戸田裕之のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
成功が約束されたウィリアムの成長物語の二作目。
ゴールが分かっているだけに、ロンドン警視庁の様々な部署を経験し、組織内における人脈を作り昇進を重ねる必要があるというような、将来に向けての展開を勝手にイメージしていた。
よって、本作においても、主人公は、麻薬捜査班のリーダー(一作目にほんの少しだけ登場した記憶が…)のもとに異動し、新しい仲間と共に悪に立ち向かう設定かなと思いきや、見事に違っていたのでいい意味で裏切られた。
美術担当班が、そのまま麻薬捜査特別班にスライド。畑違いもいいとろ、そんなのありか?と思ったものの、この設定によってメインキャクター達のコア部分がしっかりと確立されいるので、読む側としては安心して、最初から物語に没入できるというもの。
稀代のストーリー・テラーのJ・アーチャーの真骨頂、展開が二転三転してても大丈夫。読者にとっても優しい。
騙し合い、裏切り、殺人、隠密捜査、そしてお得意の法廷劇、前作に続く美術品と、とにかくエンターテインメント要素が今回も満載。
捜査班には期待できそうなニューフェイスも増え、班内における微妙な上下関係や、家族の絆なども読み応えあり、いずれも今後のシリーズの伏線を予感させる。
長さを感じさせない一気読み必至の一冊。
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Posted by ブクログ
プルーフ版を読ませていただく機会を得ました。ロンドンが舞台になる他の作品と違ってカラッとした明るい印象。腹黒い詐欺師や麻薬王が登場し、どす黒い雰囲気になりそうなのに妙にコミカルさが漂うのは、アーチャー氏の筆致によるところが大きいのでしょう。主人公家族の温かさも伝わり、ミステリを読んでいるとは思えない微笑ましさも感じられました。非常に生々しい扱いをされますが、たくさんの美術品が出てくるところも楽しめました。前作があって続編のようですが、こちらから読んでもさほど支障はなかったかな。でも前作読んでたらもっと楽しめたかも。スリリングな悪党捜査と重厚な法廷劇が登場し、一冊で二倍楽しめる美味しさがあるのもおすすめどころ。ラストに向かうにつれてそんなことある?と思う展開が訪れます。こうなると先を読まずにいられなくなりますよ!
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Posted by ブクログ
発売前、構成前のプルーフ本を、例によって先読みさせて頂いた。
ぼくはジェフリー・アーチャーの模範的な読者ではないし、シリーズ作品をいきなりこの第二作から読み始めたことによる当惑を感じないではなかったが、キャラクター描写にとても時間をかけている作者なので、それぞれの個性は第二作からでも十二分に味わえる。否、むしろ第一作も、さらに第三作、第四作と続く本シリーズをすべて読みたいという誘惑の方が激しいかもしれない。
さて、本作のメイン・ストーリーは、主人公ウィリアム・ウォーウィックが新たに配属された麻薬取締独立捜査班が、麻薬王ヴァイパー率いる組織を壊滅、頭目を逮捕という目的に向かって捜査を進めるものなのだが、同時並行的に前作でのライバルである美術品窃盗詐欺師マイルズ・フォークナーの逮捕と裁判が同時進行形で行われる。しかも後者はおそらくシリーズのサブ主役級の宿敵扱いで、別格級の悪玉みたいに描かれている。
マイルズの裁判そのものが法廷ミステリーとしての面白さを十分に見せてくれるのだが、そちらの主役はウィリアムの父と姉である。また、ウィリアムの婚約者ベスと、マイルズの離婚係争中の妻クリスティーナが親友、という複雑な関係性を持ているところが可笑しい。つまり、ウィリアムの知人や敵がクロスして関係した家族物語、としても楽しく読めてしまうところがこのベテラン作家の抜け目ないところなのである。
同時進行形の二人の強敵を相手取りながらも、前作を引き継ぐ(らしい)美術品の争奪戦が、未だ新たな局面を見せて丁々発止のコンゲーム的面白さを見せてくれるあたり、サービス精神と仕掛けに満ちた、まるでおもちゃ箱みたいなのである。
残酷で暴力的な犯罪と、善悪の闘いを描きながら、どちらのサイドにも癖のある個性的キャラを配置して、なおかつどこか楽しく笑えてしまう明るい表現には一度ならず苦笑を禁じ得ない。
主人公の未来を見据えた成長ストーリーを軸に、関係する家族それぞれの人生模様がシリーズらしさを匂わせつつ、最後には、とっておきのハイテンポでアクション満載のクライマックスに引きずり込んでゆくエネルギー。猫の目のように視点を変えるジェットコースターなみのスピード感を含めて、流石、手練の描写力というしかない。
巨匠による描写技術の粋を尽くしたエンターテインメント&スリラーの醍醐味を、是非とも手放しで味わって頂きたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ16世紀後半、約40年にわたって繰り広げられた、フランスのカトリックとプロテスタントの内戦=ユグノー戦争が小説の舞台。史実をもとに、プロテスタントのイングランド女王エリザベス1世、カトリックのスコットランド女王メアリー、カトリックのスペイン王フェリペ2世等、実在の人物を配置しながら、サン・バルテルミの虐殺、ナントの勅令、スペインの無敵艦隊の敗退等も扱っている。
愛と救いをもたらすべきはずの宗教が、憎悪をかきたて殺戮を生む宗教となる。感情の爆発が、火刑をはじめとした拷問となり、そこに殉教者が生まれる。宗教を背負って実行される殺戮は、無神教の国に生まれ生きてきた人間には、頭で理解できない以上に、実感しにくいが、歴史は宗教戦争の歴史であり、今も世界は宗教を背景にする争いが絶えない。
プロテスタントとカソリックの家の間で仲を引き裂かれる二人、暗躍するスパイ・密告者とそれを阻止しようとする人々の抗争、宗教戦争を背景に命の奪い合いの闘いになる二人の女王異母姉妹、とんでもない悪役も配置され、登場人物を不条理に襲う死も描かれる。上中下1600ページを超える長編も、読み物としての魅力は満載で、長さを感じさせないで、読み切ることができる。世界で2000万部を超えるとされるベストセラーとなった12世紀のイングランド舞台の「大聖堂」「大聖堂-果てしなき世界」より、本書の方がおもしろかった。新型コロナウィルスの行動自粛の中で、お薦めの長編。