阿部賢一のレビュー一覧

  • ロボット RUR
    人間にとって、最も重要な労働力は人間である
    しかし、我々が他人を労働力という単純な商品として捉えたとき、何が起こるであろうか
    それは大量生産と大量消費である
    人間であるのに人間ではなく、労働力の化身として生み出されたのがカレル・チャペックの想像するロボットだ
    発表された時代は1921年。資本主義の暴...続きを読む
  • 白い病
    カレル・チャペックの戯曲「白い病」を一気に読みました。
    作家のチャペックはナチス・ドイツを痛烈に批判したチェコの国民的作家です。
    また、ロボット という言葉を初めて使ったことでも知られています。
    まず、この戯曲を読んで、すぐ頭に浮かんだのがナチス・ドイツまもとより、
    スターリン時代のソ連、軍事政権下...続きを読む
  • 白い病
    新型コロナ、そしてロシアの侵攻で世界が揺れ続ける中、こんな作品があったのか、と少し恐ろしくもなる作品でした。

    突然白い斑点が体中に現れ、死に至る疫病の流行する世界。そして舞台となる国家は戦争を推し進める総統によって支配されている。
    この二点が現実と合致してしまうことに恐ろしさとやりきれなさを思いま...続きを読む
  • 白い病
    チャペック1937年作の戯曲。中国発の未知の病が世界中でパンデミックを引き起こすというあまりにも予言的な物語。
    疫病は世界中に深刻なパニックを引き起こし、50歳前後以上の人のみが感染し死に至る疫病は世代間の軋轢をも生む。特効薬を発見したガレーン博士は永久平和を国家に要求し貧乏人以外への薬の提供を拒む...続きを読む
  • 白い病
    怖かった。
    あまりにも現代と酷似していて、ぞっとした。
    平和は来ない、恒久の平和は人間には来ないのだ。
    誰かに読ませたい、と感じたのは実に久々。

  • 白い病
    チャペックらしい皮肉がきいた小説。彼の人間理解の深さを改めて痛感した。

    この本には白い病の罹患で線引きされたことを契機に日頃の恨みまでもが顕在化してきた世代間対立、弱者救済への温度差など様々な比較軸がある。そしてプレイヤーをみても独裁者(=元帥、とその恩恵を受ける軍産複合体)と絶対平和主義者(=ガ...続きを読む
  • 白い病
    あっという間に読める。話も面白い。皮肉が効いている。コロナ禍やSNS、ロシアウクライナ戦争等、現代の実社会にも充分通じる内容で驚いた。もちろん架空の国のお話ではあるのだけれど、基本が同じという感じがした。カレル・チャペック氏がこの作品を書いた頃からずっと人類のやり方は変わっていないのだなと、半ば悲し...続きを読む
  • 白い病
    昨今の状況にも繋がるものがあるということで、本屋で紹介されていたので購入。

    戯曲形式の文体で進行する物語で、内容は軍国主義が蔓延る国に、突如として原因不明の病が発生するといったもの。

    病の治療法を提供する代わりに、戦争を止めさせようとする医師。どうしても戦争がやりたい体制側。

    ゆずれない主張を...続きを読む
  • 白い病
    社会階層、不条理、ジレンマ、群集心理、それらが複雑に混ざり合った先に、戦争と疾病があり、それぞれを利用する人間がいる。元帥には戦争それと対するように病にはガレーン医師が。コロナ渦の中、注目されている本作は、まるで今の状況を予言しているのではないかと思う人も多いだろう。設定まで似ている。。。チャペック...続きを読む
  • わたしは英国王に給仕した
    B・フラバルのように生きたい! 軽い語り口で人間の表と裏、悲劇と喜劇、権威と失墜、愛と憎しみ、貧乏と金持ち。人は対局を持っているが、人前では隠しているし、時として自分自身にも嘘をついている。そんな人間の本性を面白く、切なく、身近に感じさせてくれるすごい本。鳩に餌を上げようとして転落死したとされる作者...続きを読む
  • ロボット RUR
    ロボットが出現→人間が産まれなくなる?!
    何で?!
    と思って調べてみた。
    「陣痛」は英語で「labor pain」。「labor」は「労働」と訳すことが多い。同じく、チェコ語で「陣痛」は「prace」。これは「仕事」を意味する語らしい。
    ロボットによって人間が滅ぶ、という展開は、もはや古典的と言って...続きを読む
  • ロボット RUR
    ロボット:
    1. 電気・磁気などを動力源とし、精巧な機械装置によって人間に似た動作をする人形。人造人間。
    2.目的の作業・操作をコンピューターの制御で自動的に行う機械や装置。人間の姿に似るものに限らない。自動機械。「産業ロボット」
    3.自分の意志でなく、他人に操られて動く人間。傀儡 (かいらい) 。...続きを読む
  • 白い病
    1937年の作品ということだが,今の世の中にも変わらぬ問題定義をしている.医師としてのガレーン博士と人間としての戦争を止めたいというガレーンの葛藤が心に突き刺さる.そして恐ろしいのは,煽られた群衆だということが今も昔も真実だ.またコロナの薬がガレーンのような人に発見されたら世界はどう変わるのだろうと...続きを読む
  • 白い病
    カレルチャペックという推し作家の戯曲です。
    戦争を目前にし、全世界に突如と広まった「白い病」と聞けばまぁ今の情勢を思い浮かべる人が9割でしょう。

    唯一治療法を知る医者、軍需産業に携わる経営者、
    枢密院顧問、戦争を指揮する元帥閣下、民衆。

    なんでもない一家のやりとりが一番リアルでフィクションめいて...続きを読む
  • 白い病
    致死率の高い謎の伝染病の流行するなか、人間愛を貫く事は出来るのか。
    際限のない欲にかられ戦争が繰り返されていた時代に。
    疫病と戦争と言う、いやが応にも人間が露わになる舞台。描かれる物語に、多くのことを投げかけられた。
  • 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今
    本屋で見つけて、編者が都甲幸治ってこともあり、是非読みたいと思って入手。最近特に、洋邦問わず文学賞が気になるってこともあり、これもとても楽しく読ませてもらいました。方々で言われていることだけど、ノーベル賞より注目すべき文学賞は、あれもこれもあるってことですね。実際には”8大”文学賞では決してないけど...続きを読む
  • ロボット RUR
    ロボットの語源だと知識としては知っていた作品。巻末の作者の言葉にある通り、いわゆる機械のロボットとは少し違う人造人間的なロボットを作り出して破滅に追いやられる人間。希望のようなそうでもないような結末。1920年に書かれたのが不思議な内容。そしてこの初版2000部のチェコ語の作品があっという間に世界を...続きを読む
  • 白い病
    「ロボット」という言葉を小説で最初に著した著者。序盤の病気の発生源からして、まるで現代の状況を予言していたかのようで驚かされます。

    内容は、パンデミックと戦争の両方とも解決しようとする、平和を希求して妥協を知らない医師の孤独な闘い。はたして彼は、国家を動かすことができるのかというお話し。最後の終わ...続きを読む
  • 白い病
    コロナと戦争が同時並行で起きている現世において非常に示唆的な内容であり、結局人間の本質というのは変わっていないのではと思えた作品。自身の作り出した幻想に踊らされる国民によって、結果的に破滅に導かれる独裁者と、さらに附随する国民の混乱が文章のあとにも無限に想像できて恐ろしい。
  • 白い病
    面白かった。
    1937年に発表された作品だけど、そのまま現代に通ずるのはなんとも悲しい。

    初めは枢密顧問官や軍事会社の社長、元帥など、支配者に対する批判の色が強い作品なのかと思ったが、読んでいくと彼らはかなり理性的で、主張も(ある程度)一貫しているように感じた。
    むしろ第二幕で登場する「父」が代表...続きを読む