【感想・ネタバレ】孤独な散歩者の夢想のレビュー

あらすじ

晩年、孤独を強いられたルソーが、日々の散歩のなかで浮かび上がる想念や印象をもとに、自らの生涯を省みながら自己との対話を綴った10の“哲学エッセイ”。ここにはあの“偉人ルソー”はいない。迫害妄想に悩まされたのち訪れた平穏のなかで書かれた、ルソー最後の省察。「思索」ではなく、「夢想」に身をゆだねたその真意は? 他作品との繋がりにも言及した中山元氏による詳細な解説が付く。

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Posted by ブクログ

ルソーって、社会の教科書に出てきた『社会契約論』とかの、あのルソーだよね…?
と思うくらい、偉人が晩年に書いた作品というより、本当にひとりの老人の「孤独な散歩者の夢想」そのものだった。
こんなにも自分には悪意がないとか他者がいなければというようなことを言えるのはそれが夢想だからなのだと、解説や訳者あとがきのおかげで分かった。
幸福のこと。
人は結局そこに行き着くのだろうなと、そこに行き着くまでに沢山のまわり道をするのが人生なのだなと感慨深かった。
反面、どうして学校で、あなたたちが生きていくときっとこんな風に感じるようになりますよ、って教えてくれないのかな、とも思った。
何百年経っても人の想いはそんなに変わらない。

解説の、
「このように、夢想にふけることは、たんに自分の想像力のうちで、好みの宇宙をつくりだし、そこに閉じこもることを意味しない。他者が作りだした宇宙のうちで、他者の宇宙を追体験し、他者を理解するという機能もまたはたしうるのである。」
という部分に、私自身の夢想のあり方を明確に示してもらえた気がした。
この本を読むまで「夢想」という言葉も概念も意識したことが一度もなかったけれど、書かれたものを読んだり音楽を聴いたりする行為はこういうことだったのだと納得した。
推しの宇宙のうちでの夢想の、幸福感たるや。

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2025年10月26日

Posted by ブクログ

晩年のルソーが、
故国フランスを追われ、社会から断絶された状況下で、
過去の華々しい栄光と栄華を忘却の彼方に見ながらも、
今を生きることの幸せと儚さを、独り言のように綴った日記のような書。

人間不平等起源論や社会契約論を著して
フランス革命思想に貢献したルソーが
これほどに理不尽と思える仕打ちを受けるのか
と思いたくなる。

最後には革命軍によって、
亡骸はフランス故国へうつされたようである。

ルソーという人間がまたひとつ深く知れる書。

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2019年05月01日

Posted by ブクログ

ルソーは、理性の時代を生きる人間としては、優しすぎた。直感的で、情け深い(そして妄想癖のある)ルソー。そんな「人間」ルソーの魅力を、本書が余すところなく伝えている。

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2013年02月28日

Posted by ブクログ

ここにいるのは人間ルソー。歴史上の偉大な人物ではなく、いや、でもありつつ等身大のルソーがいる。勘違いかもしれないけど、ここに書かれている感情、情動の多くは私でも体験したことがある。素晴らしい著作だなぁ。

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2012年10月06日

Posted by ブクログ

『孤独な散歩者の夢想』は、ルソーの徹底した自己内省が魅力である一方、読んでいて序盤は閉塞感を覚える。自分以外を信用せず、自分の考えはおおよそ正しいという前提で語られる世界は、対話の余地がなく、柔軟性に欠けている。深いメタ認知力はあるものの、他者の視点や思考の余白を認めず、思考が自己完結して硬直していく様は、高学歴で発達傾向のある人と会話しているときの「頭は良いが視野が狭い」という感覚に非常に近く感じた。
本の中での説明に加えてルソーの人物像,置かれている状況,精神状態などの情報を加味すると自分ならどうなりそうか?と想像して読み進めました。
一番印象的なのは第八の散歩です。ルソーが硬直的な思考から考え抜いて得た自己理解や内省への知見がまとまっており、柔軟さを手に入れる過程が見えました。

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2025年04月21日

Posted by ブクログ

初めてのルソーでした。
彼の哲学は個人的には少し共感もありました。
自分の置かれている身にとっては、良い本に出会えました。
ルソーという人物が知りたい方、初心者にはこの本が良いかもしれません。
彼は繊細な方だという印象を受けました。
訳が非常に分かりやすく、また読みやすかったです。
光文社も初めてでしたが、これから躊躇なく手に取ろうとも思いました。
なんか、ルソー可愛かったです。

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2021年07月01日

Posted by ブクログ

この人の哲学は性善説とか有神論を前提にしてるからか、ピュアさがあって微笑ましい。
僕はもうちょいネガティブだけど、性格的にはとても親近感があった。
人から離れることで、逆に自分の存在がはっきりするような感覚とかを、ただ知覚するだけじゃなくて、言葉にして説明しきれるとこまで見つめられるのが思想家の強さだね

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2025年05月12日

Posted by ブクログ

本来は書かれている字句をしっかり受け止め、その字義を吟味して読むべきと思うが、時々頭をもたげてくる迫害妄想がそれを難しくさせた。
この文章は正常な判断力をもって書かれたのだろうかと疑問を持ちながら、ある意味では精読を留保しながら読むのは非常に骨が折れた。正直あまり頭に入ってこなかった。

一方で壮年期のルソーの事績や著作に興味をもつことができたので無駄な時間ではなかった。

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2024年07月15日

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徳を積むという行為は、特別なことをしなくても、日常の生活の中にあることがわかった。
『方丈記』鴨さんと同じ行為で精神を落ち着かせるのに驚いた。時代も国も違うのに、同じものにたどり着いている。人間の本能なのだろうか。

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2023年07月07日

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ルソー初読。エセーを読んだ時も思ったが、教科書で学んだ哲学者たちの著作を大人になって実際に手にしてみると、想像以上の人間臭さに驚く(学生時代に背伸びして読んだカントからは全く感じなかったが…)。思想を吟味するというよりは、親近感をもって軽く読んでしまった。また読み返したい。

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2023年04月30日

Posted by ブクログ

迫害という真実とそうではない被害妄想に囚われたルソーが世間を忌み苦しみながらもどう生きていくか、という本。
夢想をし、植物研究に熱中し、己を肯定する為に自己弁護と理論武装をして未来の読者に向けて(ルソーはあくまでも余生のためと書いているが)託したかったのだろう、正直なところ救ってほしかったのかもしれない。
個人的に人間臭いルソーが苦手で、でもこの丁寧な解説があるのに、苦手なんて言えないよねと思った。

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2022年01月29日

Posted by ブクログ

フランスでは、青少年が一度は手にとって読む本だという。
社会科でも習った宗教改革の箇所で必ず出てくるルソー。

人生の晩年は、教会からも、学会からも弾圧、無視され寂しい人生だったようだ。
それらからの疎外感に憤りを感じて憤死してしまうような日々を送っていたが、怒りも一巡すると静かに自分自身を見つめる時間に変わる。
そんな自分自身を見つめる10章。
遺作となる。

冒頭から読み始めないで、訳者後書きや、80ページにわたる解説から読むと、どうして冒頭から怒りに満ちた作者の心情が読み取れる。

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2021年01月16日

Posted by ブクログ

ルソーたん!!!!私がいる!私がいるよーっ( ;∀;)!!!!と呼びかけてしまいたくなるほど冒頭から悲壮感漂う。栄光から一転、迫害を受けたルソーが自分の殻に閉じこもって書いた夢想の束。でも読み進めるにつれ、被害妄想の羅列と化していき、「わかった、わかった」と聞き流してしまいそうに(笑)けれど、ところどころにはっとさせられる言葉が散らばっており、「なぜ生きるかを知っている者は、どのように生きることにも耐える」というニーチェの言葉を思い出した。時代が彼に追いつくまでは、まだ少し時間が必要だった。次は『エミール』読もう。

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2016年09月02日

Posted by ブクログ

ルソーでさえ、こんなこと思うんならわたしなんてどうしたら良いんだろう。
うまく孤独にもなれなくて、自意識ばかりが肥大している他人を見て、「ねえ!?あなたは普通!普通なんだよ!!」って言いたくなる。それは自分自身に対しての言葉でもある。
とてつもなくいたくて辛い。
そんな惨めな思い、誰だってするのだろう。ただ、こうやってルソーのように明確な言葉になんてとてもじゃ、ないけどできない。

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2013年04月12日

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