戸田裕之のレビュー一覧
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「大聖堂」の続編。
200年後、既に大聖堂が建っている街キングズブリッジ。
騎士のサー・ジェラルドの長男でのちに建築職人になるマーティンと、その弟で大柄で強いが粗暴なラルフ。
裕福な羊毛商人エドマンドの娘で利発な美少女カリス。
土地を持たない貧民の娘グウェンダ。
この子供らが森で偶然に、騎士が襲われて相手を殺す事件を目撃する所から始まります。
そのときの騎士トマスは修道院へ。
修道院長を目指す修道士ゴドウィンは、カリスの伯母の息子。穏当にふるまっていますが、実は野心家。
修道院の内部抗争も描かれます。
女子修道院の存在が大きくなっているのも、時代の流れというか、前作とは違う興味をそそります。
グウェンダが恋するハンサムな農夫のウルフリックには婚約者がいました。
望みのない恋に思えたが、思いがけなくウルフリックの親が亡くなって、その土地所有を巡って危機に陥る。
当時は、当然のように息子が継げるというものでもなかったという意外な盲点が。
薄幸のグウェンダが一途でけなげ。
人が集まっている日に橋が落ちるという大惨事が起き、街は大混乱に。
マーティンは親には期待されない息子でしたが、橋の欠陥を見抜き、才能を発揮していきます。
カリスと想い合いますが、親方の娘に言い寄られて妊娠させたという騒ぎになり、それは濡れ衣だったのですが、ギルドに入れなくなり‥?!
臨場感があり、ドラマチックです。 -
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『火の柱』は上、中、下巻通して、イングランド架空の町キングズブリッジを主な舞台に、62年間のネッドとマージュリー二人の波乱の人生を見事に描き切った物語である。下巻はその内、1566年~1606年の40年間の出来事を史実を背景にして語る。訳者あとがきによると、これまでのケン・フォレット作品の最高傑作と激賞している。
どうしても本書と比べてしまうのが、パールバック著の『大地』である。主人公、王龍が死を迎えるまでのおよそ40〜50年間(父子三代の変遷)を描いている。一方、こちらはカトリックとプロテスタントによる宗教戦争の激動のヨーロッパを生き抜いた主人公、ネッドが80歳を迎えるまでの物語となる。読みどころは...敵対する宗派に分かれていていても、ネッドとマージュリー二人の運命の糸は切れることはない、孫が清教徒として新大陸へ移住する決心をし、一族の物語の幕は閉じる。歴史大河小説である。 -
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山下達郎の楽曲「メリー・ゴー・ラウンド」をyoutubeで聞いていて、この曲は今読んでいる『火の柱』中巻の雰囲気にピッタリだと...主人公イングランドのネッド、その兄バーニーの波乱の人生と二人の恋愛模様がステキ過ぎる。抗えない現実を乗り越えて強く生き抜く女性像は男性からすると、理想の母親のイメージと重なるのかもしれない。中巻で主人公ネッドは運命の人シルヴィーをみつけ、兄バーニーは8年越しにベラの元へ、迎えに来ると信じて待っていた彼女だったが...そこにはなんとバーニーの息子が。
単純に国を二分するカトリックとプロテスタントの争いだけを描くのではなく、当時の残酷な歴史を背景にして、若い二人の恋愛模様をハラハラしながら読ませてくれる。過去一面白い海外小説である。下巻につづく。 -
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大聖堂シリーズ、ここに完結! と表紙にあり、キングズブリッジシリーズの最新作である。このシリーズは最初の作品でゴシック様式で建造が始まったキングズブリッジの大聖堂あたりを舞台とするシリーズであり、続きものではない。『大聖堂、夜と朝と』だけは一作目の前夜譚のようだが、他は作を重ねるごとに時代が新しくなり、この作品でワーテルローの戦いが終わったあたり、つまり近代までたどりつく。
18世紀末のキングズブリッジでも紡績紡織の機械化が始まり、産業革命の荒波が押し寄せてくる。その状況での群像劇である。テキスタイル業界の話であるので、貧農の服装から裕福な御婦人のドレスまで描写が細かく、そのあたりも面白い。そして、虐げられる貧しい小作農の妻サルがたくましく重要な役回りを果たすところも、さすがこのシリーズだ。ページをめくる手がとまらないのも、さすがこのシリーズ。
一方、星四つにした理由も述べたい。
まず、性描写が多すぎ、退屈に感じた。「多すぎる」というより、退屈だから「多すぎる」と感じる。『針の眼』にあったような熱や官能はここにはない。また、昨今の多様性とかポリコレとかの流れなのか、無理やり入れたような同性愛カップルの存在が気になった。ことに女性同士のカップルのほうは、レズビアンである、以上の描写が希薄で、「いれるためにいれた」ようにしか思えない。男性同士のほうは年の差カップルなのだが、最初はかっこよかったのに結ばれたあたりからその魅力がだださがりしてしまうため、感情移入しにくい。もっといい男(女でもいいけど)にしろよ、と思ってしまう。
それでも、終盤のワーテルローの戦いが圧巻だ。自らの意思で参戦している兵がほとんどのナポレオン軍に対峙させられている、無理やり徴兵された兵がほとんどのイギリス連合軍。勝ち目はなさそうでも、戦意なんか全然なくても、参戦している以上負ければ死だ。フランスになったっていいじゃない、なんて言っている場合ではない。このあたりは興奮する。そして、戦場についてきたサルのここでの行動もまた、さすがである。戦闘に参加はしないが、手ぶらでは帰らない。
結局、期待度が高すぎたので四つ星、という感じなのかもしれない。ただ、校正はきちんとして欲しい。気になるところがかなりあった。 -
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キングズブリッジシリーズの完結にふさわしい、大団円という感じでしょうか。登場人物たちがそれぞれ、幸せそうで何よりです。戦争も終わり、労働者と資本家との争いもその妥協点が見えてきて、明るい未来が待っていそうな予感です。
とはいえ、実際の歴史では、これからもっと恐ろしい戦争が待っていますし、現在においても労働者と資本家の対立が解決したとは言えません。そう考えると、いったんのハッピーエンドですが、これで何もかもが解決したとはいえない、そういう余韻もありました。
今作「光の鎧」は、これまでのキングズブリッジシリーズとは違い、勧善懲悪というわけではないのも興味深いです。むしろ善人チームとされる人たちが、不倫的な行動をしていたり、逆に悪者チーム代表でもあるホームビームが、哀しい過去があったり、こころが揺れ動いたりしていました。
最後のワーテルローの戦いは、圧巻ですね。映画を見ているようでした。なんかうまいことまとめようとしている感が、すこし見え隠れしているように気がしましたが、キングズブリッジシリーズの最後としては、十分満足な締めだったかと思います。 -
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スペイン無敵艦隊との対決は、かなりハラハラさせられました。各陣営視点の描写あり、それがくるくると入れ替わりますので、その度にどちらが優勢なのかわからなくなります。
カトリックとプロテスタントとの対決が決着しましたが、果たしてこれがネッドの目指していたことだったのか、という心からスカッとできない感じが何とも言えません。
全ての決着がついて、一応はめでたしめでたしという感じです。しかしこれまでのキングズブリッジシリーズのような、勧善懲悪という感じはなく、なんというか全体的に、人間の愚かさとかそういうものが流れている感じがしました。
結局現在の世の中でも、この時代に問題となっている点は解決しきれていないわけです。ネッドやマージェリーが望んでいた世界には、結局ならなかったという意味では、ハッピーエンドとは言えないんですよね。 -
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イギリスの政治家・作家ジェフリー・アーチャーの長篇ミステリ作品『まだ見ぬ敵はそこにいる ロンドン警視庁麻薬取締独立捜査班(原題:Hidden in Plain Sight)』を読みました。
ジェフリー・アーチャーの作品は昨年1月に読んだ『レンブラントをとり返せ―ロンドン警視庁美術骨董捜査班―』以来です。
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全英1位! ジェフリー・アーチャー、圧巻の警察小説。
スコットランドヤードの若き刑事ウォーウィックがロンドンで暗躍する顔のない悪党紳士を追う!
・27作が全英ベストセラー第1位!
・97カ国33言語で出版!
・総発行部数2億7500万部突破!
「完全に夢中にさせられる!」(アンソニー・ホロヴィッツ)
一流弁護士の父親の反対を押し切ってロンドン警視庁の警察官になったウィリアム・ウォーウィックは、警視長直属の麻薬取締独立捜査班に異動になり、ある特命を受ける。
それは、ロンドンを支配する悪名高き麻薬王、通称“ヴァイパー"の正体をつかみ逮捕すること。
捜査に乗り出した矢先、捕まえた麻薬の売人はウィリアムに因縁のある人物だった――。
名ストーリーテラーによる傑作ミステリー。
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2020年(令和2年)に発表された作品……ウィリアム・ウォーウィック・シリーズの第2作です。
シリーズの第1作『レンブラントをとり返せ―ロンドン警視庁美術骨董捜査班―』で新人ながらスコットランドヤードの捜査巡査に抜擢され、ウィンストン・チャーチルの署名本の偽造、海底のスペイン銀貨の偽造をはじめとして何件もの美術品骨董品詐欺犯罪を解決しただけでなく、傑作しか扱わない美術品故買犯の大物中の大物マイルズ・フォークナーと対峙して追い詰めたうえに、婚約者の父親の無実まで勝ち取るという大活躍をみせたウィリアム・ウォーウィックは捜査巡査部長に昇任し、引き続き、ホークスビー警視長の下で働くことに……今回、ホークスビー警視長はロンドンを丸ごと麻薬漬けにしようとしている蝮“ヴァイパー"と呼ばれる麻薬王を逮捕し、組織を一網打尽にするという一大作戦を考えており、従前からある麻薬取締版とは別に、美術骨董捜査班を横滑りさせた形で独立捜査班を新設します、、、
ブルール・ラモント警視、ウィリアム・ウォーウィック捜査巡査部長、ジャッキー・ロイクロフト捜査巡査、そして、新人のポール・アダジャ捜査巡査をメンバとする新設捜査班は、“ヴァイパー"としかわかっていない麻薬王の正体と本拠地を突き止めようと早速活動を開始……ウィリアムはその過程であのマイルズ・フォークナーが麻薬に手を染めていることを知り、彼を刑務所送りにすべく、また、“ヴァイパー"逮捕を成功させるべく、知力と体力の限りを尽くして奮闘します。
事態は二転三転……知略、謀略、裏切り、殺人の要素が織り込まれ、潜入捜査、追跡、アクション、裁判 と、スリリングな展開が愉しめました、、、
警察小説でもあり、美術ミステリでもあり、リーガル・サスペンスとしても愉しめる作品でしたね……面白かったです! 続篇もぜひ読んでみたですね。