【感想・ネタバレ】孤独な散歩者の夢想のレビュー

あらすじ

十八世紀以降の文学と哲学はルソーの影響を無視しては考えられない。しかし彼の晩年はまったく孤独であった。人生の長い路のはずれに来て、この孤独な散歩者は立ちどまる。彼はうしろを振返り、また目前にせまる暗闇のほうに眼をやる。そして左右にひらけている美しい夕暮れの景色に眺めいる。――自由な想念の世界で、自らの生涯を省みながら、断片的につづった十の哲学的な夢想。

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Posted by ブクログ

「社会契約論」で有名なルソーが過ごした、孤独な晩年。
そこで彼が散歩しながら考えた、「自分自身」について。
自分の内面を深く深く掘り下げる、孤独な旅路。

「彼らの哲学は他人用なのだ。僕には自分用のものがあればいい。」
「自分が学ぼうと思った時には、それは自分自身を知るためであって、
教えるためではないのである。」
など、俗世的に生きる人々(彼を疎外した人々?)に批判的意見を飛ばします。
自分の内心を居所とする人間が最も強い、とするかのように。

こうした姿勢は独善的、自己中心的と批判されそうなものですが、
まあ、どっちもどっちでしょう。ただ、
「判断を練りに練ったうえで、その感情を選択することが肝要だ」
という一行には共感しました。
感情を選択できるという境地に至るほど自分を知ることができれば、
心強いように思います。

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2011年07月31日

Posted by ブクログ

晩年のルソーが綴った本で、私小説、哲学書のような内容となっている。冒頭に書いてあるように、ルソーは地上でただの一人きりになってしまったと吐露する。それ以降、ルソーの孤独な内面が次々と垣間見えていく。また本作でも言及されているが、思想家としての側面のみならず、植物学者としてのルソーの様子もわかる。

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2025年03月29日

Posted by ブクログ

外側にあるものは問題とせず、平穏な幸福は自分の中にこそあるとして始める「孤独な夢想録」。その語り口は「高校生の頃のおれ」そのものだし、言ってる事自体は「晩年のルソー」すぎるし、アプローチ法は哲学的。安易な言い方だとドストエフスキーとかが好きな厨二病気質には刺さる。個人的には「第四の散歩」が好き。ただ訳が堅い。読みづらい。

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2024年03月15日

Posted by ブクログ

翻って考えてみるに、酷く心を乱していながらも、当時そして現代にも通底するような、一種の真理に近いものを看破し得るのは、正に彼の著述の才能と、物事を掘り下げて深く考える能力の残滓が、錯乱状態にあっても確かに残っていたからであり、その一貫性に驚嘆した。所々真実かどうか疑わしい記述、どうも妄想ではないかと思われるような部分があるのは確かだが、精神に異常を来たし、老いたとしても、ここまで重厚なものを書ける人は稀有だと思う。

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2023年09月21日

Posted by ブクログ

 ルソーの先見性は計り知れない。
 彼の自我や自意識への拘り及び探求が、その後の学問や近代文学に与えた影響の甚大さをみても、それは証明される。彼も、当時の人間には理解されないところの所謂、天才の一人に数えられている。特に、精神分析の発達こそがルソーの捻くれた性格や相反する感情の衝突などの現象を解明させる契機となった。文学では、かの有名なトルストイなどはルソーの影響を直接に受けているらしい。
 幸福とは、本人の中に眠っているもので、外部にそれを求めようとしても無駄に終わると、彼は語っている。彼は、作家として若い時期に華々しく文壇にデビューしたが、自分の子供を全て孤児院に入れてしまったり、激しい思想の著作が一部の人間の反感を買ったりして、フランス社会から追放処分を受けてしまう。作品「エミール」は教育論として優れた著作だが、孤児院に子供を預けて親としての義務を放棄する行為との矛盾を指摘され、作品も吐き捨てられた。
 ルソーの性格は、とにかく過敏で神経質だったらしい。今でいう統合失調症のようなものだと謂われている。人間関係では常に対立を繰り返し、友人との絶交が相次いだ。そして、孤独な後半生を送らざるを得ないところまで悪化していった。穏やかで善良な資質も十分に持っていたが、不器用で疑い深い性向の為に、周囲にそれを理解される事はなかった。彼の文章は激しい口調で、己の精神を分析して掘り下げていく。その毒々しい執念の強さが却って思わぬ反感を買う原因でもあった。
 晩年、フランスへの入国が許されるが、一切の著述活動をしない事を条件にとられた。無理解だった当時のフランス社会にとっては、ルソーは危険人物だったのだ。天才は、しばしば同時代の人間からの無理解に苦しめられる。社会にまだ受け皿が整っていない事によって、天才は公から放擲される。哲学や文学などで自意識が大きな主題にクローズアップされるより一歩先に、ルソーは必死になってこの自我の問題に取り組んだ。ルソーの文学は現代にも大きな影響を及ぼしている。
 しかし、日本でルソーは余り読まれていないようだ。本作の訳者はそれが残念だ、と嘆いておられる。学問の研究テーマとしても孤独な現代人の心の渇きを埋める読書の対象としても、ルソーの文学は非常に魅力的だ。本作は、晩年の最後に書かれた遺書のような一品。ルソー本来の人間性が、瑞々しい文章の間から滲み出ている。一度、読まれる事をお勧めする。

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2015年02月17日

Posted by ブクログ

はまる人ははまると思う本書。
社会に対して、人間に対してルソーは何を考えていたのか。
晩年の彼の思想が見えます。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

しばしば危険思想と目される人物による書籍だけあって、晩年の作品にも関わらずきわめて強烈かつ異様、芳醇な毒気を放っている。この作品は読む劇薬だと思う。僕も例にもれず、短い作品ながら頭がクラクラする思いだった。

この毒気は一読に値する。曖昧かつ内省的な文章が延々と並んでいるように見えるが、よく読めばすごい妖気だ。後のカントやトルストイが生涯かけて愛読したように、これはハマる人には途轍もなくハマる内容だ。

しかし一人の人間が必死に生きようとした、その軌跡の末尾として作品を見るならば、この著者にも共感を多く見出せるだろう。
小説にも哲学書にもカテゴライズしがたいが、その作品は紛れもなく文学だった。


この闇属性にはニーチェや太宰にも通じるものが含まれている。訳者の読み応えのある解説文にあった文言をつなぎ合わせて、僕は著者を『愛すべき邪悪』と呼びたい。
内容は人間社会への憎悪が主で、綺麗なバラに棘ありとの言葉通り、見た目(原文)は非常に美しいフランス語で書かれているらしい。

僕はこの訳者が好きなのだが、この本でもその美しく繊細な訳文は健在だ。原文のイメージを比較的に保っているのではないだろうか。蛇足だが、表紙が洗練されていて非常に美しい。

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2025年05月20日

Posted by ブクログ

社会契約論で有名なルソーのエッセイ。エッセイというか思いの向くままに書き連ねたもの。それがエッセイか。当時のヨーロッパの状況が垣間見られて面白いが、ちょっと難解な部分もある。こういう本は読みなれるのが必要か。

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2015年07月15日

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