ルソーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
しばしば危険思想と目される人物による書籍だけあって、晩年の作品にも関わらずきわめて強烈かつ異様、芳醇な毒気を放っている。この作品は読む劇薬だと思う。僕も例にもれず、短い作品ながら頭がクラクラする思いだった。
この毒気は一読に値する。曖昧かつ内省的な文章が延々と並んでいるように見えるが、よく読めばすごい妖気だ。後のカントやトルストイが生涯かけて愛読したように、これはハマる人には途轍もなくハマる内容だ。
しかし一人の人間が必死に生きようとした、その軌跡の末尾として作品を見るならば、この著者にも共感を多く見出せるだろう。
小説にも哲学書にもカテゴライズしがたいが、その作品は紛れもなく文学だった。 -
Posted by ブクログ
ルソーの不朽の教育論。
当時の社会にあって、子供をより人為的な影響から避け、子供に自ずから備わる自主性だけに頼って、子供が理解しうる概念を用いて教育するにはどうすべきかを論じたもの。
社会の環境は短期間で変わり、親の価値観は子供にとって正しいものとは限らない。ルソーが、人為を教育から出来るだけ排そうとする理由の一つとしてとして挙げるこの状況は、今日にもよく当てはまる。
また、子供が概念を理解することなく記憶だけを増やして行くことの無為さは、われわれもよく知るところである。
ただし、彼もいうように、ここで書かれているような教育、およそ今日までたくさんの人々が理想と感じ、それによって古典となっ -
Posted by ブクログ
ルソーの意識は、マルクスと同様、今ここの社会の悲惨な現状がいかにして興ったのかを知ることにある。
そのために、社会への成り立ちを、自然状態から説明する。
ルソーは、現代が自己の外=他律的にしか自己の価値が定まらないという、吉本隆明が言うところの〈関係の絶対性〉を問題視するために、
社会状態に移行する前の自然状態では、
誰ともかかわりをもたない「孤独な生活者」として人間を描く。
人に備わっているものは、次の3つ。
自己改善能力、自由意志、憐みの情。
だが、社会性のある生活ではないので、最後の項はほぼ潜伏している状態でしかない。
そこから社会への移行は、天変地異が起らなければありえない、とい