吉田健一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
国語辞典、漢和辞典、英和辞典で言葉を調べながら読みました(笑)。
浅学な私としては、読み始めのころは、少々衒学的文章ではないかと思ってしまいましたが、日本とヨーロッパの文明・文化の比較を引き出すうえで、必然的にああいう書き方になったのだと途中から思いました。
少ない登場人物のお酒を交えての他愛無い会話が、戦前の東京の風情をうまく醸し出されていました。
効率・効果・成果主義と暮らしにくくなった現代人としては、こんな暮らしやすい時代が日本にあったのかと思い知らされました。
講談社学術文庫の「あそびの哲学」で紹介されていた本ですが、吉田健一氏のあそびの本質がびっしり詰まった本を読むことが出来 -
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問題が発生した。まさかの、小説、であった!
読み終わって解説を読むまで小説だとは露ほども思わない。
完全に随筆だと思い込む。
ああ、これが「『私』小説」のトラップ!
こういうの読んじゃうと、ホントどの「私」も信じらんない、私不信に陥ってしまいそうだ。
また、このタイトルが。「東京の昔」って。完全にエッセイ臭を漂わせているじゃないか。トラップだよ、トラップ。
随筆だと思って読んでいたので、この人(私が思い込んでいた吉田健一氏)のコミュニケーション能力の素晴らしさにあっけらかんとなってしまっていた。
近所に住む自転車屋の勘さんや、自分より一回りも年下の仏文科の学生・古木君なんかと、ちょろんと出く -
Posted by ブクログ
父親が吉田健一のファンだった。だから、この人の作品は意図的にこれまで読むのを避けていた。それなのに、なんで今回手に取ったのかというと、あるアンソロジーに収録されていた吉田健一による、幽霊の出てくる短編がなかなか良かったからだ。
で、近々遠いところへの出張も控えているのでこの文庫本を選んだのだけれど、「併し兎に角、旅行している時に本や雑誌を読むの程、愚の骨頂はない(後略)」(p27)という吉田健一とは、そもそも私は旅についての認識が違うのであった。そして、彼があちらこちらを旅しては、酒を飲み、肴に舌鼓を打つのをひたすら読まされても、面白くもなんともないのであった。
だが、後半に収められた短 -
Posted by ブクログ
昔のボンボン、お嬢さんが書いたエッセイは楽しい。
情報が少なかった時代だからこそ、感じたままが素直に表現されていて、切り口が面白いからこそ、今も書店で手に入る。『ヨーロッパ退屈日記』(伊丹十三著)、『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(石井好子著)あたりが代表格か。
育ちの良さという意味では、吉田茂を父に持つ著者の吉田健一氏は究極だ。本書には、酒といえば日本酒(九州だと焼酎か)という時代の庶民には「???」であったろう、洋酒の数々も登場する。
この手のエッセイは、時代ごとの価格や評価を知るための“歴史資料”的な読み方をするのも楽しい。
酒税法が今の体系になる以前、洋酒は高かったのだ -
Posted by ブクログ
収録作中9編は創元推理文庫『ポオ小説全集』で既読だが、
訳が違うので新鮮な感動を味わう。
吉田健一セレクトの短編集+
ポオの覚え書き「マルジナリア」収録。
■ベレニイス(Berenice,1835)
青年エギアスは従妹ベレニイスと共に育ち、
長じて彼女を愛するようになったが、
その美貌は病によって損なわれた。
やがて……。
■影‐一つの譬え話‐(Shadow,1835)
プトレマイスの屋敷に集ったオイノスたち
七人だったが、部屋には若いゾイロスの遺体が。
そこへ帳(とばり)の後ろから現れた影――。
■メッツェンガアシュタイン(Metzengerstein,1836)
反目 -