labor pain」。「labor」は「労働」と訳すことが多い。同じく、チェコ語で「陣痛」は「prace」。これは「仕事」を意味する語らしい。
    ロボットによって人間が滅ぶ、という展開は、もはや古典的と言ってよい程。だけれど、作者はこれを「悲劇」ではなくて「喜劇」として書いたつもりだという。
    とすると、冒頭に書いたあれはディストピアあるあるではなくて、言葉遊びと言えそうだ。
    「laborからの解放」=「苦役からの解放」=「出産からの解放」
    そして、ヘレナの扱い。
    たぶん、背景にあるのは「楽園追放」だろう

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    2021年03月12日
  • ロボット RUR

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    ロボット:
    1. 電気・磁気などを動力源とし、精巧な機械装置によって人間に似た動作をする人形。人造人間。
    2.目的の作業・操作をコンピューターの制御で自動的に行う機械や装置。人間の姿に似るものに限らない。自動機械。「産業ロボット」
    3.自分の意志でなく、他人に操られて動く人間。傀儡 (かいらい) 。「軍部のロボットである大統領」
    [補説]チェコの作家チャペックが作品中でチェコ語の働くの意のrobotaから作った造語。

    この”ロボット”という言葉がカレル・チャペックにより作られて100周年ということで出た新訳。
    あとがきでカレル・チャペックは「部分的には科学についての喜劇、また部分的には真実に

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    2021年03月08日
  • 白い病

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    1937年の作品ということだが,今の世の中にも変わらぬ問題定義をしている.医師としてのガレーン博士と人間としての戦争を止めたいというガレーンの葛藤が心に突き刺さる.そして恐ろしいのは,煽られた群衆だということが今も昔も真実だ.またコロナの薬がガレーンのような人に発見されたら世界はどう変わるのだろうとふと思ってしまった.

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    2021年01月03日
  • 白い病

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    カレルチャペックという推し作家の戯曲です。
    戦争を目前にし、全世界に突如と広まった「白い病」と聞けばまぁ今の情勢を思い浮かべる人が9割でしょう。

    唯一治療法を知る医者、軍需産業に携わる経営者、
    枢密院顧問、戦争を指揮する元帥閣下、民衆。

    なんでもない一家のやりとりが一番リアルでフィクションめいている。エッセイもとても面白い作家なので、もっと知られたらいいのになあ。紅茶ばかりでなく。


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    2020年12月01日
  • 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今

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    本屋で見つけて、編者が都甲幸治ってこともあり、是非読みたいと思って入手。最近特に、洋邦問わず文学賞が気になるってこともあり、これもとても楽しく読ませてもらいました。方々で言われていることだけど、ノーベル賞より注目すべき文学賞は、あれもこれもあるってことですね。実際には”8大”文学賞では決してないけど、芥川賞と直木賞の章も設けられていて、それはそれで日本人なら気になるものではあるし、ちょっとした息抜きみたいにもなっていて、高感度高しでした。毎度のことながら、また読みたい本・作家がたくさん見つかって、嬉しい悲鳴再び。

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    2018年05月10日
  • ロボット RUR

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    ネタバレ

    ロボットの語源となった話。
    AIに人類が滅ぼされるという内容は、今やSFではよくある話ではあるが、カレル・チャペックはその発想に至った最初の人物なのではないだろうか。
    これが大昔に書かれたとは思えない内容だった。

    まず読み終わった感想として、ヘレンが余計なことをしたから…と考えてしまった。
    読者は大体同様に思うのではないだろうか。
    ロボットに人間的な仕組みを組み込むように企てたこと、設計図を独断で燃やしてしまったこと、色々引っかかるところはある。

    そもそもヘレンが工場に来た時から開発陣はヘレンの虜になってしまった。
    開発陣はヘレンのわがままを聞くようになった。
    度々ヘレンの影響力が大きすぎ

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    2025年06月23日
  • もうひとつの街

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    ネタバレ

    頭おかしくなる。文章に酔う
    読者も主人公を通してもうひとつの街を見ているから、真面目に読んでたら多分路面電車がやってくる。

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    2025年05月07日
  • チェコを知るための60章

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    チェコだけにフォーカスする者としては初めて刊行されたエリア・スタディーズ。
    チェコにフォーカスしているだけあって、他ではあまり扱われないような話も多くて面白かったです。例えば、モラヴィア意識についての話や、モラヴィア・シレジアの街の紹介、ポトカルパツカー・ルスについて等。文学や美術・音楽についても紙幅が割かれていて楽しかったです。
    またいつかチェコに行きたいなぁと改めて思う1冊でした。

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    2025年03月20日
  • わたしは英国王に給仕した

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    軽快に、あっちこっちに行きながら、細部まで書かれる文章で折々迷子になりかけたけど慣れてからはどんどん読んだ。そんな中で、素朴で切れ味のいい文章がところどころ入っててその緩急がおもしろいと感じた。
    主人公も周りの人たちもまあまあしょうもないんだけど人間ってそういうとこあるよねというふうで、ある種のリアリティを持って進む感じ。

    戦争になってからの展開はすごく早く感じた。最後の方の主人公の啓き方?は、ちょっとついていけないところもあったけど、人生ってそういうところもあるのかな。

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    2025年02月13日
  • ロボット RUR

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    この作品によって、ロボットと言う名称が世に広まったのは有名な話。
    ただし、ロボットと言う名称を唱えたのは、作者のチャペックの兄のヨゼフである。これも既に有名な話か。
    ただ、この作品のロボットは、私達がイメージする機械や鋼鉄で出来ている機械人形と言うより、人造人間(アンドロイド)的なイメージ。生きた物質を発見して、人間の臓器を大量に作り出して、人型に組み上げると言う、非常にグロテスクなものだ。
    ヴィリエ・ド・リラダンは「未来のイブ」でアンドロイドと言う名称を作ったが、こちらの造られたイブの方が機械人間的のなのが面白い。
    内容は、既に古典的とも言える。ロボット(奴隷)の人間としての権利を与えるべき

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    2024年12月27日
  • ロボット RUR

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    舞台を観てから読んだので読みやすかったが、
    舞台で演じてこその 行間の恐ろしさ、哀しさを感じるのだろうな と感じた。

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    2024年12月05日