菊澤研宗のレビュー一覧

  • 失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇

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    ネタバレ

    失敗から学ぶことは多々あり、それが戦時のことであれば、生死をかけた戦略や行動であるために、更に学ぶべきことは多いと考える。ただし、完ぺきな人間などいるはずもなく、限られた情報の中で、限定合理的に行動した結果であることを念頭に置く必要がある。

    ・ウェーバーの価値自由原理である、ヒト/モノ/カネを効率的に利用できているかという効率性の問題と、価値の問題は分けて考えるべきというのはなるほど。そして、効率的なものが常に正当であるということにはならないというのも納得である。

    ・戦時において、成功した体験は、なかなか否定できない。実績が一度伴うと、それに寄りかかってしまう。必要な時には自己否定ができることが良いリーダーであり、その場合でもスピード感を持って判断できるようになるべきである。この判断のためには、大局観を持ち、真実に目を向け、新しいことを生み出そうとする思考が重要である。

    ・部下たちの面倒をこまめに見ることが、指揮官への信頼と親近感を増幅させる。

    ・これらを成すのは、体力と健康である。

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    2020年01月01日
  • 失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇

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    戦時の話しをしているはずなのに、なんかすごくしっくりくる。いまも同じような状況に陥っているからなのかな。

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    2019年10月21日
  • 成功する日本企業には「共通の本質」がある 「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学

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    企業が持つ2つの能力を其々オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)とダイナミック・ケイパビリティ(変化対応可能な自己変革能力)と分け、世界的に成功した富士フィルム、ソニー、YKK等を例にこれら企業がどの様にダイナミック・ケイパビリティを発揮し、ライバル企業であるコダック、任天堂、中国メーカーに対して市場から撤退させたり、シェアを逆転したりしたかが解説された本です。私も小学生の時は任天堂のファミリーコンピューターで遊んでいましたが、その後、ソニーのプレイステーションに流れた一人なのですが、当時ゲーム業界ではこんなに激しいやり取りがあったのかと感心致しました。

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    2019年06月09日
  • 戦略の不条理~なぜ合理的な行動は失敗するのか~

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    旧日本軍の戦略について、次元限定ではありつつも、理詰めで肯定する人ってなかなかいなかったよなぁ。いや、日本軍そのものを称揚しているわけでもないんだけど。戦略というものを物理的世界、心理的世界、知性的世界にわけてとらえる。その流れでいくと米軍は圧倒的に物理的世界、日本軍は極端な心理的世界に依拠した戦略をたてていた、ということになるのだろう。生き残っていくためにはどれかひとつに絞るのではなく、三つの次元を統合したキュービック・グランド・ストラテジー(CGS) が必要、と説く。

    孫子や戦略論をあらわしたクラウゼヴィッツ、歴史上の武将であるハンニバルやナポレオンなど、さまざまな事例を用いてわかりやすく論じてくれるのが楽しい。ハンニバルもナポレオンもCGSに基づいた戦略を用いていたのに、最後は負けた。なぜなら、同じ戦略に固定していたからだ。だから読まれたり、マネされたりすることによって、最終的には排除された。真にCGSを生かすためには、常に柔軟に変化していくことも重要、って。

    こうした戦略を仕事に生かせるようにするのが本書の主旨。なかなか刺激的な本だった。

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    2019年06月09日
  • 成功する日本企業には「共通の本質」がある 「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学

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    リソース・ベースト・ビューをよりダイナミックな形に展開したのが「ダイナミック・ケイパビリティ」論なのだけど、結構、難解な議論が多い気がしている。

    そういうなかで、日本企業への適用という観点を踏まえた入門書がこうしてまとまったのは嬉しい。

    「ダイナミック・ケイパビリティ」論は、経済学における組織の経済学(ウィリアムソンなど)の取引コスト論を乗り越える形の理論となっていて、進化論などの考えも踏まえたものとなっている。

    その基本的な主張は、シュンペーターやドラッカーが言っていたことと同じなのかな?ドラッカーとかは、定量的な議論、ロジカルな理論はあまりなく、現実の深い洞察によってある種のアートとして、経営論を語っていた訳だが、その水準に半世紀以上のラグを持って、理論が追いついたということか?

    でも、学者が追いつく前に、現実に企業は色々なことを考えて、様々な選択をしてきた訳で、そうした選択の成功例を後付けで解釈しているだけではないかという疑問もあるかな〜。

    それでも、しっかりとした理論ベースで、ドラッカーの主張が根拠づけされたのは嬉しいことではある。

    さて、本書の面白さは、理論紹介の部分より、ダイナミック・ケイパビリティ論のフレームを使って日本企業を分析しているところ。

    ダイナミック・ケイパビリティは、変化への適応能力、イノベーション能力と密接に関わるところで、通常、それがないというのが、一般に言われる日本企業の弱みである。

    しかしながら、著者によれば、日本企業はもともとダイナミック・ケイパビリティを持っているということ。

    ただ、それが中途半端にアメリカ系の経営メソッドやガバナンスの考えを入れることで、日本企業の元々の良さが発揮できなくなっているとのこと。

    そして、日本企業の特徴が、悪い方向で循環に落ちることで、近年の不祥事が起きていて、それが日本企業のコアとも言える工場の品質管理の劣化にまで至っているという認識。

    という訳なので、著者の主張としては、日本企業の元々の良さが発揮できるようなガバナンスを作っていくべき、ということになる。

    理論的な納得感はあり、元気のでるストーリーであると思う。

    ただ、著者の元々の専門がコーポレート・ガバンアンス論のためか、そういう観点での議論が多く、個人的には、もう少し具体的な戦略論、人・組織論への展開が欲しい気はした。そこは今後の発展に期待というところかな?

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    2019年04月09日
  • 失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇

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    2012年7月に書かれた本で、1984年に書かれた「失敗の本質」に対して多面的な検証とさらなる考察が実施された本、「失敗の本質」はずっと読みたかった本なのですが、まだ読めておらず、先に新しい版を読むことになりました。

    相応の歴史知識や、太平洋戦争時代の人物像に関する情報がもともとないと、やはり難解であるとは思うが、それなりに長い間勉強してきてから読んだので、僕にはさらに造詣が深まったと思う。

    『戦場のリーダーシップ』という観点では、僕もこれまでいくつか勉強してきてましたが、「キスカ撤退の木村」や「組織人になれなかった天才参謀 石原莞爾」、「独断専行はなぜ止められなかったのか 辻 政信」など、これまで知らなかったことも新たに知ることができました。


    後半には、大和特攻の伊藤長官の
    「我々(大和)は死に場所を与えられたのだ」の名言による戦艦大和特攻作戦における意思決定プロセスに関しても記載あり、大変興味深い。 山本七平の『空気論』という部分も大変勉強になった。
    (山本七平:『「空気」の研究』1977年)

    → 伊藤長官の論理的思考は空気で説明できない
    → 「空気」の本質を科学的に分析する
      2009年度ノーベル経済学賞を受賞した、
    オリバー・E・ウィリアムソンの取引コスト理論に従って分析

    → いかにして、空気に水を差すか
    カントの人間学的道徳哲学を引用して「自律的な意思を実践できる人間:啓蒙された人」と

    以下、引用 P277
    ====================
    日本軍は、設立当初はメンバー同士が自由闊達に議論する組織であった。 ところが時間の経過とともに制度が完備され、特に人事制度が明確になると、制度上、どうすれば昇進できるのかが明確になった。 こうした状況で、昇進制度に忠実な他律的エリートたちが育成され、実権を握っていった。 (中略)

    こういう他律的エリートが統率する組織では、メンバーは容易に取引コストを計算し、合理的計算のもとに全員一致で「空気」を読み取ることになる。 そして、合理的に非効率で不正な結論に導かれることなる。

    この意味で、海軍は、不条理に陥ったエリート集団の典型であった。 取引コストにとらわれた人々の、他律的な意思決定に対し、一石を投じることのできる人物、それが自律的な意思を実践する「啓蒙された人」である。このようなリーダーが帝国海軍に数人いれば、組織の不条理から救われたはずである。
    ====================

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    2019年03月25日
  • 戦略の不条理~なぜ合理的な行動は失敗するのか~

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    人の行動を促すためには、物理的、心理的、知性的の三要素を機軸として考える必要がある。たった一つのことを突き詰める戦略をとっても、他の二要素のためにうまくいかない。これを戦略の不条理と呼ぶ。確かに、激安をうたい文句にする量販店は、あっという間に利益を生み出せなくなるし、高機能を主張する家電もあっという間に月並みなものになる。ひとつではだめで、三つ一度に考えろ。というのが本書の趣旨。なるほど、たしかにこのフレームワークで考えれば、なぜiPodが売れるのか良くわかる。

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    2018年10月23日
  • 改革の不条理 日本の組織ではなぜ改悪がはびこるのか

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    文庫版のあとがきは、哲学的な展開を加えているので、より「経営学」的になっている。この「経営学」的なより詳細な論説を期待する。

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    2018年05月27日
  • 失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇

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    国家的視野による戦略、現場感覚のあるリーダー、空気によらない責任者の明確な判断、いずれも全く実現されていない。無意味な戦争に突入する事がないようにするために何をすればいいのか、悩ましい。

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    2017年01月16日
  • 失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇

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    日本が大東亜戦争で敗戦したことは知っていても,なぜ負けたのかということまでは,なかなか歴史の授業で学ぶことはないと思います。
    敗戦の原因はどこにあるのか,将来にいかすべき教訓は何かということを研究したのが本書です。

    文章が読みにくいということはありませんが,出来事や人物に馴染みがないので,やや読み進めるのに苦労しました。

    私は自分の仕事や生活にどう活かしていくかということを考えながら読みました。

    本書を読んでの私なりに得た教訓ですが,
    ・成功体験ばかりでもそのことだけに囚われて,視野が狭くなってしまい,そのことが大きな失敗を招く。それゆえ,失敗も貴重な経験。
    ・帰納的思考を大切に。経験から知識を得,それを実践しながら知識を修正していく。トライアル&エラーが重要。

    失敗を取り上げることは,ともすれば当事者を非難するように受け止められ,取り上げること自体をやめさせようとすることもあるようです。しかし,責任追及という視点ではなく,何が起こったのか,その何が良くなかったのか,今後どうすべきかということは,たとえ失敗に目を向けることに気が進まないとしても,臭い物に蓋をするという姿勢ではいけないと思いました。

    この本を読んでいる最中に,身近にそのような話を聞き,歴史を学ぶ姿勢は重要だと改めて認識した次第です。

    本著の先駆けとなる「失敗の本質」も読んでみる予定です。

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    2015年11月03日
  • 組織の不条理―――なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

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    ガダルカナル戦、インパール作戦と言えば、「失敗の本質」以来、様々な戦史において徹底的に批判されてきた。曰く、敵戦力の軽視、戦力の逐次投入、補給を無視した作戦計画・・・。現在の視点から戦史を語る場合には、敵味方双方の完全なる情報を得ているので、「合理的に」ああすれば良かった、こうすれば良かったと自由に批判を加えることができる。しかしながら、敵の情報が入らない戦時下において、しかも味方についても客観的な評価が難しい状況で、そんな完全合理性を踏まえた判断ができたのか。筆者は「限定合理性」をキーワードに、これらの戦史を読み解いていく。

    筆者はガダルカナル戦には「取引コスト」、インパール作戦には「エージェンシー理論」という制度派経済学の理論を持ち出している。簡単に言えば、ガダルカナルにおいて、これまで日本陸軍の必殺技とされてきた白兵戦重視を捨てる訳にはいかなかったし、インパール戦では役割分担の細分化が進んだ官僚組織において、上位に声の大きい者がいると、それを牽制すべき者たちが合理的に沈黙してしまう、ということだろうか。

    これを現代企業社会に当てはめると、技術革新によりこれまでの商品や販売方法が通用しなくなっているのに、ガダルカナルのような悲惨な戦いを強いられる、とか、インパール作戦の牟田口のように名誉欲に駆られた役員・部長が主唱する無謀なプロジェクト巻き込まれる、ということだ。本書では戦史に続いて、今から15~20年ほど遡り、バブル期の放漫経営から来ているような破綻事例が多く採り上げられており、「なぜ企業は日本陸軍の轍を踏み続けるのか」という副題もそれなり首肯できる。

    ここまでは、良くわかる。

    人は限定合理的だから失敗や非効率は避けられないが、その解決策は完全合理性の追求ではなく、組織の中に批判的合理構造を備えることだと筆者は言う。そして巻末に至り、太平洋戦争の導火線になった北進・南進論をユートピアと批判した上で、「漸次改善」こそが目指す道と説く。この辺で、若干の論理的破綻が見え始める。

    牟田口の作戦に異を唱える将校は多かったし、ガダルカナルで必要だったのは用兵思想の抜本的な転換と、制空権の確保だった。筆者は強いリーダーシップを解決策とすることに懐疑的だが、制空権を取れない中で連合艦隊が戦艦によるガダルカナル空港砲撃というイノベーティブな作戦を立てた際、実働の栗田艦長らは艦隊保存の立場から「合理的に」反対し、山本長官らが強引に押し切ったのではなかったか。ある組織において批判がタブー視される傾向があるとすれば、それが徒に意思決定を長引かせ、また批判の横行が組織風土に悪影響を与えるからでもある。

    そもそも、佐藤優がこの本を薦めていたのは組織の不条理さを教えるためだった。不条理さの由来は良く分かった。「完全に合理的な」解決策まで求めるのは酷というものか。

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    2015年01月15日
  • 「命令違反」が組織を伸ばす

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    「組織の不条理」と類似したテーマだが、インパール&ガダルカナルだけでなく、ペリリュー、ノモハン、ミッドウェー、レイテへとケースが増えている。

    また、プロスペクト理論を用いている点が新しく、インパールでプロスペクト理論を適用している点が新しかった。

    今回のケースを自分なりに分類すると、以下のとおり。
     良いペリリュー中川→現場が本部より「現実を理解」していたことが勝因
     悪いノモハン辻→既存の「組織文化を追求」したことが敗因
     良いミッドウェー山口→現場が上司より「専門性」を有していたことが勝因
     悪いレイテ栗田→「判断ミス・勘違い」が敗因

    したがって、命令違反が許容されるケースというのは、「状況や環境が変化し、既存の戦略、既存のケイパビリティ、既存の組織風土に基づく判断基準が通用しなくなった」だと言えのではないか。

    逆に環境が変化しているのに、旧来の価値観で命令違反を強行した辻のノモハンは状況が悪化したし、判断ミスにより命令違反をしてしまったレイテ栗田も、レイテの戦況を悪化させた。
    (本書を読んだ結果そう感じただけで、史実ではどうなのかは分からない)

    プロスペクト理論の「リファレンスポイントを移動させる」という点も勉強になった。

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    2014年03月02日
  • 戦略の不条理~なぜ合理的な行動は失敗するのか~

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    本書では戦略論を企業経営に結び付けている。

    内容は非常に参考になったし、とてもおもしろかった。
    戦略論の変遷を分かりやすく説明し、それぞれの戦略論の欠陥を指摘し、過去の実力者たちが失墜した原因を解説しているのだが、その解説が非常に興味深かった。それを企業経営の現場に絶妙にマッチさせており、2度おいしい感じ。

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    2012年06月18日
  • 「命令違反」が組織を伸ばす

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    ネタバレ

    確かに例が長めだけれど、内容的にも分析の切り口が面白いし、とても納得感のある分析結果だった。確かにおすすめ。軽めなのでさくっと読める。
    上海出張でたまたま出会ったIさんから薦められた本で、アジャイル開発におけるチームビルディングの考え方の論拠になる、という形での推薦だったけど、それもさることながら、システムズアプローチのシステム思考の哲学や場作りの論旨などに近いものを感じて、ちょっとしたアハ体験をした。
    自分の理解では、全体として題のとおり組織論が論旨にあり、効率と利益の2軸について人間は完全合理性ではなく、限定合理性を持つ不完全なものであるという前提をもって「行動経済学」と「法の経済」の論理を用いて分析する構成になっている。ただ分析の結果、「ではどうやって命令違反をするのか?」の論述が弱いように感じた。なので星4つ。
    たとえば、組織として効率的ではない命令に対して効率性のある判断をした部下は、組織倫理的な正当性(つまり命令に従うこと)に従事するのではなく、命令違反をして効率性のある判断に従って行動することが必要という点と、そのためにそのような行動を起こすためのマネジメントや人間関係の構築のあり方は語られている(このあたりの論述にもシステム思考との一致性が見られる)が、どうやって「効率性」のある判断をするか、またそれが組織的に効率的かどうかを判断するのか、といった点はあまり深く触れられていないと感じた。
    おそらく、システム思考を引用すればメタ思考によって視点を引き上げることで組織として効率性とはどのようなものかを考え、最適解を模索するということが必要であり、さらにそれが効率的かどうかを判断するためにデザイン思考的にプロトタイピカルなサイクルを実践することが必要だと考えられる。(ざっくり)
    本書では批判的議論と暫定的組織の節でプロトなサイクルの必要性には軽く触れられている。

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    2012年05月12日
  • 戦略の不条理~なぜ合理的な行動は失敗するのか~

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    現・慶應義塾大学商学部教授の菊澤研宗による戦略論。

    【構成】
    序章
    第1章 旧陸軍将校・山本七平と孫子の思想
     (1)旧日本軍は 戦略的に誤っていたのか
     (2)『孫子』の本質
    第2章 「戦略の不条理」発生のメカニズム
     (1)戦略研究とは
     (2)経営の世界から見える世界の変化
     (3)ポパーの多元的世界観
     (4)多元的世界と「戦略の不条理」
    第3章 クラウゼヴィッツと物理的世界の戦略論
     (1)クラウゼヴィッツの生涯
     (2)クラウゼヴィッツの戦略思想
     (3)物理的世界の経営戦略と「戦略の不条理」
    第4章 リデル・ハートと心理的世界の戦略論
     (1)リデル・ハートの世界観と人間観
     (2)リデル・ハートの間接アプローチ戦略
     (3)心理的世界の経営戦略と「戦略の不条理」
    第5章 ロンメルと知性的世界の戦略論
     (1)ロンメルの人間像
     (2)アフリカ戦線でのロンメルの戦略
     (3)ロンメルの悲劇的最期
     (4)知性的世界の経営戦略と「戦略の不条理」
    第6章 「戦略の不条理」回避のメカニズム
     (1)キュービック・グランド・ストラテジー
     (2)ハンニバルのキュービック・グランド・ストラテジー
     (3)ナポレオンのキュービック・グランド・ストラテジー
     (4)『孫子』のキュービック・グランド・ストラテジー
    第7章 新しい戦略の哲学-「戦略のキュビズム」
     (1)多元的世界観と「戦略の不条理」
     (2)キュービック・グランド・ストラテジーの原理1-多元的アプローチ
     (3)キュービック・グランド・ストラテジーの原理2-批判的アプローチ
     (4)クリティカル・マネージング・フロー

     本書は、戦略の本質を「生存するためのアート(技法)」と捉え、そのためのアプローチを紹介する。紹介されるのは、孫子、クラウゼヴィッツ、リデル・ハート、ロンメル、ハンニバルなど著名な軍人達である。

     本書では、アプローチの対象となる世界を3つに区分し論じていく。まず、基層となる(1)物理的世界(物体・肉体)、その上に(2)心理的世界(理解・感情・心情)、(3)知性的世界(観念・理論・知識)があると規定する。そしてこの三者に対する総合的な戦略をキュービック・グランド・ストラテジー(CGS)であるとする。

     物理的世界の戦略論の好例が、クラウゼヴィッツである。一般の軍事戦略(というよりは戦術に近いものだと思うが)は、敵部隊の脅威を実力で排除することを第一義的に考えられているが、これはまさしくクラウゼヴィッツが『戦争論』で説く敵部隊の撃滅の方策である。
     しかし、これだけでは不十分である。すなわち物理的世界の合理性だけに基づいて、戦争(企業の経営)を行ったとしても、その外部の敵国の国民であったり、顧客が必ずしも物理的合理性を有する者に軍配をあげるとは限らないからである。

     そこで心理的世界の戦略が必要となってくるのである。つまり、リデル・ハートの「間接アプローチ戦略」に代表されるように、物理的直接攻撃だけではなく、相手に対する心理戦・精神的攻撃を総合して、自陣に有利となる環境を整えることが心理的世界におけるアプローチである。

     これをさらに進めたのが知性的世界であり、より具体的には戦略の実行に伴う「取引コスト」の存在を指摘する。取引コストとは、対象となる相手が行動を選択する際のリスク計算である。そのリスク計算には自陣から相手に与えられるイメージが大きく関わっており、この際に有利なイメージを植え付けることができれば、相手は自陣の意図した行動を取る確率が高くなる。

     このような、物理、心理、知性の世界にはそれぞれの合理性があるが、一者の合理性を究極的に追求すれば、他の二者における合理性が欠けてしまう可能性が高い。それゆえに、三者を総合した大戦略が必要である。単なる軍事戦略にとどまらず、ポーターの競争戦略、ブルーオーシャン戦略、行動経済学理論など経営戦略理論を紹介しながら、それらの合理性はどこが「欠けている」のかを指摘している。

     引き合いに出される軍人達の戦略(戦術)への評価に、やや偏りを感じるが、楽しく読めた一冊である。

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    2012年02月18日
  • 「命令違反」が組織を伸ばす

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    命令違反という若干タブー的な題材を臆せず用いた本。
    良い命令違反、悪い命令違反というものを戦争での事象を用いて説明しており、戦争話も興味があった自分には結構楽しめました。特に「どう考えても非効率的なこと」でも実は人間の心理を元に考えれば客観的にも合理的だと判断できる理由の記述には大変納得。人の行動心理を考えるにあたって巡りあえて良い本でした。

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    2011年11月06日
  • 「命令違反」が組織を伸ばす

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    日本軍はなぜ過ちを繰り返したのか、本当に非合理的であったのかを分析。著者によると実は当人達は合理的に行動しているつもりだったそうです。一つの歴史の見方だなぁと感心しました。

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    2011年09月18日
  • 戦略の不条理~なぜ合理的な行動は失敗するのか~

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    現代の戦略論を歴史的観点から考察した必読の書。
    なぜ合理的な行動は失敗するのか。世界は少なくとも三つの存在論的に区別される部分社会から成り立っている。物理的世界、心理的世界、知性的世界である。この三つの世界に適用できない場合、組織は合理的に淘汰される事になるという。

    まとめて書いてしまうと何のこっちゃという感じであるが、本書は孫子、戦争論、戦略論やロンメル、ハンニバル、ナポレオンの戦い方を考察して分かりやすく分析している。
    最後に新しい戦略の哲学、キュービック・グランド・ストラテジーの基本原理について詳細に説明されている。

    本書を読んで、三つの世界の相互作用を知る事と人間は限定合理的であるという事に気付く事は有益である。値段以上の価値をもたらしてくれる事であろう。

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    2011年09月25日
  • 戦略の不条理~なぜ合理的な行動は失敗するのか~

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    著者は、防衛大学校の教授など、数々の大学で教授職に就いているいわば、学者ですが、それだけ緻密に過去の戦略論を検証されています。

    その検証の結果が本書で提唱されているキュービック・グランド・ストラテジーなわけです。

    詳細は本書を読んでいただくとして、戦略とは何ぞやを比較的丁寧に解説されていると思いますので、読んだことのないビジネスパーソンにぜひおススメしたい本です。

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    2011年06月29日
  • 戦略の不条理~なぜ合理的な行動は失敗するのか~

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    [ 内容 ]
    21世紀に、企業が生き残るために必要とされる戦略とはなにか。
    それは、「物理的世界」「心理的世界」「知性的世界」の3つの世界に立体的にアプローチする「キュービック・グランド・ストラテジー」である。
    本書は、孫子、クラウゼヴィッツ、リデル・ハート、ロンメルの軍事戦略を手がかりとして、キュービック・グランド・ストラテジーの本質を解き明かす。

    [ 目次 ]
    第1章 旧陸軍将校・山本七平と孫子の思想
    第2章 「戦略の不条理」発生のメカニズム
    第3章 クラウゼヴィッツと物理的世界の戦略論
    第4章 リデル・ハートと心理的世界の戦略論
    第5章 ロンメルと知性的世界の戦略論
    第6章 「戦略の不条理」回避のメカニズム
    第7章 新しい戦略の哲学―「戦略のキュビズム」

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

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    2011年04月09日