菊澤研宗のレビュー一覧
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「失敗の本質」の続編となる本書は、前作よりも読みやすい内容で、色々と頷きながら読み終えました。
イスラエルは、組織の戦略的失敗から学習を繰り返したそうです。
過去の成功事例にとらわれたり、他所の成功事例を真似るだけでは能がないと思っています。
やはり失敗から学ばないと。
恐怖心の存在を認めた上で、それをコントロールして任務を遂行するアメリカ兵。一方、恐怖心自体の存在を認めず、否認や抑圧によって受動的に対処した日本兵。
このあたりは山本七平氏の「日本はなぜ敗れるのか-敗因21ヵ条」とも共通する分析かと思います。
実践から学んで行動を修正することが出来なかった日本軍の姿も浮き彫りになっており、組織論として学ぶべき点が多い一冊でした。 -
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戦略の比較論、戦略論の有機的結合とその解説です
本書は3つの構成からなる
1 孫子の本質
2 戦略の全体観 ポバーの多元的世界観(物理的、心理的、知性的)
物理的アプローチ クラウゼヴィッツの物理的世界 ①政治、②暴力、③偶然性 特に暴力★
心理的アプローチ リデル・ハート メタ戦略グランド・ストラテジー 下部戦略 (①直接アプローチ戦略、②間接アプローチ戦略)
知性的アプローチ ロンメル
3 キュービック・グランド・ストラテジー (グランドステージ+物理的世界、心理的世界、知性的世界)
ケーススタティ ①ハンニバル、②ナポレオン、③孫子
⇒ 新戦略 キュビズム ①多元的世界観と戦略の不条理、②多元的アプローチ、③批判的アプローチ、④マネージングフロー
気になったのは以下です。
■孫子
最高原理 戦わずして勝つ 戦争をしないで相手の意図をくじき、目的を達成する
直接戦闘 彼を知り、己を知らば百戦あやうからず、善く戦う者は、人を致して人に致されず
⇒ 敵の状況に臨機応変に変化して戦う、彼我の兵力に応じて戦法を変える、もしくは、戦わない
リーダを待つ危険 ①勇気だけで戦うと殺される、②勇気ないリーダは捕虜になる、③短期なリーダは計略にかかる、④清廉潔白ナリーダーはわなに陥る、⑤兵士に優しいリーダは兵士の世話で苦労する
■戦略の全体観
カール・ライムント・ポパーの多元的世界観
物理的世界、心理的世界、知性的世界の相互作用からなる
その上位に、キュービックグランド・ストラテジー(立体的大戦略)を設ける
物理的アプローチ クルゼヴィッツの戦争論 戦争は、①政治、②暴力、③偶然性 の3つからなる。
⇒戦争論は、②暴力に光を当てて、その実戦にもとづいた内容を考察する
⇒戦い勝つことが最も重要である、(直接攻撃、重点攻撃、兵力集中)
心理的アプローチ リデル・ハートの戦略論―間接的アプローチ 大戦略のもとに、直接的アプローチ(暴力、武力をもちいた戦略)と、間接的アプローチ(非暴力、非武力の戦略)
⇒最小予期線を攻撃する間接的アプローチ、最小抵抗線を攻撃する直接的アプローチ、両者を体系的に結びつけるグランド・ストラテジー(大戦略)
知性的アプローチ ロンメル 電撃戦 偽装、後方攪乱、牽制、戦闘前のイメージ戦略ーロンメルとたたかえば必ず敗れる
⇒騎士道精神、戦場の聖者、人道的な将軍⇒敵はロンメルを尊敬するとともに、過大評価をしていた
■キュービック・グランド・ストラテジー
カール・ライムント・ポパーの多元的実在論がベース 戦略⇒戦術⇒作戦
戦略不条理を回避するためのアプローチ⇒物理的、心理的、知性的、3つのアプローチを、弾力的に運用する
第1原理、3つのアプローチを行うこと⇒多元的アプローチ
第2原理、3つのアプローチを絶えず変化させること⇒批判的アプローチ⇒常に、3つのアポロ―チを確認し、誤りを排除し、絶えず洗練し続けていく
クリティカル・マネージング・フロー 組織の変化と、環境の変化に対して、誤りを検知し、修正を行うためのフィードバックを意味する
目次
第1章 旧陸軍将校・山本七平と孫子の思想
第2章 「戦略の不条理」発生のメカニズム
第3章 クラウゼヴィッツと物理的世界の戦略論
第4章 リデル・ハートと心理的世界の戦略論
第5章 ロンメルと知性的世界の戦略論
第6章 「戦略の不条理」回避のメカニズム
第7章 新しい戦略の哲学―「戦略のキュビズム」
ISBN:9784334035297
出版社:光文社
判型:新書
ページ数:248ページ
定価:760円(本体)
発行年月日:2009年10月
発売日:2009年10月20日初版第1刷 -
Posted by ブクログ
「失敗の本質」の本を読んだことがあり、その後に久しぶりに野中先生の本が読みたいと思い読んでみた。非常に興味深い内容で、今まで通り日本軍の戦争を研究材料としつつ、戦場でのリーダーシップについて大量の論文とデータを元に分析されて納得感のある内容であった。
個人的には第8章の辻政信の内容に思うところがあった。幼い頃から文武両道で部下の信頼も厚く飲み会や風俗などが大嫌いで教科書に載るお手本のような軍人であるのにも関わらず、組織として何故上手く立ち回ることができなかったのか?日本人が目指すべき人物に限りなく近いはずなのに何故同世代のエリートには嫌われていたのか?そもそも日本の学問における優秀な人材は何なのかを考えさせられる内容であった。
最後の菊澤先生の章もおすすめ。非合理的な意思決定プロセスに使われる【空気】という目に見えないものについて、取引コスト理論を用いて説明しているので、現代のビジネスでも応用できる内容であると思う。総じて自身の知的好奇心が満たされる素晴らしい本であった。 -
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なぜ失敗したか。
それはあいつらが、阿呆だったからだ。
そうなりがちなんだけど、それだけでは何も解決しない。
菊澤氏の話が面白いのは、合理的な判断をした結果として、不合理な行動をとってしまう、という展開で説明してくれることだ。
本書でも、そういった展開でインパールなどの日本軍の作戦がなぜ失敗したかを解説してくれる。今までの本とちがったのは、おなじ論理展開で、現代日本のコロナ対策や東京オリンピック開催について考えさせてくれたことだ。
合理的に、もっと言ってしまえば、損得勘定によってこれらの決定はくだされた。非合理、不条理に見えて、それらはみな合理的な損得勘定の結果なんですよ、と。
日本軍も、現代日本の官僚も計算については、実際とても長けている。その計算の中には、費用効果やステークホルダーへの説得の手間も含まれる。そうしたことを踏まえた結果が、ああなったのだ、と。
他にも松下電機とダイエーの戦いや、いろいろな事例で解説してくれており、とても感心した。
そしてそうした損得勘定からくる、菊澤氏による「黒い空気」をどのようにしたらはらえるのか。
それはプリンシパルだったり、人間的な理性、何を大切に思うかという基準になるもののような考え方だ。
そのあたり、俺がこれまで読んできた他の著者にも、共通するものがあるような気がしたなぁ。 -
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時代の流れのなかにいるときは見えてこないことがある。
見えていても、カタチを伴ったものとして全体を捉えることができないので、時代の片隅にいた自分が見ていたものだけで、無意識にその時代を記憶に留めている。
自己の記憶はそういったもので、その記憶が己が生きる世のなかを造っていく。だから、人それぞれに見えている世のなかは違う。
でも、時代というのは、今を通り越すことによってその時間経過とともにカタチを現してくる。そしてそのなかで時を過ごした自分の記憶が、そのカタチのなかに位置付けられると、自分の記憶もまた朧気にカタチを伴ってくるし、違った存在になる。
もうすぐ8月が来る。また今年も日本の大きく道を誤った原点を見つめてみよう。 -
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菊澤研宗先生の本は、本書含めて4冊程読んでいる。『組織は合理的に失敗する』、『戦略の不条理』、『なぜ「改革」は合理的に失敗するのか~改革の不条理』、そして本書である。
本書の副題にある「ダイナミック・ケイパビリティの経営学」とは、何か?
この「ダイナミック・ケイパビリティ」の提唱者、デイビット・ティース教授(UCバークレー)によれば、企業のケイパビリティ(能力)には
①オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)
②ダイナミック・ケイパビリティ(変化対応的な自己変革能力)
の2つの種類があるという。
「変化対応的な自己変革能力」とは、『企業が環境の変化を感知し、そこに新ビジネスの機会を見出し、そして既存の知識、人財、資産(一般的資産)およびオーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)を再構成・再配置・再編成する能力 (p.13)』とある。
詳説するのはネタバレになってしまうので躊躇われるのだが、少々長めに次の一節を引用して、このダイナミック・ケイパビリティに少し興味を持っていただきたいと思う。
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このような日本型組織では、各職務権限が明確に各メンバーに帰属されないので、変化のない安定した状況では「知の深化」が遅く、無責任で非効率な資源配分システムとなる。というのも、各メンバーの資源利用によってもたらされるプラス・マイナスの結果は、そのメンバーたちと共有されるからである。
特に、マイナスの結果が発生したときには、各職務権限が相互に複雑に重複しているため、このマイナスの結果を帰属させる主体を特定化することが非常に難しく、結局、無責任となる。そして、このような無責任なシステムのものては、各メンバーははじめからマイナスの結果を抑止せず、プラスの結果を生み出そうとしないので、米独型組織に比べて日本企業の利益率は低くなる。つまり、非効率なのである。
しかし、日本型組織では、各メンバーがあいまいに相互にダブって仕事をしているために、新しい生産システムた新技術が導入されても高い変革・調整コストを伴うことなく、「知の探索」が行われ、比較的容易に受け入れることができる。それゆえ、より労働生産性の高い新しい状態へとシフトすることができる。このように、日本型企業組織は、その柔軟な構造のもとに環境の変化に柔軟に適応できるのである。(p.123)
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この下り、世界的に見ても日本に長寿企業が多い理由の一つであるかもしれない。
また、もう少しフカヨミすると、九鬼周造の『いきの構造』で挙げられているように、西欧の「善悪二元論」的世界観とは異なり、日本は「善と悪」が入り組んだ世界観(西欧では悪魔は悪だが、日本では悪の化身である鬼が善の要素を持っていたりする)を持っており、また、「唯一神」と「八百万の神」の違いなどの多元性や重層性が、組織における職務権限の考え方にも反映されているような気がしなくもない。
最後に、野中郁次郎先生の本もそうなのだが、菊澤研宗先生の本も、そのコンセプトの根底には、カントやカール・ポパーが必ず挙がっている。特にポパーの歴史主義に対する批判の根底にある考え方は、いわゆる倫理的色彩の強いものであり、やはり経営学においても、その根底には、確かな哲学と倫理基準が必要であることを、改めて考える機会になった。 -
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「漸次工学的アプローチ」(238)
小さなチャンスは多い
その小さなチャンスを繋げてビッグ・チャンスにしていくのが「経営」
経営は、永遠に継続する「変革経営」変革には終わりが無い
可能な限り各部門で目標を数値で示させ、その理由を十分説明させ、目標達成を促す
「不条理」→「進化」
無謬性の官僚主義により、組織・制度が硬直化、進歩をやめた状態 衰退・崩壊あるのみ
集権主義の失敗
1人のリーダーによりデザインされた計画・作戦は長期合理性を持ち得ない
どんな人間も完全合理的ではありえない 限定合理的であり、得意・不得意、差異がある
K.Popper 誤りから学ぶ 開かれた組織を形成する
→批判的合理的精神により組織は不条理を回避、絶えず組織は進化する(222) -
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野中教授が主張されている「現場感覚」「大局観」「判断力」を有した「フロネティック・リーダー」を裏付けるための、戦時の事実・将校の行動を通じて各専門家が論じている。
自分は、「石原莞爾」「辻政信」「山口多聞」の考察が大変深く印象に残った。
天才肌故か、組織に目配せする能力が欠落していた石原。
軍の基本ポリシーに忠実すぎるが故に数々の失策に対し誰も苦言を呈すことができず、結果的に独走を許してしまった辻。
組織や上官への抜群の目配せと溢れる程の愛国心故に自らの不利をあえて飲み込み率先して殉職した山口。
ヒューマニズムに偏った感想になってしまい、申し訳ありませんが、私にとっては非常に参考になりました。