凪良さんて本当に凄いなあ…
もうなんかこれが全ての感想なんですが、凄いわ。
いや何が凄いのか説明しろよって話なんですが凄いんですよ。
ボキャブラリーの豊富さもなんですが、平良のキャラクター設定が特に秀逸。
今回もあとがきに「やっぱりきもい攻めが好きだー!」と書かれていましたが、それだけでこんなに深いキャラ造形が出来るものなんだろうかと。
己を卑下するあまりにせっかく恋人になれた清居に対し、斜め上を行く思考回路で『ニュースタイルの関白宣言』を連発する平良。
この発想が凡人には思い付かないと思うんですよね、単なるキモヲタで終わってしまうと思う。
今回は写真部のOBである現在はプロのカメラマンの野口さんに見込まれてアシスタントのバイトを始める平良なのですが、野口さんが平良に放った言葉にハッとさせられました。
「自信がありすぎるのと、自信がなさすぎるのは、肥大した自意識の表れっていう意味で同じ紙の裏表なんだよ。なにかのきっかけで簡単にひるがえる」
私自身も相当に自己肯定感が低いネガティブ人間なのですがもしかするとそういう面も持っているのだろうか?と考えさせられました。
凪良さんは普段からどういう人間観察の仕方をしているのかお尋ねしてみたい。心理学者なんですか?
さて、今回は前作よりラブコメ度も増して、事件もてんこ盛り。
清居は舞台の仕事をもっとしたいけれど中々お目当ての監督のお眼鏡に叶わず、しかしテレビの仕事で人気急上昇中の若手俳優になっています。
前回の後半で始まった同棲生活は順調に継続中…でしたが、現在住んでいる一軒家の本当の持ち主である、菜穂が夫と別居する為に子供を連れて戻ってくるという事で、同棲解消の危機。
清居と恋人になれて同棲まで出来て、幸せすぎる自分に対して遂に神の修正が入った、ありがとう、さようなら、とネガティヴに繰り返す平良でしたが、清居は当たり前の如く同棲を続けるつもりなので新居を探す事に。
平良は行き過ぎかも知れませんが、恋のパワーって凄いですよね。
吃音症のせいで人生諦めていて就活もうまく行く筈ないと途方に暮れ、バイトもした事の無い平良が自分も2人の生活の為にお金を稼ぎたいと一念発起して人生初のバイト面接へ。
夜勤の工場でひたすら栗を乗せる作業。でも平良はウキウキ。
この栗の一つ一つが清居との生活の為と思うと笑いまで込み上げてくる。
羨ましい!私なんかバイト中ずっと目が死んでるのに!今日の晩御飯何作ろうとか、変な物語を作って現実逃避ばかりしているのに!(仕事をしろ)
そこで1人の男性と知り合います。共演してから清居が唯一腹を割って話せるまでの友達になった名女優の安奈ちゃんの追っかけをしている30代の設楽です。
仕事をクビになった時に見た映画の主演が安奈ちゃんであり、それ以来彼の全ては安奈ちゃんに。
出待ちは勿論のこと、彼女を追っかける為に正規の仕事には就かずに工場の夜勤アルバイトを続けている。
正に人生の全てを彼女にかけている訳です。
平良も清居に全てを捧げているので2人は意気投合するのですが…。
今回はノーマルカップルだとかゲイカップルだとか超越している愛のパワーの物語でした。
平良のかなりかっこいい面が見られます。普段は俺様の清居が平良の事だけはどうにも上手く扱えない。俺様がニュースタイル関白には勝てない。それ程に好きになってしまっている。
安奈ちゃんも普通の女の子として恋をしているだけなのに、有名税とかいう面倒なもののせいで世間が許してくれない。
苦しいのが恋。もどかしいのが恋。やっぱり幸せなのが恋。
ちくしょー!恋って良いよなあ!!(突然どうした)
と思わせてくれる2作目でした!
やっぱり清居目線のお話が好きです。きもいと文句を言いつつも立派な惚気になっちゃう辺りが可愛い。
清居がプロのカメラマンを目指せと背中を押してくれた事により、平良の人生はこれからどうなって行くのか楽しみでもあります。
どうなるにせよ、いつまでも幸せで居て欲しい。
後書きで、本来は続編を書くのが苦手だと凪良さんは仰っていましたが、なんで?!と思う程にまだまだ読みたくなる続編でした。
『星を編む』も本当は悩まれたのかな?
前にも書きましたが先に映像化で見ているのはここまで。(女子に囲まれながらBL鑑賞という謎の鍋パの話です)この先は全く知らない2人のお話なので今から楽しみです。
いつもの余談ですが、タイムリーな事がありました。
長くなるので詳しくは割愛しますが、大勢の前で発表していた男性が吃音症でした。必死に胸を押さえて頑張っていたのですが、周りでバカにしたように真似をして笑っている人達がいました。
平良もこんな風に笑われて、悲しい思いをしていたんだなと痛感してしまったのですが、たまたま寝不足で疲れていた私は機嫌が悪く、なんと「うっせえなあ!」と周りに言ってしまい、初対面の人ばかりだったのでドン引きされて距離を置かれました。
普段はヘタレなのでこんな事出来ないんですが、私にも清居が憑依したのか…
ついでに美しさも憑依しておくれよ。
とにかく、吃音症の大変さを身をもって体感しました。
ちなみに、その彼とは何もありませんでした。(あってたまるか)