吉田健一のレビュー一覧

  • 舌鼓ところどころ/私の食物誌

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    戦後の非常に苦しい日本の再成長への道、その中で、食そのものを楽しみ、人々に興味と日本が古来から持つ食の素晴らしさを集めた珠玉の食に関するエッセイ集。丁寧に取材し、食し、語られる文章がネットも、Social Mediaもない時代に、唯一の情報源だった人たちもいただろう。それを考えると、写真のない、文章のみで構成された、インスタと言えるだろう。これを想像し、その時代の人たちの生き様を感じる非常に貴重で、非常に意義深い。苦しかっただろう世代、乗り越えていく高揚感、新しいものを取り込む粋な人生を思い描き、必死に戦っていた強いアイデンティティ。
     特に、ワインを葡萄酒とし、赤も白もロゼも、とにかくブルゴ

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    2024年02月19日
  • 吉田健一随筆集

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    今まで著者の作品は旅と食のエッセイしか読んでいなかったので上流階級出身のおぼっちゃまかと思っていたが大間違い。
    とんでもない文人だった。
    西洋文学、歴史に関する深い教養に圧倒された。後半はいつもの食と酒の紀行文になったので安心した。本当の教養人とはこういう人だな。

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    2023年11月30日
  • 酒談義

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    酒にまつわるエッセイは数多くあると思う。その中でも名作まちがいない本作は、書かれている背景は若干時代を感じるものの、作者が酒にどのように向き合って付き合ってきたか?非常に考えさせる要素がある。まぁとにかく飲んで学びましょう。

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    2021年11月14日
  • 父のこと

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    ネタバレ

    “再軍備は蟷螂の斧、そんなものを作って貧乏するくらいなら、しないほうがマシだ。これに代わるものとして集団防備なりを考えていけばいいので、日本一国で軍備をするなんて、バカの骨頂だよ。”

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    2017年11月16日
  • 汽車旅の酒

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    酒が好きな人は、そのディティールを細かに表現しようとするが、この著者には一切ない。とにかくぐいぐい飲んで、ぐいぐい書く。本当にかっこいい。

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    2019年10月11日
  • 吉田健一

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    あるとき朔太郎を読んでいて、文学とはまず第一に批評である、と書かれていて驚いたことがある。それまで文学といえば真っ先に思い浮かべるのは小説だったから、なぜ批評がその上に位置するのだ、と疑問に思ったものだ。当時、批評とは「他人の書いたものをあれこれ論じて価値を定めるその時々のジャッジ」のことだと思っていたからだ。しかし、それは文芸時評(review)というもので、批評(criticism)ではない、と解説を読んではじめて腑に落ちた。それでは批評とは何か。池澤によれば「批評は文学の原理を明らかにし、文学を導くもの」だそうだ。なるほど、それならよく分かる。朔太郎のいう批評とは、(criticism)

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    2015年06月05日
  • 汽車旅の酒

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    代表作になるとは思えないのだけれど、旅、酒、汽車と揃うとどうしても点が甘くなる。休日に気持ちいい読書ができたので5☆。そもそも金沢について書いている人なので不思議ではないが、このタイミングでの刊行は北陸新幹線開業に合わせてたものでないかと勘ぐってしまう。まあ、それはそれで。

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    2015年03月24日
  • ロビンソン漂流記

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    もし自分が無人島に流されたら、この小説での知識をそのまま活用できそうなくらいリアルだった。とにかく面白い。

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    2010年08月23日
  • 新装版 旨いものはうまい

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    独特な文章のリズムに慣れるまで少し時間がかかったが、読み進めるうちにそれがむしろ味わい深く感じられた。
    自分が生まれる前の時代の話なのに情景が自然と浮かび、食いしん坊な人だなあとたびたび頷きながら楽しく読み終えた。
    吉田健一の硬すぎずフラットな語り口に惹かれ、読むたびにお腹がすいてしまうような一冊。
    食いしん坊な方におすすめ。

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    2025年10月13日
  • 余生の文学

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    #平凡社ライブラリー #吉田健一 

    「余生の文学」 言葉、批評、近代の豊富と無秩序をテーマとした文学論


    「批評と文芸時評」
    詩は、人間がいい気持ちになったから作る
    小説は、人に話をして聞かせたいから書く
    批評は、あることについて自分の態度を決めたいから書く

    「文章論」
    言葉は生きものであるから同じ一つの文章でも同じ顔つきをしているとは限らない

    「時評」
    人間は言葉を使って考える〜言葉と考えは同じ

    文学で求められているものを一言で言い表すなら、真である

    文学はもっと泥臭いもの〜人の心を満足させるもの

    言葉が我々を動かし、揺さぶる時に〜何度繰り返し読んでも〜我々はその言葉を新し

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    2024年02月15日
  • 作家と酒

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    ネタバレ

    小説家や詩人や漫画家たちによる、お酒にまつわる44編。
    大酒呑みの話が読みたいと思って手に取った。きっと何名かはそういう作家がいるに違いないと。
    結果的に想像以上の面白い話が読めて満足した。お酒での失敗談も、お酒にまつわる思い出も、作家の表現力で楽しく読めた。時代の空気まで伝わってくる。
    困るのは、読んでいるうちに自分もお酒を飲みたくなってくるところだ。お酒専用の業務用冷蔵庫が心底羨ましかった。

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    2024年01月21日
  • 英国に就て

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    吉田健一氏は日本では最後と言えるかも知れない古き良き時代の香り漂う文士である。「文化などということが念頭にないのが、英国の文化に一貫した一つの性格だ」とは大見得を切ったものだが、氏の見た実用主義という英国文化の特質は、実は取り立てて新鮮でもない昔からある観察だ。その実用主義が、人間はいずれ死すべき存在であるがゆえに束の間の現世をとことん味わい尽くすべしという、英国人の生き方に根ざすものだというのは確かにその通りかも知れないが、ではその現世志向がどこから来るのかということに氏の関心は向かわない。ウェーバー風の宗教社会学を奉じる講壇知識人なら物足りなさを感じるだろうが、社会科学的あるいは歴史学的な

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    2023年12月29日
  • 舌鼓ところどころ/私の食物誌

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    吉田さんの著作は全て好きなんだけどこれはどーですかねという作品でした。
    でも読み進むとやっぱり良いんです。

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    2023年11月13日
  • 作家と酒

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    酒という媒介によって、執筆者に対する誼の深さを問わず、ある種の古き良き時代を醸し出す文化の中で各人が実態的に肉付けされていく行程は、人類史を通じて連れ添ってきた存在の重みを改めて見せつけるものとなっている。

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    2023年03月27日
  • ロビンソン漂流記

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    「ダニエル・デフォー」の冒険小説『ロビンソン漂流記』を読みました。

    「高橋大輔」の著書『ロビンソン・クルーソーを探して』を読んで、久しぶりに『ロビンソン漂流記』を読みたくなったんですよね。

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    ひとりで無人島に流れついた船乗り「ロビンソン・クルーソー」 ――孤独と闘いながら、神を信じ困難に耐えて生き抜く姿を描く冒険小説。
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    初版の正式なタイトルは、

    『「自分以外の全員が犠牲になった難破で岸辺に投げ出され、アメリカの浜辺、オルーノクという大河の河口近くの無人島で28年もたった一人で暮らし、最後には奇

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    2022年05月25日
  • 地球外少年少女 後編 ~はじまりの物語~

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    これは観なきゃと思ってNetflixで観た(1-6話)。
    特に前半の世界観がめちゃくちゃおもしろかった。お話の仕組みとしても、セカイ系の物語としても、すごく参考になったし、SFとしてもしっかり楽しめた。

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    2022年02月02日
  • 汽車旅の酒

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    英文学者にしてあの吉田茂の息子による旅と酒と食のエッセイ。東京駅からひたすら飲み続け(多くは夜行)、到着した街でも午前から飲み続ける。特に金沢がお気に入りだったようで、金沢のエッセイが多い。

    当時の文豪というか文士の飲みっぷりが良く分かる。不思議な魅力の作品。

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    2020年12月13日
  • 汽車旅の酒

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    収録されている最初のエッセイの書き出し。

    【引用】
    三ヶ月目毎に、或は大体その位の所で五、六日ずつ、或は一週間位、旅行が出来たらどんなにいいだろうと、思う。
    【引用終わり】

    まさに。
    この出だしに引き込まれた。
    また、こんなことも書かれている。

    【引用】
    全く、旅先で一晩旨い酒を飲むこと程、我々の寿命を延ばしてくれるものはない。後は寝るだけで、そう考えただけで夜はとてつもなく前方に向って拡る。その晩も、やがては寝たようである。
    【引用終わり】

    旅と食と酒。
    「汽車旅の酒」という題名だけれども、「酒と食の汽車旅」の方がぴたっと来る。

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    2020年04月04日
  • 舌鼓ところどころ/私の食物誌

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    東南アジア勤務の折、日本語書店でこの本を購入。異国の暮らしを送りつつ、あれこれ拾い読み、あれも食べたい、これも飲みたい、と妄想が広がる、楽しい本でありました。著者`吉田健一`のお酒を飲む楽しさ、嬉しさ等が、じんわりと伝わってくる、楽しい本であります。

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    2020年02月23日
  • ロビンソン漂流記

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    18世紀イギリスの文筆家ダニエル・デフォー(1660?-1731)による漂流冒険譚、1719年。子ども向けの冒険物語として知られるが、孤島に漂着して自活していくロビンソン・クルーソーは近代的な経済合理性に基づいて行動するホモ・エコノミクスの原型であり「資本主義の精神」を先取りするものであるとして、経済学者(マルクス、ヴェーバー、大塚久雄など)からも注目されてきた。以下、精神史上の観点から気になった点をいくつか挙げる。

    □「中間の身分」

    物語の冒頭、外国への冒険旅行を望む息子に対して、実直な商人である父親は「中間の身分」という興味深い概念を持ち出して、青年の向こう見ずな企てを思いとどまらせよ

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    2018年10月09日